自己点検・評価報告書(武市 勝)

報告者 武市 勝

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての教育・研究活動①

(1)目標・計画

 平成21年度は、入試委員やワーキンググループ策定のほかに、美術科のコース長と新入生からのクラス担任を引き受けなければならないことが内定している。非常に多忙になりそうだが、「教育活動」という面では実際に学生と触れることが多くなると思われる。いずれかということなので、教育に沿った目標を構想してみた。
1.合宿研修だけでなく、新入生と十分に話し合い、ここでの専門性とは、「美術の制作・研究」というより「美術の教育」であることを自覚させる。教育現場の良さ、面白さを理解させると同時に、自分の進みたい道は何かについて深く考える習慣をつけたい。
2.コース会議の際は、主要協議や報告の中で、できるだけ学生の動向についての話題をとりあげ、コース教員の視点をそちらに向けるようにつとめたい。
3.美術系大学から入学する大学院生に対して、押しつけにならず、教育現場の良さや面白さに気持ちが向くようにつとめたい。
4.ゼミ学生に対しては、教育現場の中で自分がどう生きていくかについて、話し合いながら考えさせたい。同時に、自分でしかできない制作技法の確立について自覚し、学校生活の中でも自分の主体の拠り所となるように指導したい。
5.授業内容については、従来通りであるが、大学院・学部とも、実際の現場での扱われ方との対照を指摘しつつ進める予定である。

(2)点検・評価

 全体として行事をこなすのに追われ、目標として掲げた点に至らなかったこともあり、十分とは思っていないがある程度のねらいは達成できたのではないかと思っている。

1.できるだけ教育の面白さについて話したつもりだが、現在は、入学当初の一時期を除いて新入生とクラス担任が関わることが少ないことがわかった。授業料滞納で除籍寸前の学生がいたり、新型インフルエンザに多くの学生が感染したりしたときなどは関わりもあったが、それ以外はとくに接触はなかったため、こちらからの働きかけも限界があった。

2.会議の議題に上るような問題が特に出なかったため、学生の話題は少なかった。学生表彰が出る一方で、単位不足で卒業できなかった学生もいたが、比較的問題のなかった一年と思われる。

3.美術コースの場合、教職に関心を持って入学した院生もいれば、美術系大学の延長として入学したものもいる。後者の場合も、話し合ってみると教職に関心を示し、最終的には非常勤講師としての採用に落ち着いたものもいた。

4.今年度については体調不良を何度か訴えられたため、なかなか専門技能が進展しなかったが、結局油性凸版不定形版の印刷という形で作品化し、修了展に並べることになった。開き直った集中力はなかなかのものであった。L3のゼミ生だったが、やや、「私立大学から、入学して免許を取り、教職に就くために来た」ため、美術制作については最後までのめりこめなかったという印象が残ったのは残念である。長期履修というシステムの中の問題と本人の意識の問題であろうが。

5.適宜、教職現場での教材の扱われ方を示すと同時に、専門技法と現場技術との相違理由を原理的な面から比較して説明した。

 

1-2.大学教員としての教育・研究活動②

(1)目標・計画

 科研費獲得では、今年度、「コラグラフの総括的研究」で応募している。美術専門ではなかなか厳しいと思われるが、不採択の場合、アドバイザーに批評を請い、また今回は研究協力者3名だけだが、次年度は連携研究者を組むなどして再応募したい。 

(2)点検・評価

 上記計画は不採択に終わった。アドバイザーの批評は、 ①コンタクトが直接ではなく、②美術分野への批評は一般的な科研のアドバイザーではわかりにくい、こともあって受けていない。正直言って、何年間か続けた科研応募だが、今回の不採択はいよいよ絶望感を感じたため、一年程度少し考えてみたいと思い、再応募は見合わせた。

 ただ、再応募するとしたら今回と同じく、まだ本邦では著作になっていない分野でもあるので、何人かの共同研究者を選んで取り組む所存である。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

1.教育

1.グレードの策定の実施。

①一昨年度に提案された3大学共通グレードシステムの構築についての連絡・協議をはかりたい。実技センターが兼任になったこともあるが、なによりも時間不足でこの進展はやや難しいものがある。しかし一応掲げておく。

②授業としては、学部生には基礎としての内容、院生に対しては美大系でも教育系でも等しく未経験である内容をとりあげ、ともに「版画」についての概念を新しくさせることをねらいとする。

2.学生生活支援

①クラス担任として新入生のクラスやコース内の融和、教育大学生としての自覚と学生生活への順応等をはかっていきたい。

②2名のゼミ学生を抱えているので、成績や進路、生活全般についての相談、ゼミ旅行や親睦会を通じて

③コース長(予定)としては、各種パーティ(歓迎会、送別会他)や中間発表、卒業・修了制作展などを通じて学生全体の協調と親睦を指導したい。

(2)点検・評価

1.

①センター組織見直しの進行につれ、組織としての重心が少なくなり、他大学との接触がなくなりつつある。少なくとも組織が残るかどうか確認してからという意向になったため、連絡・協議には至らなかった。

②以前からの傾向に加えて、近年ますます本学の領域専攻の院生は、その出身が多彩である。美術学部、教育学部、文学部、工学部など、経験が異なるため、自身の研究でもある「コラグラフ」という新しい技法が、授業内容としてはもっとも適しており、かつまた概念を考える上でも適切と考える。

2.

①重点目標でなかなか接触する機会が持てなかったと書いたが、その一方、これほど携帯電話を利用したメールでの活用を図った年もなかった。授業料未納、インフルエンザなどをふくめてこまかい様々な連絡を携帯メールで交信した。逆に、一部学生から「学生食堂は今開いていますか?」といった、まるで学生間の話題のようなメールまで来たのには辟易したが、このやりかたは緊急連絡もふくめてかなり親密な交流に役立ったと思う。

②ゼミ学生の1人が体調不良と就職活動などのためゼミ旅行は実施できなかったが、親睦会・送別会は行った。また、私生活の中でのきわめて個人的な問題の相談に乗ったこともある。詳細は省くが、恋愛や交友上の問題への対応などについての人格上の関わりについては、ゼミとはいえ限界を感じることもあった。個々の学生は自立した人格であり、ゼミ教員といえど生活上の相談に乗っても、何もしてやれないことが多い。

③別紙(コース全体枠)記載。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

1.油性技法から水性への専門技法の転換については継続中。今後発表予定の展覧会等では新しい形での技法を披露する予定である。また、CGを活用した写真製版の加工表現については変更することができないため、有機溶剤使用を小品限定にするということになる。

2.他国版画教育の実態調査については、21年度は北欧諸国での現場について出張予定である。

(2)点検・評価

1.計画通り、「水性顔料による木版の凹版多色刷り『T氏の像』」、「CGを活用した写真製版の加工による多色刷りリトグラフ『雨の鳥居』」を、第7回徳島版画展(2009年11月。阿波銀プラザ)で発表した。 前者は、素描を行うように版制作をする試みで、問題としてはニス修整を速やかにすることである。

2.コース長などの職務で時間がとれず、年度末にマレーシア、シンガポールでの版画教育事情を視察するにとどまったが、昨年一昨年と合わせて東南アジアについては収穫がまとまりつつある。北欧は機会をあらためたい。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

1.美術科コース長(予定)としてコース内の学生・教員の親睦・融和に努め、連絡遺漏のないようにしたいと考えている。

2.クラス担任として、新入生の掌握を行い、鳴門教育大学生としてふさわしい態度や学習の育成を指導する。

3.学部入試委員として、種々の試験全体に遺漏過失のないようにつとめる。

4.教育・研究における、中期目標・計画策定WGとして案の完成を行う。

5.オープンキャンパスなどでの高校生の案内、説明を行う。コース長兼学部入試委員なので一人で行うことになる。

(2)点検・評価

1.詳細は全体報告にするが、卒業・修了制作の展覧会会場の判断や新型インフルエンザの連絡などでかなり煩雑な一年であった。結果として遺漏なく終わり、追いコンなどの機会に学生にも感謝された。

2.前期に1人除籍問題が生じたが、結局ほぼ全員単位などを落とすことなく、2年次に進んだ。メールによるきめ細やかな対応がよかったのかと思われる。

3.今年度は学部入試だけでなく、大学院入試の口述責任者でもあったため、本学で行う全ての入試に関わった。インフルエンザで追試がなかったことと、学部入試で美術コースは辞退者もなく終えたことが幸いであった。

4.これは前期早々に完了したので、特に思いはない。

5.オープンキャンパスは26名もあったので、推薦・前期入試は期待した。結果としてはまずまずであったが、今後受験生を集めるために、修了・卒業生の現職との連携を密にしたいと考えられた。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

 附属学校・・・ゼミ学生の教育実習時における研究授業などの参観・指導。

 社会・・・県内での版画制作者の会「徳島版画」で、技法講座、展覧会を開催予定 教育支援講師登録

 国際交流・・・北欧の美術系大学を訪問予定だが、特に国際交流として企画したものではない。

(2)点検・評価

・附属学校とはとくに連携がなかったが、学生が観察実習・ふれあい実習に行った際に、クラス担任として協力校である堀江南保育園園長、教諭の方々と、指導を含めて幼稚園の抱えている問題等を話す機会を得た。

・徳島版画の技法講座、展覧会に伴う種々の交流(他府県版画制作者との作品交流など)を持った。

・国際交流として特筆すべきものは特にない。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

・美術コース長、学部入試委員、クラス担任、大学院口述責任者などの職務に振り回された一年であった。本学への貢献があるとすればそれだけに尽きる。授業やゼミ生の指導は例年と同様にこなすことはできたが、個人的研究については科研応募も含めてあまり進んだとは言えない。この点は次年度以後に取り返す所存である。

 

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