自己点検・評価報告書(人間形成コース) 伊東正貴

報告者 伊東正貴

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての研究活動

(1)目標・計画

教育とはどういった活動なのか,普遍性ある理解の手掛かりを得て,示したい。 本年度,以下の主なる方針で臨む。

  • 平成19年8月23日,24日の実施した「大学開放推進事業」に基づき,音の観察・実験の整備が終わり次第,データを取り,秋期の学会までに結果をまとめる予定。
  • 本年度中に,自己目標にしていた教育科学についての報告を作成する予定。
  • 本年,秋期に予定されている中日教師教育研究集会で参加を予定している。内容についての概略を,6月頃までに詰める予定。
(2)点検・評価

教育活動が意味していることの理解:

この問題について最も基本的な段階から問い直してきた結果,一定の理解を得た。ミクロ的には,脳のニューロン細胞の応答特性の解明,マクロ的には,教育活動に於ける情報のやりとり(コミュニケーションという相互作用)のモデル化の理解についてである。それらの拡張と精密化の研究はまだ端緒についたばかりだが,一部,中日教師教育研究大会に何とか間に合わせることができ,在職中に目安を立てるという目標を達成できた。一言で表現するとすれば,カオス現象を基にした理解ができそうであり,教育学研究の新しい流れをつくることができる。

音の観察,実験:

3年ほどかけて測定器の購入,実験装置の製作,研究としての位置付け等,鋭意整備をすすめ,あとはデータを取るのみの状態で院生の復学を待っていたが,当人の都合による退学のため,あきらめざるを得ず,システムは分解,解体をした。

1-2.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画
  1. 授業内容―平成18年8月7,8,9,10日に,10年経験者研修(小・中・高校教員100数十名対象)の講師をつとめた経験,および,平成19年12月8,9日に担当した放送大学・徳島学習センターにおける面接授業の経験から,これまで本学で行ってきた授業内容に,時代性とのずれは無かったことを再確信し,大筋で前年度を踏襲する予定。
  2. 授業方法―特に平成19年度大学院生に,授業について来にくい学生の存在があった。“学びからの逃走世代”“教育現場での教員の戸惑い”“社会的変化”から予想されてきたことであり,それに対し限られた時間の中で,どこまで学生の動機付けを行えるか試みてみる予定。履修学生の多さ,多様な動機・意図を持った学生の混在はきめ細かい対応が出来ないだけに,徒労感にさいなまれることがある。授業の進め方を遅くし,分かり易い身近な内容から始めてみる予定。(教科の好き嫌いが極端に強い傾向がある。我慢強さを要望したい。)
  3. 成績評価―出席状況,レポート・発表,試験の三点で評価する。
(2)点検・評価
  1. 授業内容,授業の進め方等,あまり変えずに,意識的に進め方をゆっくりにしたところ,ほとんどの学生諸君は特には意見は言ってこなかったが,パワーポイントによる授業形態では,そのコピーを要求されて,履修学生分の作業に追われた。サービスの観点からやむをえないのであるが,例年,手間ひまの負担に苦慮する。
  2. この数年の間,学生の勉学への姿勢を詳細に観察してきたが,受講への基礎的な知識の有無,学習への姿勢,等に大きなばらつきを見るようになった。過去における学生のおかれてきた教育環境の貧しさを感じる。早い段階(特に,初等教育)において豊かな指導,教育を受けてきた,とは言い難い者が垣間見えるのである。教育は積み上げの要素が大きいため,半年,1年という短期間ではこちらからの意図を十分には伝えきれないので,成長にともない,学部教育以降の学習への基礎として,十分な思考経験と体験を積んできて欲しいのである。本年は長期履修生をも担当とのことで,一人ひとり,きめ細かく対応したのであるが,思っていたようには進まなかった。(一人ずつ,対話を呼びかけ続けたが,予想以上に反応が少なかった。彼等が言う理由は,研究室ゼミと単位取得で忙しい,とのことであった。)
  3. 成績評価は,出席を自署,レポートを2回提出,試験を1回をもって,総合的に行った。(試験を受けなかった者は,不可。)

長時間をかけて授業準備をしたが,努力した割には,予想したほどの向上は見られなかった。履修生の情熱をかき立てることへの難しさを感じている。個人的な努力ではどうしょうもないが,教育をめぐる状況変化,制度変革が速く,戸惑いがあるのだろう。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

本年度は,長期履修学生の担当とのことなので,出来る範囲で努めてみたい。具体的には,多様な意図・学力で入学してくる院生に対し,教育職に対する意識を可能な限り明確に意識させるように支援する。これまで余裕が無かったために出来なかった,「教育茶話会」を担任する予定のクラスで試みる。回数,場所等は双方の都合の合間々々で調整して行うが,最大限,院生の気持ちを受け止め,当方の考え方を伝えることで,目的意識をはっきりさせたい。(例年,授業後の立ち話であっても,学習姿勢がガラリと変わる学生が出る経験をしており,この努力は続ける。)一年間でどの程度,影響を与えることが出来るか,努力してみたい。

(2)点検・評価

教育茶話会を本格的にやってみるべく,呼びかけたが,ほとんどの学生はのってこなかった。修士課程の学生にあっては,5人の学生(授業開発講座1名,人間形成コース3名,長期履修生1名)は徹底して教育談義を行うことができ,お互い,よく理解し合えた。本年,教職についた者とは一生の付き合いになるだろうし,また支援を続ける。

2-2.研究

(1)目標・計画

目標―下記の三点を主たる目標とする。

計画―

  1. 平成19年8月に行った大学地域開放推進事業の実施経験から,音の観察実験のための設備を手作りしつつあるので,出来次第,データを取りたい。(空き時間に工作等,行っているが,思うように進まないため,考えていたよりも時間が掛かったが,個人ではやむを得ない。)
  2. 本年度中に,教育科学についての報告を作成したい。
  3. 本年度に予定されている中日教師教育研究集会に参加の予定。内容は考慮中。

以上のことを主に,計画している。

(2)点検・評価

計画1 音の観察,実験:

講座主任預かりできた修士課程学生の研究の一環として,ヘリウム音声の解明を計画し,測定器類の購入,装置の作成,研究の位置づけ(研究の意味,必要性,理論,等)を3年ほどかけて整備し,平成21年2月まで当人の復学の可能性を見極める努力をしてきたが,当人からの退学願が提出されたことで,全て分解,解体せざるをえなかった。完璧に準備を終えていただけに残念だが,時間切れのため,ストレス測定の研究計画と共に中止とした。

計画2 教育科学の取り組み:

脳におけるニューロンについてのシミュレーション,及び教育活動の基本的な理解(相互作用のモデル化)をテーマに自身に課すことで一定の理解を得ることができ,一部,中日教師教育研究大会にて示すことができた。基本的にカオス現象との関係で理解できそうである。

計画3 中日教師教育研究大会:

平成20年度前半は,流行り風邪と学生への対応に追われ,詰めを終えることが出来なかったが,積み上げてきた研究の一部を中日教師教育研究大会にて示すことができた。分かり易い説明の工夫,議論の更なる精密化を行う必要があるが,時間制限から,現段階では良しとした。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

目標―講座制からコース制へと組織が大きく変更された初年度であるので,その運営の安定化に努める。 個人的には,教職大学院をイメージして考えを作ってきたので,長期履修生に対応できるよう,姿勢を整え直す。

計画ー従来より実行する予定で考えていた,教育茶話会(仮称)を,担当したクラスで試みてみたい。組織変更初年度なので,どの程度の頻度で出来るか現時点では全く予想できないが,これまで余裕が無く出来なかったことなので,是非,試みを始めたい。

定員確保について努めているが,本学までの距離があるため,良い返事をもらえないきらいがある。本年も機会ある限り,依頼をする。

(2)点検・評価

目標に関し:

教師教育に関し,10数年間検討してきた経験から,出来れば教職大学院にて担当してみたかったが,残念ながらその機会は無かった。自分で責任を取れないことに対し,意見を出しにくいことも残念であった。実際に担当する者に迷惑,負担が掛かってしまうからである。  長期履修生に対しては,一人ひとりに対し,誠心誠意対応したつもりであるが,余りにも短い期間であったので,経験を次の入学生に返すことが出来なかったことも残念であった。

計画に関し:

教育茶話会を継続的に行うことを常に念頭において働きかけてきたが,多くの学生諸君とは話し合うことはできなかった。理由は学生諸君の忙しさ(空き時間が少なく,うまく時間帯を合わせられなかったため)にある。 想いを伝えるためには,話し合うという人間的な接触,時間的な長さが必要なのであるが,現実には難しかった。院生の中の5人程度には,しかし,十分な意思の疎通が図れたことは良かった。

定員確保に関し:

このことが本学にとって唯一の問題点であろう。この問題が軽くなれば,いくらでも対応のし様があるからである。
その上で,わが国の伝統的な教育水準の高さと特徴は,初等教育の質の良さ,水準の高さによって支えられてきた故に,今後も優れた初等教育教員が輩出されねばならないのであるが,新指導要領をこなすことが出来るだけの卒業生,修了生が育っているかといえば,甚だしく疑問が残る。引き続き教員養成についての改善が進められねばならないだろう。(英語,実験,国語の各指導力を持たせねばならない。)
定員確保に関し,主として電話にて大学院受験の依頼を他大学教員にお願いしてきたが,理数系の学生からは受験者を得られなかった。わが国が科学技術立国を標榜し,自動車に代わる主たる輸出品を形成しなければならないのに,理数科離れのままで良いのか,大いに疑問である。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

目標―機会がある限り,連携,交流を図る。

計画―

  • 附属校・・・例年,附属中学校にて,LF授業を行っているが,要望があれば,行う心づもり。
  • 社 会・・・大学地域開放事業等,機会があり採用されれば,行う心づもりでいるが,内容はまだ決まっていない。二日間とはいえ,物品を整え,装置を作成する手間は大変なので,本年,行うとしたら,一日に出来ないか,考慮中。
  • 国際交流・・・中日教師教育研究大会の他は,個人としては,特段には考えていない。
(2)点検・評価

本年は,四国大学を会場に,バルーンアート甲子園の活動の一環として,子供たち向けに風船ショーを行った。  教育活動の意味付けについて,そのモデル化,及びニューロンのシミュレーションを一部,中日教師教育研究大会にて示すことが出来た。(次の時代を切り開く手がかりの探求が目的であり,時間制限の中,ある程度のことが得られたことは,自己評価できる。)

3.本学への総合的貢献(特記事項)

本年は旧授業開発講座,人間形成コース,長期履修生担当の外,入試委員等も担当したため,いささか都合がつかないことがあり,2回ほど会議を欠席する結果になった。変革期にて,やむを得ない状況ではあるが,長期的な視点に立つなら,合理化が検討されてもよいように思われる。努力しても,身一つでは,また相手があること(学生の意思決定を待ち,支援すること)では,対応をつけ難いこともあったことは残念に思っている。

 

最終更新日:2010年02月15日

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