自己点検・評価報告書(特別支援教育専攻) 島田恭仁

報告者 島田恭仁

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての研究活動

(1)目標・計画
  1. 全体構想:記憶・認知に関する心理学の理論的な研究知見を,障害児の学習支援のために応用する方途について探求する。こうした応用研究が結実すれば,新しい学習支援の技法の構築に止まらず,実用的な障害児指導法の開発にもつながるため,有益な研究であると考えている。
  2. 本年度の予定:記憶・認知に関する理論的な研究で検証された学習方略を,障害児の学習支援に活用し,臨床的な有用性と汎用性について確かめる。日常的な学習場面における事例研究と,統制された指導場面における分析的な研究を予定している。
(2)点検・評価
  1. 記憶・認知に関する心理学の理論を障害児の学習支援に応用するという全体的な構想の下で,従来用いられてきた事例研究の方法を見直し,指導効果を実証的に検証しながら支援を進めてゆく技法を取り入れて研究を進めた。いずれの研究においても有効な指導効果が確かめられた。
  2. 知的障害や発達障害を有している児童を対象にして,学習・コミュニケーション・社会性という様々な角度からの支援を行い,学習方略の指導を行うことの有用性と汎用性について検証した。

1-2.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画
  1. 授業内容:記憶と認知に関する心理学の理論を,障害児のアセスメントと指導に活かす方途について詳述する。
  2. 授業方法:演習科目のみでなく通常の授業科目においても,班編成による作業や実習をまじえ,対話のある授業を行う。
  3. 成績評価:要点を押えて手短にまとめて文章表現する力と,自分なりの理解をふまえて私見を展開する力を主に評価し,学生や院生の論作文の力の向上を促す。
(2)点検・評価
  1. 記憶・認知に関する理論を障害児のアセスメントと指導に活かすというテーマの下で,特別支援学校の教免法改正以降の新カリキュラムに沿って,学部の授業内容の再編成を行った。特に知的障害児や発達障害児の指導について平易に論じた。
  2. 大学院の「特別支援教育学習心理学研究論」の授業において,2~3名のグループごとに事例に適した個別指導計画を作成し,具体的な指導課題について考案する実習を取り入れた。
  3. 「講義内容を要約した上で,発達障害児の個別指導計画を立案する上での工夫にについて述べる」という課題を設定し,院生・学生に論作文を行わせ,論旨と表現力を評価した。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画
  1. 通常の授業科目においても,授業中に平易な文献を紹介するとともに,教材作成や個別指導計画の立案などの演習的・実習的な内容を取り入れ,障害児の心理と指導への興味を喚起する。
  2. 長期履修生が大学院生としての自覚と自負心をもてるように,大学院在籍中の学会参加を促し,他大学の研究者や院生と交流できる機会をもたせる。
(2)点検・評価
  1. 学部の「知的障害者の心理」において,行動論的心理学と認知論的心理学の理論的な相違点を平易に紹介した上で,認知論的観点から作成された指導教材として,ソーシャルストーリーブックを紹介した。また,このような認知的指導法を通じて学習の精緻化を促す工夫について検討した。
  2. ゼミに所属する長期履修生3名の修論指導を早いペースで進めたことにより,院生としての自覚と自負を促すことができた。そのため,3名の内2名は全国規模の学会に赴いて研究発表の場での質疑応答に参加した。また,教員採用試験では,正規採用1名,臨時採用2名という成果を得た。

2-2.研究

(1)目標・計画
  1. コミュニケーションの面で特別な支援を要する児童の指導経過をまとめ,その成果を全国規模の学会において報告する。
  2. 実験的な研究を通じて効果が検証された学習方略を,障害児の個別の学習支援に活用し,臨床的な有用性と汎用性について確かめる。その成果を全国規模の学会において報告し,学会誌または研究紀要に投稿する。
(2)点検・評価
  1. コミュニケーションが困難な児童に対して約1年間にわたる指導を実施し,その指導経過をまとめて,日本特殊教育学会において発表した。また4名の発達障害児を対象にして,記憶方略の指導がソーシャルスキルトレーニングに及ぼす効果について検証し,その成果を日本LD学会において発表した。
  2. 中度知的障害を有する児童に対して,約1年間にわたる読み指導を実施し,指導の中で意味処理の方略を活用することの効果について検討した。その成果を論文にまとめて,本学の研究紀要に投稿した。

2-3.大学運営

(1)目標・計画
  1. 特別支援教育の専攻・コース長として,本学の運営に参画するとともに,専攻・コースの教育研究内容の拡充を図る。
  2. 教育実践フィールド研究における特別支援教育の特設テーマについて検討し,従来の教育実践研究の改変,ならびにコアカリキュラム化を図る。
(2)点検・評価
  1. 特別支援教育専攻の教育研究内容の拡充を図るために,特別支援学校の教免法の改訂に即したカリキュラムを効率的に運用できるように人員配置を整えた。さらに,肢体不自由と視覚障害の授業を担当できる教員を補充した。
  2. 特別支援教育専攻に独自の教育実践フィールド研究を展開し,「特別支援教育の新たな展開」という特設テーマの元で,受講生が教育現場の実情を実地で体験できるようにした。協力校を厳選して有益な実地指導が受けられるように配慮し,協力校内でTTと個別指導の実践に多くの時間を費やせるようにした。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画
  1. 附属特別支援学校における校内研修会や公開研修会に協力し,地域の小中学校に在籍する特別なニーズを有する児童生徒に対する支援のあり方について検討する。
  2. 特別支援教育士資格認定協会と連携し,発達障害児の心理と教育に造詣を有する有為な人材の養成に努める。
(2)点検・評価
  1. 附属特別支援学校の夏期公開研修会で講師を務め,心理検査によるアセスメント結果の解釈法と個別指導計画の立案の仕方について実習した。小中学校の通常学級に在籍しているADHD児の事例に即して,実習を進めた。
  2. 特別支援教育士資格認定協会の審査を受けて,スパーバイザーの資格を取得した。さらに大学院の授業科目の単位を,特別支援教育士養成プログラムのポイントに振替できるように諸般の手続きをとり,資格認定協会の承認を得た。
  3. 特別支援教育専攻と社会との連携を図るために,長年の懸案であった事例検討会を立ち上げ,第1回の大会を開催した。当専攻の修了生に加え,心理・教育・福祉・医療等の各界からの参加が得られ,盛況であった。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  1. 平成20年度には特に下記の3点で貢献ができた。
  2. 特別支援学校の教免法改正以降の新カリキュラムに沿って,学部の授業内容の再編成を行った。
  3. 大学院の授業科目の単位を,特別支援教育士養成プログラムのポイントに振替できるように,諸般の手続きをとり,資格認定協会の承認を得た。
  4. 特別支援教育の事例検討会を立ち上げ,第1回の大会を開催した。当専攻の修了生に加え,心理・教育・福祉・医療等の各界から多数の参加者が得られ,大学と社会との連携を密にすることに寄与することができた。

 

最終更新日:2010年02月15日

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