自己点検・評価報告書(齋木哲郎)

報告者 齋木哲郎

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

私の担当は哲学・倫理学である。この領域は分からない・興味が湧かないというのが学生達の一般的な感想である。けれども、その様な感想をもたらしている根本的な原因は領域の特殊性にあるのではなく、指導者の理解不十分、ないし学生の立場で理解させるための授業を確立していないことに起因すると考える。そこで私が試みる授業であるが、①自己の専門ではなく学校現場で取り上げられている項目を選択してそれを哲学・倫理学上の立場から解説し、1時間で一つの課題の全体を説明し理解させるという風にし、②観念上の課題についても具体的に我々の体験と結びつけたり、その時々の社会的な事情や思想の担い手達の人生と関連づけて説明することで、受講生との距離を縮め、③受講生の理解度やそこから生ずる新たな問題意識を確認することで成績の評価を出したい、と考える。

(2)点検・評価

計画通りに授業を進め得たと思う。学生達が授業以前に有している「分かりにくい科目」だという印象は取り除くことができた。また授業アンケートに拠れば、哲学や倫理とは身近で親しみやすいもの。授業の領域として設定されている中国も、興味をかき立てて我々に様々な思索を試みさせる対象となった。もっと知りたい、という受講生も現れた。このやり方を踏襲し、更に学生達の理解を促す新たな方法を、今後も模索してゆくつもりである。また、学生達の興味に答えるために、今後は、特に「特論」の領域に於いてだが、教科書には殆ど登場してこない人物で、なお時代思潮や特殊な倫理観を有してその当時の人々に多大な影響を与えた人物を発見し、その人となりや思想・倫理観といったものも講じてゆく必要があるように思う。

 

1-2.大学教員としての社会貢献

(1)目標・計画

特論やゼミを通じて、私の研究を紹介し、それが学生達の研究や課題の解決に繋がるよう配慮したい。また、私の研究を広く社会的に還元するためには、一般向けの書籍、俗に言う啓蒙書の執筆にも務める必要があろう。一朝一夕にそれが成し遂げられるということはあるまいが、今後はその方面にも力を注いでゆきたい。 

(2)点検・評価

私の研究を一般の人たちにも理解しやすい形で発信する、というのが私の目標設定であった。授業の特論では、今回「儒教と宗教の関係」を視座にして、それを試みた。受講生は少なかったが、中国からの留学生や綜合学習コースの院生も参加して、極めて熱っぽい授業になった。また、私が研究を進める儒教経典に関する春秋学について、啓蒙書の一部として「孔子と『春秋』」を執筆し、原稿を完成させている。一般向けの雑誌に投稿するにはなお専門性を残すが、研究者にとっては極めて平明で分かり易い、かつ考えさせる、その意味で文字通り啓蒙的な内容となっている。このレベルの試みとなった。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

学生からの質問や依頼に応えることは勿論である。今年度は特に学生の就職支援活動、なかんずく教採合格のための方策を考えたい。具体的に言えば、クラブ活動や卒論研究を優先させる意識を持ち続ける学生に、教採に合格する意欲を持たせ、本学の就職支援活動の一環として行われている諸行事に眼を向けさせたい。

(2)点検・評価

社会系4年生12人の担任として、模擬授業・集団面接の指導に当たった外、学生達とのコミュニケーションを介して、教員採用試験に対する準備を絶えず喚起し続けてきた。結果、社会系での教員採用試験合格者は5名、大学院入試合格者2名で、他は臨採待ちという結果であった。昨年度と同様の結果で学生達はよくやったと思う。欲を言えば、合格することにもう少し貪欲であって欲しい。私の応援がどれだけの成果を上げたかは不明であるが、これをもって評価に代えたい。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

今年度に続け、昨年京都大学へ提出した学位請求論文『唐宋新春秋学の研究』(1頁1600字×522頁)の補完とその出版の準備を進める。 また、近年中国の学界から招聘を受けることが多くなってきているが、本年度もそうした招聘があれば、積極的に応じてゆきたい。
余裕があれば、新しい研究領域の開発にも意を注ぎたい。

(2)点検・評価

 『唐宋新春秋学の研究』の補完を更に続けている。思いがけず、長くかかることになった。刊行された時には、稀に見る大著となることであろう。また、中国の学会からの招聘についてであるが、今年度は3月に台湾大学で開催される第4届中国経学国際学術研討会への招聘を受けた。私が発表したのは「皮日休と『春秋』―唐末春秋学の一断面(皮日休与《春秋》―唐末春秋学的一断面)」(中国語)である。
新しい研究領域としては後漢の儒学を中心にトレンチを開始した。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

与えられた職責を果たすということに尽きるが、現在大学で進行しつつある犯罪化の傾向にも適切に対処して、これを阻止したい。

(2)点検・評価

与えられた職責を果たすということについては、所期の通り果たしたものと思う。だが、大学の犯罪化を糾すということになると、忸怩たる思いを持つ。社会系コース所属の女子学生が学内での犯罪に巻き込まれて退学せざるをえなくなり、その事実を教授会で全教員に知らせようとした私であったが、発言を許されず、ついにその学生は退学して去った。その後、学長に2度にわたって犯罪の経緯を訴えたが調査もなく否定され、強引な幕引きとなった。これが良識の府としての大学の姿かと思う。大学として正しい対処がなされることを切に望む。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

社会系4年生の担任として、彼等の副免実習に立ち会い、彼等にとって有益な助言を試みたい。
学会役員としてかせられている職務を忠実にこなし、学会の発展に寄与したい(日本道教学会・中国出土資料学会)。また「研究」で掲げた目標とも重なるが、外国、なかんずく中国からの招聘には積極的に応じて、国際交流に一役買いたい。

(2)点検・評価

Ⅱ‐1とも重複する点もあり、その部分は省く。学会役員としての活動は日本道教学会理事、及び中国出土資料学会理事としての2つである。いずれも年数回開催される理事会への出席を通じたもので、概ね議案の審議が中心であった。その内、日本道教学会では蜂屋邦夫氏の『老子』に関する著書の書評を役員が当たることになり、私が押しつけられた。その原稿は既に学会の審査を得け登載が認められている。この点が例年とは異なるところである。
また中国からの招聘については、Ⅱ‐2を参照されたい。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

学内に於ける犯罪化を防ぐ努力を続けてきた。 

 

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