自己点検・評価報告書 (社会系教育講座) 草原和博

報告者 草原和博

1.学長の定める重点目標

1-1.大学の活性化を目指す教育活動

(1)目標・計画

  • 学生の意欲を引き出し,基礎学力や応用力を形成するため,担当科目間の体系化・構造化をはかる。1年次,2年次・・・と学年進行にともなって,他者の教育実践を分析する概念・視点の習得から,自己の教育実践を反省・改善できる能力育成へと,段階的に発展してゆく内容構成を構築したい。また,本学の学生に欠ける表現力を養うため,随時プレゼンテーション等の場面をもうけたい。
  • 講義初回に配布する授業計画において,評価基準を明確に提示したい。提出されたレポート等は可能な範囲で学生にフィードバック(短評・開示)し,評価の客観化をはかる。さらに学生相互の評価の機会ももうけたい。なお,評価活動は,学生の到達度を評価するのみならず,その結果を参考に,教員の授業改善にも役立てられるべきものである。そのような観点でも,評価を活用したい。

(2)点検・評価

  • 学年段階に応じて系統的に教育実践力を育成するカリキュラムを構築した。具体的には,(1)2年次では,自分が小中高で受けた授業を振り返り,「良い授業」の条件を客観的に分析できること,(2)3年次では,「良い授業」の条件を踏まえて,実習等で授業を実践・改善できること,(3)4年次では,4年間で習得した力量を,教科教育学の理論・概念を踏まえて意味づけできることを目標に,シラバスを構成した。各講義では,15回の授業で使用する資料をあらかじめ製本して配布し(コースパケット),予習・復習しやすい体制を整えた。教育内容も見直し,発表や討議,模擬授業の機会を増やした。以上の結果,授業評価アンケートにおける受講生の満足度は,良好だった。学部の「中等社会科授業論」→評点5の割合が6割強。大学院の「社会科教育学研究」→評点5の割合が 7割強。
  • 成績評価の間主観化につとめるため,評価基準を厳密に定め,ウェブページで公開した。また学生の相互評価が可能なように,提出されたレポートを授業で紹介・評価するとともに,ウェブページでも閲覧できるようにした。

1-2.学生支援、地域連携活動

(1)目標・計画

  • とくに地域・社会貢献に重点をおいて活動を展開したい。
  • 第1に,附属学校および地域の教育関係機関との交流(教育実践・講演・研修等)の機会を得て,研究成果の積極的な還元につとめる。
  • 第2に,国内外の研究機関および企業等との共同研究(教科書開発・評価開発)の機会を得て, 研究成果を積極的に外部に発信する。

(2)点検・評価

  • 積極的に地域の教育機関との連携につとめた。第1に,附属小学校(4年3組)において4時間の授業「地図って何だろう?」を実践した。アンケートを実施したところ,児童の知的好奇心を満たせたことが明らかとなった。第2に,総合教育センターと協力して10年次研修「社会系教科における授業実践と評価のあり方」を実施した。具体例を交えた演習に対して,指導主事から好意的なコメントを頂戴した。第3に,兵庫県立西宮高校において「現代社会」の授業研究会を実施した。参観した授業の意義と改善策について,実践者と校長・教頭,引率の院生を交えて協議した。
  • 積極的に国内外の研究機関・企業と共同研究を行った。第1に,東京書籍:中学校社会科地理的分野の編集委員として,次期改訂に向けた実務的な編集作業に携わった。第2に,財団法人教科書研究センターの支援を受けて,「学習材としての社会科教科書の機能とその活用に関する研究」に従事した。イギリスの教育技能省,教育課程公社,出版社,ロンドン大学教育学部へ調査に赴き,教科書改善に役立つ情報収集と発信に努めた。第3に,日本教材文化財団の支援を受けて,「思考力・判断力を問う中学校社会科テスト問題の開発研究」に従事した。現場教員と企業編集者の共同研究に助言を行い,テスト問題の改善に努めた。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  • 学生の予習・復習に資するように,授業内容のウェブ公開をはかる。講義・演習のアウトラインや配布資料が随時閲覧できるようにしたい。
  • とくに「初等中等教科教育実践(コア科目)」は,教科指導の基礎的な知識・能力を育成する場となるように,授業内容の改善,新たな教材の開発につとめる。
  • 他の科目でも,学生の主体的学びを保障するように,レポートの提出や意見交換の場をもうける。
  • ゼミ指導の時間を使って,教員採用試験に向けた集団討論・小論文,模擬授業等の指導を行い,教職への意欲付けや環境づくりにつとめる。
  • (教職を志望しない学生に対しては)各学生の希望や適性を踏まえて,進路についてアドバイスを与え,個人の可能性を引き出すようにしたい。

(2)点検・評価

  • 授業内容のウェブ公開を行った。パワーポイントによる解説と紙資料,および映像資料は,常時閲覧できるようになっている。 http://fuji.naruto-u.ac.jp/%7ekusahara/lecture/index.html
  • 「初等中等教科教育実践(コア科目)」は,さらなる内容の更新,充実に努めた。分析対象を附属小の実践に求め,「良い授業」の条件をねばり強く探らせるとともに,類似の授業を構想,実演させた。本講義を通じて,附属小の研究・実践に対する関心を高めることができた。また,ほぼ全ての授業科目で,小課題の調査・研究とプレゼンテーションの場を設け,学生の表現力向上に努めた。
  • 教採の受験者には,ゼミの時間を使って,繰り返し集団討論,小論文の指導を行った。社会科教育ゼミ合同で,模擬授業のカンファレンスも実施した。大学院に志望者には,進学後の研究に役立つ卒論課題を与え,外国文献の読解力を培った。結果的に,2人のゼミ生は,志望通りの就職(神奈川県小学校・正規)と進学(広島大学大学院)を果たすことができた。

2-2.研究

(1)目標・計画

  • 従来から重点的に研究してきた「社会科地理の存立根拠」「地理カリキュラム」に関する成果をまとめ,学会誌・研究誌等に投稿する。
  • 共同研究として従事する予定の「市民性教育」「授業改善」「教科書構成」「教員養成」等について資料を収集,分析し,これまでの研究を深化・発展させる端緒を得たい。今年度は,国内外のヒアリングを重点的に実施したい。
  • 学校現場・メディアの実践的な問いかけ(教育問題)に対して,学問的な見地・視点を踏まえて回答した研究成果を,積極的に発信したい。
  • 学内外の研究助成の公募に応募し,学外資金の調達をはかりたい。

(2)点検・評価

  • 個人研究では,米国の「地理カリキュラム」と,日本の「地理授業開発」に関する2本の学術論文を全国学会(全国社会科教育学会,社会系教科教育学会の学会誌)に投稿し,掲載された。これまでの研究を総括する成果を,全国誌に発表できた意義は大きい。また,編者からの依頼にもとづいて,『教育実践学の構築』(東京書籍)と,『ナショナル・アインデンティティをめぐる論点・争点と授業』(明治図書)の2冊を分担執筆し,刊行された。
  • 共同研究では,科研の分担者として,(1)「アメリカシチズンシップ教育に関する理論的・実践的研究」に従事した。科研以外では,(2)「学習材としての社会科教科書の機能とその活用に関する研究」,(3)「思考力・判断力を問う中学校社会科テスト問題の開発研究」に従事した。定期的に研究会に参加し,成果を報告した((1)は2回,(2)は3回,(3)は7回)。とくに科研の共同研究では,米国のスタンフォード大学とサンフランシスコ州立大学に赴き,人文・社会科学の成果を初等中等のカリキュラムに反映させるプログラムについて調査を行った。本成果は,科研はもちろんのこと,本学の教員養成システムにも参考になるものである。
  • 学校現場が求める実践的課題にも積極的に取り組んだ。「徳島市中央卸売市場」の紹介DVDの作成に協力した経験を踏まえ,「社会科施設見学学習の改善」をテーマに口頭発表(鳴門社会科教育学会)を行った。教員の関心は高く,DVDのダビング要請が相次いだ。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  • 今年度指名された学内委員会の委員として,本学の運営に貢献したい。
  • 学内委員会と部・講座のパイプ役として,教員相互の情報の交換・共有化をはかるとともに,上位機関へのフィードバックにつとめたい。

(2)点検・評価

  • 社会系教育講座代表の就職委員として,大学運営に携わった。とくに土曜日に開催される模擬集団討論,模擬授業の指導では,審査委員として助言・指導にあたった(年間3回程度)。また,指導教員を通じて,あるいは直接学生とコンタクトをとりつつ,過年度生・学部4年生・大学院2年生の就職状況を把握し,支援室へ報告を行った。
  • 公式の就職指導以外にも,個別に依頼を受けた教採受験者には,(二次試験前に)模擬授業の指導を行った。とくに神奈川県の教採は,模擬授業の占める割合が大きい。私が指導した社会系コースの2人の受験生は,いずれも合格を果たした。
  • GPの専門委員として,応募テーマ・計画の検討に携わった。とくに特色GP,現代GPの応募書類の作成には,継続的に関与し,完成度の向上に努めた。
  • すでに採択された特色GP「教育実践の省察力をもつ教員養成」の実施委員として,評価スタンダード(社会科編)の策定に携わった。また,映像データベースシステムの試験運用に従事するとともに,学生の利用状況について,データを提供した。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

  • 附属学校教員と連携し(学部・院の演習,研究授業に向けた協議等を通じて),社会科授業構成のあり方について共同研究を進めたい。(附属学校)
  • 地域社会の教員および教育関係機関との交流の場をみつけ(研究事業,講演・研修等を通じて),研究成果のフィードバックにつとめたい。(社会)
  • 教員研修留学生等を受け入れ,本学の国際協力事業に貢献する。あわせて留学生とゼミ学生との交流の機会を設け,相互の学びあいの場としたい。(国際交流)

(2)点検・評価

  • 附属学校とは,以下のような多面的な連携が実現した。第1に,大学院の「教育実践研究」を通じて,附属中の仁木先生と連携体制を組んだ。院生による「GISを活用した地理授業」の実践には,協力して指導にあたった。第2に,附属中学校の研究テーマをめぐって共同研究を行った。公開授業に向けて,授業者にアドバイスを与えるとともに,附属中の紀要には,「子どもの認知スタイルを活かした社会科授業構成の課題」を寄稿した。第3に,大学教員として,附属小学校で授業を行った。4年3組の社会科で「地図って何だろう?」(計4時間)を指導し,専門的知見を踏まえた授業を提供することができた。
  • 地域社会の教員とは,以下のような連携が実現した。第1に,日本教材文化財団の支援を受けた「思考力・判断力を問う中学校社会科テスト問題の開発研究」では,現場教員との協働でテスト問題を作成し,その有効性を検証した。第2に,徳島県の10年次研修「社会系教科における授業実践と評価のあり方」を担当し,理論と実践の架橋につとめた。第3に,東京書籍の教科書編集作業を通じて,現場教員のナマの声に触れ,それを教科書の改訂作業につなげることができた。
  • 教員研修留学生を1名(ミャンマー出身)受け入れ,指導した。とくに社会系教育講座には,ミャンマー出身の留学生が2名配属されたため,もう1人の受け入れ先である梅津ゼミと協力し,指導体制を組んだ。一連の研究成果は,研修報告書「ミャンマー・日本・米国社会科の比較研究-地理カリキュラム編成と教育工学を活かした学習指導-」に結実した。
  • 教員研修留学生には,必ずゼミ生(学部生2名,大学院生2名)の前での研究発表を義務づけた。その結果,日本人学生との交流の機会が保証されるとともに,日本語を使った質疑応答の能力が培われた。(意図したわけではないが)質疑応答の過程で,日本とミャンマー両国の教育制度と文化について,我々の理解が深まった点は特質に値する。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  • 本年度は,評価項目の全分野にわたって,バランス良い貢献ができた。教育・研究,学内貢献,地域社会貢献は,当事者の年齢次第では,活躍の幅も限られてくる。本年度は,私の経験の乏しさにも拘わらず,良き学生,良き同僚,良きカウンターパートに恵まれ,多種多様な仕事に携わることができた。文字通り「総合的に」本学に貢献できたと思う。
  • とくに附属学校との連携(小学校での授業実践),講義・演習を通じた教育実践力の育成,学生の就職支援では,大きな仕事ができた。また,鳴門教大学の研究者として成果を公表することで,本学のアカデミック・プレセンスの向上に,間接的なりとも貢献することができた。
最終更新日:2010年02月17日

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