自己点検・評価報告(教員養成特別コース,実技教育研究指導センター) 山田芳明

報告者 山田芳明

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての研究活動

(1)目標・計画

  長期的な研究課題としては,造形教育における“よい授業”の探究である。そのなかで,昨年度に引き続き本年度は,教師の力量形成に焦点を当て,学生及び卒業生の自己研修システムの研究に取り組んでいく。具体的には,本学卒業生の協力を得て,授業力の形成過程を記録していく予定である。記録した授業映像については,以前の授業映像と比各分析をする予定である。

(2)点検・評価

  本学学卒者から研究協力の同意を得て,5月,6月,7月に研究会を開催し個々の自己研修の方法等については検討を進めた。授業映像の撮影には,個人情報保護の関係で,現場の承認を得るに至らなかった。そこで,研究組織を大阪府下に勤務している本学卒業・修了者10名に現場の校長を含めるように再編成を行った。これにもとづき21年度には,授業記録を行い授業研究を進める目処を立てた。

1-2.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

  本年度の授業実践の目標としては,「実感のある授業」である。実感とは,学生が自らの学習やそれによる変容を確認できるということである。

  1. 授業内容:本年は学習指導要領が改訂されるが,そのような今日的な情報や,教育現場で収集した実践的な内容を多く取り入れていこうと考えている。
  2. 授業方法:講義においても教員が一方的に話すのではなく,その過程で学生が講義内容を確認できるような作業を適宜取り入れていこうと考えている。
  3. 成績評価:15週の後にペーパーテストを行うのみではなく,講義前と講義後を比較できるようにプレテスト的なテストを行うことで学習の成果を実感できるようにする。

(2)点検・評価

  1. については,新しい学習指導要領をとりあげ,現行の学習指導要領と比較しながら,変更点等を明示するような講義内容を取り入れるように改善に努めた。
  2. については,大学院では従来から取り組んできているとおり,前期の授業においても学生からの意見を多く取り入れることができた。学部授業においても,「初等中等教科教育実践2」「美術科教材論」「図画工作科教育論」等の授業において授業内で講義内容にかかわる作業課題を設定し,グループまたは個人でその課題を解決させる様な授業構成を行った。
  3. については図画工作科教育論において第1週目に講義内容に関連した簡単な課題を実施することで美術教育の内容についての各々の理解の状況を押さえておき,15週目に同様の課題に取り組ませることで受講による自己変容を学生自身が認識できるようにした。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  1. 特に本年度は,既存の学部・大学院の授業に加えて,教職大学院の担当になったこともあり,より実践的な教育内容へと,質的転換を図っていきたいと考えている。なかでも,「教科外活動の指導」に関しては,これまでにない分野でもあるので,実務か教員と連携して学生の力量が高まるように努力する。
  2. 図画工作科・美術科では,本年度も教材開発力に焦点を当てたい。「美術科教材論」「美術科教材開発研究」などの授業で教材開発能力の育成に努めるとともに,現場の教員の協力を得て,開発教材の実践化に結びつける。
  3. 学生の進路相談については,適宜応じるようにし,教育等専門的な研究内容にとらわれず,社会人の先輩としての視点に立って指導を行っていくようにする。

(2)点検・評価

  1. については,教職大学院の授業で実務家教員と連携をとり,実務家教員自身の授業映像等を取り入れながら,より具体的・実践的な授業内容の構成を試みた。学生からの評価もおおむね満足できる状況であった。
  2. については,昨年度学生が開発した題材を鳴門中学の教員に協力を依頼して実践を行ってもらい,その実施内容についてのコメントを得た。次年度もまた,実施を依頼している。また,それに関連して,本学大学院生が1名協力教員の学校で,授業補助者として1年間自主実習を行わせてもらうことが実現できた。
  3. については,昨年度に引き続き個人的に集団面接や個人面接等の模擬面接を引き受けたり,願書等の添削を行ったりしている。本年度は尼崎市の図工専科教員(図工専科教員組織の長)と連絡を取り,臨時採用を希望する本学の美術科の大学院修了生3名に対して常勤講師の採用を斡旋した。また,東京都採用が決まった大学院修了生2名については,関係就職先の教員と連絡を取り,採用後の諸事について学生が相談できる体制づくりを行った。

2-2.研究

(1)目標・計画

  1. 本年度も教師の力量形成に焦点を当て,学生及び卒業生の自己研修システムの研究に取り組んでいく。具体的には授業映像の振り返りによる気づきの分析を行う予定である。実習前の学生,実習後の学生,教員1年目,3年目,5年目,エキスパートそれぞれで授業映像のどこに着目し,どのような振り返りを行うのかという点について,分析を行いたいと考えている。
  2. 上記研究内容をまとめ,年度内に学会発表を行う。
  3. 科研分担者として取り組んできた鑑賞教育に関して学会発表及び論文投稿をする。
  4. 学内外の研究助成の公募に積極的に申請し,特に学外の外部資金をより多く調達できるようにする。

(2)点検・評価

  1. については,学部生の資料収集を行うとともに,本学特色GPの「教育実践力評価スタンダード」と関連させて分析をおこなった。その内容については,21年度発刊予定の「教育実践力評価スタンダード」に関する書籍に掲載する予定である。一方,卒業生に関する資料収集については,個人情報保護の関係から,撮影に関する協力をえることが難しかった。
      また,前大塚国際美術館の学芸員と協力してイタリアと日本の高校生にアンケート調査を行い,美術鑑賞教育に関する意識調査を実施し,国際学会で発表を行うことができた。この研究は美術教師を志望する学生の教育に大いに有用なデータであり,研究という観点からは有意義な研究が行えたと考える。同様に日本の図画工作美術教育を象徴する教材十選というテーマで,東京学芸大学の教員と協力し授業分析と分類を行い,その結果を上記の国際学会で招待発表者として発表を行っている。このように,年度当初の予定にはなかったが美術教育研究としては非常に多くの成果を上げることができた。
  2. 及び3.について本年度既に学会発表として国際学会において研究発表を2つ,招待発表を1つ行った。また,上記1とは関連性はなかったが,全国レヴェル研究発表を1つ行うと共に,1つの全国レヴェルのシンポジウムに指定討論者として登壇した。
  3. については科研費については不採択であったが,21年度の科研費に申請をおこなった。また,GP等への協力を行うとともに,4年来実施している大学開放事業への参画申請を行った。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  1. 前年に引き続き国際交流委員会委員として,本学の運営に貢献する。
  2. 暫定評価報告書作成委員として,引き続き本学の運営に貢献する。

(2)点検・評価

  1. については,本年度は国際交流委員会の任は解かれたが,新たに附属学校運営委員会及び,就職支援委員会を担当し大学運営に協力をしている。さらに,教職大学院としてFD推進委員を担当するなど大学の授業改善への協力と推進をおこなっている。
  2. については,6月までは暫定評価報告書作成委員を担当した。新たに4月よりGP申請の担当として申請書類を作成する任に当たった。

  以上のように,大学運営に精力的に協力をおこなった。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

  1. 附属学校教員と連携し,図画工作科教育分野について協同研究を進める。(附属学校)
  2. 大学と地域・社会との交流・連携を積極的に行い,社会に貢献していくために,本年度も学校開放事業としてNCAPを継続していく。文化のまちづくり審議会委員など,鳴門市からの協力要請を積極的に受ける。(社会連携)
  3. 今年度も,海外からの視察などがあれば積極的に授業を公開するなど協力していく。(国際交流)

(2)点検・評価

  1. 附属学校の森先生を主として授業実践依頼を行うなど,授業力向上と研究交流の推進に努めるとともに,本学美術コースと附属学校の図画工作部との橋渡し役もおこなった。
  2. 本年度もN*CAP事業を継続している。また,鳴門市からの要請に応じて,子どもの町フェスティバルへの協力と,鳴門市文化市民会議の委員を引き受けている。さらに,鳴門市の児童虐待防止キャンペーンへの協力要請に応じた。また,徳島新聞社,新潟日報社,新潟市図工研究会,大阪幼少年教育振興会から要請を受けてそれぞれの絵画コンクールの審査員を行った。その他,教育現場からの協力要請に対しては積極的に受諾している。(徳島県:森山小学校,明石市:図工教育研究会,鳴門市:図工教育研究会,高槻市:教育センター等)
  3. 海外からの授業公開の要請はなかった。教職大学院のGPに関連して,年度末にフィンランドの大学院教員養成の実態について海外調査を実施した。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  前期に関しては,GP申請書類のプランニングから作成の担当を行っている,結果的には採択には至っていないが,全学的な取組へ積極的に貢献した。
  また,本年度より開設した教職大学院の教員養成特別コース担当として貢献するとともに,近畿の大学を訪問し,同コースへの受験者も獲得しているなど,定員充足に貢献した。

最終更新日:2010年03月18日

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