自己点検・評価報告書 (芸術系(音楽)教育講座) 長島真人
報告者 長島真人
1.学長の定める重点目標
1-1.大学の活性化を目指す教育活動
(1)目標・計画
- 音楽科教育学関係の講義や実習において、大学院生や学部学生が学術的な論理を具体的な事例を通して理解することができるように、教材の開発とその提示の方法を工夫する。
- 講義の展開過程において、大学院生や学部学生の学習状況を確認する形成的な評価の場を設定し、課題意識が活性化されるように工夫する。
(2)点検・評価
- 講義だけの授業で終わらないようにするために、ディスカッションやマイクロティーチングによる模擬授業の実施、学習指導案づくりの演習等を有効に適用することができた。また、遠隔授業観察システムを活用して、附属小学校で報告者自身が授業を試み、この授業の観察後に学生たちと協議を行った。また、教育実習授業映像データベースに報告者自身の授業映像を提供し、ウェッブ上で、学生たちに授業に関する気づきを記述させ、学生たちの記述に対して、一つひとつ指導的なメッセージを入力した。これらの実践によって、学生たちは、報告者が講義で示した理論が実践に反映されていく状況を具体的に把握することができた。期待以上の成果が得られたと考えている。
- 講義は、できるだけ対話が起こるように展開し、学生たちの理解状況を確かめるように心がけた。特に、学部学生に対しては、小さな試験を実施して、理解の度合いを確かめながら、講義を進めた。その結果、これまでの年度に比べて、学生たちの答案内容が質的に向上した。
1-2.学生支援、地域連携活動
(1)目標・計画
- 小論文や自己アピール文等の執筆方法を個別に添削指導する。(就職指導)
- 鳴門教育大学フィルハーモニー管弦楽団の指揮者として、学生たちを指導し、演奏行事や合宿活動に参加する。(課外指導)
- 学校音楽教育関係の研究会団体から依頼される研究協力や助言活動に積極的に参加する。(地域貢献)
- 第2回日中教師教育学術研究集会に参加し、臨床的な教師教育の可能性に関する研究発表を行う。(国際協力)
(2)点検・評価
- 教員採用試験を受験する予定の学生たちに対して、e mail を活用して、小論文や自己アピール文の添削指導をした。このほかに、集団面接の練習や模擬授業の構想に関する指導を行った。
- 例年通り、日和佐でのウィンターコンサート、鳴門市内での定期演奏会、卒業式や卒業記念パーティーでの演奏において、指導と指揮を行った。定期公演では、シューマンの交響曲第3番を演奏し、学内外から好評を得ることができた。
- 附属小学校と附属中学校で行われた研究発表会において、共同研究者として紀要に原稿を執筆し、研究協議では助言を行った。また、徳島県の10年次研修のシンポジウムでコーディネータをつとめた。さらに、広島市で開催された全日本音楽教育研究会の高等学校部会の研究発表者の研究を支援し、大会 当日は、助言者をつとめた。
- 初めての参加となったが、第2回日中教師教育学術研究集会に参加し、予定通りに研究発表を行い、学術研究を通しての友好を深めた。
2.分野別
2-1.教育・学生生活支援
(1)目標・計画
- 大学院生や学部学生が主体的に問題に取り組み、検討の結果を的確に発話することができるようにするために、講義だけでなく、討議の時間を設定する。
- 大学院生や学部学生が音楽科教育実践の基礎となる学力論や学習論等の学術的な論理を具体的に理解することができるようにするために、音楽授業で扱われている典型的な教材を、事例として活用する。
- オフィスアワーや e-mail を活用して、卒業論文や修士論文の作成において必要とされる知的な生産活動の技や、就職活動において必要とされる小論文や自己アピール文、模擬授業の学習指導案の作成に関する個別的な指導を行う。
(2)点検・評価
- 講義中に対話的な指導を行い。大学院生や学部学生たちの理解度を確かめながら講義を進めた。また、グループ活動や指導案作成の演習、模擬授業等を組み込み、学生たちにパフォーマンスを促すように工夫した。
- 学術的な論理を説明するだけの講義で終わらないようにするために、学校で用いられている典型的な教材の分析と解釈を試み、授業の構想や実践に応用できるような話題を豊富に組み込むことができた。
- 講義や課題研究の時間以外に、個別に相談を持ちかけてくる大学院生や学部学生たちに、知的な生産活動の技や、就職活動において必要とされる小論文や自己アピール文、模擬授業の学習指導案の作成に関する指導や助言を行った。特に、小論文や自己アピール文の指導は、e-mail を活用して実施した。
2-2.研究
(1)目標・計画
- 継続研究である「19世紀アメリカにおける学校音楽教育研究」に関して、研究論文を執筆する。
- 継続研究である音楽科の授業理論の構築に関する研究を進め、学会等で発表する。
- 遠隔授業観察システムを活用した臨床的な教師教育の可能性を検討し、実験教育を試みる。
(2)点検・評価
- 日本音楽教育学会で「19世紀アメリカにおける学校音楽教育研究」に関する継続的な研究を発表したが、この内容を論文にする時期に、文部科学省の科学研究補助金の申請書の作成と第2回日中教師教育学術研究集会での研究発表の必要が起こり、また、2の音楽科の授業理論の構築に関する研究の方で先に論文を執筆する必要が生じたため、1の方の論文執筆は、年度内に完成させることはできなかったが、執筆を継続している。
- 附属中学校の研究に参画した成果と日本学校音楽教育実践学会で発表した「音楽によるコミュニケーションの成立をめざした歌唱指導の構想-シンボリック相互作用論と認知スタイルを視点として-」の内容をふまえ、論文を執筆し、日本教科教育学会に投稿した。想定外の執筆と投稿になった。また、日本教材学会では、歌唱共通教材「われは海の子」の教材としての意味に関わる歴史的な考察の成果を発表した。さらに、6月と8月に佐賀県嬉野市の塩田小学校の6年生の音楽授業を実施し、授業研究を行った。特に、8月の授業研究は当地の学級担任の教諭とTTで公開授業を行い、多くの参会者と共に、授業のあり方を協議することができた。
- 附属小学校の6年生に歌唱共通教材「われは海の子」を2時間の計画で指導し、第2時間目の授業を遠隔授業観察システムを活用して、学部4年生の学生たちに観察させ、授業後に相互にインタビューを行い、協議を行った。また、17年度に附属小学校の5年生に歌唱共通教材「冬げしき」を指導し、授業の映像を本学の教育実習授業映像データベースに提供し、学部3年生にウェッブページ上で授業を観察させ、コメントを入力させ、このコメントに対して指導を試みた。これらの実践によって、学生たちは、報告者の授業理論と実践との関わりを明確に理解することができたようであった。これらの研究の成果の一部は、鳴門教育大学情報教育ジャーナルに論文として投稿することができた。想定外の執筆であった。
2-3.大学運営
(1)目標・計画
- 学部入試委員として委員会活動に参画し、20年度以降の入学試験の改革に取り組む。
- 学部の入学試験において、音楽教育講座が実施する実技試験の方法を吟味し、円滑に実施されるように工夫する。
(2)点検・評価
- 学部入試委員として委員会活動に参画し、20年度以降の入学試験の基本的な方針を具体化させることができた。
- 講座内で実施する実技試験や面接、適性検査等の準備と実行も円滑に展開させることができた。
2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等
(1)目標・計画
- 附属小・中学校の教育研究活動に参画し、事前の研究協議会や研究大会に参加する。
- 広島県の高等学校の芸術科音楽の研究会活動に参画し、授業研究や実践研究発表の支援と助言を行う。
- 日本学校音楽教育実践学会において、四国地区理事として運営に参画し、学会の組織作りや研究大会の準備等に協力する。
- 第2回日中教師教育学術研究集会において、遠隔授業観察システムを活用した教師教育の可能性に関しての研究発表を行う。
- 臨床的な教師教育を構想するための基礎研究として、附属小学校で音楽の授業を実践し、授業構想の過程と授業の実際、実践の反省的考察を教材化する。
- 大学院の「教育実践研究」を最適な授業にするために、協力校の教諭と連携しながら研究課題を吟味し、大学院生一人ひとりにとって意味のある活動の場にする。
- 学部の教育実践コア科目である「初等中等教科教育実践Ⅱ(音楽)」の講義を実施するために、教科内容学担当の教員と附属の教諭、公立学校の教諭との連携し、本学の教師教育のためのコア・カリキュラムの具体的な展開方法を工夫する。
(2)点検・評価
- 附属小学校で6月に開催された授業研究会での二つの音楽授業と2月に開催された研究発表会での二つの音楽授業、また、この研究発表会の準備のために行われた音楽の研究授業に参画し、助言を行った。附属中学校では、認知スタイルに関する基礎的な論文を検討し、音楽科教育で配慮するべき問題点を附属中学校の研究紀要に執筆し、6月に行われた研究発表会の当日は共同研究者として研究発表を行った。この研究は、報告者自身の授業理論の構築に関する研究にも成果を及ぼした。
- 全国音楽教育研究会の広島大会の準備のため、広島県立沼南高等学校での芸術科音楽の授業研究に参画し、6月と9月に当高等学校を訪問し、授業研究会で助言を行った。また、11月に開催された広島市での大会当日も、この研究発表の助言を行った。
- 日本学校音楽教育実践学会において、四国地区理事として運営に参画し、学会の組織作りや研究大会の準備等に協力し、その任務を予定通りに遂行することができた。8月の全国大会では、総会で司会を行った。
- 第2回日中教師教育学術研究集会において、遠隔授業観察システムを活用した教師教育の可能性に関しての研究発表を行い、学術的な交流を深めることができた。
- 附属小学校の6年生の音楽授業を実践し、遠隔授業観察システムを通して、授業構想の過程と授業の実際、実践の反省的考察を学部4年生の教材化することができた。
- 大学院の「教育実践研究」では、毎回課したミニレポートを活用しながら、全員が参画可能になるように討議を展開し、協力校の教諭と共同的な考察を実現させることができた。
- 教員採用試験において課題とされる可能性の高い歌唱共通教材の分析と解釈、伴奏を中核とした学習指導法の工夫を中核的な内容にしながら、附属の教諭や公立学校の教諭の協力を得て、子どもたちの学習の特性や実際的な指導方法の演習を組み込むことができた。初めて試みる授業であったが、協力的な指導体制を確立することができたと考えている。
3.本学への総合的貢献(特記事項)
本年度は、1.教職大学院の準備に関わる研究を開始したこと、「特色ある大学教育支援プログラム」で2.「教育実習授業映像データベース」と3.「評価スタンダード」の二つの開発プロジェクトに参画したこと、4.「遠隔授業観察システム」の活用に関する研究プロジェクトに参画したことが、本学への総合的貢献として特記することができる。教職大学院の準備として、附属小学校や公立小学校で報告者自身が授業実践を試み、授業作りの実際を学生たちに例示する方法を検討した。特に、学生たちの教育実践力を鍛えていくためには、TTによる模擬授業や実習授業が効果的であることを確認した。「教育実習授業映像データべース」の活用として、報告者自身が行った附属での授業を映像データベースに組み込み、ウェッブページ上で、学生たちに対話的指導を試みた。授業観察力を鍛えていく上で効果があることを確認した。「評価スタンダード」の検討として、音楽科の授業実践力のスタンダードを講義内容との関わりから暫定的に整理することができた。「遠隔授業観察システム」の活用として、報告者自身の附属小学校での授業時間に、学生たちに当システムを通して授業観察を行わせ、授業終了直後に、授業に関する協議を試みた。この試みによって、臨床的な指導力の実際を学生たちに例示することができた。
最終更新日:2010年02月17日