自己点検・評価報告書(国際教育協力コース) 石村雅雄

報告者 石村雅雄

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての研究活動

(1)目標・計画

現在,我が国の教育システムは,その発足以来と言っていい大きな改革の時期に入っている。それは,学ぶ側からの,学ぶ意欲を出発点とする教育システムの構築を大枠として,従来の,教える側からの,国家・社会からの必要性を出発点とする近代教育システムを凌駕するものとして構想される。
石村は,この課題に対し,大学教員もまた教員である,と言う当然でありながら,(大学教員は,教員の教員であって,それを支えるのは研究者と言うことであるということから)見逃されてきた前提に立って,大学教育の変革を手掛かりとした教育システム構築研究を行う。
本年度は,これまでに石村が収集してきたデータの整理・分析を行うとともに,石村の担当する講義・演習において実践的に課題の解明に取り組むこととしたい。
併せて,近代教育システムの発展が十分ではない地域における教育システムの構築を通じても,先の課題の解明に取り組みたい。具体的には,ベトナム等の発展途上地域における教育システム整備の実践分析を通じて,近代教育システムの功罪を明らかにする形で,取り組みたいと考えている。

(2)点検・評価

昨年度学部学生を対象に実施した授業「教育制度・経営論」(受講者119名)で使った「何でも帳」(毎回の授業の度に学生にコメントを書いてもらい,翌週までに石村がそれに対するコメントを付し(119名分全部に),学生に返却する。授業は,この「何でも帳」の抜き刷りを使って行われる)の記述の分析を実施している。学生の授業参加意欲はこの仕組みにより非常に高まり,石村が予想しなかった授業のやり方の提起も含め様々な提起も為された。このやり方は,教職大学院の授業でも採り入れて行われ,併せて分析を行っている。
学ぶ意欲を出発点とする教育システムの構築に係る発展途上国研究に関しては,ベトナムにおける試行的授業の実施,フランス語圏アフリカ諸国からの研修生とのインタビューを通じて,基本的資料を収集できた。これにより,ベトナムでは,教員養成に必要とされる,とりわけ,実技的教科(図画工作,音楽)の指導能力の向上について,その支援目処を立てることができた。

1-2.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

先にも述べたとおり,大学教員は(当然教育大学教員も)教員である。従って,自らの教育実践は,そのまま,受講生としての学生の教育に関する姿勢に反映するものであり,次のような形で,従来とおり,実践を行うつもりである。 (1)学ぶ者の学ぶ意欲を引き出し,学びたいものに対応した教育・学習内容の提供,(2)インターネットや「何でも帳」を通じた学生との相互関係を常に採った方法の採用,(3)学生との相互やり取りを前提とした成績評価(学生に対する評価は,自らの実践の評価でもある)の3点において,種々の工夫・仕掛けを使いながら実践を行う。

(2)点検・評価

本年度は上記の計画通り,「何でも帳」やE-Mailを使って学ぶ者の要求を収集し,「何でも帳」を使って相互的なやりとりを基本とした授業展開を行った。学生にも非常に好評であったが,何より,こうした相互行為を通じて、学ぶ者の意欲をうまく引き出せない例に対して、自らの教育者としての課題を自省することができた。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

学生の自ら学ぶ意欲を醸成するため,双方的な授業を心掛け,授業Web.ページの開設やそこに記される学生の意見に丁寧に対応するように心掛けること,及び学生達の現状把握に心掛け,形成的評価及び双方向的評価を目指すこと,を目指すため,先進的事例の収集・分析に心掛け,自らの授業に反映できる仕掛けを工夫する。

(2)点検・評価

前述した「何でも帳」の実践,教育法規の授業における講義前・後,もしくは,インターネットでの学生からの質問への十分な対応には自信がある。「何でも帳」に記された,授業を超える学生の要望(外国への渡航やより深い研究への案内など)に関しても,丁寧に対応できた。
以前顧問をしていた阿波踊りサークルの学生からのリクエストに関しても,丁寧に対応した。
修論指導を行った学生に対しても,該当学生の状況に則した指導に心掛け,学生の現状の把握に注意した。

2-2.研究

(1)目標・計画
  • 授業参観を基礎とした大学教育改善に関する全国的な動向,これまでの実践の整理,および理論構築を行う。
  • フランス研究

    全国大学評価委員会の動向に関する資料収集を行うとともに,資料分析を行う。また,この成果をもとにしつつ,フランスにおける現代大学管理・運営分析に関する総合的分析を進める。本年度は,19世 紀末から20世紀初頭の議会資料の収集・分析を中心に進める。
  • 発展途上国教育システム

    研究 ベトナム・ベンチェー省等への教育システム援助実践を理論的に考察する。そのため国際開発関 連の諸業績の収集分析に努めるとともに,該当分野の専門家との研究討議を進める。とりわけ,教育 援助を進める上での,周辺分野との協力,現地の自立的開発の進め方を中心に進める。
  • 教育政策形成・実施過程研究

    現在の教育に対する住民意識の変容に応じた教育政策形成・実施過程の構築を目指すため,首長や議会が主要な役割を果たす地方政府の教育政策形成・実施過程の事例研究を進める。
(2)点検・評価
  1. 授業参観研究に関しては,主要な実践に関して,資料収集を終えた。現在分析中で,並行して,その知見,工夫を授業に生かしている。
  2. フランス研究については, 12月に行った関係者へのインタビュー等を通じて,新高等教育法,及び新たな大学評価機関であるAERESの動向に関する資料収集ができ,分析を行った。この成果については,広島大学大学教育センター叢書として公刊した。フランスにおける現代大学管理・運営分析に関する総合的分析に関しては,フランス国立図書館において20世紀初頭の議会資料の収集・分析を行った。
  3. 発展途上国教育システム研究については,アフリカ諸国の教育システム援助実践の諸業績の収集分析を行った。併せて,ベトナムの新システムについて分析を進め,その成果を,日本教育学会において報告し,本校の教員教育国際協力センター紀要に投稿し,公刊された。この他,教育制度学会研究大会に於いて,当該研究に関して,指定討論者として議論の発展に貢献した。
  4. 教育政策形成・実施過程研究については,自身が,本件旧海部町に関して聞き取り調査を進め,併せて,修論指導を通じて,大阪府吹田市の事例について,分析を行った。

2-3.大学運営

(1)目標・計画
  • 大学のより裁量範囲の広い運営を可能にするために,様々な外部資金に応募し,大学独自資金の増額に努める。
  • 本学の学生の増加による,余裕ある運営を可能にするために,様々な機会に本学への進学を勧める。
(2)点検・評価

既述の通り,文科省科研費の申請の他,民間団体からの資金獲得に向けて行動を起こした。近く,少額ではあるが,結果が出る予定である。本学への進学者獲得に関しては,事あるごとに国際教育コースへの良さを訴え,感触の良かった方については,関係資料の送付,手渡しを行った。この他,ベトナムに於いて,本学の立地条件等の良さをうったえて,本学への私費留学,国費留学への勧めを行った。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画
  • 社会との連携:教育支援講師として,要請があれば,積極的に引き受け,専門を少しでも社会に貢献できるよう,心掛ける。
  • 国際交流等:平成17年度より続いている,徳島県松茂町のボランティアグループ「ハートフル松茂」のベトナム教育援助事業に専門家として協力し,現地での協力事業の成功に貢献するとともに,それが,松茂町の活性化にも繋がるよう,仕掛けを工夫・提案するとともに,ボランティア実践にも携わる。
  • 国際教育協力コースに関わる諸事業(モザンビーク教員研修,サブサハラ仏語圏教員研修等)に積極的に参加し,事業の発展に協力する。
(2)点検・評価
  • 社会との連携:教育支援講師として,要請に応え,「富岡西高等学校」の出張講義など,積極的に日頃の研究・教育成果を生かした講演を行い,教員志望者との質疑を積極的に行った。
  • 国際交流等:徳島県松茂町のボランティアグループ「はーとふる松茂」のベトナム教育援助事業に専門家として協力し,本年度は,とりわけ,今後の教材補助,教育技術面での援助に関しての調整を行った。本年度2月から3月にかけては,現地に赴き,直接,協力事業の成功に貢献した。松茂町の活性化にも繋がるよう,会の会議にも積極的に参加し,意見交換を行った。
  • この他,来年度から受け入れる教員研修留学生の研修条件向上のため,出身国であるラトビアを訪問し,該当国の教育状況に関して,調査,意見交換を行った。
  • 国際教育協力コースに関わる諸事業(サブサハラ仏語圏教員研修,南大洋州教員研修,エチオピア教員研修,等)に積極的に参加し,事業の発展に貢献した。 今年度は特に,フランス語による研修が可能となるように,教材の工夫,議論でのフランス語の使用を試みた。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

特になし

 

最終更新日:2010年02月15日

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