総合学習開発講座
◇教員名簿
氏名 | 職名 | 専門分野 | 氏名 | 職名 | 専門分野 |
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小西正雄 | 教授 | 国際文化論 文化間教育論 |
近森憲助 | 教授 | 環境教育 |
西村宏 | 教授 | 宇宙環境科学 宇宙論 |
村川雅弘 | 教授 | 教育方法 教育工学 |
太田直也 (平成18年4月1日昇任) |
助教授 | イギリス文学 比較文化学 |
藤村裕一 | 助教授 | 情報社会学 情報教育 |
谷村千絵 | 講師 | 教育人間学 教育情報人間論 |
*教員氏名は、当該教員の自己点検・評価報告書へリンクしています。
◇自己点検・評価
1.学長の定める重点目標
1-1.大学院の学生定員の充足
(1)目標・計画
募集定員20人のところ,昨年度入学生は5人,今年度は後期試験終了時点で合格者数12人にとどまっている。定員割れの主たる原因は「総合学習」に対する教育現場の関心の低下にある。さらにその背景には,いわゆる「総合的な学習の時間」に対する無理解や性急な学力向上論議がある。小講座は,このような構造的な劣悪環境のなかでまさにわれわれの「生きる力」が試されている。
以上のような現状認識に立ち,小講座では,教育現場ならびに派遣元である各都道府県教育委員会担当者の「総合学習」へのアレルギーを少しでも軽減するべく,コース名称を「現代教育課題総合コース」と改称し,より一層教育現場の多様かつ根源的なニーズに合致した大学院コースという性格をアピールすることで定員確保に全力をあげたいと考えている。具体的には,この新しいコース名称の含意するところを広く周知するべく,講座紹介パンフレットならびにホームページの該当箇所を全面的にリニューアルする。また各都道府県の研修センター等の講座や教育現場で開催される校内研究会や県単位での研究大会などに講師として招聘される機会をとらえて,パンフレット配布,コース紹介を少なくとも延べ10回は実施する。また,私立大学を中心に受験の勧誘を少なくとも延べ7大学に対して行う。また本コースだけではなく各教員が以前所属していたコースあるいは大学の修了生ネットワークを活用して,「現代教育課題総合コース」への現場のニーズをアンケート形式で調査し,カリキュラム改訂の資料づくりを行う。
(2)点検・評価
- 諸般の事情からコース名改称計画は頓挫したが,一方で現代の教育課題により正対したカリキュラム設計への努力は続け,18年度には「現代の諸課題と学校教育」という新たな大学院授業をスタートさせた。さらに,受講生数が芳しくなかった「現代教育思想論研究」「同特講」を発展的に統合し,よりニーズに即応した新授業「現代の子どもと学校教育」を構想し,19年度からの実施に向けて所要の手続きを完了した。両授業は,総合学習開発コースのカリキュラムコアに位置づけられるものである。
- コースパンフレットについては,より視認性の高いデザインに改めた。とくに横長印刷にすることで他講座との差別化をはかった。また主要授業のキャッチや在校生による呼びかけ文を挿入して,受験希望者により親しみの湧く編集とした。
- 訪問した私学は以下のとおり。聖心女子大学,皇學館大学,東洋大学,立正大学,奈良大学,日本大学,帝京大学,別府大学,立教大学,法政大学,工学院大学。このほか先方の事情等で資料送付のみに変更した大学として,常磐会学園大学,関東学院大学,日本橋学館大学。
- 研究会,学校訪問等の機会をとらえて本学のPRを行ったものとしては,北海道理科教育センター研修会,全国情報教育対応教員セミナー仙台,同大阪,情報教育夏季研修会(宮崎大学),授業改善セミナー(熊本大学),石浜西小学校(愛知県),東保見小学校(同),愛知県教育センター(指導主事に対して),筑波中央研修(独立行政法人教員研修センター:小学校中堅教員・中学校中堅教員・高等学校中堅教員),カリキュラムマネジメント研修(独立行政法人教員研修センター:小・中・高等学校中堅教員・指導主事),安全教育中央研修(オリンピックセンター:小・中・高等学校中堅教員),「総合的な学習の時間」研修(鳥取県教育センター:小・中・高等学校中堅教員),初任者研修(石川県教育センター:小・中・高等学校初任者教員),「総合的な学習の時間コーディネイター養成講座」(広島県教育センター:小・中・高等学校中堅教員),徳島生活科・総合的学習教育学会(鳴門教育大学:小・中学校中堅教員・管理職)
- 村川教授を中心に実施している鳴門セミナーについては鳴門会場,東京会場ともに盛況であった。鳴門会場は8月19日~20日の両日,約50名の現職教員を集めて開催した。また8月7日~8日には東京会場で実施し,約40名の参加者を得た。
- 藤村助教授を中心に実施している第2回情報教育マイスター養成研究会については,東京会場において11月11日に実施し,77名の参加者を得て,総合学習開発コースにおける大学院教育の魅力について紹介した。さらに,平成19年1月7・8日には日本教育工学会の冬の合宿研究会を開催し,現職教員や研究者約40名の参加者に対して本学のPRを行った。
1-2.教員採用率の向上
(1)目標・計画
小講座の場合,学部学生を擁しないため,ともすれば採用率向上に対する関心はこれまで低かったが,総合学習開発コースにも長期履修学生が少なからず入学してきたことで,このような考え方の早急な転換を迫られている。幸い小講座には,自然系(理科)教育講座でボランティアとして教員採用試験対策講座を長く続けてきた西村教授がおり,またカリキュラム開発の専門家である村川教授の協力も得ることができる。さらに札幌市教育委員会指導主事として実際に教員採用業務に長く携わってきた藤村助教授の豊富な面接指導経験を生かすことも可能である。これらの人的資源を総合して,長期履修学生の採用試験対策行動計画を策定し,19年度以降の本格的稼働に備える。
(2)点検・評価
- 講座独自に就職支援シートを作成した。これは該当学生の属性のほか,受験予定都道府県等およびその試験日,試験科目,合格通知予定日等を一覧表にとりまとめたものである。各教員はこのデータベースを活用しながら,適宜ゼミ生の就職指導にあたった。
- A306(旧:山崎洋子研究室。会計課資産管理を通じて学長から1年間の使用許可をいただいている)を会場として3回の就職支援講座を開催した。藤村助教授からは,採用試験の最前線で活躍していた氏ならではの貴重な指導があった。詳細は別紙参照。
2.分野別
2-1.教育・学生生活支援
(1)目標・計画
小講座が責任開設講座となって担当している唯一の学部必修授業「総合演習」については,そのメインの活動であるCA(体験・創造活動)をこれまで6~7つのグループに分けて実施してきたが,18年度は,徳島県上勝町と連携して農作業体験をコアとする新しいメニューを開発する計画である。ただし現地の受け入れ人数の関係等もあり,およそ160人にのぼると予想される受講生全員に対して同じメニューを提供することが可能かどうか,またその効果はいかほどかなど,今後の展開に向けた課題も多い。18年度はとりあえずの試行の1年と位置づけ,「総合演習」第2世代のコンセプトづくりに努力する。
総合学習開発コースの院生研究室は人文棟,自然棟の2カ所に分かれて設置されている。このうち人文棟研究室は村川教授が主に管理している文部科学省研究開発学校報告書および総合学習関係の資料類が学生の共用空間を圧迫している状況にある。18年度は転出教員の研究室を講座資料室に転用するなどの方策を講じ,人文棟研究室を本来の院生向けの空間に再編成し研究環境の向上を図る。
(2)点検・評価
- 「総合演習」については,おおむね例年通りの展開となった。上勝町との連携については近森教授を中心にかなり計画を煮詰めたが,現地での受け入れ事情から,多くの学生が一度に活動するのは無理と判断し,とりあえず,6つのCA(グループごとの活動)のうちの近森グループが上勝バイオ(株)との連携のもと,同町のしいたけ栽培の一端を体験的に学習する活動を行った。その成果発表会(2月)には,同町役場から3名が参観に来られ,貴重なコメントをいただくことができた。なお「総合演習」については長期履修生の想定外の増加という困難な事態に直面しており,内容の検討もさることながら,これまでどおりの展開を維持できるかどうかという課題を残して18年度を終えた。
- 院生研究室の狭隘さを根本的に解消するには,講座単位では無理があり,基本的には全学的な配置見直しを早急に実施して各講座間の公平性の確保が図られる必要があるが,座してそれを待つわけにもいかないので,18年度はA306研究室(詳細前述)に村川教授所蔵の文部科学省研究開発学校報告書を中心とする貴重な資料のごく一部を暫定的に保管しゼミ生の需要に対応する措置を講じた。新年度からの院生増加に対応すべく,年度末にはさらにA219院生研究室の整理を行い,院生の尽力も得て,新入生に最低限の研究スペースを提供できるよう措置した。また講座予算の残額を活用して新たに院生用の机等備品を購入した。
2-2.研究
(1)目標・計画
学長裁量経費を得て「総合演習」第1世代(平成14年度~17年度実施分)の分析・総括に関する研究を行い,先導的試行として注目される本学の「総合演習」の学術的価値を明確にする。またその成果を全国の教員養成系大学学部に発信し併せて鳴門教育大学ならびに小講座の認知度を高める。
前期・後期の1回ずつ講座構成員全員が参加して授業研究会を実施する。なおこの研究会は講座外の教員にも広く開放する。
(2)点検・評価
- 「総合演習」の分析総括計画は実施にいたらず,19年度への持ち越しとなった。理由は長期履修生の急増にともなって,「総合演習」の通常の展開そのものが非常に難しくなり,その対応に追われたこと,ならびに,「総合演習」の開講学期が,長期履修生への履修配慮から急遽後期に変更になったことによる。つまり18年度は,見直しの余裕を見つけるまでには至らなかったという事情がある。
- 授業研究会については前期,後期各1回ずつ実施した。前期は「文化間教育総論」,後期は「現代の諸課題と学校教育」の一部を公開した。講座には,文科省等学外の要務を引き受けている教員が多く,予定していた全員の参加は実現しなかったが,授業終了後,感想をメールで授業者に送信して授業改善に供した。
2-3.大学運営
(1)目標・計画
西村教授は引き続きセンター部長として大学運営に粉骨砕身する。小西教授は学長補佐として教育委員会との連携強化に努力する。講座全体としては,各種委員を積極的に引き受け,大学運営に主体的にかかわっていく。
(2)点検・評価
西村教授はセンター部長として教育実習の運営への関与,附属学校との連携,急増した長期履修生の実習先確保,その他センター部関係人事や,臨時的に生起した種々の問題への対応等,絶え間ない業務に継続的に取り組んだ。小西教授は学長補佐として教育委員会との連携強化に奔走し,5月には17都県の教育委員会を,秋以降は私学を中心に訪問し,また大学院学外説明会や業者主催の大学院説明会にも赴いた。藤村助教授と村川教授は遠隔教育システムの構築に尽力した。また村川教授はGPの獲得に多大の貢献をなした。近森教授はJICA関連の国際協力事業のため,合計95日間,アフガニスタンに出張し,同国の教員養成システムの開発に文字通り命がけでとりくみ,本学に貴重かつ豊富な外部資金を呼び込む礎となった。
2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等
(1)目標・計画
地域連携については,小講座が担当する学部必修授業「総合演習」において,徳島県上勝町との密接な連携のもとに農業体験をコアとする新しい教育プログラムを試行する。同時に,大学ないし学生が一方的にメリットを享受するのではなく,上勝町の町作りにも大学として積極的な貢献ができるよう,相互支援交流型カリキュラムの開発を試みる。
村川教授を中心に8月に公開講座「教師の授業スキル・学級経営スキルアップ講座」を大阪市内において実施する。また,同8月には「鳴門セミナー2006」を実施し,県内外の現職教員と本学大学院生との研究交流の場とする。また近森教授を中心に公開講座「ゴミをテーマとする環境学習」を本学で実施する。
国際交流に関しては,国際教育協力事業の一環として海外の教育改革に取り組む近森教授の活動を講座として全面的にバックアップしていく。
近森教授が会長として努力している「鳴門市子どものまちづくり推進事業」ならびに,NHK・JST(科学技術振興機構)などと連携して教員向け・児童生徒向けに総合学習などで利用できるデジタル教材等を提供しようとする藤村助教授の活動を,講座として全面的にバックアップしていく。
(2)点検・評価
- 上勝町との地域連携については前述の通りである。受け入れ態勢の問題から所期の目的が十分に達成されたとは言い難いが,一定の成果はあった。
- 2つの公開講座を実施した。近森教授は,平成18年8月24日にゴミをテーマとする環境学習に関する講座を学外から招聘した講師とともに実施した。参加者は 2名(高校教員1名、一般市民1名)であった。参加者は少なかったが、日本のゴミ問題という大きな枠組みから個別的な活動までがコンパクトにまとめられた講座であり、参加者から好評を得た。村川教授が担当した「教師の授業スキル・学級経営スキルアップ講座」には京阪神地区の教員を中心に約20名が参加した。
- 近森教授を中心とする国際協力については前述の通り。同教授出張中の授業,学生指導については,西村教授を中心に完璧なバックアップができた。
- 近森教授が会長として努力している「鳴門市子どものまちづくり推進事業」については,同事業の一環として鳴門市を中心に活動している様々な地域団体や本学などが連携し、子どものまちフェスティバルをはじめとする多彩な事業を展開した。
- 藤村助教授を中心として進めているNHK・JST(科学技術振興機構)などと連携した教員向け・児童生徒向けに総合学習などで利用できるデジタル教材開発については,その成果の一端を講座HPにアップした。
- 附属小学校との連携については,小西教授を中心に従来にもまして研究協力を進め,その甲斐あって,2月の研究大会の総括講演の大役を「特定の教科に偏らない視点で指導が受けられる」との観点から小講座が担当した。
3.本学への総合的貢献(特記事項)
以上各項の自己点検をもとに総合的に判断して,教育研究等学内貢献ならびに社会貢献は当初の計画どおり,ないし少なからぬ項目において計画以上の成果を上げ得たと思われる。小講座の場合,センター長,補佐,GP委員等の重要な任務を引き受けている教員の割合が他講座に比してかなり多いが,そのことによる授業やゼミ指導へのしわ寄せをほぼ完璧に回避できたのは,ひとえに講座教員相互の支援態勢が有効に機能したことによる。あえて特記するとするならば,このような構成員一丸となっての講座運営が実現していることを,最大の成果としてあげておくことができるかもしれない。