鳴門教育大学の教育理念・目標

鳴門教育大学の目標と今日的課題

目 標

  21世紀に生きる人間として豊かな教養を培い,地球的視野に立って総合的に判断できる力量の形成に努めるとともに,教育者として子どもに対する愛情と教育に対する使命感を醸成し,教育に関する専門的知識を深め教育実践力を身につけることによって,専門職としての教員を育成することを目指す。

今日的課題

  鳴門教育大学は幼児教育及び義務教育の教員を養成する学校教育学部と主として現職教員に高度な研究・研鑽の機会を確保する大学院学校教育研究科をもち,学部と大学院を通じて教員を育成するための専門大学である。
  学校教育に携わる教員は子どもの育成に責任をもち,学校における教育課程に従って意図的計画的に教育活動を展開しているが,子どもの教育という重要性に照らして,先ずもって教員自らが幅広い人間性をたえず陶冶しなければならないのである。これなくしては子どもの人間形成に従事するための基本的な資質に欠けるものと言わざるを得ない。教員は優れた人間性を基盤として教育に関する専門的知識や指導力を身につけ,子どもの育成のために実践することを職務とする。子どもの育成に際してはたえず人間としての在り方についての探求を行い,より望ましい方向に子どもを導き高次の価値を得させることを目指している。


  子どもの教育は現代社会の状況の中で行われるものであるので,社会の変化やそれに伴う子どもの変化によって起因する様々な教育課題から教育活動を切り離すことはできない。そこで,真の教育活動を展開するためには現代社会の動向や子どもの心的状況を的確に把握し,それぞれが投げ掛ける課題を解決し得る能力の涵養が現代の教員に要請されていることに留意しなければならない。
  それでは先ず,現代社会の動向とそれによって起こされた教育課題とは何であろうか。
  20世紀後半からの世界的動向として,国際化,科学技術の進展,情報化等が加速しているが,他方,環境問題等の地球的問題群が噴出し,これらに対応した在り方や問題の解決が緊急の課題になっていることが指摘できる。大学審議会答申では21世紀初頭の社会状況を展望して「不透明な時代」と予想している。これは,社会の変化が進行し,事態は流動的であり必ずしも安定した時代は未だ到来しないであろうという見通しを示している。とはいえ,地球的規模での経済・文化交流は拡大し,国際社会はますます相互依存の度合いを深めていくであろう。他方,環境・資源・人口等の地球的問題群が深刻となり,それらの解決にあたっては国際社会の協力を必要とし,理念的には人間と人間,ないしは人間と自然との共生の考え方が大切になってくる。科学技術の進展や情報化の進展は新しい産業構造への変化をもたらし社会の発展に大きく資することになった。しかし,科学技術や情報科学と人間の心情や感性との調和を図ることに留意する必要がある。また,社会においては高い倫理性が要求されることとなる。


  このように変化の激しい社会において必要なことは,自ら課題を発見し自ら考え正しく判断して問題を解決することによって主体的に生きる力を身につけることである。それとともに,他人と協調し,他人を思いやる心や感動する心など豊かな人間性をもった社会の形成者を育成することである。そして,これからの人間は伝統的文化を継承するとともに新しい文化を創造する能力をもち,21世紀のグローバル社会を支え発展させるだけの力量を備えなければならない。
  大学審議会答申はこうした未来予測のもとにより豊かな社会を拓くため学術研究の進歩を促すとともに,学際化・総合化を図ることの必要性を指摘し,大学における『知』の再構築を提起している。
  この大学審議会答申はそのまま学校教育に当てはまるのである。すなわち,教育課程審議会は社会の国際化や情報化,科学技術の発達や環境問題等,現代社会の急激な変化に対して,主体的に立ち向かいこれら諸問題と人間社会や人間そのものとの関連について考え,これからの社会や人間の在り方を探究する態度を養う必要性を認識している。その結果,従来の教科,道徳・特別活動に加えて新しい教育活動として「総合的な学習の時間」を創設することを提起した。この教育活動では教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習を展開することとなるが,これはまさに,“総合の知”を求める学習であると言うことができる。
  こうした知の総合化による問題の解決能力は,現代社会を生きる力として教育上重要な位置をしめることになってきたのである。


  他方,最近の子どもの行動の異変から起こる問題が大きくクローズアップされるようになり,新たな教育問題として解決がせまられていることに注目しなければならない。
  近年,子どもの生活や遊びの変化,身体の発達や心の変化に由来する問題,学校における「いじめ」・「不登校」などの「教育病理」,さらには校内暴力や学級崩壊などの「学校荒廃」等に教員一人一人がどのように対峙していくべきかということが問われている。これら教育問題の解決に当たっては教員が自ら胸襟を開き,子どもへの共感的理解を深め,子どもが心を開くまでねばり強く接近していくことが大切になる。そのために,精神や心理の科学的手法を応用したり,カウンセリングの心と技法を駆使するとともに,人間的な教育指導を伴う必要がある。
  また,学校において教員と子ども,子ども同士の好ましい人間関係をつくり,子どもに分かる授業を工夫することによって学級や学校が温かみのある教育環境となるように努力することが大切になる。また,学校は家庭や地域社会と連携を密にし,協力しながら子どもの育成を図るように留意しなければならない。
  現代の教員はこれまで述べたように現代社会の動向や子どもの状況が投げ掛ける諸問題に適切に対処できる資質・能力・心情を必要としているのである。学校教育においては大部分の時間を教科の授業に当ててきたが,複雑な社会や子どもの心的状況を視野に入れ,相互関連的に知をはたらかせ,心を交流させて問題を解決するための時間をいままで以上に取るように心掛けねばならない。
  したがって,教員養成に際しては,従来からの座学を主とする教育課程を改め,子どもとの触れ合いや教育実践を重視した教育活動に比重をかけ,教育課題を解決する能力を伸ばすようにすることが要請されている。
  鳴門教育大学は,学生を教員として育成するに当たって,人間教育の基本を踏まえながら上記のような社会や子どもの変化のもたらす今日的課題に応えることのできる教師を育てるためここに教育目標を設けることとした。

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