1.総論

  国立大学法人として4年目を迎えた本学は,教職大学院の設置,大学院組織の改組等,今後の大学運営の基礎となる改革を行いつつ,中期目標・中期計画の達成に向けて,法人として取り組むべき内容を明確にし,以下のことに取り組んだ。

平成19年度の主な取組

新たな教育ニーズへの対応

  大学院の定員充足に向け,教員免許を持たない修士学生に教員免許状を取得させるための長期履修学生の入学を平成17年度から実施しているが,附属校園での4週間の教育実習の受け入れが困難となったため,平成19年度から板野郡内の3町(松茂町・北島町・藍住町)の小・中学校に教育実習の受け入れをを依頼し,承諾を得た。平成20年度以降においても,同町での教育実習生の受け入れについて協議を行い協力を得た。

特色ある大学教育支援プログラムの実施(2年目)

  教育研究活動で,文部科学省が行う国公私立大学を通じた大学教育改革の支援プログラム(特色GP,現代GP,教員養成GP)に関する取組として,「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」に「教育実践の省察力をもつ教員養成 -教育実践力自己開発・評価システムを組み込んだ教員養成コア・カリキュラムの展開を通して-」が採択され,2年目に入った。教員養成教育において重要な要素となる授業実践力の向上を中心とした様々な試みが認められたものである。取組の具体的な柱は,(1)教育実践力の中核を授業実践力ととらえ,その能力を評価する客観的な尺度となる授業実践力評価スタンダードを開発すること,(2)授業実践力評価スタンダードを枠組みにして「教育実践学を中核とする教員養成コア・カリキュラム(鳴門プラン)」を実践し評価すること,(3)授業実践力評価スタンダードと「知の総合化ノート」及び授業実践映像データベースと組み合わせて,学生が自己の教育実践力を診断し,職能開発の到達点と課題を明確にできるシステムを構築しようとするものである。
  本取組は平成18年度から平成20年度まで3年間の事業である。平成19年度は,(1)授業実践力評価スタンダードの開発について,全教科科目について,評価スタンダードの原案を作成した。,(2)評価スタンダードの原案に基づき,コア・カリキュラムに試行的に実施した。,(3)前年度試行的に実施した「知の総合化ノート」を本格化させるため,全学生・教員を対象とした使用説明会を開催するなど,利用できる環境を構築した。

現代的教育ニーズ取組支援プログラムの採択

  教育研究活動で,文部科学省が行う国公私立大学を通じた大学教育改革の支援プログラム(特色GP,現代GP,教員養成GP)に関する取組として,「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」に「遍路文化を活かした地域人間力の育成 -歩き遍路による「いたわり」情操教育と遍路地域の「まるごと博物館」構想-」が採択された。遍路文化という,地域の文化事業の支援を通して優れた教員の養成と定着を図ろうとする試みが認められたものである。取組の具体的な柱は,(1) 遍路地域の「まるごと博物館」構想による地域文化活動,(2)歩き遍路体験による「いたわり」情操教育,(3)これらの文化・教育活動の発信の3分野からなる。本学の教育課程を拡充し,地域連携によるワークショップとして具現化することで,地域社会での取組も含めた遍路文化発信のハブ的機能を果たすものである。
  本取組は平成19年度から平成21年度までの3年間の事業である。平成19年度は,(1)「まるごと博物館」構想による地域文化活動について,徳島県名西郡神山町の「大粟神社」が所蔵する文書・棟札の調査や大分県,和歌山県等に赴き古文書の文献調査を行った。(2)「いたわり」情操教育について,高校と大学が連携し,高校生と大学(院)生が交流することによる人間形成プログラムの開発・構築をするため,歩き遍路体験を行い,異年齢集団が協働して活動することにより,コミュニケーション能力や他者理解能力を高め,社会性の育成をはかることができた。(3)文化・教育活動の発信について,一般市民から歩き遍路体験希望者を公募し,本学の教員及び大学(院)生がサポートし,遍路道に所在する墓標,案内板等地域の歴史や自然に対する理解を深めた。また,平成19年度の取組について,講演会を開催し,外部から四国遍路文化に造詣の深い講師を招聘し講演を行ったほか,本学の取組の現状報告を実施した。

専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラムの採択

  教育研究活動で,文部科学省が行う国公私立大学を通じた大学教育改革の支援プログラム(特色GP,現代GP,教員養成GP)に関する取組として,「専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム(専門職GP)」に「教育の専門職養成のためのコアカリキュラム -地域との連携を通して院生の授業力向上をはかる大学院改革-」が採択された。既設大学院と教職大学院を「教育の専門職」養成課程として一体的に発展させるために,特に既設大学院のテコ入れを図る試みが認められたものである。取組の具体的な柱は,(1)教育実践フィールド研究と広領域科目のコア・カリキュラム化,(2)キャリアを異にする院生の協働的な学び,(3)専門性を生かして教育目標を実現できる力量形成,を実現する。これらの取組を通じて,鳴門教育大学が直面する三つの課題(1.既設・教職大学院の一体的な改革2.院生のキャリアの多様化への対応 3.教育現場の利益に結びつく専門教育)を一体的に解決し,院生の授業力を向上させようとするものである。
  本取組は平成19年度から平成20年度までの2年間の事業である。平成19年度は,(1)コア・カリキュラム化について,学内に本事業を推進するための大学院コアカリ運営委員会を設置し,教育実践フィールド研究に係るモデルシラバスを作成するとともに研究課題・研究テーマの公募を行った。(2)院生の協働的な学びについて,4つのグループによる試行プログラムを実施し,シンポジウム開催時に報告を行い,本事業を検証した。(3)直面する三つの課題を一体的に解決し,院生の授業力を向上させることについて,平成20年度からの実施にあたり,モデルシラバスの作成及び研究課題の公募・研究テーマのとりまとめ,試行プログラムの検証,シンポジウムでの中間報告等の実施により,本事業が計画どおり進んでいることを確認した。

コア・カリキュラムの実施

  「国立の教員養成・学部の在り方に関する懇談会」における「今後の教員養成大学・学部の在り方について」(平成13年11月)の提言を受けて開発されたのがコア・カリキュラム(鳴門プラン)である。
  平成17年度に引き続き,教育実践コア科目として,平成19年度は「初等中等教科教育実践Ⅲ」の授業を開始した。

ファカルティ・ディベロップメント推進事業の実施

  平成12年度から続けてきた本事業により,学内において,FDに対する理解や授業改善に対する関心が年々高まってきたところである。そうした中で,平成 19度においても教員養成大学である本学の重点施策の一つとして年間行事予定の中に位置づけ,ワークショップ及び学部・大学院授業の公開を実施した。
  また,学生による授業評価についても実施し,授業担当教員へのフィードバックにより,次年度の授業計画に役立てた。
  なお,昨年度に初めて学外の現職教員等にも参加していただき実施したワークショップについては,認証評価委員からも高い評価を受け,平成19年度はグループ数を倍増して実施した。
ファカルティ・ディベロップメント推進事業
(1) 授業改善のためのFDワークショップ  平成19年10月31日(水)
○「よい教師を育てる授業とは」
  10グループによりワークショップを実施
  ワークショップ参加構成員
  教育委員会関係者
  本学教員
  学生(大学院生・学部3・4年次生)
(2) 公開授業週間と特別公開授業  平成19年11月12日(月)~11月22日(木)

研究実施体制の整備

<研究費配分方法の見直し等>
  教員の教育研究,大学運営及び地域貢献等に関する業績評価に基づく研究費の傾斜配分方法を見直し,「学内貢献」及び「社会貢献」にウェイトを置き配分率を引き上げた。改定後の配分率を業績主義的傾斜配分として,平成20年度の予算配分に適用した。
<戦略的教育研究開発室>
  本学における教育・研究の推進を目的とし,文部科学省が行う「国公私立大学を通じた大学教育改革の支援」プログラム及び全学的プロジェクトによる科学研究費補助金の採択を目指し,戦略的教育研究開発室を平成18年に設置し,その実践組織として,研究開発検討部会及び科学研究費補助金プロジェクト検討部会を設置した。研究開発検討部会ではプロジェクト獲得のため,企画・立案,申請を行う支援体制を整備した結果,3件採択された。
  また,科学研究費補助金プロジェクト検討部会では,科学研究費補助金支援アドバイザーを設置し,研究計画作成時に希望者にアドバイスを行った。
<知的財産>
  本学における知的財産を,創出,管理及び活用するために,平成18年度知的財産室を設置するとともに,より潤滑な活動と運営のため,平成19年4月2日に徳島大学知的財産本部と知的財産関連業務等に関する協定を締結した。
  また,本学の知的財産の技術移転に関して,四国TLO(株式会社テクノネットワーク四国)と平成19年4月2日に協定を締結した。
<産学連携>
  産業界との共同研究を積極的に行う体制を確立するため,知的財産室において,学内におけるシーズ情報について,調査し,それをWebに公開した。
<研究環境の充実>
  • ウェブページの充実
    本学ウェブページに研究紀要,教育支援プロジェクト等各種の研究に関する事項(公募対象等)を掲載し,また,国立情報学研究所の電子図書館サービスやJST科学技術文献データベースへの収録等データベースを活用した情報発信に,積極的に取り組んだ。
  • 研究時間確保のための方策
    研究や労働意欲を高め,慢性的なストレスを軽減させると同時に,省エネ対策,プリメンテナンス,安全対策として有効である一斉休業によるリフレッシュ期間を設けることを18年度策定の「研究環境の充実のための方策」に提言し,人事委員会等で検討した。その結果,平成19年度から,8月13,14,15日を全学一斉休業として実施し,長期休暇取得が可能となった。
<研究上の不正行為等への対応について>
  研究上の不正行為及び不正使用への対応として,必要な関係規程等を作成,告発窓口の設置等の整備を行った。

時限付センターの恒久化

  現代社会のニーズに応えるべく,時限的に設置した「小学校英語教育センター」及び「教員教育国際協力センター」の活動状況,業績及び今後の活動計画等を総合的に評価した結果,両センターとも恒久的施設とすることを決定した。

地域連携

  本学の教員が,無料で学校教員,児童・生徒,保護者を対象に,講演,授業実践,指導方法や課題解決の指導等を行う「教育支援講師・アドバイザー等派遣事業」を積極的に推進している。また,本制度未登録者に対し,積極的な登録を推進しPRを行った結果,登録者割合は全教員の78.8%(目標値75%)となった。
  鳴門市の子ども達のための“美術の広場”を築き,次代を担う子ども達の教育を地域ぐるみで活性化させるために,大塚国際美術館及び鳴門市との連携による地域文化教育プロジェクト(N*CAP)を立ち上げワークショップを開催するなど,小学生を対象に多様な鑑賞・表現活動を行った。

管理運営

  学長の指示する特定分野(教育連携,研究開発及び入試広報)に関してサポートを行い,円滑な業務を遂行するため,学長補佐制度を導入することとし,3人の学長補佐を命じた。また,平成20年度からは,新たに2分野(企画・評価及び学生支援)の学長補佐を命じ,5人体制とすることとした。
  また,平成20年度から,附属学校(園)長を従来の大学教授の併任から,徳島県教育委員会から推薦を受けた者を登用することで,学校運営において現状以上のリーダーシップを発揮し,組織的・機動的な学校運営が行える体制とした。

教育研究組織の見直し

  専門職大学院の設置準備を進め,平成19年度に専門職学位課程(教職大学院)の設置を申請し,平成20年度から「設置可」となった。
  教職大学院の設置にも関連して,大学院教育の実質化を図るため,平成20年度から既存の修士課程の再編を行うこととした。また,従来の講座制を廃止し,学問領域に応じた4つの教育部(基礎・臨床系,人文・社会系,自然・生活系,芸術・健康系)に改組し,あらゆる教育活動が柔軟かつ弾力的に実施できるようにした。

助教の配置

  学校教育法の改正に伴う大学教員の新職階「助教」の取扱いについて,検討を行い大学の教育研究活動の充実を図る観点から,助手の意向及び研究業績をもとに助教への移行について審議し,その結果を踏まえ,助手全員(5名)を助教に配置換し,授業を担当させることとした。

業務運営の効率化

  「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)において示された総人件費改革の実行計画を踏まえ策定した人件費削減計画(定員削減数を含む。)に基づき概ね1%(24,198千円),5人の削減を実施した。平成18年度からの累積削減率は7.6%(221,621千円)である。
  また,事務組織のフラット化,組織編成の柔軟化及び組織変更への迅速化を図るため,チーム制(係の統廃合を含む。)を平成19年度から導入した。

財務内容の改善

<外部資金の獲得>
  全学的体制(戦略的教育研究開発室の設置)で外部資金の獲得に取り組み、「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(21,153千円)及び「専門職大学院等教育推進プログラム」(10,379千円)に採択された。また、独立法人国際協力機構(JICA)からの「アフガニスタン国教師教育強化プロジェクト」(3年次)及び「アフガニスタン国教師教育強化プロジェクトフェーズ2」(H19~H22)を民間のコンサルティング会社と共同で受託し、外部資金の獲得に努めた。
<収入事業の改善>
  財務・コスト分析を行い、収入を伴う事業等(入試・学生募集、公開講座、職員宿舎、学生宿舎、非常勤講師等宿泊施設、文献複写、心理教育相談)のうち、職員宿舎については、引き続いて入居募集や宿舎改修を行うとともに、入居基準の緩和について検討を行った。また、学生宿舎については、世帯棟14室、単身棟 21室の改修を行うなど、改善策を講じた。
<経費の抑制>
  「業務コスト節減対策」に基づき,省エネ機器への切換、印刷物の電子化、発送先の見直し及び電話料金割引率の見直し等を行った結果,管理経費について約3,000千円(対前年度比1 %減)の節減が図られた。また,新たに、職員の心身の健康の維持・増進のため、学長が指定するお盆の時期の3日間、本学の業務を全面休止する「夏季一斉休業制度」を導入した。これにより、管理的経費(電気、ガス、水道等)を約30万円の削減が図られた。

その他施設整備に関すること

<施設整備委員会の活動>
  平成19年度に開催された委員会での審議に基づき、平成20年度施設整備費の概算要求事項、計画的な施設整備、施設の利用状況調査、新組織を見据えたスペースの有効活用、及び構内環境美化等を実施した。
<新たな整備手法の実施>
  目的積立金により、バリアフリー対策工事として本部棟及び講義棟の身障者用エレベーター等の整備を行った。

自己点検・評価

  教員が定めた目標に対する進捗状況(上半期)等を総合的に評価し,12月期の勤勉手当に反映させる中間報告制度を導入,実施した。
  また,教育・研究の質の向上や改善について評価を行うため「教育評価部会」(学外者3人),「研究評価部会」(学外者2人)を設置し,外部者を含めた評価を実施することとした。
  「教育評価部会」では,評価結果及び提言事項を報告書としてまとめ,学長に提出した。提言事項については,必要な措置を講ずることとしている。
  さらに,自己点検・評価制度における評価結果等を活用し,優秀な教員に対してインセンティブを付与し,さらなる教育研究活動の活性化を図るため,教育部門,研究部門それぞれに「ベストティーチャー賞」(賞状及び副賞(教育研究費20万円))を授与する「優秀教員表彰制度」を設けた。
  卒業生・修了生及び教育関係者の意見を把握し,教育の質の向上及び教育研究体制の一層の充実を図るため,平成15年,平成17年に引き続いて,アンケート調査を実施した。その集計・分析結果をウェブページで公開するとともに,各種委員会において反映させるべき事柄について検討することとした。
  また,平成19年度以降においては,経年データを蓄積し,引き続き大学運営に反映させるため,毎年3月に卒業生・修了生に対してアンケートを実施することとした。

認証評価

  大学評価・学位授与機構において,大学機関別認証評価を受け,大学評価基準を満たしているとの評価結果を得た。
最終更新日:2010年02月17日

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