高度学校教育実践専攻

報告者 佐古秀一
※ 高度学校教育実践専攻については,専攻として一体的な運営が求められていることから,各項目について,専攻共通(どのコースにも共通)の目標を設定することが必要である。また,すでに設置計画等において,専攻共通で実施すべき事項についても明らかにしているので,これをふまえて専攻共通の目標を設定する。

1.学長の定める重点目標

1-1.大学院学生定員の充足

(1)目標・計画

 教職大学院では,専攻の教員が協力し合いながら,専攻全体の定員(50人)充足の取り組みを,昨年度に引き続き積極的に行う。
・現職院生の確保のために,執行部,入試課とも連携しながら,四国4県をはじめとして,有望な教育委員会を対象に,専任教員が訪問し,派遣依頼を行う。
・学外の大学院説明会等にも,専攻として積極的に参加する。
・小学校教諭一種免許状を取得させる大学を専任教員が分担して訪問し,学卒院生の確保に努める。
・学内からの応募者を確保するために,全学的な協力を得られるように,学校内の広報活動を行う。

 

(2)点検・評価

○全学的な説明会,教育委員会訪問以外にも,教職大学院として,教育委員会訪問,大学訪問等を実施した。この結果,少数であるが,教職大学院への現職教員派遣が実現した県が出るようになった。また教職大学院だけでなく既設修士課程への新たな応募者を掘り起こすこともできた。
○教職大学院に関する広報活動にも積極的に取り組んだ。
・教職大学院広報誌(News Letter)を刊行し,四国内の全ての学校に送付した。
・徳島県下の前教育委員会の教育長に面談し,本学教職大学院の特色等を説明し,派遣協力を行った。
・徳島県教育委員会との間に人材育成連絡協議会を設置し,現職教員の派遣についての協力体制を整備するとともに,修了生の処遇等について協議を行うことができた。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

授業,カリキュラムの評価,改善に積極的に取り組む。
・全授業科目を対象に授業評価を行い,授業改善に取り組む。
・教育委員会関係者,連携協力校関係者にも呼びかけて授業公開を行い,大学教員だけでなく,外部  者も含めた授業改善の議論を行う。
・教育委員会関係者などを含めた「カリキュラム開発チーム」の会合を開催し,教職大学院のカリキュラムや教育方法等について,相互に理解を深め,改善に向けた「開かれた」取り組みを行う。
・本学教職大学院において育成すべき力(教職大学院における教育の到達目標)を設定し,それをふまえて,カリキュラム,授業評価の見直しを図る。

 

(2)点検・評価

・すべての授業科目における授業評価の実施できた。さらに授業評価結果を専攻内のFD委員会で集計整理し,授業評価結果に基づき特に改善の必要だと判断された授業については,授業者に授業改善計画の作成を依頼するなど,授業改善に実質的につながる仕組みを構築した。
・教職大学院カリキュラム開発チーム(四国4県教育委員会関係者と本学教職大学院教員によって構成)を,教職大学院の授業公開後に開催することできた。本学教職大学院のカリキュラム,教育内容,指導方法等についてデマンドサイドからの意見を聴取することを行った。
・教職大学院の教育の到達目標(3領域,11観点,22側面)を設定し,これに準拠した大学院生の学修履歴と自己評価,授業評価,観点別成績(習得度)評価,学校長による外部評価を着手することができた。これにより,トータルな教育の質保証のシステム構築への展望が明らかになった。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

教職大学院における組織的なFDに関する研究を,GPなどを活用して,推進する。

 

(2)点検・評価

 兵教大,上教大との3大学連合GPを活用して,教職大学院の到達目標の構築とそれに準拠した教育の質保証システムを構想し,その初期的実践を行った。その取り組みの一部は,コラボオフィス担当教員の共同研究として論文が公表された(葛上他 2010)。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

 教職大学院の教育研究活動が充実するよう,専攻会議,コラボ会議,自己評価・点検委員会,FD委員会コラボオフィス等,教職大学院の運営組織の活性化を図る。

 

(2)点検・評価

・教職大学院の運営に関しては,専攻会議,コラボ会議,自己点検・評価委員会,FD委員会等,初期の計画を越えた,さまざまな課題に取り組んだ。専攻教員の協力体制によって,教職大学院の設置初期の困難な状況を乗り越えることができた。
・カリキュラム開発チーム,神座育成連絡協議会等,教育委員会関係者との情報交換の場も積極的に設け,デマンドサイドからの意向を教職大学院の運営に反映できるようにした。すでに報告したように,人材育成連絡協議会等は,当初の計画を越えた活動である。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

教職大学院の趣旨をふまえ,教育委員会,連携協力校等との協働関係を推進する。
・「学校改革支援チームによる地元学校への支援」事業を推進する。
・カリキュラム開発チーム,連携協力校運営チームの会合を開催し,教育委員会・学校との連携を密にする。
・学校関係者を対象にした授業公開等を実施し,教職大学院の教育活動の「可視化」を推進する。

 

(2)点検・評価

・教職大学院のスタッフを構成員とする「学校改革支援チーム」の活動により,鳴門市,板野郡の連携協力校を中心として,学校評価等に対するサポートを実現できた。
・カリキュラム開発チーム,連携協力校運営チームの会合等も実施することができ,教育委員会,学校関係者等との連携を強化することができた。
・教育委員会ならびに実習校等学校の関係者の参加を得て,教職大学院の授業公開を実施することができた。
・学校課題を実習課題とする現職教員の実習の展開によって,学校改善に資する教育活動が展開できた。学校長による教職大学院の教育成果に関する評価もきわめて肯定的であったことから,有意義な活動となったと考えられる。
・第一期生の学修成果の評価判定会を,所属校の校長等の参加を得て実施することができた。またこれ以外にも,四国4県の教育委員会や学校長等の参加を得て,教職大学院の成果報告会を徳島市で開催した。これらの機会を通して,教職大学院の教育の特色とその成果を直接的に示すことができた。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

・教職大学院は,教育委員会,学校との緊密な連携のもとで,理論と実践を架橋する教育活動の展開を求められている。設置の初期段階ではまさに多様な現実的問題に直面してきた。
・とくに定員充足に関しては,残念ながらH21年度も定員充足に至らなかったが,定員充足に向けた専攻一体となった活動は,すでに述べたように,極めて積極的なものであった。
・教育委員会,学校との連携も,教職大学院の運営として当初から計画された事項(連携協力校との連絡調整に関するコラボオフィスの活動,カリキュラム開発チーム及び連携協力校運営チームのそれぞれの活動,授業公開等)はほぼ計画通り実施できた。さらにそれ以外にも,人材育成連絡協議会の設置と運営, 県下全市町村教育委員会への訪問活動など,専攻教員の一体となった活動を実現することができた。
・理論と実践の両面における確かな力を育成することについては,教職大学院における到達目標を明示し,それに準拠した,授業科目の位置づけの明確化(カリキュラムマップの明示),大学院生の学修履歴(自己評価)システムの整備,授業評価法の改善,観点別成績(習得度)評価法の導入など,先駆的な取り組み(鳴門教育大学教職大学院におけるトータルな質保証システム)の構築に取り組んだ。
・教職大学院における実習指導も,現職院生,学卒院生のいずれについても,教職大学院における初の実習実施であるため,学校等の連絡調整に関する多様な課題が生じたが,それらを乗り越え,教職大学院としての一定の成果を示すことができた。現職教員に関しては,所属校校長による学修成果の評価もきわめて肯定的であり,大学院生と専攻教員の努力によって,本学教職大学院の教育成果を示しうることができたと考えられる。

 

 

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