自己点検・評価報告書(西村 宏)

報告者 西村 宏

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

理科コースおよび総合コースについてあわせて述べる。
①授業内容:昭和60年に着任以来24年間にわたり終始一貫して心がけていることは,「基礎的事項を必ず含んでいるが高い内容を,しかし解説はできる限り平易な表現で学生に理解しやすく」を目標にしてきたので,22年度もすべての授業においてこの思想を貫くこととしたい。
②授業方法:Officeソフトの充実を受けて,MSパワーポイントを利用したプロジェクターによる提示する授業を展開している。ただ,強調すべき内容に関しては,板書(手書き)の説得性が重要となるので,今後もこれらを併用した授業方法としたい。また,英語圏からの留学生が含まれる場合には,バイリンガル講義とすることを念頭に置き,パワーポイント提示には日本語・英語両方の表記を常に用いているので,これも継続したい。
③成績評価:出席点などの「情実」を加味した成績評価は本筋ではないと考えているが,演習・実験を伴う科目では出席が重要な要素となることに鑑み,出席点はごくわずかな部分加点方式とし,主としては,授業内容に関する試験またはレポートにより厳格に判断することとしているので,これも継続する。

(2)点検・評価

①授業内容:従来から心がけている「内容は高く,解説はやさしく」を前期開講担当のすべての授業に適用し,受講者からは「学生による授業評価」で高評価を得た。

②授業方法:すべての授業でMSパワーポイントを用いた提示を用い,その内容表記もバイリンガルとして,留学生の聴講に備えた。幸か不幸か今年度受講生の中には留学生が含まれていなかったため,結果的には授業すべてを日本語のみで行った。また,図を必要とする場合などは板書による解説を付加し過程も示しながら理解させる方法とした。

③成績評価:定期試験では,ただ問題が解けていればよいというのではなく,宇宙科学的な観点が理解されているかどうかを試す内容とした。また,出席および授業中の演習問題解答については定期試験の得点にわずかながら加点する方式で成績に反映した。

 

1-2.大学教員としての社会貢献

(1)目標・計画

①県の施設である「あすたむらんど」での一般社会人を対象とした講演や,児童生徒を対象とした「科学絵画展」の審査に自然科学的立場で協力するかたちで,最先端の科学的内容を社会へ還元することを目指す。

②徳島県NIE推進協議会会長として,教育場面への新聞活用の推進を図るとともに,ファミリーフォーカスとしての位置付けにある周辺住民や家庭における生徒の学習への新聞活用についても推進する。

③いわゆる本学の「派遣授業」への登録を通して,学校教員および一般社会人へ,最先端科学の結果を知ってもらうことを目的として,広く講義や授業を展開する。 

(2)点検・評価

①「あすたむらんど」において開催された「科学絵画展」の審査委員として参画した。またプラネタリウム館での隕石関連の話題について講演を行った。

②徳島県NIE推進協議会会長として,県内教育機関特に小中学校を対象とした授業における新聞活用を推進するとともに,会長職を継続した。

③松茂町立図書館において開催の図書館主催市民大学連携講座で「隕石から見た太陽系のすがた」を演題として講演を行い,市民に対する理科内容論的啓蒙に寄与した。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

定年退職時期まで,残すところ1年となった現在,教育に対しての貢献は現時点の状態をそのまま維持できるように心がけつつ,学生・院生に,教員となった際の心構えなどに関して自らの経験知のなかで有用と思われる部分について,できる限り伝授しておく。

学生生活支援については,細々ながら内々継続している「西村奨学金」を,今年度も,困窮度が非常に高く勉学意欲が極めて高い学生・院生に,金額はわずかながら私的に援助を続ける。

(2)点検・評価

①学部生に対しては,1年次の「中等理科(地学分野)」の授業時間に織り交ぜるかたちで教員採用審査の一般教養の問題として出題される頻度が高い天文関係の出題に即応でき応用へと発展できるように,具体的例題および問題を与えて繰り返し答案作成に慣れさせた。

②天文分野の基礎的な英文教科書からの抜粋を示して,天文学史の話題を英文で提供し,天文学の歴史的進歩に関する知見をも紹介し,基礎知識の獲得に寄与した。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

原始太陽系星雲が惑星へと収縮を始めるきっかけとなった,太陽系形成開始の約300万年前に起こったであろうと推定されている「超新星爆発」の規模や爆発の様態について,隕石中の同位体比測定の結果から,実験的に推定する作業を継続する。実験部分は定年退職後も行うことは,大型装置を用いることから,不可能に近いが,理論的考察は可能なので,生涯研究の対象とするつもりである

(2)点検・評価

原始太陽系星雲に不均一に持ち込まれたと思われるMg同位体異常が始原隕石中に残されている可能性を追求するためDLMS(試料直接充填法表面電離型質量分析計)を用いて,各種隕石試料についてMg同位体比データ収集を数1000回という膨大な数実行した。隕石試料の比較の対象となる普通隕石についても,数100回を超す同位体測定を行い,比較検討するための基礎的データを増やし,データの信頼性を向上させるよう努めた。この結果,太陽系収縮直前の約300万年前には「炭素爆燃型超新星」が爆発し,その爆発によってもたらされた元素が混入されたことがほぼ確実といえる結論につながった

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

平成21年度までは,6年間以上にわたって「評議会」および「教育研究評議会」のメンバーの末席を占めさせていただいてきたが,22年度1年間は大学全体にかかわる委員などの職に就くことがないため,コースおよび部に所属する若い研究者・教育者の方々に対するアドバイザーとしての役割を果たす

(2)点検・評価

定年退職の年度に当たるため,部およびコースの若手教員の大学運営への参加を促す役割を積極的に果たし,大学運営に携わることができる後継者の育成に向けて方向づけを行った

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

附属学校および社会との連携については,附属学校運営協議会委員の先生方や,附属学校教諭および板野郡内松茂・北島・藍住3町の学校関係者との連携を可能な範囲で継続し,学生の実習に際してのアドバイスを,授業の内容に絡めたかたちで実践指導することにより,傍らから援助する。

国際交流については,アフガニスタン理数科教育援助に奔走する近森教授の授業などのバックアップ,および国際教育協力センターの理数科教員受け入れに伴う理科地学分野での助言・協力を行う。

(2)点検・評価

①社会貢献でも触れたが,松茂町立小・中学校での長期履修生の教育実習の便宜を間接的に図ることにも配慮しつつ,町立図書館での市民講座の一端を引き受け,社会との連携に寄与した。

②アフガニスタン理数科教育支援のために長期出張した近森教授担当の授業を出張期間中分肩代わりし,その期間休講にすることなくスムーズに授業を運ぶよう配慮して,受講生への負担が可能な限り最小に抑えられるように努めた。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

定年前の最終年度に当たり役職こそ免除されたものの,コースの全般的運営およびコース会計責任者として予算執行について,各スタッフが自由度を持ちながらも計画的執行が可能なように,約1.5カ月に一度の使用報告をスタッフ宛にエクセルテーブルとして告知を続けた。

文科省による指導要領改訂に際して「新聞活用」が要領に記載されたことを受け,徳島県NIE推進協議会会長として県下の義務教育機関での新聞記事の利用などを推進し,2月にはNIE参加校6校のうち3校について,徳島新聞社と協力して実践報告を企画でき,来年度からの指導要領下での「新聞活用」実施にむけての方向づけの基礎固めを行った。

特に後者については,教員養成大学としての本学の役割を補助する程度ではあるが重要な貢献であるものと自負している。

 

お問い合わせ

経営企画戦略課
電話:088-687-6032