自己点検・評価報告書(人間形成コース) 梶井一暁

報告者 梶井一暁

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての研究活動

(1)目標・計画
  1. 本学のめざす教育実践学構築に資するため,教育学と歴史学を架橋する教育史研究のあり方を検討する。
  2. 教育の範囲を学校中心に狭くとらえず,教育・文化・宗教の多層的な営みに関する歴史的掘り起こし作業を進める。
  3. 近世日本における在村知識人としての僧侶,地域文化センターとしての寺院の性格について,教育史研究の観点から明らかにする研究を行う。
(2)点検・評価
  1. 教育史研究に関する方法・資料論を検討した。近年イギリスの教育史研究で進展の著しいビジュアル・ヒストリーの方法,オーラルデータや写真データを積極利用した研究を調査し,基礎文献を収集するとともに,バーミンガム大学の教育史担当教授と研究交流を進めた。
  2. 教育に関する営みを多層的にとらえる研究視角により,学校の歴史的被規定性をふまえた人間形成と学校の関係史について再考した。とくに非学校的空間としての四国遍路の有する人間形成空間としての意味について実践的に研究を進めた。
  3. 科学研究費補助金を得て,近世寺院や僧侶に関する教育史的研究に取り組んだ。寺院や僧侶をテーマとする視角から,教育史研究史の批判的検討を行った。

1-2.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画
  1. 学生が教育の歴史の角度から現在の教育状況を把握・検証する視点をもてるよう,単なる過去の事象としての教育史ではなく,連続する事象としての教育史を提示する。
  2. 学生の理解や関心を把握して授業を進めるため,授業に対する意見や質問を記すカードを作成し,これを毎時間配布し,次回の授業で応答する。授業改善の資料ともする。
  3. 中間発表や中間レポートを設定し,学生の学習プロセスを成績評価に反映させる。
(2)点検・評価
  1. 学部「学校と人間形成」,大学院「人間形成文化史研究」において,近年イギリスで進展しているビジュアル・ヒストリーの手法を取りいれ,教育史研究の現在性を示す授業構成および資料提示を行った。
  2. 学部「人間形成原論」「学校と人間形成」,大学院「人間形成文化史研究」において,毎時授業カードを活用した。これにより,学生の理解度や疑問点を把握することができた。また,授業カードに書かれた質問などについて,翌週の授業でコメントすることにより,学生の授業関心を保持することができた。
  3. 大学院「人間形成文化史研究」において,学生がテーマを設定して中間発表を行う課題を設けた。これにより,学生の持続的な学習への取組を引き出すことができた。また,その中間発表への学生支援や相談を通じ,ペーパーテストではみえにくい,学習経過を把握し,成績評価に反映させることができた。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画
  1. 教育史に関する授業において,とくに近年のメディア史研究の成果をふまえ,教育の歴史における連続・非連続の位相について,学生が理解を深められるよう,授業を進める。
  2. 学生が歩き遍路を体験する授業において,体験がその場限りの充実や満足におわらず,地域理解教育や情操教育につながる実践となるよう,支援する。
  3. 学生が学会や研究会で発表できる水準に達するよう,研究指導を行う。
(2)点検・評価
  1. 教育のメディア史や深層文化史の研究動向をふまえ,とくに文字,音声,教具,文具,写真等に着目した教育のモノ・コト史に関する成果を活かし,授業構成を図った。
  2. 現代GPの四国遍路プロジェクトと連携し,体験授業を通じて四国遍路への関心を深めた学生に対し,歩き遍路実践ボランティアやパネル発表等へと連続するプログラムを開発することができた。
  3. 院生2人を指導し,中国四国教育学会(於愛媛大学)で研究発表させた。発表をもとに論文も同学会の紀要に投稿し,掲載された。この指導を修士論文作成にも活かした。

2-2.研究

(1)目標・計画
  1. 中心テーマである寺院や僧侶に関する教育史的研究を進め,関連学会で発表し,論文にまとめる。
  2. 学内外の研究助成の公募に積極的に申請し,とくに学外資金の調達に重点をおく。
  3. 科学研究費補助金・若手研究B「近世人間形成に果たす宗教メディアの意義」の課題を遂行するため,京都,広島,名古屋等で資料調査を行い,考察をまとめる。
(2)点検・評価
  1. 教育史研究における寺院や僧侶の位置づけが不明確である研究史を批判的に検討し,教育史研究として寺院や僧侶へアプローチする意義と課題を明らかにした論文をまとめ,『日本教育史研究』に発表した。
  2. 科学研究費について,若手研究B(研究代表者)による補助金を得るとともに,新たに基盤研究B(研究分担者)による補助金も獲得した。
  3. 若手研究B「近世人間形成に果たす宗教メディアの意義」の課題遂行のため,近世地域文化センターとしての寺院という観点から寺院をとらえ,寺院文書調査を進め,資料を分析した。

2-3.大学運営

(1)目標・計画
  1. 前年度にひきつづき,就職委員会委員として,本学の運営に貢献する。
  2. 学校教育コースの担任として,コース学生(4年次生)を引率する。
  3. 現代GP実行委員会委員として,「遍路文化を活かした地域人間力の育成」のプログラムを運営・実施する。
(2)点検・評価
  1. 就職委員会委員として,とくに教員採用試験対策の模擬面接・授業に取り組んだ。
  2. 学校教育コース4年次生の担任として,とくに前期は教員採用試験に向けた模擬面接の自主講座を開き,就職支援を行った。
  3. 現代GPの実行委員として,学部学生歩き遍路授業の立ちあげ,学生ボランティアによる子ども歩き遍路,高大連携・中大連携による歩き遍路,シンポジウム報告等を実施し,GP事業の推進に尽力した。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画
  1. 地域の教育研究機関と連携し,地域人間形成作用に関する共同研究を進める。
  2. 報道機関の教育文化事業に協力し,新聞の教育・学習欄への記事提供を行う。
  3. 日中教師教育学術研究集会準備委員会委員として,日中交流事業に貢献する。
(2)点検・評価
  1. 阿南市羽ノ浦中学校の片山純州教諭および木内陽一教授と共同研究を行った。その成果を共著論文としてまとめ,『鳴門教育大学学校教育研究紀要』に発表した。
  2. 岐阜新聞社と連携し,同紙の「中学生の広場」に教育コラムを3本執筆・提供した。また,学生にも執筆指導し,学生のコラムが1本掲載された。
  3. 日中教師教育学術研究集会の計画に準備委員として参画したが,当日の研究発表には,イギリスに在外研究中のため,出席できなかった。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  1. 現代GP「遍路文化を活かした地域人間力の育成」の事業として,学部歩き遍路授業の開講,学生ボランティアによる子ども歩き遍路,高大連携および中大連携による歩き遍路,神山町の生活史・教育史聞き取り調査(町田哲准教授と共同),シンポジウム報告等を企画・実行し,事業推進のため尽力した。
  2. 大学教育の国際化加速プログラムに「現代の教育ニーズをふまえた教員養成」を申請し,採択された。バーミンガム大学(イギリス)において,大学院レベルでの1年課程の教員養成コースの実態を調査研究し,大学と小学校のパートナーシップにもとづく教育の専門職育成に関する報告書をまとめた。

 

最終更新日:2010年02月15日

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