自己点検・評価報告書(自然系コース(理科)) 早藤幸隆

報告者 早藤幸隆

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての研究活動

(1)目標・計画

  環境問題,エネルギー資源問題,食糧問題という地球規模の現代的課題に対して「物質の学」として科学が担う役割は大きい。身の回りの全ての現象・事柄の根源にある様々な階層における物質を正確に取り扱う「確実性のある科学技術」を構築する科学実験教材の開発に取り組む。本年度は,野球用バット材アオダモの樹皮に含まれる蛍光物質を用いて,物質の学における科学研究のプロセス及び分子軌道法による計算科学を効果的に導入した科学実験教材の開発を進める事を目指している。

(2)点検・評価

  野球用バット材アオダモ樹皮に含まれる蛍光物質を用いた「確実性のある科学技術」を構築する科学実験教材の開発に取り組んだ。まずアオダモの樹皮から2種の蛍光物質(エスクリン,エスクレチン)を単離・構造決定した。そして,エスクリン,エスクレチン及び身近な蛍光物質を用いて,「ものが溶けるとは」及び「色と蛍光について」をテーマとする小学校理科における化学領域の繋がりや身近な科学における内容を総合的に加味し,教材全体の枠組みを考えながら科学実験教材を開発・完成した。更に,開発教材を用いて小学校第五学年を対象とする授業実践により検証し,児童及び教師に対するアンケート調査の解析結果から本教材の妥当性を評価した。

1-2.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

  豊かな教育実践力とは,学問の基礎・基本的知識や原理・情報等の確実な習得の上に裏付けられた指導力である。そのため理科教育の実験実習において,1.学習者が実験体験を通して,科学研究のプロセスを経験し,新しい概念や科学的基礎・基本事項及び実験操作等を理解・習得出来る学習内容,2.高等教育レベルにおける「研究及び探究のプロセス」という科学研究のシステムを効果的に導入した学習方法,3.自己評価,相互評価及び教員評価を総合的に判断する成績評価に重点を置きながら,学校現場において活用可能で実効性のある教材化を考慮し,授業実践に取り組む。

(2)点検・評価

  研究及び探究のプロセスという科学研究のシステムを効果的に導入し,学習者の科学的に探究する能力と態度の育成を目指した「身近な有機化合物の酸化還元反応を用いた広領域型科学実験プログラム」を開発し,学生実習化学実験IIにおいて授業実践した。本体験を通して,学校現場への導入を意図した実験教材の開発における考え方と展開の方法と共に,自己評価,相互評価及び教員評価を総合的に判断する成績評価に重点を置いて取り組み,受講者の成果発表から学習効果を確認すると共に,受講者のアンケート結果から好評を得た。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  1. 学生の主体的な講義及び実験実習への参加を促すために個別面談や討論を通じて,講義及び実験実習を積極的に補助する。
  2. 学生の科学的に探究及び思考する能力と態度の育成を目指して,理科教材開発研究並びに教育実践研究に関する理解を深められるよう授業及び教育研究活動を積極的に補助する。

(2)点検・評価

  1. 学生実習化学実験IIにおいて,学生のレポート作成指導の個別面談やグループ討論・集団面接を積極的に補助しながら,実習内容に関する理解度を高める事に努め,授業評価アンケートで好意的且つ高い評価を得た。
  2. 大学院生の実践教育研究における「身近な素材を用いた広領域型科学実験プログラムの開発と実践的応用」に関する研究とその成果報告において補助し,日本科学教育学会第32回年会(岡山理科大学,2008.8)にて連名で2件発表すると共に,学部生及び大学院生の科学的に探究する能力と態度の育成に大きく寄与出来た。

2-2.研究

(1)目標・計画

  1. 研究テーマ「種々の身近な素材を用いた科学実験教材の開発研究」に関する論文をまとめ教育学会誌に投稿する。
  2. 学内外の研究助成の公募に積極的に申請し,教育研究資金の調達に重点を置く。

(2)点検・評価

  1. 日本理科教育会「理科教育学研究」誌に「身近な色素を課題とした小学校における広領域型科学実験プログラムの実践」を投稿した。現在審査中である。
  2. 科学研究費補助金若手研究(B)に申請したが,採択されなかった。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  学部及び大学院に関する入学試験(センター試験を含む)の試験監督者を担当し,講座並びに大学の運営に積極的に貢献する。

(2)点検・評価

  • センター試験の試験監督者を担当し,理科コース並びに大学の運営に貢献した。
  • 安全管理委員会及び臨床研究倫理審査委員会の両委員を担当し,大学の運営に貢献した。
  • 危険物取扱者として本学の危険物倉庫(有機溶媒等の保管室)の管理者を務めた。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

  1. 小学校・中学校・高校と大学との連携による授業・教育実践を積極的に行い,社会に貢献していきたい。(社会連携)
  2. 留学生の授業及び教育活動を補助していきたい。(国際交流)
  3. 科学的に探究する能力と態度の育成を目指した種々の身近な素材を用いる科学実験教材の開発に関する教育研究活動を通して,その研究成果を学会発表する事により社会的アピールに精力的に取り組む。また,高校・大学連携の教育実践の実施を目指して,開発した実験教材を教育現場で実施可能な形に改良後,構築した実験プログラムの有効性を検証する実践活動を通して,地域社会へ積極的に貢献する。(社会連携)

(2)点検・評価

  1. 鳴門教育大学 大学開放事業(Jr.サイエンス2008)の公開講座「やさしい環境化学実験~光触媒と活性炭による浄化の機構を探る~」を小・中学生20 名(親子参加型)を対象に実施し,社会貢献の一環として本学の教育研究の成果を社会に発信した。
  2. 化学教室が実施するセミナーを通した教育研究指導及び修士研究テーマに関する学術文献資料の提供により,大学院理科コースに所属する留学生の教育研究活動を積極的に補助した。
  3. 学習者の科学的に探究する能力と態度の育成を目指した「天然及び合成色素を用いた科学技術力と論理的思考力を育てる科学実験研究の体験」を開発し,教育現場で実施可能な形にプログラムを改良し,サイエンスパートナーシッププロジェクト(SPP)において徳島市立高校理数科コース40名教育実践により,プログラムの教材化としての有効性を確認した。また,徳島県立城南高校スーパーサイエンスハイスクール(SSH)化学コース10名を対象とし,「コレステロールエステルの合成実験」,「化学反応を通して元素の真実を探究する科学実験」を課題とする実践授業を実施し,高校・大学の連携授業を通して地域社会へ積極的に貢献出来た。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  • 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究「創造的知の創出を育む先進的科学技術教育と教育課程」を課題とする領域運営事務局を担当し,木村捨雄研究代表並びに各大学の計画研究代表者・分担者,連携研究者と連携・協力しながら領域計画書を作成し申請した。残念ながらヒアリング対象に至らなかった。
  • 平成20年度小学校教員資格認定試験(教科に関する科目:理科)における問題作成及び問題冊子作成を担当し,大学運営・業務に貢献出来た。
最終更新日:2010年03月15日

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