自己点検・評価報告書(長島真人)

報告者 長島真人

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての教育・研究活動①

(1)目標・計画

①音楽科教育学の担当者として、音楽科教育の成立に関わる歴史的研究と、音楽の授業実践に関わる理論的研究を継続する。
②教科指導を支える生徒指導に関する研究を推進し、教科指導と生徒指導の統合をめざした教育研究を模索する。
③附属小学校と附属中学校の研究活動に参画し、助言等の協力をする。
④本学や徳島県の教師教育に関わる研究を継続し、教師教育カリキュラムの研究や自らの授業実践の改善を進める。

(2)点検・評価

①19世紀アメリカの音楽科教育の教科の思想の成立過程に関する研究を継続的に推進し、5月に学会発表を行い、その内容を論文にして投稿し、審査を経て、掲載可となった。また、音楽授業の実践に関わる研究は、音楽によるコミュニケーションの成立をめざした授業づくりの研究を推進し、実験的な授業を附属小学校で試みた。

②教科指導を支える生徒指導のあり方に関する研究を推進し、阿南市の桑野小学校での研究会の助言を行い、8月は阿南市の全小学校教員を対象とした生徒指導の研究会で講演を行った。

③附属小学校での校内研究授業に構想の段階から参画し、研究協議会で助言を行った。また、附属中学校で行われた研究発表会においても研究発表と公開授業のサポートを行い、当日は助言を行った。

④昨年度末に、独立法人教員研修センターのモデルカリキュラム開発事業に応募したが採択されなかったため、組織的な活動はできなくなった。しかし、昨年度にまとめた10年経験者研修のモデルカリキュラム開発の報告書が反響を呼び、鹿児島大学に招かれて、講演を行った。

 

1-2.大学教員としての教育・研究活動②

(1)目標・計画

①教科教育学担当の教員と共同的な研究体制を推進し、科学研究補助金の申請を試みる。

②音楽コースの教員と共同的な研究体制を推進し、科学研究補助金の申請を試みる。

③19世紀アメリカの学校音楽教育に関わる歴史的な研究を展開していくために、科学研究補助金の申請を試みる。 ④教員研修モデルカリキュラム開発研究を推進していくために、徳島県教育委員会と連携しながら、独立行政法人教員研修センターが公募している「平成21年度教員養成研修モデルカリキュラム開発プログラム」の研究を構想し、申請を試みる。 

(2)点検・評価

①毎月一回のペースで集まっている本学の教科教育学研究会で、今年度に科学研究補助金の申請を試みることを昨年度から決めていたが、大学における教員養成カリキュラムの汎用性を探究する新しい研究の委託が文部科学省からきたので、科学研究補助金の申請は中断することにした。

②音楽コースの教員の協同的な研究体制を推進していくために、学部生のための音楽科教員養成カリキュラムの開発に関わる研究を構想し、科学研究補助金(基盤研究(C)(一般))の申請書を作成し、提出した。不採択であったが、この申請書の作成作業を通して、音楽科の教科教育学担当者と教科専門の担当者が音楽コースに所属する学生たちの学修状況についての詳細な意見交換を行い、教科専門領域での中核的な内容の精選作業を構想する必要性を確認し合うことが出来たことは、大きな成果であった。

③30年間に渡って継続的に推進してきた19世紀アメリカの学校音楽に関わる歴史的な研究を総括することを目的として、残された研究作業を計画し、科学研究補助金(基盤研究(B)(海外学術調査))の申請書を作成し、提出した。不採択ではあったが、本研究の意義や必要性を見直していく有意義な思考作業を展開することができた。

④昨年度末に独立法人教員研修センターが公募していた「平成21年度教員養成モデルカリキュラム開発プログラム」の研究を構想し、申請書を作成し、提出した。これは、残念ながら、採択されなかった。今後の展開を検討しているが、今年度は、文部科学省からの委託された新しい研究課題の内容が未知数であったので、今年度は新たな申請は行わなかった。引き続き、検討していきたいと考えている。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

①19年度に開発した音楽科の授業実践力のスタンダードをふまえながら、音楽科の教科論と授業論を扱う講義の見直しを継続する。

②講義だけでなく、演習として、教材分析や指導案作り、模擬授業、ロールプレイングを活用する工夫を継続する。

③演習の中で、具体的な作業課題を工夫し、多様なデータから評価が行えるように工夫する。

④就職指導として、小論文や自己アピール文等の執筆方法を個別に添削指導する。(就職指導)

⑤鳴門教育大学フィルハーモニー管弦楽団の指揮者として、学生たちを指導し、演奏行事や合宿活動等に参加する。(課外指導)

⑥オフィスアワーや e-mail を活用して、学生の相談への対応や個別指導が円滑に行えるようにする。

(2)点検・評価

①3、4年生を対象としたコア科目の中で、19年度に開発した音楽科授業力評価スタンダードを活用し、学生たちに自己省察を促す場面を工夫した。この実践の成果は、学内の紀要論文としてまとめることができた。また、共著として実践研究の一部を紹介することもできた。今後は、1、2年生を対象としたスタンダードの開発が必要になってきていると考えている。

②一方的な講義ではなく、演習として、指導案作りや模擬授業、ロールプレイング、TTによる授業展開等を実際に行い、学生たちが能動的に授業に関ることができる環境づくりを実現させることができた。

③演習の中で、具体的な授業場面や教員採用試験の場面を想定した作業課題を設定し、学生たちが自己の達成状況を省察することができるような授業を行うことができてきた。

④個別な就職指導として、エントリーシートの執筆方法や論述試験の執筆方法に関する添削指導を授業時間外に行った。また、学生たちからのリクエストで、授業時間外に集団面接の指導行い、アサーティブな対話ができる能力を育ませるようにサポートした。積極的に相談にきた学生たちは、教員採用試験に合格することができた。

⑤鳴門教育大学フィルハーモニー管弦楽団は、前期の間、活動を停止していたので、サポートも中断していたが、卒業式での演奏で活動を復活したので、指導と指揮の活動を再開した。

⑥オフィスアワーや e-mail 休憩時間等に、履修に関する相談や、進路に関わる相談を受け、サポートした。卒業、修了した学生、院生たちからの相談にも対応し、研究構想や授業構想、研究発表原稿、論文執筆等の個別指導を行った。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

①継続研究である「19世紀アメリカにおける学校音楽教育研究」に関して、学会発表や論文執筆を行う。

②継続研究である音楽科の授業理論の構築に関する研究を進め、学会等で発表する。

③教師教育の改善を目指した研究を推進する。

④教育実践力の向上をめざす学生たちのための評価スタンダードの活用方法を検討する。

⑤教科教育学研究の方法を応用しながら、生徒指導の改善に関する研究に参画する。

(2)点検・評価

①継続研究である「19世紀アメリカにおける学校音楽教育研究」に関して、5月に立教大学で開催された音楽教育史学会で研究発表を行い、その内容を9月に審査論文として当学会に投稿することができた。この論文は、審査の結果、掲載可と判定された。また、本研究に関して、科学研究補助金の申請書を作成し、提出することができた。

②継続研究である音楽科の授業理論の構築に関する研究に関しては、8月に音楽科授業力評価スタンダードの内容を愛媛県松山市の音楽専科の小学校教員を対象とした講演会で紹介し、さらに、新しい学習指導要領の内容を踏まえた講話とワークショップを行った。

③昨年度開発した10年経験者研修モデルカリキュラムの成果を、8月に鹿児島大学で開催されたセミナーで講演し、担当教員との情報交換を行った。学内では、学部の「教職実践演習」と大学院の「教育実践フィールド研究」に関わる実行委員会や検討部会に出席し、本学の今後の教師教育の展開について検討を進めている。本年度は、22年度の入学生から実施される「教職実践演習」の構想のために、これまで個別に検討してきた学部カリキュラムとと大学院カリキュラム、そして、教員研修カリキュラムを連続させてとらえ直す必要が起こり、検討の成果を「学修キャリアノート」の評価基準の成文化作業において、具体的に反映させることができた。

④19年度に開発した音楽科授業力評価スタンダードを活用する方法を検討した。今年度からは、最初から情報を詳しく紹介しないで、巨視的な観点からの把握を促し、教員に求められる能力項目を学生たちが少しずつ分節的にとらえ直すことができるように改善した。これらの実践上の成果は、共著として3月に出版することができた。また、今年度の成果を学内の研究紀要に実践研究論文として執筆することもできた。

⑤19年度の教員研修モデルカリキュラム開発事業に関わってから、生徒指導に関する研究に取り組むことになり、ここで開発した生徒指導力評価スタンダードの内容が徳島県の小学校の生徒指導の研究部会でも容認されるようになり、教科教育学の立場から生徒指導のあり方や方法を考察するようになった。今年度も、阿南市の桑野小学校での研究活動に参画しながら、特に、「規範意識を育む生徒指導」に関して研究活動や助言活動を展開することができた。また、阿南市では、市内の小学校教員を対象としし、生徒指導に関する講演を行うことができた。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

①各種委員会や講座内での運営に参画し、その任務内容を推進する。

②大学の教師教育に関わる研修行事に参画する。

(2)点検・評価

①学部の「教職実践演習実行委員会」と大学院の「教育実践フィールド研究検討部会」に出席し、学部生、院生たちのための教師教育カリキュラムの検討を継続している。特に、「教職実践演習実行委員会」では、「学修キャリアファイル」の評価基準の作成作業において具体的な提案を行い、その内容が採用された。また、学生相談員の連絡会に出席し、学部生、院生たちの生活状況、相談状況等の情報を交換し、音楽コース内での準備態勢を検討している。

②学内でのFD等の教師教育に関する行事は、前期には何も実施されなかったが、12月に予定されているFDの研修行事に参画し、分科会や全体会で提案を意見や提案を行った。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

①附属小・中学校の教育研究活動に参画し、事前の研究協議会や研究大会に参加する。

②日本学校音楽教育実践学会や日本音楽教育学会、音楽教育史学会において、学会の組織作りや研究大会の準備、紀要編集等に協力する。

③学部の教育実践コア科目である「初等中等教科教育実践Ⅱ」と「初等中等教科教育実践Ⅲ」の講義を実施するために、教科内容学担当の教員と附属学校の教諭、公立学校の教諭と連携し、本学の教師教育のためのコア・カリキュラムの具体的な展開方法を工夫する。

④徳島県教育委員会と連携し、教員研修カリキュラムや研修プログラムの改善に関する研究を展開する。

(2)点検・評価

①附属小学校で行われた校内研究授業に構想の段階から参画し、今年度の研究内容に関する助言を行った。また、附属中学校の研究大会の研究発表と公開授業の準備に参画し、当日は助言を行った。特に、今年度は、附属中学校の森本教諭が中国四国地区の音楽教育の研究大会で研究発表を行うことになり、この準備にも参画し、当日は会場となる島根県の出雲第二中学校へ行って助言を行った。さらに、次年度は、森本教諭が授業者として準備を継続するので、このことに関する助言活動も行った。

②日本学校音楽教育実践学会の四国支部理事として、学会の運営に参画し、8月に開催された学会では、研究発表の司会や総会の議長を行った。そして、12月に鳴門教育大学において、四国支部会を開催し、模擬授業を通して研修活動を展開させた。また、日本音楽教育学会も今年度は、大会の実行委員として参画し、研究発表の司会を行った。音楽教育史学会では、紀要編集委員として委員会に参画し、投稿者の論文執筆に関する最終的なサポートを行った。

③学部の教育実践コア科目を推進していくために、教科専門の教員と協同的な授業を展開する工夫を継続し、講義の内容と方法を改善させることができた。また、この成果は、学内の紀要論文や共著書として成果を紹介することができた。

④徳島県の総合教育センターと相談しながら、独立法人教員研修センターに教員研修モデルカリキュラム開発事業の申請書を作成し、応募した。採択はされなかったが、今後も協同的な研究ができる場を模索していきたいと考えている。ただ、今年度は、文部科学省から別件の研究の委託が入ってきたので、新たな申請は行わなかった。引き続き検討していく予定である。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

 今年度も、主として本学の教師教育カリキュラムの具体的な内容と実践方法に関する実践的な研究と、学生への就職支援活動になるような一連のサポートを行うことができた。また、県内外で講演活動を行う機会に恵まれ、鳴門教育大学の教育力が増大している状況を紹介することができた。特に、これまでに開発してきた音楽科の授業実践力評価スタンダードと生徒指導力評価スタンダードに対する反響は手応えがあった。今後も、学生たちへの指導・支援活動を基盤に置きながら、音楽科教育研究や教師教育研究を具体的に試み、本学のカリキュラムの内容と方法の改善がPDCAサイクルの中で推進されていくように努力していきたい。

 

お問い合わせ

経営企画戦略課
電話:088-687-6012