自己点検・評価報告書(佐古秀一)

報告者 佐古秀一

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

私の教育の中心となる,教職大学院の教育活動について述べる。
教職大学院がねらいとするスクールリーダー教育において,私が担当する学校経営,学校組織に関する授業においては,これからのリーダー教員にとって不可欠な組織マネジメントの理論と実践の両面において力をつける授業を構成,実施する。
○ 単なる組織マネジメントのスキルの習得に終わるのではなく,学校組織に関する基礎的な理論と概念,及び学校評価や学校組織開発に関する汎用性を有する方法論を取り扱う。
○ 授業を通して理解した知識,方法論を,自校の診断と改善に役立たせることをねらいとした課題等を組み込み,知識の活用,実践に留意する。
○ 一般的な講義だけでなく,事例研究,集団討議等を授業方法として組み込む。また,とくに実務経験を有する教員とのTTに取り組む。
○ 成績評価については,教職大学院の到達目標に準拠して授業のねらいを明示した上で,それらの到達目標の観点別に,受講生の習得度合いを評価し,成績評価に活用する。
○ 授業改善に関しても,上記到達目標に準拠した授業評価を実施し,理論と実践の両面において,担当する授業の成果と課題を明確にしていく。

(2)点検・評価

○ 教職大学院において,関係する授業については実務家教員とのTT方式の授業を実施した。
○ 前期の共通科目,後期のコース別の専門科目のいずれにおいても,実際の事例をもとに講義方式,集団討議等を組み込んだ授業を展開して,概念的理解のと共に,実践的な学校改善方法論に関する学習を進めるようにした。前期共通科目「学校経営の実践と課題」の授業満足度の平均得点は4.5(5点満点)であった。
○ 教職大学院の到達目標に即した授業のねらい(到達目標に準拠した授業の観点)を設定し,それらの観点に関する授業評価を受けた。さらに,受講生に対しては,観点別の評価(観点別の学習到達度に関する評価)をも実施した。このようにして具体的な授業の計画,実施,評価にわたって,教職大学院の教育の質保障をはかる取り組みを,担当する授業において行った。
○ また,教職大学院の実習指導に関しては,P1生3名,P2生4名を主担当として指導し,県外院生を含めて,時間的な負担は大きいが,全ての院生に対して実習の巡回指導も計画通り実施し,実習校(現職院生の置籍校)の校長等との関係構築を図り,学校側の実習に対する理解と支援を形成するように努めた。院生の実習を通した学習が充実するように取り組み,本学教職大学院の特長でもある学校改善と実習との一体的な実現という教育理念の実現に向けて,努力した。

☆以上のように,教職大学院の担当教員として,高度専門職業人の養成という本学のねらいに即して自ら担当する授業及び実習等について取り組み,一定の成果をあげたと思われる。さらに授業等の改善をはかり,理論と実践の両面において専門性を有する教員の育成に向けて取り組みたい。

 

1-2.大学教員としての社会貢献

(1)目標・計画

私は学校組織開発に関する理論的・実践的研究を推進しているが,この成果等を以下のような方法で,社会(とくに学校や教育委員会)に還元する。
○ 学校,教育委員会等の研修を積極的に支援することで,研究知の還元を図る
○ とくに,学校管理職育成型の研修プログラムを教育委員会等と協力し合いながら開発し,それを実践する。
○ 教職大学院の大学院生の実習指導を通して,院生の置籍校の学校経営,教育活動の改善を支援する。

(2)点検・評価

○ 研究の社会的還元については,a. 学校・教育委員会等に対する支援と,研究成果の公表という2つに取り組んでいる。この欄では前者を報告し,後者については分野別研究の欄で報告する。
現在学校組織開発理論の構築というテーマで研究をすすめているが,この成果を具体的な学校組織マネジメントへの応用することで,教育委員会等の研修の支援や研修プログラムの共同開発・学校支援という形で研究知の社会的還元を積極的に行っている。これについては,これまで高知市教育研究所と共同して教頭研修のプログラム開発と実践を継続的にすすめている。また本学の公開講座の講師,徳島県教育委員会10年次研修,広島県教育センター10年次研修の講  師等をつとめ,研究知の社会的な還元を実施している。あわせて,徳島県内の学校だけでなく,三重県鈴鹿市等県外の学校に対しても,校内研修等の支援を通して,研究知の還元を行うことができた。
○ 教職大学院の実習指導を通した学校改善への支援については,P2生の置籍校への定期的な巡指導とともに,校内研修の支援等を実現できた。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

○ 教職大学院の実習が効果的に遂行できるように,教職大学院の院生の置籍校との連絡調整,支援等を積極的に行う。
○ 実習指導については,個々の院生の進捗状況に対応しつつ,計画的な指導を行う。

(2)点検・評価

○ これまでにも述べてきたように,教職大学院で主担当であった院生(P2,4名,P1,3名)については,遠隔地の院生を含めて,実習実施に係る連絡調整,巡回指導,学校支援を予定どおり順調に進めてきた。また,異校種実習に関しても,松茂町内の学校及び鳴門市内の学校等の連絡調整を行い,大学院生の実習の支援を行ってきた。
○ 担当する院生の実習指導については,時間の配分に苦慮しながらも,計画的かつ個別的に実施してきており,順調に進展している。

☆ 学長の示した重点目標欄に記述した事項を含めて,順調に実施できた。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

私は,学校が自らの教育活動の改善に組織的取り組むことができる場として機能することを実現すること(内発的な改善力を持つ学校づくり)をねらいとして,学校組織の現状と課題の分析(学校組織特性の理論的・実証的研究)と,学校における組織化を具体的に支援するための方法論の開発的研究(学校組織開発に関する実践的研究)の2つを研究の柱として取り組んでいる。近年は,学校組織開発に関する実践的研究に重点を置いて研究をすすめており,学校組織開発に関する基本的なモデルの構築とそれを実際に学校に導入適用した研究を蓄積している。
22年度に関しては,20年度からはこの研究課題について科研費を得ているので,研究の推進につとめ,これまで蓄積してきたが研究成果等を公表するとともに,この研究をさらに推進し,教育や学校での実践化をすすめたい。
今年度に関しては,学校組織開発に関する基本モデルとその実践事例,それらの知見を活用した研修プログラムの開発と実践に関する研究論文を発表することにつとめたい。

(2)点検・評価

○ 自らのテーマである,学校組織開発理論の構築に関しては,本年度も継続して科研費を受けることができ,研究を推進した。
○ 論文としては,本年度には,「学校における内発的改善力を高めるための組織開発(学校組織開発の展開と類型-価値的目標生成型の学校組織開発の展開をふまえて-」(共著)を本学の研究紀要に掲載した。また,学校組織開発理論に基づく組織マネジメント研修のプログラム開発に関して,「学校組織開発理論に基づく学校組織マネジメント研修プログラムの開発-基本カリキュラムとワーク シートの改善を中心として-」(単著)を,本学の学校教育研究紀要に掲載した。また,「学校組織開発の理論と実践-根拠に基づく学校組織変革の動態の知見の体系化と実践化の試みとして-」を,学校経営研究に投稿した(現在印刷中)。このように本年度も,自らの研究テーマに関して知見の蓄積を着実に進展させた。
○ また平成22年1月には,教育問題を考察するための重要論文を精選したリーディングス(藤田栄典・大桃敏行編)『リーディングス日本の教育と社会⑪学校改革』(日本図書センター刊)に,単著論文「民間的経営理念及び手法の導入・浸透と教育経営」が集録され,研究知のさらなる公表にもつながった。

以上のように,本年度の教育活動も計画以上の成果をあげたと思われる。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

○ 22年度は,基礎・臨床教育部の部長となる予定であるので,部の円滑な運営に取り組むと共に,本学の発展のために,大学の各種委員会/会議に積極的に関与したい。
○ 教職大学院においては専攻長を交代するが,新専攻長をサポートして,専攻の課題(定員充足など)に取り組みたい。

(2)点検・評価

○ 本年度以降,基礎・臨床部の部長として,総務委員会,教育研究評議会の報告等を丁寧に行い,本学の置かれている状況や課題について,部所属教員にも理解してもらえるように腐心した。また部の意見の集約にもつとめ,それらを総務委員会や教育研究評議会に反映するようにつとめた。

○ 教職大学院の運営に関しても,とくに教育委員会との連携構築に力を注いできた。具体的には,徳島県教育委員会との間で,徳島県教員人材育成連絡協議会を起ち上げ,その運営に努力した。これによって,徳島県教育委員会との間で,現職教員の大学院派遣,教職大学院修了生の処遇問題等,教育委員会と教職大学院の間の懸案事項について,率直な意見の交換を行うことができる場がようやくできた。これについては,コラボオフィスのスタッフ(とくにチーフコーディネイタの藤枝先生)の労に負うところが大きい。教育委員会と本学の相互理解の進展を図ることができるよう,今後も努力したい。

☆大学運営については,当初計画以上に順調に展開できた。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

○ 鳴門市の教育委員会・学校との間で蓄積してきた連携活動に継続的に取り組む。
○ 教職大学院の連携協力校(実習校など)との連絡調整にも積極的に取り組む。
○ 教育委員会,学校の研修,研究についても,積極的に協力し,学校・教育委員会と本学との連携の構築に寄与したい。

(2)点検・評価

○ 地元鳴門市教育委員会との間では,鳴門市の学校の情報化の推進,学校評価の推進,市内教職員による実践研究の質向上,等の側面で支援し,連携を深めている。
○ 教職大学院の連携協力校との連絡調整,支援については,分野別Ⅱ-1で述べたとおり,順調に進展させることができた。
○ 教育委員会等の研修や学校支援についても,学長の重点目標Ⅰ-2で報告したとおり,順調に展開できた。

その他の社会貢献,社会連携活動としては
○ 徳島県教育委員会との間でも,上記Ⅱ-3で述べた情報交換のための組織づくり,あるいは徳島県教育委員会の学校組織に関する調査研究委員会の委員として,県の教育行政について支援を行っている。その他にも小松島市教育委員会等とも支援を行うなど,本務に支障が出ない範囲で,本学と教育委員会の連携を深める活動に努めている。
○ 学会活動については,専攻する領域の専門学会である日本教育経営学会の常任理事をつとめ,学会活動を通した社会貢献も展開した。

☆ 以上のように本項目も順調に展開できた。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

○ 本学の最重要課題である大学院の定員充足(とくに教職大学院への現職教員派遣の確保)について,個人として可能な限り努力してきた。とくに,地元徳島県教育委員会との関係構築については,教職大学院コラボオフィスの藤枝チーフコーディネイタとともに,徳島県教育委員会と鳴門教育大学(教職大学院)の間で,「教員人材育成連絡協議会」を立ち上げ,その事務局会議を開催し,本学教職大学院の趣旨理解,現職教員派遣依頼,ならびに修了生の処遇について,具体的かつ率直な意見を交換してきた。このような教育委員会の実務責任者との間で,密接な情報交換と議論を行う事に努め,徐々に連携が密接になりつつあるように思われる。徳島県教育委員会において,大学院生に関して,教員採用試験の名簿搭載有効期間の延長措置がとられたことも,このような定期的で率直なコミュニケーションを積み上げてきたことが貢献したと考えられる。
○ 徳島県以外の地域における現職教員派遣についても地道な努力を重ねてきた。とくに鈴鹿市教育委員会においては,これまで個人的に展開してきた学校支援活動が評価され,本年度末には,鈴鹿市教育委員会と本学の間で,協力協定を締結することが決定した。これによって,本学と教育委員会及び学校とのより緊密な関係構築と,本学における実践研究の活性化を図ることができる。さらに,鈴鹿市からの恒常的な現職教員派遣の可能性を開くことにつながることが期待される。
   
以上のように,本学の定員充足に関して,教育委員会との連携構築を積極的に進めるとを通して努力してきた。今後,このような活動をさらに展開して,本学の定員充足に寄与していきたいと考えている。

 

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