1.総論

  第一期中期目標期間における暫定評価年である平成20年度においては,教職大学院の設置,大学院教育組織及び教員組織の改組等,全学体制で大学改革に取り組むとともに,暫定評価結果を基に,中期目標・中期計画の達成を目指し,以下のことについて取り組んだ。

平成20年度の主な取組

1.業務運営の改善及び効率化

(1) 教育研究組織の改組と弾力的な人員配置
  大学院教育の実質化及び機能別分化を図るため,大学院学校教育研究科を改組し,修士課程(再編)及び専門職学位課程を設置した。
  高度専門職業人養成を行う教職大学院を戦略的に運営するため,教員組織の改組及び学長裁量人員枠を活用し実務家教員2人を採用するなど設置基準(11人)を上回る定数を配置(22人)し,教育実践・実習教育に重点を置いた教育研究指導を行った。
  また,講座制を廃止し,学問領域に応じた4つの教育部(基礎・臨床系,人文・社会系,自然・生活系,芸術・健康系)に改組し,あらゆる教育研究活動を柔軟かつ弾力的に実施できる体制とした。
(2) 管理運営

<学長補佐制度の拡充>

  新たに企画評価担当及び学生支援担当学長補佐を加え,5人の学長補佐体制とすることにより,その知見を大学運営に更に反映させる体制とした。

<附属学校長及び附属学校部長の専任制>

  附属学校の円滑な運営及び日常の学校運営の効率化を図るため,各附属学校に校長の専任制を導入した。
  また,大学・附属学校間の連絡調整及び附属学校部の管理運営を更に円滑に行うため,附属学校部長の専任制を導入した。
(3) 業務運営の効率化

<教員と事務との協働組織と新たな事務部門の構築>

  大学院における長期履修学生の修学支援を更に強化するため,教員と事務スタッフの協働組織として,「教職キャリア開発支援オフィス」を,また,教職大学院の円滑な実習運営等を行うため「教職大学院コラボレーションオフィス」をそれぞれ設置した。
  また,機動的な業務運営を図るため,外部コンサルタントを導入し,法人経営に着目した「新たな事務組織構想」を策定し,事務局及び総務部長職を廃止した。

<事務部門における情報システムの更新>

  個人情報漏洩対策等セキュリティの強化,ソフトウェア管理及び情報共有の効率化を図るため,事務部門におけるPCをシンクライアント型に変更した。シンクライアントにすることにより,省電力化(1台あたり消費電力200W→5W)が図られ,また集中管理することにより,機器情報設定・修理等の労力が軽減された。
(4) 男女共同参画の推進
  男女共同参画に関する取組指針「男女共同参画社会の実現に向けて」を策定しウェブページにより学内外に公表するとともに,教職員等のニーズを踏まえた施設及び制度等の整備を推進した。
  また,助教定員を活用し,「教育支援教員」として女性教員4人を平成21年4月1日に採用することとした。(女性教員の割合;平成20年度末現在18.5%平成21年4月1日現在20.9%)
(5) 財務内容の改善
<外部資金の獲得>
  全学的体制(戦略的教育研究開発室の設置)で外部資金の獲得に取り組み,「大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム(戦略的大学連携支援事業)」(19,609千円)及び「専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム」(6,720千円)に採択された。
  独立行政法人国際協力機構(JICA)から「アフガニスタン国教師教育強化プロジェクトフェーズ2」の委託事業を民間のコンサルタント会社と共同で受託(30,320千円)し,開発途上国への国際教育支援を積極的に推進した。
<収入事業の改善>
  財務・コスト分析を行い,収入を伴う事業等(入試・学生募集,公開講座,職員宿舎,学生宿舎,非常勤講師等宿泊施設,文献複写,心理教育相談)のうち,職員宿舎については,引き続いて入居募集や宿舎改修を行うとともに,入居基準を見直し2戸貸しを可能とした。また,学生宿舎については,世帯棟30戸,単身棟23室の改修を行い,世帯棟80戸及び女子単身棟240室の机・椅子の更新を行うなど,改善策を講じた。さらに,非常勤講師等宿泊施設のトイレを温水洗浄便座に改修し,利用者の利便性を図った。
<資金運用>
  剰余金を譲渡性預金による短期運用を行ったことにより,予定した運用益より2,616千円増の累計4,836千円の運用利息を得た。
<経費の抑制>
  「業務コスト節減対策」に基づき,省エネ機器への切換,定期刊行物の見直し,発送先の見直し等を行った結果,管理経費について約3,000千円(対前年度比1%減)の節減を図った。
<人件費の削減>
  人件費削減計画に基づき,前年度から37,560千円(総人件費改革の基準となる平成17年度人件費予算相当額に対して1.3%)の人件費を削減し,着実に計画を実施している。なお,平成18年度からの累積削減率は8.9%である。
(6) 自己点検・評価
<優秀教員表彰制度>
  自己点検・評価制度における評価結果等を活用し,優秀な教員に対してインセンティブを付与し,更なる教育研究活動の活性化を図るために設けた「優秀教員表彰制度」を運用して,教育及び研究の両部門において各1人を優秀教員として表彰し,受賞業績等をウェブページに公表した。
<外部者を含めた研究評価部会による評価>
  研究の質の向上や改善について評価を行う「研究評価部会」(学外者2人を含む。)の評価を受け,平成21年3月,評価結果及び提言事項を報告書としてまとめ学長に提出された。提言事項のうち,「センターの研究支援機能向上・改善」については,「センター再編検討委員会」を設置し,検討を開始した。
(7) その他施設整備に関すること
<施設マネジメント等に基づく整備等>
  効率的な業務運営を行うため,施設の現状及び利用状況を点検し,地域連携センター棟に「戦略的教育研究開発室(119㎡)」を確保し,各棟に分散していた同室を集約することとした。
  また,バリアフリー計画に基づき,地域連携センター棟にスロープを設置し,人文棟ほか6棟の出入口を自動扉に改修した。
  さらに,国の予算措置に伴い,老朽化した附属特別支援学校校舎の耐震改修について,平成21年度施工に向け,温室効果ガス等の排出の削減に配慮した「環境配慮型プロポーザル方式」による実施設計に着手した。
<新たな整備手法の実施>
  目的積立金により,基幹環境整備として,自然棟,芸術棟,健康棟の空調設備改修を行い,教育研究環境の改善を図った。また学生宿舎では,世帯棟30戸,単身棟23室の内装改修を,単身棟の各棟にはシャワー室を新設し,学生の生活環境の改善を図った。

2.教育研究等の質の向上

(1) コア・カリキュラムの実施
  「国立の教員養成・学部の在り方に関する懇談会」における「今後の教員養成大学・学部の在り方について」(平成13年11月)の提言を受けて開発したのがコア・カリキュラム(鳴門プラン)であり,初等・中等の学校教育の教員養成について,学生に学校現場で求められる「実践的指導力」を育成する目的から,カリキュラムのコア領域に「教育実践学」(教科内容学<教科専門>・教科教育学・教育科学の理論知と教育実践の実践知を実践学に統合したもの)を設定し,大学の授業を学校現場の実践と連動させるとともに,教員養成全体の授業をこのコア領域と関連するように構造化したものである。
  平成20年度は,平成17年度に開始されたコア・カリキュラムの最終年度であり,これで全ての教育実践コア科目の授業が開始された。また,本年度末には,コア・カリキュラムを受講した初めての卒業生が教員として教壇にあがるため,翌年度以降の追跡調査等の実施を通じて,コア・カリキュラムを検証し,一層の充実を図ることとしている。
(2) FD・授業評価・GPA
<ファカルティ・ディベロップメント推進事業の実施>
  平成12年度から続けてきた本事業により,学内において,FDに対する理解や授業改善に対する関心が年々高まってきたところである。そうした中で,平成 20年度においても本学の重点施策の一つとして年間行事予定の中に位置づけ,ワークショップ及び学部授業の公開を実施した。
   また,学生による授業評価についても実施し,授業担当教員へのフィードバックにより,次年度の授業計画に役立てた。
  ファカルティ・ディベロップメント推進事業
  • 授業改善のためのFDワークショップ  平成20年10月29日(水)
    6グループによりワークショップを実施

      教育委員会関係者(4人)
      本学教員(17人)
      学生(大学院生 14人,学部3・4年次生 26人)
  • 公開授業週間と特別公開授業  平成20年10月27日(月)~11月6日(木)
<授業評価>
  学部学生,大学院生それぞれを対象とした授業評価を行う制度を取り入れている。評価結果は,報告書として刊行するとともに,各教員が自ら分析・考察し,授業改善に活かすほか,次年度の授業計画にも反映させている。

  学部において,平成20年度入学生から「GPA」制度を導入し,学生の学習意欲を高めるとともに,適切な修学指導に役立てた。
(3) 教育の質向上に向けた大学教育改革の取組

<その①:特色ある大学教育支援プログラム「教育実践の省察力をもつ教員養成 -教育実践力自己開発・評価システムを組み込んだ教員養成コア・カリキュラムの展開を通して-」(最終年度)>


  教育研究活動で,文部科学省が行う国公私立大学を通じた大学教育改革の支援プログラム(特色GP,現代GP,教員養成GP)に関する取組として,「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」に「教育実践の省察力をもつ教員養成 -教育実践力自己開発・評価システムを組み込んだ教員養成コア・カリキュラムの展開を通して-」が採択され,最終年度に入った。教員養成教育において重要な要素となる授業実践力の向上を中心とした様々な試みが認められたものである。
  取組の具体的な柱は,【1】教育実践力の中核を授業実践力ととらえ,その能力を評価する客観的な尺度となる授業実践力評価スタンダードを開発すること,【2】授業実践力評価スタンダードを枠組みにして「教育実践学を中核とする教員養成コア・カリキュラム(鳴門プラン)」を実践し評価すること,【3】「授業実践力評価スタンダード」と「知の総合化ノート」及び「授業実践映像データベース」と組み合わせて,学生が自己の教育実践力を診断し,職能開発の到達点と課題を明確にできるシステムを構築しようとするものである。

 

  本取組は平成18年度から平成20年度まで3年間の事業である。最終年度である平成20年度は,
  【1】授業実践力評価スタンダードの開発について,教育実践力の内容やその評価指標について,国内(兵庫県・福島県)の先進的な研究・開発地域や教育スタンダードに基づく教師の職能開発と評価が現場レベルに浸透している米国(ウェスタンカロライナ大学)の実践の調査を行い,本学の授業評価実践力スタンダードの内容やそれを活用した実践と比較考察した。これにより,本学の授業実践力評価スタンダードの有効性と課題を明確にして,その内容の修正を実施した。こうした手だてを通じて,学生に国際的通用性と共通性を確保した授業実践力育成のスタンダードを提供できるようになった。これにより,学生はより確かな評価基準にもとづく自己の教育実践力の開発・評価・改善ができるようになった。
  【2】コア科目「初等中等教科教育実践I・II・III」において,「知の総合化ノート」を作成し,教員や学生相互に教育実践力の内容やその育成の手だてについて議論していくことを通じて,教育実践力の省察を習慣化していくことができるようになった。授業実践力評価スタンダードと「知の総合化ノート」を活用した特定の教育課題についての議論や指導案作成を行うことにより,学生が自己の教育実践力育成の検討課題を明確にできるようになった。また,模擬授業により学生の授業実践力の評価を行うことにより,学生は自己の教育実践力の社会に対する説明責任を果たすとともに,教員採用試験や卒業後の教職に対する自信と明確な問題意識を持つことができるようになった。
  【3】「知の総合化ノート」のシステムを安定的に利用することができるようになり,学生が自らの実践を振り返るために必要な映像コンテンツ及び参考にするための優れた教員の映像コンテンツを収集し,授業の分析・評価・改善を実際にできるようになった。また,授業映像データベースに備わっている電子掲示板機能を用いて学生同士が互いにやりとりしたコメントが,授業実践について考察するためのコンテンツとして活用され,学生の授業実践の省察力を高めることができた。

 

  本取組内容について,最終年度である平成20年度は,2回のシンポジウムを開催した。一回目のシンポジウムでは,本取組に対する学生・大学教員・附属学校園教員の相互評価と県内の教育委員会・学校関係者を核とする外部評価を行うことで,大学教員が,本取組の内容・意義・課題を学生の立場に立ってより明確に把握し,取組の修正・改善を図ることができた。二回目のシンポジウムでは,本取組の進捗状況・成果・方法について内外に広く公開し外部評価を受けたことにより,計画・実施・評価・改善の一体化を常に図りながらプログラムの内容をさらに充実させることができた。これにより,本プログラムに基づく学生の教育実践力育成の教員養成教育のあり方に関する展望を得ることができた。

 

<その②:現代的教育ニーズ取組支援プログラム「遍路文化を活かした地域人間力の育成-歩き遍路による「いたわり」情操教育と遍路地域の『まるごと博物館』構想-」(2年目)>

  教育研究活動で,文部科学省が行う国公私立大学を通じた大学教育改革の支援プログラム(特色GP,現代GP,教員養成GP)に関する取組として,「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」に「遍路文化を活かした地域人間力の育成-歩き遍路による「いたわり」情操教育と遍路地域の「まるごと博物館」構想-」が採択され2年目に入った。遍路文化という,地域の文化事業の支援を通して優れた教員の養成と定着を図ろうとする試みが認められたものである。
   取組の具体的な柱は,【1】遍路地域の「まるごと博物館」構想による地域文化活動,【2】歩き遍路体験による「いたわり」情操教育,【3】これらの文化・教育活動の発信の3分野からなる。
  本学の教育課程を拡充し,地域連携によるワークショップとして具現化することで,地域社会での取組も含めた遍路文化発信のハブ的機能を果たすものである。

 

  本取組は平成19年度から平成21年度までの3年間の事業である。平成20年度は,
  【1】「まるごと博物館」構想による地域文化活動について,住民・学生が参加するワークショップ型の活動を連携協定を結ぶ徳島県名西郡神山町で実施した。学生が専門員とともに,遍路地域の神社と寺院の関係が判明する棟札や古文書に関する調査,高齢者から村の習俗や教育に関する聞き取り調査を行った。学生は過疎地域に埋もれようとしている文化財のデジタル撮影,高齢者の記憶や経験のデジタル録音に取組むことにより,学術調査の手順や方法を習得するとともに,過疎地域の現状や住民の生の声を知ることができた。併せて,住民にとっては,身近な文化財の価値を再発見する機会ともなり,住民による地域文化価値への気づきは,ワークショップ活動中に住民からの追加調査依頼の話がでるなど顕著に表れた。また,諸活動のベースとなる四国遍路研究の基礎形成のため,徳島県立文書館に所蔵されている遍路関係史料(古文書)を外注によりデジタル撮影し,画像収集を実施した。加えて,大分県,大阪府,東京都の関連機関でも調査を実施し,遍路と旅の歴史の位相を分析した。
  【2】「いたわり」情操教育について,学生がボランティア実践として小学生との歩き遍路(日帰り及び1泊2日),中学生との歩き遍路(1泊2日),高校生との歩き遍路(1泊2日)プログラムを運営し,当日は生徒を引率した。この実践を通じ,教員を目指す学生は,教室とは違う生徒理解を深め,生徒にどう言葉がけや働きかけを行うとよいか,コミュニケーション能力や指導力を磨くことができた。また,平成20年度は,従来の大学院での歩き遍路授業のほか,遍路文化入門プログラムとして,遍路に関する基礎理解形成と歩き遍路体験を内容とする学部授業「阿波学」を実施した。これにより,地域をフィールドとした体験的・実践的な教育活動が,まさに全学的プログラムとしてカリキュラムのなかに位置づいた。学生は実際に厳しい遍路道を歩き,その体験を通して友人との協働やチームの大切さを実感することができるとともに,住民との交流を通して地域文化とそれを支える住民の努力と実態を理解することができた。これらは,学生のレポートや心理学質問紙,情操向上のための学生俳句等からも学生における共感性や地域尊重の意識の高まりが読み取ることができた。
  【3】文化・教育活動の発信について,市民との歩き遍路では,学生はボランティア団体や参加住民と交流することを通じ,世界文化遺産登録をめざす遍路地域の,しかも過疎化も進むその実情を知ることができた。また,ウェブ環境の充実とシンポジウムのウェブ配信の試みにより,取組を広く内外に発信することができた。学生は,ウェブページに充実により,取組の記録映像や歴史資料データベースを利用し,授業等の教材として活用できるようになった。これにより,学生において地域伝存のオリジナル・データによって地域文化を価値づける視座とその意義理解の深まりがあった。

 

<その③:専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム「教育の専門職養成のためのコアカリキュラム -地域との連携を通して院生の授業力向上をはかる大学院改革-」(最終年度)>   教育研究活動で,文部科学省が行う国公私立大学を通じた大学教育改革の支援プログラム(特色GP,現代GP,教員養成GP)に関する取組として,「専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム(専門職GP)」に「教育の専門職養成のためのコアカリキュラム -地域との連携を通して院生の授業力向上をはかる大学院改革-」が採択された。既設大学院と教職大学院を「教育の専門職」養成課程として一体的に発展させるために,特に既設大学院のテコ入れを図る試みが認められたものである。
  取組の具体的な柱は,【1】教育実践フィールド研究と広領域科目のコア・カリキュラム化,【2】キャリアを異にする院生の協働的な学び,【3】専門性を生かして教育目標を実現できる力量形成,を実現する。
  これらの取組を通じて,鳴門教育大学が直面する三つの課題 1.既設・教職大学院の一体的な改革,2.院生のキャリアの多様化への対応,3.教育現場の利益に結びつく専門教育を一体的に解決し,院生の授業力を向上させようとするものである。

 

  
  本取組は平成19年度から平成20年度までの2年間の事業である。最終年度である平成20年度は,
  【1】昨年度に設置した「大学院コアカリ運営委員会」の組織を,大学院生の履修指導と評価に対応できるよう,(1)取組推進チーム,(2)カリキュラム編成チーム,(3)情報発信・交流チーム,(4)自己点検・評価チーム,の4チームに再編し,大学院生の履修をサポートする体制を整えたことにより,コア・カリキュラム化を円滑に推進することができた。
  【2】院生の協働的な学びについて,本年度は「教育実践フィールド研究」を開講し,全学で5グループ・20チームを組織し,プログラムの理念である「同一テーマ・複数授業の開発」,「キャリア混成院生チームの編成」,「学問知と臨床知の往復学習」の具体化を図った。「教育実践フィールド研究」のグループテーマとして,(1)コミュニケーション過程に着目したした学習指導,(2)学びを社会や暮らしにどう活かすか,(3)各教科の特性を踏まえて,子どもの興味・関心を引き出す教材をつくる,(4)力をつける教材・教具の利用と工夫を考える,(5)教科のリタラシーをどう育てるか,の5つのテーマを設定した。これらの各テーマに対して3~4つのチームがアプローチし,徳島県内の協力校(8つの学校・機関)と共同研究を行うことで,課題解決につながる授業を開発,提案することができた。
  【3】直面する三つの課題を一体的に解決し,院生の授業力を向上させるため,ウェブページを充実させ,各グループ・チームの学習状況を随時アップし,学びの進展を蓄積した。「教育実践フィールド研究」の履修をサポートするため,「ウェブ・ポートフォリオシステム」としてMoodleを整備し,活用させることで,テーマを共有するチーム間での学び(知の交流)の活性化が図られたとともに,テーマ追求の履歴を記録,共有させたり,学習成果を振り返る場を提供することで,授業の省察力をつけることができるようになった。また,教職に関する海外(米国・フィンランド)の専門家を招聘し,海外の専門家の知見に触れる機会を提供した。これにより,大学院生はグローバルな水準から見た「教育の専門職」の責任と課題を理解することができた。併せて,各自が取組テーマへの学習意欲を高めることができた。

 

<その④:専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム「教職大学院の実習等のFDシステム共同開発-大学と教育委員会・学校の『互恵モデル』の構築-」(初年度)>

  教育研究活動で,文部科学省が行う国公私立大学が行う,産業界,学協会,職能団体及び地方公共団体等との連携に基づいた教育方法等の充実に資する先導的なプログラムについて,国公私を通じた競争的な環境の中で重点的に支援することにより,高等教育機関における高度専門職業人養成等の一層の強化を図る取組として,「専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム」に,兵庫教育大学,上越教育大学及び鳴門教育大学の3教育大学が共同申請した「教職大学院の実習等のFDシステム共同開発-大学と教育委員会・学校の「互恵モデル」の構築-」が採択された。これまでの3大学の学校教育における実践研究の成果や連合大学院の連携を活かし,教職大学院のカリキュラムの中核を担う「実習」,「課題研究」に焦点化したFDシステムを共同開発する取組が認められたものである。
  取組の具体的内容は,【1】「実習」,「課題研究」を実施する中での課題・問題点の抽出による改善,【2】ティーム・ティーチング(TT)による指導方法の改善,【3】実務家教員研修プログラムの開発,を行うことで,3大学の教職大学院及び全国の教職大学院における高度専門職業人養成等の一層の強化を図ろうとするものである。
  本取組は平成20年度から平成21年度までの2年間の事業である。平成20年度鳴門教育大学では,
  【1】効率的かつ効果的に実施するための「3大学FD協議会」への出席及び3大学協働の構成によるWGを設置し,本学は第2WGを担当することとなった。
  【2】第2WGでは,3大学の教員並びに教育委員会等関係者の参加の下,授業公開・授業検討会を開催した。また,3大学におけるティーム・ティーチングの取組状況を把握するため,TTを導入している授業科目を対象にアンケートを実施し,集計結果を基に効果や問題点を抽出し,次年度の改善案等を策定した。

 

<その⑤:大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム(初年度)>

  教育研究活動で,文部科学省が行う国公私立大学間の積極的な連携を推進し,各大学における教育研究資源を有効活用することにより,当該地域の知の拠点として,教育研究水準のさらなる高度化,教育活動の質保証,個性・特色の明確化に伴う機能別分化と相互補完,大学運営基盤の強化等とともに,地域と一体となった人材育成の推進を図る取組として,「大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム(戦略的大学連携支援事業)」に,東京学芸大学を代表校とした,「地域に根ざす多様な教育支援人材の育成プログラムと認証システムの実践的共同開発」及び香川大学を代表校とした,「『四国の知』の集積を基盤とした四国の地域づくりを担う人材育成」の2件が採択され,本学も連携校として本事業を実施することとなった。

 

(ア)東京学芸大学を代表校とするプログラムの概要
  平成20年度戦略的大学連携支援事業で選定された「地域に根ざす多様な教育支援人材の育成プログラムと資格認証システムの実践的共同開発」は,3つの教育系国立大学(東京学芸大学,奈良教育大学,鳴門教育大学)と子ども学部を持つ3つの私立大学(東京成徳大学,白梅学園大学,中国学園大学)が連携協力し,地域社会で公教育を支える教育支援人材の育成と活用を組織的に行う取組が認められたものである。
  取組の具体的な柱は,【1】育成プログラム開発と教育資格の認証を伴う教育支援人材育成システムの開発,【2】地域ニーズに応じた育成プログラム実施による教育支援人材育成システムの運用,【3】モデル事業の推進とサポート体制の構築を通し,育成された教育支援人材の活用を行うことである。この一連の取組を通して,連携から生まれる各大学の基盤強化を図るとともに,地域住民の参加を促し,地域教育力を向上させる動きを大学から発信するものである。
  本取組は平成20年度から平成22年度までの3年間の事業である。平成20年度鳴門教育大学では,
  【1】連携団体責任者からなる運営委員会,専門家からなるカリキュラム検討部会,運用検討部会,認証評価検討部会及び事業展開広報部会へ出席し研究開発を実施した。
  【2】学内に「学校地域連携支援開発ワーキング」及び「社会教育支援開発ワーキング」を設置し,会議と実践を重ね育成プログラムの研究開発を行うとともに,事務局に本事業担当の事務補佐員を採用し,事業の推進体制を確立した。

 

(イ)香川大学を代表校とするプログラムの概要
  平成20年度戦略的大学連携支援事業で選定された「『四国の知』の集積を基盤とした四国の地域づくりを担う人材育成」は,四国における自立的発展を促す協調的地域づくりに携わる人材を育成する取組が認められたものである。具体的には,四国内の7大学(香川大学,徳島大学,鳴門教育大学,高知大学,高知工科大学,四国大学,徳島文理大学)がe-Knowledgeコンソーシアム四国を設立し,各大学の特徴ある講義をe-Learningコンテンツとして提供し,上記の人材を育成する教育基盤『四国の知』を構築する。『四国の知』は四国の資源の魅力,ブランド,歴史,地勢,文化,伝統等の教養教育科目群『四国学』と四国の課題に取り組むために必要な学際的専門教育科目群で構成される。連携大学は地域のニーズに応じて,コンソーシアムに集積された『四国の知』を活用して,四国への郷土愛と高い専門性を持つ人材を育成する教育プログラムを展開する。このプログラムで教育された学生が四国で活躍することで,四国の自立的発展に貢献するだけでなく,四国の知力の向上が期待できるものである。
  本取組は平成20年度から平成22年度までの3年間の事業である。平成20年度鳴門教育大学では,
  【1】e-Knowledgeコンソーシアム四国の運営委員,企画委員及び各WGを担当する委員を決定した。併せて,事務局に本事業担当の事務補佐員を採用し,事業の推進体制を確立した。
  【2】本事業遂行のための設備機器について,遠隔講義システムを導入し,連携大学間での通信テストを実施し,次年度以降に活用できる環境を整備するとともに,ストリーミング技術を用いた遠隔講義の試行として本学主催の現代GPの講演会の開催内容をインターネット上にライブ中継を実施した。また,試験的にコンテンツの作成を開始し,次年度に向けた環境をも整備した。

3.予防教育科学教育研究センターの設置

  子どもの学校適応や心身の健康を一次予防的に維持,向上させるため,学校で行う一次予防教育に関する諸プログラムを開発・発展させる中核的役割を行う組織として,平成21年1月,予防教育科学教育研究センターを設置(兼任教員6人)した。
  同センターでは,国内外の研究者と連携し,積極的に共同研究を推進するとともに,予防教育科学関連の出版物に公表するなど,研究の成果を予防教育プログラムの開発等に反映させている。

4.小学校英語教育センターの活動

  全国の教員養成系大学に先駆けて設置した小学校英語教育センターにおいて,指導法・カリキュラム・教材の開発研究に取り組み,成果を公表するとともに,小学校英語教育担当者研修及び助言指導・相談のため教員を学校現場等に派遣(計41回)するなど,学校現場における外国語活動への教育支援を積極的に推進した。

5.学生支援

  高度学校教育実践専攻に在籍する現職教員を対象に,勤務校実習旅費の支援を目的とした無利子貸与を行うために,鳴門教育大学教職大学院生(現職教員)支援基金を創設し,平成21年度より適用することとした。

6.就職支援

  教員就職支援チーフアドバイザー(准教授:校長経験者)及び大学院生就職支援アドバイザー(非常勤教員:校長経験者)を配置し,教職員が一体となって就職支援行事,就職相談・指導,個別の模擬面接指導,論文指導等を実施したことにより,平成19年度卒業生の教員就職率が過去最高の66.9%と目標値(60%)を超える成果を収め,国立教員養成系大学中5位に躍進した。

7.研究実施体制の整備

<戦略的教育研究開発室>
  本学における教育・研究の推進を目的とし,文部科学省が行う「国公私立大学を通じた大学教育改革の支援」プログラム及び全学的プロジェクトによる科学研究費補助金の採択を目指し,平成18年度に設置した戦略的教育研究開発室の下に,その実践組織として,研究開発検討部会及び科学研究費補助金プロジェクト検討部会を設置した。研究開発検討部会ではプロジェクト獲得のため,企画・立案,申請を行う支援体制を整備し取り組んだことにより,連携事業で3件採択された。
  また,科学研究費補助金プロジェクト検討部会では,科学研究費補助金支援アドバイザー(4人)を置き,研究計画作成時のアドバイスを行った。

 

<産学連携>
  産業界との共同研究を積極的に行う体制を確立するため,平成21年2月17日付けで,「国立大学法人鳴門教育大学利益相反マネジメントポリシー」を策定し,本学ウェブページで公表するとともに,平成21年3月11日付けで「国立大学法人鳴門教育大学利益相反委員会規程」を制定し,取り組む体制を整備した。

 

<研究環境の充実>
  • ウェブページの充実
    本学ウェブページに研究紀要,教育支援プロジェクト等各種の研究に関する事項(公募対象等)を掲載し,また,国立情報学研究所の電子図書館サービスやJST科学技術文献データベースへの収録等データベースを活用し,積極的な情報発信に取り組んだ。
  • 研究時間確保のための方策 
    研究・労働意欲向上や研究時間の確保等学術環境改善のための提言「研究環境の充実のための方策」(平成18年度策定)に基づき,サバティカル制度等の導入について検討し,平成21年1月14日付けで「国立大学法人鳴門教育大学教員サバティカル制度に関する規程」を制定した。

 

<研究上の不正行為等への対応について>
  必要な関係規程等を作成し,告発窓口の設置等,研究上の不正行為及び不正使用への対応について整備した。

8.地域連携

  本学の教員が,無料で学校教員,児童・生徒,保護者を対象に,講演,授業実践,指導方法や課題解決の指導等を行う「教育支援講師・アドバイザー等派遣事業」を積極的に推進している。また,本制度未登録者に対し,積極的な登録を推進しPRを行った結果,登録者割合は全教員の78.8%(目標値75%)となった。
  鳴門市の子ども達のための“美術の広場”を築き,次代を担う子ども達の教育を地域ぐるみで活性化させるために,大塚国際美術館及び鳴門市との連携による地域文化教育プロジェクト(N*CAP)を立ち上げワークショップを開催するなど,小学生を対象に多様な鑑賞・表現活動を行った。

9.他大学等との連携・協力

  教育・研究等の分野において相互に協力し,教育・研究の向上に寄与することを目的として,私立大学3校(関西国際大学,比治山大学,京都産業大学)と大学間連携協定を締結した。
  戦略的教育研究開発室において,他大学と連携してプロジェクト研究を推進した結果,「戦略的大学連携支援事業」に,「地域に根ざす多様な教育支援人材の育成プログラムと資格認証システムの実践的共同開発」(東京学芸大学代表),「『四国の知』の集積を基盤とした四国の地域づくりを担う人材育成」(香川大学代表)が採択された。
  また,「専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム」に,「教職大学院の実習等のFDシステム共同開発」(兵庫教育大学代表)が採択された。
最終更新日:2010年02月17日

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