自己点検・評価報告書 (自然系(理科)教育講座) 清水宏次
報告者 清水宏次
1.学長の定める重点目標
1-1.大学の活性化を目指す教育活動
(1)目標・計画
- 少人数の学生が相手であるから、学生との対話を通じて、授業する者の意志と授業を受ける者との意志交換が可能である。したがって、授業の目的・授業の内容について学生の要求に応じる一方で、授業する者はさらに一段階以上の高い水準を要求することが当然であることを学生に認識させる。問題提示と解答要求を常時口頭で行う。その場合、手を変え品を変えていろいろな角度から質問を行い、学生は多角的に物事を思考し、判断することを習得出きるようにする。また、自と他を絶えず考慮することで、自分を点検する習慣を身につけてもらい、一人前の社会人になる基礎作りを要求する。やる気というものはこれらから自ずと生じる筈である。ただし、受け持ちの授業科目は限られているので効果が学生にどのように表れているのかは分かりようがない。
- ヒトは自分の現在の能力を知るには、何らかの形で他者から批判を受けなければならない。学生が授業する者も当然そのような関門を常にくぐり抜けているものと判断しているならば、授業の成果を試験という形で評価することを受け入れるに違いない。試験の目的を事前に提示して、その上でできるだけ良問を課し、できるだけ妥当な採点による評価をすれば、試験を忌諱しようとする学生は少ないと思われる。試験結果は学生にかなりの関心があるし、他者の試験結果もかなり興味をもっている。4年生の授業ともなると、学生は就職運動で多忙であったり、就職が内定しておったりして、欲しいのは単位であって知識とか技術ではない場合が多い。彼らには社会人に必要と思われる事項の理解度を口頭試験か筆記試験で試すしかない。
(2)点検・評価
- 授業は目標・計画通りに実施できたと思う。問題は学生が質問にほとんど対応できず、基礎知識の無さと学力不足を見せつけられた。学生によれば授業時間外に大学レベルの生物学を学習する時間を取れないと言う。折角授業時間に向学心に点火してもその日のうちに火は消えると言う訳である。教員養成系大学での教科に係わる専門的授業をどうするかはいつまでたっても課題とされない。修士課程学生にいたっては高校レベルの生物学的知識の皆無な者が受講する始末で手に負えなかった。
- 学生からの要求はほとんどなく単位が取れればそれでよしとするようである。内容に関する質問もほとんどなかった。試験をするにも受験のために欠席する者も居て結局はあまり意味のないレポートによる評価となった。もっともここまで基礎知識と基礎学力がないと何を試験すればよいのか困る。大学院生については、あまりにも個々人で基礎知識および基礎学力に差がある上に、興味の対象も個々人で大きく異なるのでこれも何を試験して良いのか分からず、レポートによる成績評価に切り替えた。試験が出来ないことは誠に残念であるが、何度試験をしても成績が上がる見込みがないと思われる学生もいて授業と教員採用試験が直接関係しないとなると専門科目の試験実施は難しいのかも知れない。
1-2.学生支援、地域連携活動
(1)目標・計画
- 就職指導や課外活動などの学生支援:これまで通りに、卒業研究指導学生および担当クラスの学生については、学生の相談に乗り、出きる限り希望を実現できるように協力し、指導する。そのためには、学生との対話がいつも可能なように出きる限り研究室と実験室で過ごす時間を多く取る。
- 地域貢献(教育・文化活動etc):要請があればこれまで通りに出きるだけ協力していく。
- 国際協力:学生からの希望が有ればこれまで通りに指導あるいは協力をしていく。
(2)点検・評価
- 週に2回、課外時間を利用して、生物学の基礎について記述した英文による教科書と遺伝性貧血症マウス(hea/hea)についての英文論文(Blood, 2004,104:1511-1518)の講読を指導している。また、しばしば学生の卒業研究に必要なマウスの飼育を援助している。これらの時間を通じて学生との意志疎通が出来ていると思っている。
- 徳島県立城南高等学校からの依頼を受けてSSHを生物学実験室で1コマ行った。テーマは「マウスの外部形態観察」ということで、麻酔して目を覚ます様子のないマウスをかなり興味深くためつすがめつ観察していたので、この授業は成功したと思う。
- 外国人留学生あるいは学生からの指導要請はなかった。
2.分野別
2-1.教育・学生生活支援
(1)目標・計画
あくまで学生との意志疎通が滞る事の無いように、これまで通りに学生との対話および課外の学習指導を通じて学生の希望が叶えられるように指導をする。
(2)点検・評価
週に2回、課外時間を利用して、生物学の基礎について記述した英文による教科書と遺伝性貧血症マウス(hea/hea)についての英文論文(Blood, 2004,104:1511-1518)の講読を指導している。この時間を利用したり、マウスの飼育を共同でする折りに、就職活動について助言をし、学生が教員採用試験を受けるように指導した。
2-2.研究
(1)目標・計画
- 自然系生物学の大学教員として、他大学の生物学教員にそれほど劣らないように、国際的によく読まれている専門誌に論文を発表することを第一の目標とする。論文発表での質と量はともに専門学部の教員にはどうしても及ばないが、それなりの存在を示す研究成果を出したい。
- 学生の研究については、これまで通りに研究に興味を示し、継続したい者があればさらに研究を続けることが可能なように進学の助けをする。
(2)点検・評価
- 国際誌として広く読まれているUSAのHuman Biologyに論文が掲載された。これは大学院生と学生の協力による共同研究の成果である。現時点では未だ出版されていないが、2006年12月号に掲載される。
- 高等学校教諭が修士課程での成果を論文原稿にして「生物教育」に投稿中である。
2-3.大学運営
(1)目標・計画
これまでと同様になるだけ、大学運営には直接関わらず、教育と研究がすべての教員生活を続けたい。
(2)点検・評価
一応、大学院教務委員会副委員長を1年間無事務めた。施設整備委員会も欠席することなく参加した。
2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等
(1)目標・計画
- 附属学校・社会との連携については、これまで通りに、要請があれば協力するが、こちらからは何も働きかけない。
- 国際交流についても、これまでと同様に、要請があれば学生の側に立って協力を惜しまないが、こちらからは何も働きかけない。なお、研究に関する国際交流は共同研究の形で今後も継続していく。
(2)点検・評価
- 以前と異なり附属学校・社会との連携に携わる同僚が講座内で格段に多くなったので、この1年間難の要請もなく、こちらからも何の働きかけもしなかった。
- 国際交流についても要請もなければこちらから要求することもなかった。これも、講座内での同僚の活躍によるものと考える。
3.本学への総合的貢献(特記事項)
大学教員が果たす役割は一にも二にも学生を教育し指導していくことにある。直接社会に貢献するとか地域に貢献するとかは本人の専門性によるものである。大学での教育はあくまで教員の研究を通じて行うものであり、生物学を専門とする教員は日本人としてごく当たり前のように国際誌に論文を発表することが先ず第一である。これによる世の中への貢献が十分で有れば、余力次第で研究成果を社会に還元したり、社会人教育に参加したり、地域発展事業に成果を発揮すればよい。ただし、大学教員の専門性にはこのような活動が執筆活動以外には非常に難しい場合がある。大学教員の誰でもが社会に、地域に、あるいは企業に直接貢献できる訳ではないことに留意することが必要である。学問研究という真理の探究の場では直接現在の世の中とは係わらないものがあって当然である。
最終更新日:2010年02月17日