自己点検・評価報告書(成川公昭)

報告者 成川公昭

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

高度専門職業人として,自信を持って教育現場で生徒を指導することができる教員になるためには,しっかりとした基礎力と,さらにそれに基づいて自ら課題を解決していく自主性を身につけることが要求される.それぞれの授業を通して,この二点が十分に獲得できるよう,具体的には以下のことに心を配り授業に臨む.
①まず,教師としての常識を身につけ,幅広い観点から物事を考えることができる習慣を培えるよう,特に広く話題を取り上げ,その関連について講義を行う.続いて,基礎となる土台をしっかりと固めるべく基本的な内容に重点を置いて授業を進める.その際,単に基礎的事項を暗記するだけに終わらぬよう,それを元としていかに活用するかを考える内容を十分に盛り込む.
②学生の自主性を育むため,課題を出してそれを評価するという方向で授業を行う.基本的な事柄をおろそかにせず,それに基づいて物事を考えることができるよう単に記憶だけでは解決不可能な課題を提出し,自主学習を促す.
授業内容の区切りごとに行う小テスト,学期最後における試験では基礎力を問うと共に,それを土台として自ら考えをまとめるという思考力に重点を置いて評価する.学生は単に暗記することが勉強のように勘違いしているところがあり,授業を通してこの思い違いを説明,そのことを試験を通じて問い,それを評価する.

(2)点検・評価

①授業の実施に当たっては、様々な現象の裏には共通した普遍的な原理が横たわっていることを実感させ、それを見抜くことの重要性を強調した。さらにこのことを実現するには、基礎となる土台のしっかりとした習得が必要不可欠であることをいくつかの例を挙げて解説した。この際、単なる基礎知識の暗記だけでは意味がなく、それらを組み合わせて活用することにより本質的な理解に至るということを、学校数学の教材を取り上げ解説した。これらのことにより、単なる知識の暗記だけでは不十分であり、基礎・基本を十分に理解した上で、自ら考えてそれらを活用するという姿勢が見られるようになってきた。

②1,2年の授業においては基本的な事柄の習得に力を注いだ。学生に具体例や反例を考えさせる時間を特別にとり、そのことにより基本概念が浮き彫りになり、さらに活用にまで至るよう努力した。学部の専門科目、大学院の授業においては毎時間課題を出し、次回に自ら考えた結果を発表するという形態をとった。学生は非常に興味をもって調査・研究を行い、基礎力の重要性とそれを駆使して自ら課題を解決するという姿勢が現れてきた。

③授業中の発表状況および数回の中間試験と最終試験の結果により評価を行った。試験では単なる記憶ではなく、身につけた基礎力をいかに実際に現れる問題の解決に適用するかという観点に重心を置き出題した。特に学部1、2年生では、当初、身に染みついた受験勉強による記憶力主体の勉強からの脱却が難しいようであったが、後半においては、徐々に変わってきたように思われる.

 

1-2.大学教員としての社会貢献

(1)目標・計画

数学研究といえば一般に社会とは縁のない研究課題であるかのように捉えられがちであるが,その考え方自身は人間の論理的思考に基づいた科学的活動であり,あらゆる社会活動にかかわるものである.教育支援講師等に於いて,自然現象,社会現象をどのように捉え,それをどう解析していっているのか,自分の研究を元にその基本的考え方を具体的事例を挙げて示していきたい.その立場は各種研究会においても変わらず,機会あるごとに研究会に参加し,科学的ものの見方,数学的ものの見方,その観点から見た教育活動の在り方について自分の意見を述べていきたい.

(2)点検・評価

与えられた状況から課題を見つけ、それを整理・定式化し、分析することによりその課題解決に至る、といった一連の思考過程は、単に研究だけではなく、あらゆる科学的活動において共通のものである。SSRの一環として招かれた教育支援講師においては、自分の研究課題がどこから生まれ、どのように取り扱って研究し、どのような意味があるのかをかみ砕いて解説することにより、このことを高校生に伝えた。夏に開催された学校数学研究会では、現職の教員から提示された学校現場における課題に対して、自分の経験してきた立場から分析を行い、意見を述べた。また、教職に就いている卒業生より学校数学の内容に対する質問が数件あり、それに対し、数学の専門的立場から解説し、助言を与えた。このような教育現場と大学の間のネットワークは今後さらに強固なものにしようと思っている。数学的考え方の必要性、理数科離れが言われる中、鳴門市こどものまちフェスティバルにおいて幼児、小学生にそのおもしろさを伝えた。さらに算数おもしろ教室を開催し、子供のみならず、その保護者に対して算数・数学の啓蒙に当たった.

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

①学生自身が常に志を高く持ち,充実した学生生活を送ることができるよう,真摯な態度で学生に向き合う.将来教師を目指すものとしては,専門的知識は勿論,幅広い人としてのものの考え方,ものや生き方に対する姿勢も身につけなくてはならない.そのために,オフィスアワーや授業中に限らず,積極的に学生と触れあい,自分が今まで行ってきた研究に対する姿勢や,過去の経験を話し,問題提起をすることにより学生の考えを引き出し,共に考えることにより知的関心や興味を持って学生生活が送れるよう努力する.同時に学生が気楽に悩みや相談を打ち明けることができるよう,互いの信頼関係を築き上げ,それに基づき学生指導に当たる.

②学生の教員採用試験に対する士気を高めると共に,実力を身につけさせるため,ここ数年来行っている「教員採用対策塾」を開講する.ここでは各都道府県の教員採用試験過去問題等を演習問題として解かせ,その解説・指導を行う.

③機会あるごと教師という職業のやりがい,すばらしさを先輩の活躍の様子などの具体的なかたちで学生に伝え,教職に向けて早い段階からモーチベーションを高く持てるよう指導する.

(2)点検・評価

①学生を積極的に研究室に呼び入れ、学生生活や勉学状況を聞くとともに、困っておいる学生にはアドバイスを行った。教員と学生といった垣根をなるべく取り去り、本音で話せるよう努力した結果、互いに信頼して悩みや相談を打ち明けて来る学生も多くいた。これに対しては、誠心誠意自分の経験や考えに基づいた対応を行った。気軽に研究室を訪れた学生に対しては、学校現場で働く先輩の話や、数学のおもしろいトピックを話すことにより、モーチベーションを高く学生生活が送れるよう努力した。

②学部4年生、大学院2年生に対し、毎週2時間程度の「教員採用対策塾」を開講し、各都道府県の教員採用試験過去問題、出題予想問題を解かせ、解説を行った。学生は単に採用試験対策だけではなく、非常に興味を持ってそれらの問題に当たっていた。学部生は多くの学生が正規採用され、その成果が現れたと思われるが、大学院生は多くの学生が参加していたにも拘わらず残念な結果になってしまった。ほとんどの院生が高校教員を受験したためと思われが、この「教員採用対策塾」を通して明らかに数学的実力は向上したものと思われる。

③授業の中や学生が研究室を訪れた際に、卒業生の活躍の様子を話し、自分たちの将来の姿が目に見えるよう努めた。また、今学校現場で問題や話題となっている事柄を提示することにより、日頃から教職に関して問題意識を持って学生生活が送れるように指導した.

 

2-2.研究

(1)目標・計画

科学研究費補助金への申請中である研究課題「準線形楕円型方程式に対する自由境界問題」の研究を,採用,不採用にかかわらず,推し進める.とくに,徳島大学における研究協力者とは毎週1回程度のセミナーを行い研究を進める.

現在研究中の「臨界指数を持つ準線形楕円型方程式の多重正値解の存在について」を論文としてまとめ,国際誌への投稿,発表を行う.

(2)点検・評価

科学研究費として申請中であった研究課題「準線形楕円型方程式に対する自由境界問題」が採択され、徳島大学の研究協力者と毎週1回程度のセミナーを通じてその研究を推し進めた。その結果、従来からの研究途中であった「臨界指数を持つ準線形楕円型方程式の多重正値解の存在について」をさらに改良し、「Existence of nonnegative solution for quasilinear elliptic equations with indefinite critical nonlinearities」 としてまとめ上げることができ、研究集会で発表するとともに、国際誌への投稿を行った.

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

コースより選ばれた各種委員会の委員として大学運営に関わり,自分の能力の範囲でできる限り大学運営に貢献する.

(2)点検・評価

評議員として大学運営に関わるとともに、就職委員として就職支援事業等において学生の就職活動を支援した.

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

①附属学校との連携を密にし,研究協力体制を推進する.(附属学校)

②コースで開催される地域社会への連携事業の企画,実施を行う.(社会連携)

③登録している「教育支援講師・アドバイザー等派遣事業」等による各学校よりの依頼があったとき,積極的にその企画を実行する.(社会連携)

④JICA等による国際協力事業に貢献する.(国際交流)

(2)点検・評価

①附属学校数学・算数教育担当教員と連絡会を開催し、研究協力のあり方について意見交換を行った。(附属学校)

②附属中学校関係者評価委員として附属中学校のあり方に関し意見を述べるとともに、関係者評価をまとめた。(附属学校)

③夏に学校数学研究会を開催し、現場教員から提案された課題に対し、助言を行った。さらに、学校数学研究会機関誌の2巻の発行を通して、現場教員からの投稿を集め問題提起の場を提供した。(社会連携)

④コースで企画した「算数おもしろ教室」を運営し、小学生及びその保護者に対して、算数に対する啓蒙活動を行った。また、鳴門市「こどものまちフェスティバル」に算数紹介コーナーを出店した。(社会連携)

⑤城南高校に教育支援講師として出向き,SSH事業の一環として講演を行い、数学のおもしろさや勉強、教育のあり方を伝えた。(社会連携)

⑥日本数学会評議員として数学会の運営に参加した。また、1月末日には開催責任者として、鳴門地域地場産業振興センターにおいて中国・四国支部会例会の開催に当たった。これには約50名の数学会会員が参加し、22件の発表が行われた。(社会連携)

⑦大洋州のJICA研修をコースで実施し、特に解析分野の指導を行った。(国際交流)

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

①徳島大学総合科学部、工学部、岡山理科大学、甲南大学の教員に、それぞれ指導学生に対して大学院の受験を勧めてくれるよう強く依頼を行った。その結果、内部進学者が1名だけであったにも拘わらず、前期、後期、第2次募集をあわせて25名の受験者(うち入学手続き者17名)を得ることができた。

②学部卒業生に対し「教員採用対策塾」をはじめとして、模擬授業等の対策を積極的に行うことにより13名中7名の正規合格者を出すことができた.

 

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