自己点検・評価報告書(尾崎士郎)

報告者 尾崎士郎

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

教科教育と教科専門(木材加工分野)を担当しており,両者とも従前に比較して,知識・理解と技能・技術において学生の資質が低下している。したがって,高度な教育の専門性と教育実践力等に必要な基礎的な内容の充実を図り,その上で各論となる応用力を身につけることが重要な課題である。そのために,これまで通り,以下のことを考慮する。
1.授業内容
教科教育と教科専門の重要な内容を精選・集約を図った上で,高度な内容であっても,理解しやすい教材と教育内容を作成するように心がける。特に,教材については,図表等のみによる資料を使って一方的に講義するのではなく,しっかりした文章を,できるだけ学生に読ませて,考察することを心がける。技術の専門科目では実習の科目が無く、学生の実技・実験等力量が大幅に低下しており、これらを改善するために、教育論・演習等で実習と実験を含む内容を盛り込むことで充実を図る。
2.授業方法
一部について上記1に記述しているが,講義ではあっても,演習や討論を取り入れるなどの工夫を行い、基礎学力や応用力の定着を図るとともに,学生自身で考えさせる形式の授業を心がける。また従来通り、教員採用試験対策も積極的に取り入れて、学生の能力向上を図る。
3.成績評価
最も悩み続けている課題である。到達目標に照らして,基準を満たしていない場合は切り捨てるのも一つの方法であり,そうする方が学生には親切であると考えることがよくあり悩み続けているが,事はそれほど簡単ではないと考えている。これまで通り,発表の内容の重視,レポートの追加,追試験に加えて口述試験を重ねるなどを併用したい。

(2)点検・評価

教科教育と教科専門(木材加工分野)の教育と研究における指導を通して,知識・理解と技能・技術において学生の資質が低下していると感じる。理由は2つ。1つは、実験・実技能力とこれに関するディスカッションを行うと、知識・経験の不足が認められる場面に遭遇する場合が多い。もう1つは、長期履修学生が増加し、これらの専門学部出身者と本学等教員養成系大学出身者を一緒に教育する場合が増えている。前者の学生は教育に関する知識等の有無については多様である。残念なことに、前者に比較して,後者の本学ストレートマスターの実験・実習やものづくりの知識・理解,技術的資質能力、教材開発力等が十分ではないことを感じる場合がある。したがって,学部と大学院で背景が異なるが、高度な教育の専門性と教育実践力等に必要な基礎的な内容の充実を図り,その上で各論となる応用力を身につけることを念頭に置いて、以下の取り組みを行った。
1.授業内容
学部では重要な内容を精選・集約を図り,高度な内容については,理解しやすい教材と教育内容の作成と,演習形式の指導法を取り入れる等の改善を行った。また,一方的な講義法を多用せず,しっかりした文章を学生にできるだけ読ませて,ディスカッションを行いながら考察することを心がけた。学生の実技・実験等力量が大幅に低下しており、技術の専門科目では実習の科目が無いので、これらを改善するために、教育論Ⅱと演習Ⅰ・Ⅱでは実習と実験やプレゼンテーションを含む内容を盛り込むことで充実を図った。特に学部4年次生前期の演習Ⅱでは,模擬授業と模擬面接では教員採用試験対策を念頭に置いて実施した。
2.授業方法
上記1の授業内容と重複するが,講義の中の重要な課題については演習や討論を取り入れて基礎学力や応用力の定着を図るなどの工夫を行い,学生自身で考えさせる形式の授業を実施した。また教員採用試験対策も積極的に取り入れて学生の教育力向上を図る努力を行った。
3.成績評価
これまで通り,発表の内容の重視,レポートの追加,追試験に加えて口述試験を重ねるなどを継続した。実習の内容を含む講義・演習における評価では作品やレポートに加えて,その取り組みの内容と過程を重視し,受講者にもその重要性を伝えると共に,製作上の失敗が生じたときに,如何にリカバリーするかということの教育的重要性を授業の中または終わりで演示を交えて伝えた。

 

1-2.大学教員としての社会貢献

(1)目標・計画

下記の「Ⅱ-2.研究」に記述した研究は、直接的に教育現場に転用できる研究から、かなり基礎的な研究が必要で時間を要するものまである。いずれにしても、ものづくり教育等を通じて、附属学校教員や徳島県下の現職教員、全日中技術家庭科研究会、各種研修会、学会発表等を通じて公開しながら研究を進める。
1~3の機械加工、竹材の切削機構と木材の染色関係は教育分野のみならず産業界への還元を視野に入れながら、名古屋大学、徳島県森林総合技術センター、徳島県工業技術センターほか民間や公的な試験研究機関との連携も図りながら研究を進める。
4については、本学講演会等に参加された大阪教育大学橋本教授を中心に進めているが、次年度が最終年度となる。これに関する科研費の継続申請の検討とともに、この試験制度について民間で行える可能性についても検討が始まっており,これにも参画する予定。 

(2)点検・評価

上記の目標と計画②については,概ね実現でき,今後も継続する。
今年度後半には,徳島県庁農林水産部からの突然の依頼を受け,徳島県産材10UP運動協議会を通じた各種委員会審査委員長担当の要請があった。これは,県産材利用の推進を図るため,県産材利用技術専門検討会(仮称)を設置し,木造建築の技術課題の検討と市町村または民間公共等施設の木造化を支援しようとするものである。
これと平行して,2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震の被災地に対する県産材を利用した支援のための検討委員会への加入要請もあり,すでに委員会や審査会出席等活動を開始した。
これまでに学生等と共に,徳島県の公的試験研究機関と連携を図り,共同研究を継続した成果の一つと考えられる。県内の教育現場をはじめとする教育機関と公的な研究機関との連携も重要であり,両者の活動を支援し連携が図れるようになることを視野に入れながら,今後も学生等と共に徳島県の公的試験研究機関と連携を図り,共同研究を推進し,地域社会に対する貢献を継続したいと考えている。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

1.講義・演習では討論を取り入れるなどの工夫を行い、基礎学力や応用力の定着を図る。
2.技術の専門科目では実習の科目が無いため、学生の実技・実験等力量の低下が無いように、教育論・演習等での製作実習の内容の充実を図る。また従来通り、教員採用試験対策も積極的に取り入れて学生の能力向上を図る。
3.研究室配属学部生・院生の勉学と生活等相談、進路等就職支援の充実を念頭に置いて,ゼミの指導を工夫する。
4.弓道部顧問として指導の充実を図りたいが、時間が取れなかった。出張や業務がない土曜日の午前中に技術指導を行い、併せて学業、学生生活、就職等悩み相談等に応じたい。昨年は全教戦男子団体で全国優勝を果たしてくれたが,今年度も同じような目的を持って、一緒に活動できるように努力したい。それ以前に、また差し迫って大切なことは、年間を通じて安全に気をつけて活動することと、4月以降に新人部員を得ることも重要な課題である。
5.地域連携として位置付けている全国中学生ものづくり競技大会徳島県大会の中学生に対する技術指導を,県下の現職教員と本学学生もボランティアとして加えて実施する。またウチノ海海浜公園で開催の鳴門市教育委員会等主催“こどものまちフェスティバル”の木によるものづくり体験コーナーに学生が参加予定。当方は学生に対する事前の技術指導と指導法の特訓を行って貢献してもらう予定である。

(2)点検・評価

1.講義・演習ではディスカッションや発表を取り入れて基礎学力や応用力の定着を図る等の工夫を行った。
2.学生のものづくり教育等力量の向上を図るために、教育論・演習等で実験・実習等を含む内容の充実を図った。また教育論演習等では,教員採用試験対策を取り入れて学生の教育力等資質能力向上を図った。
(上記1と2については,「Ⅰ.学長の定める重点目標の Ⅰ-1.教育大学教員としての授業実践」を参照。)
3.研究室配属学生は,学部3年生2名(指導教員2名制),4年生なし,大学院1年生1名,2年生3名(台湾の現職教員1名を含む。)であった。学部3年生1名が4年次に当研究室配属になり,大学院2年生1名がJAに就職,1名が留年(単位不足/大学院の広領域コア科目と学部の道徳)であった。大学院生は学会発表等を活発に行って成果をあげたが,大学院生1名が授業への出席が不足しており,単位取得を目指すことになっている。
4.弓道部顧問として指導の充実を図りたいが、慢性的に指導の時間が取り難い状況が続いた。昨年に続き全教戦男子団体で全国優勝を果たし,新入部員も入部し,部活動は十分に維持できる状況にある。しかし,全教戦日程と8月の試験週間との重複が原因となって学業よりも課外活動を優先する問題が顕在化し、また、弓道部員による弓道場の鍵の紛失事件も発生した。3年ぐらい前までは教員採用試験合格状況も高く、文武両道を十分に果たしていたと考えているが、残念ながら、弓道部活動内容にかなりの緩みが発生しているように見受けられ,何とか時間を捻出して解決に努力したいと願っている。
5.全国中学生ものづくり競技大会徳島県大会の中学生に対する技術指導を,県下の現職教員と本学学生と協力し、藍住東中学校と徳島県総合教育センターで実施した。これは全国中学生ものづくり競技大会中国・四国地区大会へのエントリーを兼ねており、代表選考をも行った。またウチノ海海浜公園で開催の鳴門市教育委員会等主催“こどものまちフェスティバル”の木によるものづくり体験コーナーの技術指導を技術・工業・情報コース学生が担ったが、事務局の鳴門市役所職員の方から、後日に感謝の電話を頂くと共に、次年度の参加も要請された。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

技術教育に関する教材開発、木質材料の物性、手加工と機械加工のメカニズムに関する基礎研究を継続し、地域の素材を活かした新しい木材の開発とその教育的利用に取り組む。教育研究活動として取り組む主な内容は以下の通り。
1.技術教育に関する教材開発と授業実践研究
フライス切削作業の機構と生成した切屑性状の分析、各種加工技術と技能との関係の定量的分析方法の開発、授業実践力評価スタンダードの作成とその応用,台湾と日本の技術教育における比較研究等
2.木質材料の物性と切削および機械加工に関する基礎研究
環境教育に配慮した教育現場における廃棄材の再利用,木材の切削機構と切屑の物性,竹材の切削機構に関する基礎的研究等
3.地域の技術を活かした新しい素材の開発とその教育的利用
木材の曲げ加工技術の高精度化と教育的利用,阿波藍染技術の木材染色への応用と教育的利用方法の検討(シーズ発掘試験研究(外部資金)等
4.科研費「技術科教員養成での修得基準の作成及びその基準による検定制度と競争的教育環境の構築」に関する研究(当方は研究分担者)
本研究は最終年度にあたるので,取り纏めに協力する予定。また今後のことはこれから検討に移されるが,次回の科研費申請と本研究で取り組んでいる試験制度の実用化に関する研究にも参画予定。

(2)点検・評価

研究活動として取り組んだ主な内容は以下の通り。
1.技術教育に関する教材開発と授業実践研究
ものづくりの機械加工で行うフライス切削作業における切屑生成の機構について解析し、実際に生成した切屑の幾何学的性質との比較を行って、前記解析結果の妥当性を検証した。2年間取り組んできた台湾と日本の技術教育における比較研究を仕上げた。特に教科書に記載の教材と記述内容について詳細に比較した。今後学会発表を行う予定。
2.木質材料の物性と切削および機械加工に関する基礎研究
ものづくり学習を行う実習室で生成する切屑を廃棄せず、再利用して新たなボード類を製作して学習で循環的に利用することを実現するための基礎研究として、木材の切削機構と切屑の物性,竹材の切削機構に関する基礎的研究等を実施し、学会発表を行った。今後も継続研究を行う。これら機械加工に関する一連の研究については、万能切削試験機を所有する名古屋大学大学院生命・農学研究科横地研究室との共同研究として継続中である。
3.地域の技術を活かした新しい素材の開発とその教育的利用
木材の曲げ加工技術の高精度化と教育的利用について、内藤研究室との共同研究として作品製作を行いながら実施した。また前年度のシーズ発掘試験研究で採択された阿波藍染技術の検討と木材染色への応用を継続し、劣化藍と新鮮な藍による木材の藍染めにおける発色において、紫外または可視光のブルーの波長の光が関与していることが分かってきた。この研究課題については、昨年度末から名古屋大学大学院生命・農学研究科土川研究室との共同研究を開始し始め、藍発色部の分光分析による評価について予備試験的検討を行いつつある。
4.科研費「技術科教員養成での修得基準の作成及びその基準による検定制度と競争的教育環境の構築」に関する研究
年間2回の研究打合せに出席し,最終年度にあたる本年度以降においても研究を継続し,その運営に協力することとなった。その中で本研究で取り組んだ試験制度の実用化に関する研究に協力することとなった。
5.その他
機械加工用語の調査研究に携わってきたが,日本木材学会機械加工研究会で辞書編纂責任者(京都大学奥村教授)から準備状況の報告があり,全体の校正については当方も編集委員(責任者)の1人として携わり,今年度発刊を目指していたが,印刷発行所による仕上げ作業が難航し,半年程発行が遅れるとの事である。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

1.次年度の自然・生活系教育部の部長を担当する。部の運営とその方法については当方にとって未知の課題であるが、コース長、部の構成員と連携を図って、教育・研究環境の改善に努力し、皆さんの希望を一つでも多く叶えたいと願っている。
2.教育研究評議会にも継続して出席することになるが、大学運営上の課題解決に寄与したい。
3.これまで数値目標に関連した就職支援委員会と大学院入試委員会に属して、教員就職と大学院定員充足に努力し,まだ不透明ではあるが,両者とも活路が見えつつある。これからもコースの委員等を支援する形で、大学運営のプラスになるように努力したい。

(2)点検・評価

1.自然・生活系教育部の部長を紆余曲折を経ながら担当し,何とか1年間を乗り越えることができた。教育部構成員,執行部のご理解と協力,評議員の成川先生と各コース長のご尽力と支えのおかげである。これまで通り,コース長、部の構成員と連携を図って、教育・研究環境の改善に努力したいと願っている。
2.大学運営上の課題解決に,教育研究評議会,総務委員会,人事委員会出席を通して寄与したいと思っていたが,当方がどれほどの貢献が出来ているのか実感が湧いてこないのが実情である。
3.教育部長就任後に,従来の各種委員会に属して仕事を担当することがなくなった。しかし,これまでの経験から,数値目標に関連した就職支援と大学院入試関係の仕事を断ち切ることなく,自然・生活系教育部と大学全体ほかへの貢献を視野に入れながら,教員就職と大学院定員充足に努力した。前者では就職支援対策行事,後者は大学訪問等による大学院定員確保に対する協力である。両者共に日程と時間の確保に苦心したが,自らの意識の中では手応えを感じている。特に後者では技術・工業・情報コースの大学院入学者を14名,また他コースへの受験者も訪問大学から得ることができ,訪問大学数を増やすほど,比例的とは言えないが受験者が増大する可能性があると感じる。まだ両者の方法に工夫の余地はあるものの,これからもコース内外の委員等を支援する形で、大学運営のプラスになるように努力したい。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

1.ものづくり教育等を通じて、附属学校教員や徳島県下の現職教員と連携し、現職教員の各種研究会活動等の充実に貢献する。
2.徳島県総合教育センターや鳴門市等を介して、地域社会の教育活動や催し物に出席し貢献する。
3.地域連携として全国中学生ものづくり競技大会の技術指導を徳島県下、中国四国地区9県、全国の全日中研究会現職教員との交流と連携を図りながら実施する。
4.ものづくりに関する地域の催し物に研究室学生他と積極的に出席し、地域住民、子供達、青少年との交流を拡充する。

(2)点検・評価

1.全国中学生ものづくり競技大会における技術教育等を通じて、関東地区に事務局を置く全日中技術・家庭科研究会の現職教員,文部科学省教科調査官他と連携し、現職教員の各種研究会活動等の充実に貢献した。
2.徳島県総合教育センター指導主事や鳴門市教育委員会等を介して、徳島県内の中学校技術の教育活動や催し物に出席し貢献した。
3.地域連携として全国中学生ものづくり競技大会の技術指導を徳島県下、中国・四国地区9県、全国の全日中研究会現職教員との交流と連携を図りながら実施すると共に,現職教員による研究成果の学会誌への投稿にも協力した。
4.ものづくりに関する地域の催し物に研究室学生他と積極的に出席し、地域住民、子供達、青少年との交流を行うと共に,これまでの活動の一部を業界誌(木材工業)に連載の形で紹介し始めている。
(前記Ⅰ-2大学教員としての社会貢献/徳島県の公的機関との連携も参照。)

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

Ⅱ-3.大学運営の2.点検・評価に記述したが,コース教員の協力態勢の元で,また自分なりに大学院定員充足への取り組みの成果が現れ始めた。今後,恒常的に実現可能かどうか不明であるが,コースでは定員充足でき,また大学院全体での定員充足が可能になる日が近い気がする。数多くの課題も抱えながらではあるが,もしも定員充足が可能となった場合には,訪問先大学の再検討を含む入学者の質の確保と向上,出口の保証,定員オーバーの場合の入試判定を含む大学院入学試験における評価他の新たなステージでの対応が問題となる可能性がある。できるだけ,早期の実現と対応の検討が必要ではないかと,個人的に考え初めている。
(下記自己点検・評価水準は,Ⅱ-3大学運営と重複のため記述の対象外。)

 

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