自己点検・評価報告書(言語系コース(国語)) 原卓志

報告者 原卓志

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての研究活動

(1)目標・計画
  1. 日本語における要求表現の歴史的研究を構想している。本年度は,要求表現の内,中世になって登場する依頼の表現形式「―てたべ」型について,その表現性についての研究成果を論文として公表する予定である。また,近世の要求表現形式について,演劇台本からその資料を収集・分析する予定である。
  2. 角筆文献研究がある。近世徳島の寺院における僧侶の修学実態を,伝存資料への書き入れを基に考察し,角筆文献の位置づけを行う計画である。本年度は,阿南市地蔵寺所蔵文献の調書作成のための追加調査を行い,所蔵文献目録を完成させる予定である。また,角筆使用の原点を探るために,京都醍醐寺における宋版一切経の調査(科研費による)を始めた。本年度は,3年計画の2年目として継続する。
(2)点検・評価
  1.の研究について,論文としての公表は年度内にはできなかったが,現代語における認知意味論,語用論の知見を援用するという新たな発想を得たことは,研究の上での進歩であったと考えている。現在は,この発想からの分析を進めている。
  2.の角筆文献研究では,京都醍醐寺において,2回(計12日間)にわたり,宋版一切経調査(科研費による)を行った。また,東大寺図書館では3回(計7日間)の奈良写経・唐写経の調査を行った。特に,唐写経「大安般守意経」に発見した角筆符号について,全巻の角筆書き入れを調査し,その解読を進めている。また,阿南市地蔵寺所蔵文献の調書作成のための追加調査を終了し,個々の文献についての分析を進めている。

1-2.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画
  平成19年度に,小学校学習指導要領,同解説で求められる言語事項の系統性と,小学校国語科教科書(光村図書)において,その言語事項の指導が,どのような教材によって実現されるのかについて研究した。この研究によって,これまで経験的に把握していた小学校国語科を担当する教員に必要な語学的な知識や,その運用能力のあり方が具体的に見えてきた。これを踏まえて,次のような取り組みを考える。
  • 授業内容:その授業内容について,小学校(あるいは中学校)で指導されるべき言語事項のどこに位置づけられるのか。また,それは,どこに(たとえば,何年生のどのような単元に,どのような言語事項の指導へと)展開していくのかなどが見通せるように配慮する。
  • 授業方法:語学的知識を,児童・生徒の発達段階に応じて,かみ砕いて理解させることができ,また,児童・生徒の言語生活(学習者の言語生活)の実態に即して捉えることができるように,模擬授業・ディスカッションを積極的に取り入れる。
  • 成績評価:自己評価・相互評価を成績評価に組み入れることを通して,主体的な授業参加につなげるとともに,授業観察の方法を身に付けさせる。
(2)点検・評価
  1.は,語学・文学総合演習Iにおいて,言語事項の学年別系統表を提示し,当該授業内容について,小学校(あるいは中学校)で指導されるべき言語事項のどこに位置づけられ,どのように展開していくのかなどが見通せるように配慮した。
  2.は,特に語学・文学総合演習I,国語学IIにおいて,模擬授業・ディスカッションを積極的に取り入れる授業によって実施した。
  3.は,国語学IIにおいて実施しし,自己評価・相互評価を毎時間提出させ成績評価に組み入れた。その記載内容から,授業構築において必要な事項とともに,授業観察の方法をも身に付けさせることができたと考えている。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画
  教育に関しては,1-2に記述したことのほかに,国語学(現代語)担当教員と連携して,教師教育に資する国語学授業のあり方を見出すために,学部4年間の国語学関連カリキュラムを見直し,その系統化を図る。
  学生生活支援に関しては,特に就職支援活動(教員採用試験対策)を,積極的に行う(平成19年度なみの活動を目指す)。また,学生の精神的・肉体的な健康にも目を配り,学生への声掛けを積極的に行いたい。
(2)点検・評価
  国語学(現代語)担当教員と連携して,学部4年間の国語学関連カリキュラムの授業内容について協議し,本年度の進め方についての方針を定めた。
  就職委員会員として教員採用試験に関する模擬面接・模擬授業の指導を4回にわたって担当するとともに,希望する学生に対して個人的な模擬面接・模擬授業指導,自己PR文添削などを行った。国語コースの学部生8名,院生4名が教員採用試験で合格したことは,その成果と考えている。

2-2.研究

(1)目標・計画
  1-1に記述したもののほかに,国語学,日本語教育担当教員と共同して,徳島県方言の語詞を取り上げて,その意味・用法の記述研究を進める。 その成果の一部を本年度中に論文として公表したい。
(2)点検・評価
  1-1に記述したもののほかに,国語学,日本語教育担当教員と共同して,徳島県方言の語詞を取り上げて,その意味・用法の記述研究を進め,その成果の一部を「徳島方言動詞「めげる」の意味分析-意味記述と世代差の分析を中心に-」と題して『語文と教育』第22号(平成20年8月)に発表した。
  また,同じく国語学,日本語教育担当教員と共同して,徳島方言動詞「つまえる」についての研究を進めている。

2-3.大学運営

(1)目標・計画
  各種委員会委員などを通して,本学の運営に協力する。
(2)点検・評価
  就職委員会委員,学生支援委員会委員として,本学の運営に協力している。
  また,教員選考委員会委員として,3つの選考に携わった。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画
  1. 学部附属(国語科)連絡協議会の一員として,研究協議に参加する。
  2. 講座内の教員と連携して,公開講座を開講する。
  3. 県内の小・中・高等学校などからの授業・講演等の協力要請に対しては,積極的に応ずるよう努める。
(2)点検・評価
  1. 学部附属(国語科)連絡協議会の一員として,研究協議に参加した。
  2. 講座内の教員3名とともに,公開講座「知ってるようで知らないことばの世界-日常のことばを解剖する-」を開講した。
  3. 徳島県立総合教育センターの依頼による「平成20年度国語指導力向上講座」(平成20年8月5日)の講師をつとめた。また,「阿波・吉野川市中教研国語部会授業研究会」(平成20年10月28日)の指導・助言を行った。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  本年3月卒業生のクラス担当教員として,本年度は特に学部学生の教員就職に取り組んだ。詳細は2-1に記した通りであるが,学生14名中,8名が正規合格し,4名が臨時採用となり,残る2名が本学教職大学院へ進学し,教員を目指している。教員就職率では進学者を除き,100%を達成した。
  7月4~7日に韓国京仁教育大学を訪問,第6回韓日国語教育セミナーに参加した。このことによって,本学と京仁教育大学との連携に少なからず貢献できたと考えている。
最終更新日:2010年02月17日

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