自己評価結果報告書(平成22年度版)

まえがき-第二期中期目標期間の初年度にあたって-

 我が国は、平成23年3月11日の東日本大震災とそれに引き続く福島第一原子力発電所の事故により、筆舌に尽くしがたい未曾有の被害を被った。亡くなられた多くの方々のご冥福を心からお祈りするとともに、今なお被災されて困窮の日々を余儀なくされている多くの方々に、心からお見舞い申し上げる。本学としても、継続的に出来る限りの支援をさせて頂く所存である。

本学を取り巻く状況

○我が国の財政状況
 民主党政府は、「財政健全化への取組」として、平成22年6月22日に「財政運営戦略」に基づき「中期財政のフレーム」を閣議決定した。このフレームは、次の3点に要約できる。
1)平成23年度の新規国債発行額は44兆円を上回らないこと
2)税制の抜本的改革
3)今後3年間、国債費を除いた一般歳出の上限を71兆円とすること
 平成22年度の71兆円の内訳は、社会保障費27.3兆円、地方交付税交付金17.5兆円、その他の政策的経費など26.2兆円(人件費等13兆円を含む)となっているが、平成23年度は社会保障費が1.3兆円自然増することが見込まれ、これに対応するために、地方交付税交付金0.3兆円減、政策的経費1兆円減の方向で、来年度の予算編成が71兆円の枠に収まるように、政府は考えている。つまり、歳出の大枠は、基礎的財政収支対象経費(一般歳出)を実質的に前年度以下に抑制するということである。
 平成22年の夏以来、政府の「中期財政フレーム」や「概算要求組み替え基準」によって、平成23年度の予算編成がどうなるか、文部科学省の概算要求と特別枠がどうなるか、まさに国立大学法人の命運が懸かっていたわけであるが、関係機関、関係各位のご努力、そしてまた、パブリックコメント等による国民の後押しもあり、大幅な削減は免れた。
 しかし、東日本大震災以後、補正予算等により復興に向けて、次々に予算編成を行わなければならない状況にある。
○運営費交付金
 大学経営にとって、最も関心事である国立大学法人運営費交付金に係る主な事項としては、次のことが挙げられる。
1)0.5%削減(文科省の概算要求では5%減で要求)
2)大学改革促進係数1.0%減の設定
3)授業料免除枠を6.3%から7.3%に拡大
 この結果、本学では、本年度に比べて1.17%の減額(およそ4千万円減額)の35億3479万8千円の運営費交付金となった。
○財務省の教員養成大学・学部への考え方
 財務省は、平成22年5月に教員養成系大学・学部44大学(うち単科11大学)全てに対して、予算執行調査(書面調査又は実地調査:本学は書面調査)を実施した。予算執行調査でヒアリングを受けた大学の情報等を交えて、財務省の基本的な考え方を以下に要約する。
1)国立大学法人において、教員養成を計画的に実施しているにもかかわらず、教員採用率が年々低下しているのは財政面からみて問題である。ちなみに平成22年度公立学校教員採用者内訳をみてみると、国立教員養成系大学・学部では;小学校41.0%、中学校27.3%、高等学校12.2%となっており、一方、一般大学では;小学校49.6%、中学校59.8%、高等学校63.2%である。これらの数値からみて、国立大学法人が教員養成をしなければならない根拠は乏しい。
2)国立の教員養成は、小学校教員養成に特化してもよいのではないか。(韓国の国立教育大学は小学校に特化して目的養成を行っている。)
3)各県に二つの国立大学法人が存在する意義は何か。国立の教員養成機関が近くに集中し、バランスを欠くところもあり、存在理由がはっきりしない(統合を視野に入れた改革をすべきである)。
4)新課程の存在理由がわからない。どういう人材を養成しようとしているのか不明確である。改組すべきではないか。
 以上、財務省は、主として財政面、効率化の面から国立の教員養成大学・学部の問題点を指摘している。本学は国民に本学の存在理由、つまり機能別分化と連携による機能の推進を行い、本学の基本目標を理解して頂き、大学の教育研究等の成果を広く情報公開し、鳴門教育大学は地域にとっても国にとっても必要な教員養成大学であり、他に代替不可能な教員養成の大学であると納得していただけるように絶え間なき努力が必要であると思う。本学が、未来を担う子どもの教育を行う教員養成大学として、国民の期待に応え、強い支持を頂き、文部科学省にも大いに支援して頂けるような大学にしていきたい。そのためには、まずは第二期中期目標をパーフェクトに達成しなければならない。

教員養成制度改革

○平成22年6月3日に当時の川端文部科学大臣から「中教審」に対して「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」諮問がなされた。
 「中教審」では、これを受けて「教員の資質能力向上特別部会」(委員30名)を設置した。諮問の要点は、一つは、大学4年間が基本となっている教員養成課程の期間延長について(いわゆる修士化の問題)、二つは、教員免許更新の在り方を含めた教員免許制度の見直しと教職の生涯にわたる質の保証について、三つ目は、教育委員会、大学、地域が一体となって教員を育てる仕組み作りでる。
 教員養成大学として最大の関心事である「教員の資質能力向上特別部会」の審議経過報告(12月27日)では、次のような方向で検討されている。
1)教員養成は、大学における養成を基本原則とする。
2)現行の「開放制」による教員養成を堅持する。
3)教員免許状については、「基礎免許状」、「一般免許状」、「専門免許状」の三種類を用意する。
4)免許更新制については、専門免許状との関連、10年経験者研修との関連で検討する。
○本学は、機能別分化を第二期中期目標の基本方針に明確に謳っている。
 本学の主旨、目的、使命に沿って、待ったなしの改革。本学としては、所与の中で改革を推進していかねばならないと思っている。
○私は、教員の資質能力向上の方策については、平成13年11月に報告されたいわゆる「在り方懇」の報告の中に基本的事項は凝縮されていると思っている。あの報告からおよそ10年たつが、提言内容の果たしてどれだけを、私達を含めて教員養成系大学・学部は達成しているのだろうか。第一期中期目標期間を終えた今なお、未達成であり慚愧に堪えないが、第二期中期目標期間において、教員養成系大学・学部との連携・強化を図り,提言内容の土台を築きたい。
 私自身の、教員養成改革の基本的考え方(①専門大学・学部での教員養成、②教員養成期間の延長、③教員免許状の国家資格化等)については、日本教育新聞(平成22年5月24日付け)に投稿している。また、平成22年12月の第4回日中教師教育学術研究集会(於:鳴門教育大学)で基調講演の機会を与えられたので、そこで述べた。近くプロシーディングが出される予定である。議論の糸口になることを願っている。

第二期中期目標

(前文)大学の基本的な目標
 鳴門教育大学は,「教育は国の基である」という理念のもとに,教員養成大学として時
代の要請に応えるべく,高度な教職の専門性と教育実践力,かつ豊かな人間愛を備えた高
度専門職業人としての教員の養成を最大の目標とする。
 併せて,学校教育に関する先端的実践研究を推進し,我が国の教員養成における先導的
な役割を果たすため,以下の目標を掲げ,重点的に取り組む。
〔教育〕
○カリキュラム・ポリシーに基づいて「教員養成コア・カリキュラム」をはじめとする教育内容を検証し,更に充実させ,今日的課題に対応しうる「教育実践力」を備えた教員を養成する。
○厳正な成績評価の実施及び教育方法の改善を通して,学位及び教育の質を保証する。
〔研究〕
○学校教育に関する先端的実践研究を推進するとともに,新規分野である「予防教育科
学」の拠点を形成し,その成果を広く学校現場や社会へ還元する。
〔社会貢献・国際貢献〕
○小学校英語教育センターにおいて蓄積している事業実績や教育研究の成果を小学校に
おける「外国語活動」に活かし,今後も引き続き積極的かつ計画的に教育支援を行う。
○JICA等と連携した大学教員の海外派遣,諸外国からの研究者・教員・留学生の受入れ
を積極的に促進し,開発途上国への教育支援をなお一層充実させる。
 以上、本学は,高度専門職業人としての教員の養成を最大の目標とすることを掲げ,大学の機能別分化・機能の推進を図ることとしている。

平成22年事業年度に係る業務の実績

主な事項を以下に列挙する。詳細は、本文をお読み頂ければ幸いである。
○教育研究の質の向上の状況
1)予防教育の授業開設
 予防教育の授業科目として、大学院で「予防教育科学」、学部で「予防教育科学と学校教育」を開設することとし,平成23年度入学生から実施する
2)教員養成コア・カリキュラムの成果
 平成17年度から「教員養成コア・カリキュラム」を実施し,その成果を検証するため平成22年度学部卒業生113人を対象とした「鳴門教育大学の教育等に関するアンケート」を行った。その結果,「教育実践コア科目」についての設問では,肯定的回答は,ほぼ90%であり,その成果は教員就職率向上へと繋がっている。
3)「教職実践演習」開講への準備
 「教職実践演習実行委員会」を設置し、平成25年度から始まる「教職実践演習」 の開講に向けたアクションプランを策定した。その一つとして,学生個々の省察を促し,教員が効果的指導を行うために、平成22年度から「学修キャリアノート」を導入した。
4)予防教育科学教育研究センター事業の推進
 平成22年度特別経費(プロジェクト分)として認められた「学校において子どもの健康と適応を守る予防教育開発・実践的応用研究事業」について,附属学校や連携校と学校不適応等予防教育科学に関する共同研究を推進した。
5)小学校外国語活動の支援        
 小学校英語教育センターにおいて,出張型研修,集合型研修及びシンポジウムを開催し,小学校外国語活動における支援を行った。
○業務運営・財務内容等の状況
1)教員就職率と受験倍率
 第二期中期目標に掲げた教員就職率目標「70%(進学者を除く)」を達成するために,教員採用試験対策ガイダンス(年90回以上)の充実及び就職支援アドバイザー(公立学校長経験者等)による指導の強化を図り,平成23年3月卒業生の教員就職率は平成23年5月1日現在で75.2%(進学者を含む)となり,目標値を超え,高い数値を達成した。教員就職率の向上と連動して、受験倍率も教員養成系大学のトップとなった。
2) 企画戦略室の設置とその成果
 経営企画本部内に,重要課題に機動的・戦略的に対応するための企画戦略室を設置した。平成22年度には「インターネット大学院検討委員会」,「大学院定員確保検討委員会」及び「入学定員・教育研究組織等見直し検討委員会」を立ち上げ,その成果としては,修士課程の定員充足及び「インターネット大学院基本構想の策定」が挙げられる。
3)外部資金の獲得
 外部資金を獲得するためのインセンティブ経費を、学長裁量経費から配分する制度を継続し、採択件数が46件に増加した。
4)職員宿舎及び学生宿舎の入居率向上対策
 この件に関しては、第一期中期目標期間において,「不十分」との評価を受けた。そこで入居率向上対策として,学生宿舎のうち,世帯棟の入居基準を大学院における現職教員の経済状況やニーズに基づき緩和した。このことにより,平成22・23年度世帯棟及び男子学生寮の入居希望者が増加するとともに入居率も向上した。職員宿舎については,他大学の現状及び有効活用策の調査を行うとともに鳴門市に対してニーズ調査を行い,東日本大震災被災者の受け入れを含め、有効活用策を検討している。
5)自己点検・評価制度の改善
 平成21年度自己点検・評価制度検証PTの報告書における改善への提言を受け,実務家教員に係る教員選考基準及び自己点検・評価における評価基準を新たに定めた。また,外部有識者を含めた「教職大学院外部評価委員会」を開催し,徳島,香川,愛媛,高知各県教育委員会関係者からの意見聴取を行い,教育課程,教育方法等を評価し,改善するための検討を行った。


 最後に、本学の重点課題としている「大学院修士課程と教職大学院の定員充足への取り組み」について説明する。
 この定員充足に関しては、前述の企画戦略室における「大学院定員確保検討委員会」や「入学定員・教育研究組織等見直し検討委員会」による検討及び学長が定める「各年度の重点目標」等と関連する重要な事項である。
 まず、大学院修士課程の定員充足を図るため,過去の入学者状況を分析し,学校教員養成プログラムの活用を促すとともに,入学辞退を抑制する対策を講じた。
 その結果,入学辞退率は24.5%から22.0%に減少し,開学以来はじめて修士課程(定員250人)の定員を充足した。学校教員養成プログラム(長期履修学生)についても,広報の強化を行い,安定的に入学者を確保している。
 次に、専門職学位課程(教職大学院)の学生定員充足のために、取り組んだ内容を述べる。
 一つは、教員養成特別コースの出願要件である「小学校教諭一種免許状を有する者」という限定を緩和して、幅広く人材を求めるようにした。
 二つ目は、6年一貫教育を志向し、学部「学校教育コース」を「学校教育実践コース」に名称変更して,教職大学院への接続コースと位置づけたことである。
 なお、平成22年度の業務実績報告書では、年度計画75項目中、教育・研究に係る計画を除いた33項目について、四段階で進捗状況を評価している。このうち、Ⅳ評価(年度計画を上回って実施している。)は2件、Ⅲ評価(年度計画を十分実施している。)は31件とした。6年間の第二期中期目標期間・中期計画のスパンの中で、計画的に取り組みを推進する。
 以上、まえがきとしては冗長になったが、第二期中期目標の初年度と言うこともあり、また思うこともあり紙幅をさいた。ここに平成22年度版「鳴門教育大学自己点検評価結果報告書」を刊行するにあたり、関係各位のご高覧に供し、本学発展のために忌憚のないご叱正、ご指導をお願いする次第である。
 最後になりましたが、本出版に多大なご尽力を頂いた関係各位に深謝申し上げる。
平成23年10月
国立大学法人鳴門教育大学長 田中雄三

目次

(1)総論

(2)法人の概要

(3)平成22年度業務実績報告

(4)大学の自己点検・評価

(5)資料

 

最終更新日:2011年10月14日

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