自己点検・評価報告書(芸術系コース(美術),実技教育研究指導センター) 武市勝
報告者 武市勝
1.学長の定める重点目標
1-1.大学教員としての研究活動
(1)目標・計画
- 健康上の理由もあり,従来続けていた有機溶剤を多用する平版画の割合を減らし,水性媒材による木版凹版および油性媒材によるコラグラフの研究制作に転換しているが,これを継続し,その可能性を探りたいと考えている。
CGを活用した写真製版の加工表現については現在のところ平版画を使用するしかないが,対象主題を風景から静物や人物に移行することによって版形式の移行もはかるつもりである。 - 科研費の関連,学長裁量経費にも応募しているが,水性媒材による版画教材の開発を継続して研究調査する。初等教育における版画指導の改善を目標と考えている。
- 欧州,米国,東南アジアなどにおける版画教育の実態について調査する。これは日本版画の特殊性について実証するためである。
(2)点検・評価
- 木版凹版における独創的表現が切り開けない状態のため,昨年度は写真製版の平版表現を小品において継続した。このことを反省して今年度は強く新しい表現を作り上げる意志である。方向としては,ラワンを主体に科材を補完に扱い,琳派から幕末浮世絵に至る強調表現を構想している。
- 科研費は応募したものの不採択であった。木村相談役とも話し合って,今回のような単独に近い研究がいいかそれ以外の道を探すべきか検討したいと考えている。
- 昨年度は動きがとりにくい時期であったが,入試の合間を見計らってベトナム社会主義共和国ホーチミン市立美術大学を視察させてもらった。タイ王国と続いたが,東南アジアではマレーシア,インドネシアの2カ国も調査しておきたいと考えている。
1-2.教育大学教員としての授業実践
(1)目標・計画
- 3月に現職院生と学部卒業生を送り出すが,まだ長期履修生3名と学部ゼミ生を抱えているため,そのための教採の合格と課題研究,卒業研究の充実と業績の蓄積を支援する。
- 学部および大学院における図版を多用した授業テキストを製作,出来次第印刷配布する。
- 兵庫・上越教育大学とあわせての美術分野グレードテキストの開発に着手する。
(2)点検・評価
- 修了期を迎えた長期履修生2名の内1名は東京都小学校に正式採用,もう1名は不採択のため研究生になることも示唆されたが,結局郷里での臨時採用の道を選んだ。学部卒業生1名は別コースであるが本学大学院へ進学した。3名とも版画の専門業績としては,各々の立場として十分なものを残したと言える。他教員の評価も高かった。
- 科研との絡みで作る予定でもあったが,不採択の影響もあり,完成に至らなかった。
- 実技センターが兼務にされ,美術コースの仕事が増加したことに加えて,センターそのものの活動・交流が減少した。このこともあり,グレードの全国化という方向は休止状態になっている。三大学からの呼びかけも現在はまだない。
2.分野別
2-1.教育・学生生活支援
(1)目標・計画
- ゼミ学生との週一回の研究指導および生活相談などを継続し,さらに学内での版画展開催(4月),ゼミ旅行による親睦,秋の県内・国内などの公募・コンクール展への出品を支援する。
- とくに19年度は,大学院生は2名が学内表彰を受け,学部4年生は小学校教員に正式採用が決まった(ともに現時点は内定)。今年度もこの水準の維持を激励したい。
(2)点検・評価
- ゼミ旅行による親睦を「版画ゼミ卒業・修了お別れ会」に代えた以外は,すべて予定通り消化した。大学院生2人を含めた個展,グループ展については,新聞等でも紹介され,評価を得た。
- 学内表彰はなかったが,就職,進学はほぼ予定通りであり,外部の展覧会などで活発に発表が行われ,賞などをともなう場合もあった。
2-2.研究
(1)目標・計画
- 人物または静物を素材とした水性媒材による木版凹版の制作。場合によればCGとPS版による平版画の制作。5色刷り10点程度。
- 科研費取得を前提として水性媒材による版画教材開発の動画作成。
- 海外の版画教育の研究調査活動。
(2)点検・評価
- 風景(水面)の水性媒材木版凹版,およびCGとPS版による平版画「ウチノ海風景」の制作を制作発表した。ほぼ予定通りであるが,作品の目的性,完成度などにおいて十分な満足に至っていない。
- 不採択のため人件費等が捻出できず,計画は遂行できなかった。
- ベトナム社会主義共和国ホーチミン市立美術大学で視察調査を行った。同大学での設備は十分とは感じられなかったが,施設や意欲などに今後のベトナム現代美術の可能性を見ることができた。
2-3.大学運営
(1)目標・計画
次年度各種委員は現時点では未定であるが,決定後は委員会を通して運営に関わる所存である。
(2)点検・評価
学部入試委員,および中期目標・計画(教育分)ワーキンググループとして学内運営に関わった。
2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等
(1)目標・計画
- 附属学校との特別な連携は予定していない。ただ,ゼミ生が4人以上になる予定なので,協力校や附属などでの教育実習の際には,挨拶を含めた指導教員との交流が必要と考えている。
- 阿南市での委嘱活動は一応終了したが,以後も不定期の要請があるとのことであり,連携を維持し続けたいと考えている。
(2)点検・評価
- 研究指導授業等で,附属中学校,協力校としての松茂町喜来小学校に伺い,指導助言を行った。
- 今後の市の文化活動推進について1月に市長と会談した。経済危機による税収減の状況などについて意見を交換した。
3.本学への総合的貢献(特記事項)
総合的貢献に関連する業務覚え
大学院3名,学部2名というゼミの態勢は,前年度より1名少ないが,修了・卒業生が3名いたこともあって気を遣い,かつ世話を焼く時間は多かった。学生からの携帯メールでの問いかけはたびたびあった。用具や材料,技法に関することだけでなく,将来の相談から心身の問題にまで至り,かなり振り回された思いである。
必要以上ではなかったかとは思っていないが,自分の研究時間の確保など,以後留意したい。
最終更新日:2010年03月15日