自己点検・評価報告書(特別支援教育専攻) 井上とも子

報告者 井上とも子

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての研究活動

(1)目標・計画
  • 科学研究費が採択され,19年度より分担研究者として「地域の特性に応じた特別支援教育コーディネーター養成事業の確立に関する研究」を進めているが,20年度はこれをさらに進展させ,遠隔地にある学校の特別支援教育コーディネーターを支援し,その資質向上を図るため,IP電話とウェッブカメラの使用によって行っているe-コンサルテーションの効果検証と資質向上への影響について研究を進める
  • 徳島県内では高機能発達障害幼児に対する修学前療育が手薄であり,幼児期における「通級による指導」の就学への影響,効果を検証すべく,療育的指導実践を開始する。
(2)点検・評価
  • 19年度より科学研究費を受け,分担研究者として「地域の特性に応じた特別支援教育コーディネーター養成事業の確立に関する研究」について,研究を進めている。
  • 療育的指導実践においても就学前指導の在り方や,指導者の指導技術を高める大学院における指導の在り方について,研究を始めており,前者においては,授業テーマである「幼児期における通級による指導の在り方」を検討し,就学への影響,効果を検証すべく,実践を進めた。
  • 戦略的教育研究開発実施体制の中の,東京学芸大学等,6大学が進める「人材育成実行委員会運用モデル検討部会チーム」の一員となり,地域の子ども支援人材育成とその運用モデルの研究に取り組んだ。
  • 日本教育大学協会助成金(平成21年度)に応募した。結果は不採択であった。

1-2.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画
  1. 授業内容:教育現場や教育委員会の現状と課題など,これまでの教育経験・学校指導経験を生かし,事例を盛り込みながらわかりやすく実践的な内容を編成する。特別支援教育には視覚的な手がかりを授業の中に盛り込むことは不可欠であり,「子どもが分かるプレゼンテーション」を目標に視覚的手がかりの作成の仕方等も含めた授業内容を校正する。
  2. 授業方法:講義形式の授業の中に必ず「次週までの課題」を設け,学生自らの問題意識・課題意識を持たせながらその解決に向かう方法を学べるよう,演習形式を組み合わせる。また,コンピューターを活用したわかりやすいプレゼンテーションに心がけ,プレゼンテーション方法を示範することによって,教育現場での授業の進め方に役立つような授業展開を図る。学生から出された質問や問題について,その場で討議し,スーパーバイズを行う問題解決学習を取り入れる。
  3. 成績評価:大学院授業の評価は日々の努力が評価に反映するよう,発表内容,協議態度も50%の評価対象とする。後の50%は提示テーマに沿った毎授業毎のレポートの内容を論理性と共に自身の考察と教育実践への具体的提案など鑑み評価する。学部生授業では,10%の出席状況,10%の発表内容,80%の授業内容に添った試験によって評価する。
(2)点検・評価
  1. 授業内容:これまでの教育経験・学校指導経験を生かし,事例を盛り込みながらわかりやすく実践的な内容の授業を展開することができた。今年度新たに受け持った学部授業の「重複・LD等教育総論」において,受講生の評価が全項目平均4で,満足度の高い授業と評価された。大学院の授業においても,直接子どもの指導をする臨床指導(教育実践的授業)では,指導前には指導案の点検・指導を行い,指導後には授業分析を指導時間(1時間半)以上に時間をかけて,スーパーバイズし,次の指導に備えるよう指導をした。大学院生は,どの授業よりもこの臨床指導の授業が,ためになり,現場に戻ってすぐに役立てることができると感想を述べている。
  2. 授業方法:学部授業では学習態勢が身についていない学生が多く,授業の展開方法に工夫をし,学習環境の設定等に配慮した展開に心がけた。大学院の授業では,毎週,課題を出し,授業開始時に発表することからはじめ,特別支援教育コーディネーターの資質として重要なプレゼンテーションの力と会議の進め方など実践力を養うことを主とした授業のねらいとして展開できた。自ら調べる・学ぶ態度や課題意識が定着し,授業評価も高いものであった。
  3. 成績評価:計画通り,進めることができた。学部授業では,欠席者は少なかったが,授業内容に添った試験の成績は良好と言えず,授業内容の理解が十分とは言えなかった。内容の精選と指導方法の「理解」に焦点を当てた工夫が,来年度,さらに必要である。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画
  • 学部2年生の担任であり,大学生活や学業が円滑に,安全に送れるよう随時コンタクトを取り,個々の相談に応じるなどきめ細かな支援に努める。
  • 卒業研究や課題研究に向けた指導的対応として,学生一人ひとりの学ぶ意欲や関心を引き出し,タイムスケジュールを示すなど,順調に研究が運ぶように取りはからう。
(2)点検・評価
  • 9月の合宿を通じ,学部2年生の生活面や学習面,教員採用に向けた課題について相談にのるなどできた。学年末,ゼミ決定のための各研究室周りを勧める際に訪問の仕方や研究テーマの決め方について支援・指導した。
  • 学年末,日常生活上の問題についても相談に応じることができ,同専修の学生にも協力を求めるなど,問題の解決にあたることができた。その後,周囲の学生の協力を得,やや引きこもりがちな状況から脱するなど,実態の好転が得られた。
  • 指導する院生は全員現職教員であるため,家庭があったり,単身で本学に学んでいたりする。それぞれの生活リズムが異なるため,個別的な指導時間を十分にとり,各研究のまとめに向けて指導をした。それぞれの学生は,健康を崩すことなく,タイムスケジュールに添って修士論文の作成を進めることができ,熱心に取り組んだ論文の仕上がりに満足と自信を持って修了することができた。

2-2.研究

(1)目標・計画
  • 特別支援教育コーディネーター養成・資質向上をめざし,大学より遠隔地域の学校および特別支援教育コーディネーターとのe-コンサルテーションを進める。
  • 当養成分野を終了した特別支援教育コーディネーターを中心にして各地域での勉強会開催を奨励し,特別支援教育講座(専攻)がそのとりまとめを行うなど,連携システムの構築を進めるなど,地方自治体の特性を活かした連携システムの在り方について研究を進める。
  • 就学準備教室と称した幼児期の発達障害児を対象の療育を特別支援教育コーディネーター実地教育の一環の中で行い,発達障害児の指導方法の研究を進める。
(2)点検・評価
  • 大学より遠隔地域の学校および特別支援教育コーディネーターとのe-コンサルテーションは,特別支援教育コーディネーターの養成分野専任としての研究課題であり,今年度も特別支援学校や通常の学級の教員,通級指導の担当者とe-コンサルテーションを進めることができた。
  • 19年度より科学研究費を受け,分担研究者として「地域の特性に応じた特別支援教育コーディネーター養成事業の確立に関する研究」について,県下市町村の教育委員会に対し,地域特別支援教育連携協議会設置等,特別支援教育推進事業に関わるアンケート調査と,徳島県特別支援教育コーディネーター養成研修会の参加者へのアンケートを行い,今後の研修の在り方について分析検討した。この二つのアンケート結果は,県,特別支援教育課に提言として,提出した。さらに,地域を結ぶネットワーク作りを中心に9月,特殊教育学会第46回大会において自主シンポジウムを企画,開催し,アンケート結果に基づく,徳島県の特別支援教育推進に係るネットワーク作りについて発表した。
  • 特別支援教育専攻の研究プロジェクトにおいて開催されたシンポジウム「発達障害への理解と早期からの対応」において,大学における就学前指導を紹介し,その効果と必要性を論じるなど,就学前指導の在り方についての研究を進めた。

2-3.大学運営

(1)目標・計画
  • 学部教務委員会に所属し,特別支援教育専攻の一員・代表として会議に参加し,議案内容等滞りなく学部生の教育・生活に支障のないよう,専攻と教務の橋渡しをするなど,責任を持って委員会業務を行う。
  • 学生確保のため各地の研修会の講師依頼を受け,特別支援教育コーディネーター養成分野の目的や内容について,発達障害児の理解とともに啓発を行う。
  • 特別支援教育士スーパーバイザーの資格を取得したため,特別支援教育コーディネーター分野の授業単位が特別支援教育士認定単位のポイントになることを県内外に知らせ,より多くの院生が受験するよう図る。
(2)点検・評価
  • 計画通り,委員会業務を教務課との連携において円滑に行うことができた。
  • 県外の教育相談や研修会講師を引き受け,他県の教育委員会指導主事に現職教員の研修派遣について他県の事情を聴取したり,長期派遣箇所に本学を加えるように話を進めたりすることができた。県内外,研修会の講師をする場合に,入学案内を配布したり,話の中に大学院の案内を盛り込んだりし,定員充足に向けて努力した。
  • 特別支援教育士スーパーバイザーの資格を活かし,特別支援教育コーディネーター分野の授業単位が特別支援教育士認定単位のポイントになるよう,日本LD学会にポイント認定申請をし,受理された。このことにより,定員充足に貢献するべく努めた。
  • 戦略的教育開発室研究開発検討部会委員を委嘱され,FD関連で「情報収集型タスクフォースによる授業改善」を名称として,その取り組みを「質の高い大学教育推進プログラム」に申請し,外部資金獲得に努力した。結果は,不採択であった。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画
  • 県教育委員会(徳島県と兵庫県)との連携として特別支援教育推進事業の専門家チームの一員となる。
  • 本学アドバイザー派遣事業に登録し,積極的に県内の学校における特別支援教育充実への支援を進める。活に支障のないよう,専攻と教務の橋渡しをするなど,責任を持って委員会業務を行う。
  • 附属特別支援学校の地域支援部との連携により,県内の幼稚園から高等学校までの特別支援教育の充実に力を注ぐ。
  • 徳島市内の通級指導教室担当教諭を中心に勉強会を隔月に実施しているが,今後も継続し,発達障害児の指導に携わる教員の資質向上に寄与する。
  • 兵庫県淡路島における「淡路地区地域連携協議会」の委員長として,地域の特別支援教育の連携を図る。
(2)点検・評価
  • 附属特別支援学校が主催する事例検討会に助言者として参加し,地域支援部員の地域の保育園・学校への支援に係る実践力の向上に寄与した。このほか,附属主催の地域の学校教員対象研修会の講師を務めたり,研究発表会時のシンポジウムの司会を担ったりなど,附属特別支援学校や地域支援部との連携強化を図ることができた。また,特別支援教育コーディネーターの実地教育を附属特別支援学校で行い,教員数の少ない附属特別支援学校に院生(現職)を派遣し,教員の仕事の軽減を図る支援を行うなどの連携にも努めた。
  • 徳島県教育委員会(徳島県と兵庫県)との連携として特別支援教育推進事業の専門家チームの一員として,発達障害児の教育相談や学校支援に努めた。
  • 本学アドバイザー派遣事業に登録し,年間10回の最大限度派遣回数,すべてを担うことができた。
  • 徳島市内の通級指導教室担当教諭を中心に勉強会を隔月(年間6回)に実施し,発達障害児の指導に携わる教員の資質向上に寄与することができた。
  • 兵庫県淡路島における「淡路地区地域連携協議会」の委員長として,円滑な地域の特別支援教育の連携を図った。
  • 徳島県教育委員会特別支援教育課が推し進める「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業に係る総合推進事業運営会議」委員を県より委嘱を受けた。
  • 徳島県地域家庭教育推進協議会委員を県より委嘱を受けた。
  • 徳島県総合教育センターの特別支援相談課が企画運営する特別支援教育コーディネーター研修,通級指導教室担当者研修において,多数研修講師を行い,徳島県教育委員会教員職員免許法認定講習会において「重複・LD等教育総論」を受け持ち,講師を務めた。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  • 科学研究費申請が平成19年度に採択され,「地域の特性に応じた特別支援教育コーディネーター養成事業の確立に関する研究」について,2年目として市町村教育委員会ならびに特別支援教育コーディネーター養成研修受講者へのアンケート結果と課題について徳島県教育委員会特別支援教育課に提言するなど,外部資金獲得と共に徳島県の教育への本学の寄与を一部分でも担えることができ,本学への貢献ができた。
  • また,附属特別支援学校路との共同研究を推進するために,附属特別支援学校のセンター的機能をテーマに,日本教育大学協会研究助成金に応募した。結果は不採択であったが,今後の外部資金の獲得に向けて努力していきたい。
  • 研修会講師や各種推進委員会委員を務め,徳島県教育委員会との連携を図り,本学の進めようとしている地域連携,地域貢献に一役を担うことができた。

 

最終更新日:2010年02月15日

お問い合わせ

経営企画戦略課
企画・評価チーム
電話:088-687-6012