自己点検・評価報告書(梅野圭史)

報告者 梅野圭史

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての教育・研究活動①

(1)目標・計画

 私は、これまで体育科の授業研究を30年にわたって展開させてきた。現在では、授業分析によって得られる技術的実践成果の総合・統合研究から、その裏で暗躍する反省的実践に研究の駒を進めている。その結果、教師の技術的実践と反省的実践とは表裏の関係になっておらず、その間に何らかの媒介変数が関与している可能性の高いことをつきとめてきた。今年度は、その媒介変数の実体を解明する元年としたい。
 私の実践経験および研究経験から、ここでいう媒介変数は、おそらく「professional thinking」を中核とする「倫理的実践」であると考えている。これは、教師としての人格陶冶性と専門職性との結合に重要な役割を果たすものと考えている。これが明らかにならば、教員養成における専門職性の育成に大きく貢献するものと考える。

(2)点検・評価

 「同じ経験を積んでも、成長する人とそうでない人がいる」とする現象は、教職キャリア研究においても見逃すことの出来ない問題である。こうした教師のキャリア発達に大きく影響を及ぼしている要因を導出すべく、アメリカにおけるTeaching Expertise研究を総括した。その成果は、「教育実践学論集」第11号に掲載される。その総括研修によって、教師のキャリア発達に最も影響を及ぼす要因として自らの実践をふり返る省察能力が考えられた。中でも、「感性的省察」と呼ばれている反省的思考は、すぐれた教師になるための不可避な省察能力と考えられた。そこで、教師の感性的省察の実体を哲学的に検討した。その成果は、第31回日本体育・スポーツ哲学会および第48回大阪体育学会において口頭発表し、現在、論文作成中であるp>

 

1-2.大学教員としての教育・研究活動②

(1)目標・計画

 現在、科学研究補助金(萌芽研究)を平成19年度から21年度にわたる3年間の需給を受けている。また、広島大学の木原教授との共同研究により、基盤研究(B)(1)を平成15年度から平成22年度の8年間にわたり受給している。今後、萌芽研究として「体育授業における児童・生徒の学習戦略の育成に関する実証的研究」を、また基盤研究としては「体育科における反省的実践に関する実証的研究」をそれぞれ企図している。 

(2)点検・評価

 上記に示したように、平成15年度から現在(平成21年度)の8年間にわたり、科学研究費の需給を受けてきた。加えて、平成14から15年度の2年間においても、萌芽研究が採択されている。これより、現在まで9年連続科学研究費の需給を受けてきた。当所の計画とは異なったが、今年度より基盤研究(C)「体育科における教科内容策定を企図した運動感覚論的アプローチ」が平成24年度にかけて採択され、これをもって12年連続の採択となった。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

【教育】

① 初等中等教育実践Ⅲにおける授業内容を一段と深めていきたい。すなわち、すぐれた教師とそうでない教師の教授活動を「教師行動観察法」により検討させてきたが、その授業データーベースをさらに拡充して、学生のニーズに対応する授業にする。

② 3年生次の「体育科教育論」では、受講生が約170名をきわめて多い授業であるが、学生たちはよく勉強してくれている。これに応えるべく、視聴覚教材の整備を図り、より理解しやすい授業へと高めていく。

③ 実技指導(グレイド制)では、3級合格者が約80%以上となってきた。これにより、採用試験で実技試験もよい成果を上げている。この状態をさらに高めるべく、指導の充実にあたり、3級合格者を90%へと高めたい。

④ 部部活動では、男子バスケットボール部が昨年の2度の四国ICでベスト4となり、安定した力を発揮するようになってきた。21年度は、決勝に進出するべく、尽力したい。

(2)点検・評価

 上記①から③の目標・計画は、すべて記載とおりの実践することができた。とりわけ、170名を越える体育科教育論に対する授業評価が高かったことをうれしく思っている。来年度よりシラバスを改変し、身体論も講義の内容に挿入するとともに、具体的な学習指導計画も立案させていくつもりである。また、学生の実技能力も年々向上し、採用試験で好成績を上げている。最後の④については、平成21年4月の新人戦で男子部が念願の決勝進出を果たした。また、四国インカレおよび全国大会予選の両方で、男女部ともに3位となり、高橋学長からの学長表彰を受けた。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

①実践者の反省的実践の内部思考と考えられる「倫理的実践」、とりわけprofessional thinkingに関する理論的仮説を哲学的思索により設定し、その実証の方向性を追求したい。

②体育授業における児童・生徒の学びの戦略の実態を明らかにし、それを高める授業のあり方について検討したい。

③すぐれた教師が展開させているゲーム理論にもとづく教授戦略の伝達可能性に関する研究として、 見込みのある教師への介入実験を展開させてみたい。

(2)点検・評価

①に関しては、「教育実践学論集」の第11号に「アメリカのTeaching Expertise研究にみる教師の実践的力量に関する文献的検討」と題する論文が掲載される。また、「教師の感性的省察に関する一考察」と題する論文を作成中である。

②に関しては、「鳴門教育大学実技教育研究」の第20号に「体育授業における児童・生徒の学習ストラテジーの形成に資する学び方項目の作成」と題する論文が掲載された。また、「体育授業における児童・生徒の学習ストラテジー形成に関する因子分析的研究」を第48回大阪体育学会にて口頭発表した。

③に関しては、「スポーツ教育学研究」の第29巻第2号に「小学校体育授業における教師の教授戦略に関する実践的研究」と題する論文が掲載される。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

 本学は、ここ3~4年の間で大きな変化をみせたように思う。その一つが教員の採用試験を中心とした教員就業率の増加である。本学教員の学生に対する指導や支援が学長先生をはじめとする執行部の意思に沿って充実してきた成果と考えられる。微力ながらも、実技センターの果たした役割も大きいと自負している。他方で、この3~4年間で、本学からの連合大学院への進学者数が増加するとともに、本学教員の発言力も高まってきた。教職大学院の設置も重要なターニングポイントなるであろう。本学では、これまでになく実践と研究の融合が目で見えるようになってきた。

 しかしながら、反面ではこうした本学の流れとは逆行する働きをする教員のいることも確かである。連合大学院への参加・協力を拒み研究業績を深めない教員や、教員養成とはまったく無関係な授業を展開させている教員なども確かに存在している。これらの教員の心底には、徳島大学との復縁がある。

 以上のことから、「学部教育―大学院前期教育―大学院後期j教育」が一貫した教育と研究を推進していくように尽力した。

(2)点検・評価

 これまで、および現在において、連合大学院のマル合教員として、5名の博士課程の学生の指導を行ってきている。そのなかで、私の研究室では本学で「学士-修士-博士」を取得した学生がおり、彼は現在北海道大学教育学部の教員となっている。また、現在、博士課程に在籍している学生も仏教大学教育学の教員(講師)への就職が決まり、フレックスタイムを利用して学位論文を作成中である。また、本学の修士課程を14年前に修了した現職の大学院生がその後も研究活動を続け、平成22年4月より兵庫教育大学大学院の准教授として採用され、論文博士の手続きを進めている。また、本学で「学士―修士」 を取得した学生が博士課程受験に挑戦したが、残念ながら不合格となった。しかし、現在、博士研究生として日夜研鑽している。

 私個人としては、平成22年度より生活・健康系教育連合講座の副代表として、連合大学院の業務に再度勤めることとなった。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

【附属学校との連携】

 昨年度より、本学附属中学校の協力を得て、Ⅱ-2の②における生徒の学びの戦略に関する帰途的研究(因子分析的研究)を展開させた。今年度からは、具体的体育授業のあり方について共同研究を進めていきたい。つまり、生徒の学び方を高める体育授業のあり方の追求である。

【社会的活動】

 体育教育研究会における活動は月例会として機能するようになり、会員の積極的な行動力が目立ってきた。研究詩「体育教育研究」第5号の発刊を進め、さらなる活動の向上に尽力した。

(2)点検・評価

 【附属学校との連携】に関しては、学部1年生の担任をしている関係で、「附属校園観察実習」を通して附属校の先生たちと交流を深めることができた。また、年に1度ではあるが、保健体育教育コースの教員と附属校園の体育関係の教員との親睦会も実施してきている。

 【社会的活動】に関しては、小学校教員と体育科教育学専攻の大学教員とで運営している「体育教育研究会」を毎月実施できるようになり、段々と盛隆化してきている。学会活動では、日本体育学会の代議員、日本体育科教育学会の理事、日本スポーツ教育学会の理事を務め、日本の体育科教育学の発展の微力ながら責任を果たすとともに、努力を払ってきた。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

 上記の内容より、私は「教育と研究」「理論と実践」を総合・統合して業務を行っている自負がある。

 学生とのコミュニケーションも進んで取っている。今後も、より一層の研鑽を積んでいきたい。

 

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