4.附属学校部 附属養護学校

<附属養護学校>

(1)教育課程の編成

  特別支援学校の教育課程は,児童生徒の障害特性や発達段階に応じて,弾力的に運用できるようになっている。学校教育法の一部改正により,障害の程度や種類に応じて特別の場で指導を行う「特殊教育」から,子ども一人一人の教育的ニーズに即した教育的支援を提供する「特別支援教育」へ転換されることとなった。学習障害(LD),注意欠陥多動性障害(ADHD),高機能自閉症等の児童生徒に対しても適切な指導および必要な支援を行うよう明示された。このことにより本校は,いままで以上に特別支援教育のセンター的機能を持つ「特別支援学校」として,地域の幼(保)・小・中・高等学校等への特別支援活動を実施することとなった。
  このような流れに応じて本校の教育課程も,弾力的に運用,編成されてきた。即ち,知的障害者を教育する場合に有効な指導形態であると言われている「生活単元学習」や「作業学習」に代表される「領域・教科を合わせた指導」と,ここ数年来,児童生徒の構成比が多くなった自閉症児(図を参照)への指導を工夫している。
年   度 10 11 12 13 14 15 16 17 18
全校在籍数 名 65 65 64 63 60 61 60 60 59
自閉症児数 名 30 30 29 30 34 32 35 32 33
割  合(%) 46 46 45 48 57 52 58 53 55
ア 小学部の教育課程
  発達の未分化なこの時期の教育課程は,合科統合された形を多く取り入れる必要があると考えている。国語,算数といった教科に分けて教えるのではなく,生活そのものをテーマとし,言語や数概念,あるいはその基礎となる原体験や感性を豊かなものにする必要がある。集団を基礎とした行事や総合的な活動とともに発達に応じた課題学習も組み入れ,次のような時間を設定している。
  (ア)生活単元学習 (イ)合同学習 (ウ)朝の運動(リズム運動,サーキット,マラソン)
  (エ)遊びの時間(オ)ことば・かず (カ)図画工作(キ)音楽 (ク)清掃指導(日常生活指導)
  平成13年度からの自閉症の児童生徒のための指導プログラム研究で,構造化の内,特に視覚的構造化は自閉症児には先の見通しをもたせ行動を予想させたり,個に応じた指導の時間を特設することが効果的であることも明らかになった。個に応じた指導に際して「自立活動」が重要な意味を持つと考え実践することで,指導に効果をあげることができた。
  小学部の児童は,本校に入学すると居住地でのふれあいが希薄となっているため,居住地校交流を実施している。児童が担任の引率のもと,居住地の校区の小学校の特別支援学級や通常の学級と交流を行い,校区の児童や保護者の方々との交流ができた。本年度は,徳島市加茂名小学校と沖洲小学校で各1名の児童が,毎月1回の割合で参加することができた。また,昨年度の交流校の,鳴門市撫養小学校と明神小学校の2名については,地域の子どもとして,運動会などの行事に参加ができた。
  また,本年度は,児童の実態を考慮し,兵庫県への修学旅行にスクールバスを利用した。
イ 中学部の教育課程
  中学部は,青年前期の身体的にも精神的にも成長変化の大きい大切な時期である。学習は,各学級単位だけではなく,国語・数学における能力別の集団,体育や音楽における1人1人の適正を考慮した集団,宿泊学習の班集団等,指導内容,始動形態により様々な集団を構成している。また,働く意識や自覚を養う上からも,中学部から始まる作業学習は重要な指導形態であると考えている。
  作業学習の中心となる作業職種は次のとおりである。
  (ア)プラスチックもぎり (イ)紙箱つくり (ウ)木工 (エ)陶芸  (オ)手工芸
  (カ)機織り(外部講師招聘)
  中学部においては「国・数」の学習グループ数を多くし,より個別の対応に配慮した。また,班集団の活動の場としては,遠足・校内宿泊学習(学級キャンプ)・校外宿泊学習(学部・塩塚高原キャンプ)等がある。大阪・三重方面への修学旅行は,高速バス,電車,新幹線等のいろいろな交通機関を利用し実施した。
  また,ボランティア講師によるパッチワークやアニマルセラピー等の特設授業も効果を得ることができた。パッチワーク作品「友情の丘」は,徳島県手工芸展学園の部に出品し優秀賞を受賞した。
ウ 高等部の教育課程
  高等部では,目前に控えた卒業後の生活を見通した教育が大切である。従って,卒業後の生活に焦点をあてた身体づくりと作業学習を中心とした内容が多くなっている。
  作業学習や校外学習,特に現場実習(就業体験)を実施する中で卒業後の進路を決めている。しかし,近年の経済状態や生徒の実態から,企業への就労は非常に困難である。最近は,できるだけ現実の社会の仕事場にふれる機会が多くもてるよう現場実習先の開拓を行い,1年生時から校外実習を実施している。
  平成18年度の現場実習の状況は次のとおりである。
実 習 先 I期場所数 I期(人) II期場所数 II期(人) III期場所数 III期(人)
事 業 所 2 2 3 4 1 1
授産施設 2 7 4 10    
小規模作業所 1 1 0 0    
NPO法人 1 1 5 3    
更正施設 3 5 1 5    
学校工場 1 8 1 4    
  平成4年度から継続している青少年センターの温水プールでのトレーニングも成果を上げ,四国知的障害養護学校水泳大会に参加し,堂々と競技することができるなどの成果をあげている。平成8年度から行っている「一日大学生」の行事も,引き続き本大学において実施した。

(2)教育研究

  文部科学省の研究開発校に指定された平成13年度から,「自閉症の児童生徒のための指導プログラムの開発」に続き,平成16年度にはその研究の成果を実際に実践し,その過程と成果を研究紀要第36号としてまとめた。その後,「特殊教育」から「特別支援教育」への移行を見据えた新しい時代へと移行し,平成 17年度から研究主題「特殊教育から特別支援教育へ-特別支援学校の役割-」を設定し,学校体制のあり方の研究を進めた。
  研究の1年目は,児童生徒への指導や支援を各学部間で一貫したものとさせるべく,卒業後の「進路」をキーワードにして,各学部段階における社会参加と自立につながる指導内容を検討した。また,大学附属の研究開発校や教員養成の実習校としての本校の特性から地域に貢献できるセンター機能に視点をあてて,徳島市・鳴門市の保育所,幼稚園,小学校,中学校・県内高等学校を対象としたアンケート調査による「特別支援教育の必要性について」の検討・研究を行った。
  2年目の本年度は,児童生徒の自立と社会参加のために必要な支援の具現化のために家庭,地域,関係機関との連携の在り方について検討した。
  また,平成13年度から実施している大学院1年次生と大学教員,本校教員による教育実践研究については,各学部の教員と実践研究課題を設定し,課題に関連した文献等の収集,観察記録とデーターの分析を行い成果を上げている。本校は,授業記録やデーター録りができ,客観的な資料を基に大学院生と研究的な視点から課題追求がなされ高く評価すると共に,院生は,児童生徒個々の特性や活動の様子,授業を観察する経験となり教育現場での課題解決につながっている。
  大学障害児教育講座と本校の共同研究については,「特別支援学校のセンター機能の充実と特別支援教育の推進に関する研究」(学長裁量経費)について実施した。また,このことについては,徳島県教育委員会特別支援教育課(統括指導主事)の協力も得ることができた。

(3)実地教育

  平成18年度附属養護学校における実地教育は次のとおりであった。
区   分 対 象 学 年 人数 実 習 期 間
ふれあい実習 (4班編制) 学部生 1年次生 194名 9月 4.5.6.7日
実地教育 観察実習 (障害児教育専修) 学部生 4年次生 5名 10月23日~27日
実地教育 (障害児教育実習) 養学免取得希望者 22名 10月30日~11月10日
(障害児教育専修) 学 部 4年次生 5名
介護等体験 (運動会) 学部生 2年次生 44名 5月22日
(学校展) 2年次生 49名 11月19日
(表現会) 2年次生 32名 2月25日
(青年学級) 大学院生   48名 月1会実施で2回参加 延数
  介護等体験実習として,鳴門教育大学の他に徳島大学総合科学部の学部2年生55名を学校展(前日準備と当日の2日間)に受け入れた。

(4)特別支援教育におけるセンター的機能

  特別支援教育におけるセンター的機能として,(ア)文献・研究資料等の整備・活用・紹介,(イ)教育相談,(ウ)特別支援教育巡回相談員,(エ)徳島市障害児保育巡回指導員・徳島市特別支援連携協議会委員の委嘱等の活動を行った。
  また,職員の資質向上及びセンター的機能の一環として,夏期公開研修会(7・8月に12講座)及び継続研修会(11月より希望校と適宜実施)を開催した。このことは,本校が地域のセンター校としての役割をより機能させる機会となった。

(5)教職員

  校長・副校長・教頭各1名と教諭26名・養護教諭1名・非常勤講師1名,栄養職員1名,事務職員1名,技能職員2名(自動車運転手1名,教務助手1名)事務補佐員1名の合計36名の構成である。
小学部:3学級に各2名の学級担任を配し,学部主事と専科教諭1名が加わり9名で運営した。
中学部:3学級に担任と副担任を配し,学部主事と専科教諭2名が加わり8名で運営した。
高等部:3学級に担任と副担任を配し,学部主事と専科教諭2名が加わり9名で運営した。
なお本年度は,内地留学・病気休業・育児休業・停職者等の対応のため,期限付き教諭・非常
勤講師で対応した。
  養護教諭における医療的ケアーについて,本校においても様々な疾患や発作時の緊急時に対応したり,常時の肥満児の指導,各学部ごとの遠足・校外学習・修学旅行等への引率があり本年度も多忙であった。複数の養護教諭や看護師の配置がなされている県立障害児諸学校に準じて今後の検討課題である。
  平成14年度から栄養職員が配置され,独自の給食献立や栄養指導などに当たっている。

(6)施設・設備

  教育環境の改善と耐震化を含めた工事がなされた。17年度は,体育館とその関連工事で,用具倉庫の新設と校門から玄関のカラー舗装,さつきの植樹がなされた。しかし,校舎は36年が経過し部分的な修理や改修を繰り返し整備をしている現状である。耐震工事にともなう早急の改修工事が望まれる。
  なお、今年度は暑さに敏感に反応する児童のため,小学部棟リズム室にエアコン2基を設置した。

(7)安全管理の状況

  本校の児童生徒の実態から常に安全教育の充実に努めてきているが,防犯対策等の視点からも実践的な力をつけるべくハード・ソフト両面から検討を加え充実させている。
ア  防犯監視カメラの増設(正門と南門及び小学部庭園周辺の他,校舎北側の校舎とフェンスの間を監視するためにカメラを増設 計4台設置)
イ  警備員の配置(登校時刻から下校時刻まで警備員による入校者のチェックと校内巡視 継続)
ウ  防犯メガホンの設置(防犯と避難誘導のため各所に携帯用メガホンを設置)
エ  危機管理マニュアルによる訓練を次のとおり実施した。
対象 種      別 実施月 備考(実施回数)
児童
生徒
職員
不審者侵入を想定した訓練 7・2月 (2回)
スクールバス乗降避難訓練 4・9月 (2回)
地震時の避難訓練 6・1月 (2回)
火災時の避難訓練 5・11月 (2回)
交通安全教室 10月 (1回)
職員 火災報知器・スクールバス非常口取り扱い研修 4月 (1回)
救急法講習会・AED取り扱い講習会・放水訓練 8月 (1回)
救助袋取り扱い研修 9月 (1回)
  交通安全指導や日常の事故等への安全指導は学部・学級において適宜指導した。
  また,17年度購入のAEDの取り扱いについて継続研修をした。

(8)その他

○創立40周年記念行事
  本年度は,本校創立40周年であり,運動会・学校展・表現会等の行事を「記念行事」と位置づけ,全校で祝った。祝賀行事は,「創立40周年記念学校展」として開催した。オープニングには,大学・各附属校園その他関係機関から関係者多数の出席の元,40年を振り返るスライド視聴の他,記念モニュメントの披露や,各学部児童生徒による和太鼓演奏,附属小学校児童らによる合唱が花を添えた。
  記念誌「杉の子の40年」を発刊した。
最終更新日:2010年02月17日

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