自己点検・評価報告書(芸術系コース(音楽)) 長島真人

報告者 長島真人

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての研究活動

(1)目標・計画

  1. 音楽科教育学の担当者として,音楽科教育の成立に関わる歴史的研究と,音楽の授業実践に関わる理論的研究を継続する。
  2. 生徒指導に関わる研究を推進し,教科指導と生徒指導の統合をめざした教育研究を模索する。
  3. 附属小学校と附属中学校の研究活動に協力する。
  4. 教師教育に関わる研究を継続し,授業実践の改善を進める。

(2)点検・評価

  1. 音楽科教育の成立に関わる歴史的研究として,19世紀のアメリカ合衆国における音楽科教育成立過程の考察を進めた。その成果として,音楽教育史学会で「L・メーソンの音楽的感性の普及に関する思想 -「教会音楽に関する講演(Address on Church Music,1826)」を中心に-」という題目で研究発表を行い,当学会の紀要に論文として執筆することが出来た。また,日本音楽教育学会で「 19世紀アメリカの学校音楽教育成立期におけるS. A. エリオットの音楽教育思想 -オデオン(the Odeon)落成の記念講演を中心に-」という題目で発表することが出来た。さらに,今年度は,アメリカ合衆国メリーランド大学の音楽図書室と米国議会図書館で史料調査をすることもできた。音楽の授業に関わる理論的研究として,これまで考察してきた音楽によるコミュニケーションの事象を応用して,大学院の「教育実践フィールド研究」で,教師の言語活動や音楽活動のあり方について考察を深めることが出来た。また,ここでの理論的研究の成果は,本学の研究紀要に,「音楽によるコミュニケーションの成立をめざした歌唱指導の構想 -H.ブルーマーのシンボリック相互作用論とJ.デューイのコミュニケーション論に基づいて」という題目で論文として執筆することができた。
  2. 生徒指導に関わる研究として,生徒指導力評価スタンダードを活用し,徳島県の10年経験者研修で展開されている研修プログラムの内容と方法を吟味し,研修者の自己省察を促す評価基準を開発することができた。
  3. 附属小学校の研究発表大会の事前と事後に行われている附属・大学合同研究会に参加し,附属小学校の研究構想に参画した。特に,音楽科の授業研究では,公開授業の単元作りに参画し,事前に附属小学校の教員とのTTによる授業実践も試みた。
  4. 学部のコア科目の最後に当たる「事後指導」をFDにおいて公開し,音楽科授業力評価スタンダードを活用した授業実践,特に,ロールプレイングを活用した授業実践を紹介することが出来た。大学院の「教育実践フィールド研究」では,外国人講師を招聘して講演会をコーディネートすると同時に,音楽コースに所属する院生と教員,協力校教員との協働的な研究活動を推進していくことができた。

1-2.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

  1. 19年度に開発した音楽科の授業実践力のスタンダードをふまえながら,音楽科の教科論と授業論を扱う講義を見直す。
  2. 講義だけでなく,演習として,教材分析や指導案作り,模擬授業,ロールプレイングを活用するように工夫する。
  3. 具体的な作業課題を工夫し,多様なデータから評価が行えるように工夫する。

(2)点検・評価

  1. 音楽科授業力評価スタンダードを学部3年生のコア科目で活用し,学生たちの課題意識の触発と課題追求の活性化を促す手立てを見いだすことができた。この成果は,日本学校音楽教育実践学会で発表することが出来た。
  2. これまで教材分析や指導案作り,模擬授業等の演習は,様々な場面で試みてきたが,今年度から,教員採用試験の面接試験を想定したロールプレイングを工夫し,その成果をFDで公開授業として紹介することができた。ロールプレイングによって,学生たちの文脈把握力やコミュニケーション能力が増大してきたように思われた。
  3. 附属中学校で展開されている評価研究を応用し,具体的な作業課題の中で評価基準を設定する方法を検討した。具体的には,2で紹介したように,教員採用試験の面接試験を想定したロールプレイングによって,自分自身の授業実践力を概念化する作業課題を設定し,この作業の達成状況を明示した評価基準を活用した。この成果は,FDの公開授業で紹介し,特色GPのシンポジウムで報告した。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  1. 就職指導として,小論文や自己アピール文等の執筆方法を個別に添削指導する。(就職指導)
  2. 鳴門教育大学フィルハーモニー管弦楽団の指揮者として,学生たちを指導し,演奏行事や合宿活動等に参加する。(課外指導)
  3. オフィスアワーや e-mail を活用して,学生の相談への対応や個別指導が円滑に行えるようにする。

(2)点検・評価

  1. 小論文や自己アピール文等の執筆に関して添削指導を行うと同時に,面接試験の準備や模擬授業の指導案作成に関して,個別に指導を行った。相談にきた学生・院生たちは,いずれも教員採用試験に合格した。(就職指導)
  2. 春の新入生歓迎コンサートから,夏合宿,美波町でのウィンターコンサート,定期演奏会,卒業式での演奏に参画し,指導と指揮を行った。(課題指導)
  3. 進路や就職に関する相談に対応し,教員採用試験の準備方法や進学に向けてのガイダンスを行った。特に,外国人留学生からの相談は,特別に配慮して行い,本人が希望してた広島大学大学院後期博士課程への進学が実現できた。

2-2.研究

(1)目標・計画

  1. 継続研究である「19世紀アメリカにおける学校音楽教育研究」に関して,学会発表や論文執筆を行う。
  2. 継続研究である音楽科の授業理論の構築に関する研究を進め,学会等で発表する。
  3. 教師教育の改善を目指した研究を推進する。
  4. 教育実践力の向上をめざす学生たちのための評価スタンダードの活用方法を検討する
  5. 教科教育学研究の方法を応用しながら,生徒指導の改善に関する研究に参画する。

(2)点検・評価

  1. 継続研究である「19世紀アメリカにおける学校音楽教育研究」に関して,5月に音楽教育史学会で学会発表を行った。また,当学会に研究論文を投稿し,紀要に掲載された。さらに,11月の日本音楽教育学会でも学会発表を行った。
  2. 継続研究である音楽科の授業理論の構築に関する研究を進め,研究論文を鳴門教育大学紀要に投稿した。ここでは,特に,音楽によるコミュニケーションの特性を吟味しながら,学習指導の事象をとらえ直し,学習指導上の留意点を再検討した。
  3. 専門職GPの活動の一環として,フィンランド共和国とアメリカ合衆国から講師を招き,学術的な交流を推進した。
  4. 音楽科授業実践力評価スタンダードを開発し,これをコア科目に活用し,その成果を学会発表すると同時に,「鳴門教育大学授業実践研究 第8号」に論文として投稿した。
  5. 生徒指導力評価スタンダードを開発し,生徒指導に求められる教師の資質・能力の特性を検討した。その成果は,中日教師教育学術研究集会(北京師範大学)に出席し,研究発表として報告した。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  各種委員会や講座内での運営に参画し,その任務内容を推進する。

(2)点検・評価

  地域連携委員として,徳島県総合教育センターと交流し,特に,免許更新研修の本格的な実施に向けて,情報交換を行った。
  大学院コアカリキュラム検討委員として,アメリカ合衆国とフィンランド共和国の教師教育の現状調査を行い,双方の国から講師を招聘して,情報交換会や講演会を企画し,それらのコーディネーターをつとめた。また,「教育実践フィールド研究」の授業を立ち上げるために,具体的な運営活動に参画した。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

  1. 附属小・中学校の教育研究活動に参画し,事前の研究協議会や研究大会に参加する。
  2. 日本学校音楽教育実践学会において,学会の組織作りや研究大会の準備等に協力する。
  3. 学部の教育実践コア科目である「初等中等教科教育実践2」と「初等中等教科教育実践3」の講義を実施するために,教科内容学担当の教員と附属学校の教諭,公立学校の教諭と連携し,本学の教師教育のためのコア・カリキュラムの具体的な展開方法を工夫する。
  4. 大学院の「フィールド実践研究」の講義を展開するために,教科内容学担当の教員と附属学校の教諭と連携し,大学院のコア・カリキュラムの具体的な展開方法を工夫する。

(2)点検・評価

  1. 附属小・中学校の教育研究活動に参画し,事前の研究協議会や研究大会に参加し,助言を行った。附属中学校の研究紀要に執筆した。附属小学校の研究発表大会では,事前に附属教員とTTで授業実践を行い,公開授業に備えた。
  2. 日本学校音楽教育実践学会において,学会の組織作りや研究大会の準備等に協力した。特,参会者を増やすために,卒業生や修了生に e mail を活用して参加を呼びかけた。
  3. 学部の教育実践コア科目である「初等中等教科教育実践2」と「初等中等教科教育実践3」の講義を実施するために,教科内容学担当の教員と附属学校の教諭,公立学校の教諭と連携し,本学の教師教育のためのコア・カリキュラムの具体的な展開方法の工夫を継続的に進めた。特に,今年度は,教科専門の教員とTTで学生を指導する場面を積極的に取組み,学生たちに有益な時間を提供することが出来た。また,コア科目の授業の中で,ロールプレイングによる演習を組み込み,学生たちが自らの授業実践力を概念化することが出来るような指導場面を工夫した。
  4. 「専門職GP」の研究活動として,アメリカ合衆国のメリーランド大学を訪問し,教師教育に関する情報交換を行い,特別講演を依頼する招聘予定の講師と打ち合わせを行った。
  5. 目標設定時には想定していなかったが,徳島県の小学校の生徒指導に関わる研修活動に参画し,板野郡と阿南市の小学校の生徒指導に関わる講習会で講師をつとめた。また,松茂町の長原小学校と阿南市の桑野小学校では,校内研修会に参加し,講話や助言を行った。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  平成19年度から委託されていた「10年経験者研修モデルカリキュラム開発プログラム」(独立行政法人教員研修センター)のワーキンググループの主査をつとめ,徳島県総合教育センターと連携しながら,教員研修カリキュラム開発のガイドラインとなる「授業力評価スタンダード」と「生徒指導力評価スタンダード」,「協働力評価スタンダード」の開発と研修プログラムを構成する作業課題の開発や評価基準の設定を具体的に試み,その成果を報告書として提出することができた。

最終更新日:2010年03月18日

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