自己点検・評価報告書(村田 守)

報告者 村田 守

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての教育・研究活動①

(1)目標・計画

 平成20年度は,地学教育の分野において日本地学教育学会教育実践優秀賞を,耐火物のJIS規格やISO規格の作成で経済産業大臣表彰を受けた。また,本業の地質学・岩石学の分野でも,国際学会発表や国際学術誌に論文掲載ができた。さらに,いくつかの論文も国際学術誌に投稿受理中であり,教育研究の第3期黄金時代を迎えようとしている。この流れの中で仕事をしていくのは容易であるし,ルーチンワークで論文数も稼げるであろう。しかし,忙しさにかまけてルーチンワークで業績稼ぎをしても,今後の進歩はない。さらに一段の高みを目指して,第4期黄金時代(私の縫い目のない地学の集大成)を実現するために,今年は仕込みの年にしたい。業績が無い場合は,取り敢えずの業績作りをせざるを得ないから,じっくり科学の動向を見極め,分析し,自分のできること,自分の勝てる分野を計算し,その実現に向けて一歩を踏み出すための準備をするためには,精神的なゆとりも,時間的なゆとりもない。幸いなことに,平成21年度は,時間的なゆとりはないが,精神的なゆとりはあるので,サバイバルのために小さなサバティカルを自らに与え,定年までに第4期黄金時代を迎えられるテーマ・夢を見い出したい。勝ち逃げするために,平成22年度が勝負の年である。

(2)点検・評価

 平成21年度は,学内では理科コース長,職場労働環境協議会会長,連合大学院講座代表者・地学分野代表者として忙殺された。学外では,耐火物のJIS原案作成委員会委員長としてJIS 原案を審議し,JIS ハンドブックを編集した。また,ISO/TC33 WG2コンビナー・WG17エキスパートとして,10月にブラジル・サルバドール会議に参加・運営した。そのために,当初予定していたサバイバルのための小さなサバティカルを取ることは出来なかった。しかし,従来から学生と調査していた徳島県那賀郡の下雄花崗閃緑岩の放射性年代を明らかにすることが出来た。その結果は,従来の予想とは全く異なるものであり,花崗岩形成史や日本列島の形成史を書き換える重大な発見であることが分かった。これで第4期黄金時代を迎えることが出来,定年まで第一線の研究者として走り続けることが出来る。苦労をともにしてきた学生たちに感謝したい。なお,耐火物技術協会から協会賞特別賞を授与された。

 

1-2.大学教員としての教育・研究活動②

(1)目標・計画

1.科研費申請は,代表者として2件(例えば,萌芽と基盤研究B)申請。

2.本学執行部が申請する科研費(例えば,総研や基盤研究A)には,分担者として協力する。

3.科研費以外の外部資金に応募する。

4.調査や学会発表等に校費が不足する場合は,研修(私費)とする。

5.校費不足を研究活動の不活発の言い訳としない。 

(2)点検・評価

1.科研費申請時期がISO/TC33サルバドール会議と重なった為に,2件の申請はできず1件であった。

2.当該申請なし。

3.経済産業省重点TCに耐火物技術協会より応募,採択。海外会議2件出席。

4.連合大学院経費を出張旅費分に予定していたが,無計画に執行した教員がおり,私の配当分の執行が出来なかったので,私費研修を行った。現行の物品購入システムでは各人の経費が管理されないので,使用金額が各人の各費目(例えばエクセルの表)に配信されるようにしてもらいたい(なにも難しいことではなく,現行システムにソートをかければ良いだけ)。

5.年度末や年度初めは私費研修処理を行っているし,自腹を切って研究活動にいそしんだ。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

1.学生・院生が自分の学力を正しく判断できる機会を設け,自らの学びの動機付けの機会を与える。

2.学生・院生が自ら実験教材や実験方法を開発できるようにする。

(2)点検・評価

1.学生・院生は自身の学力を冷静に判断できていない。講義の中では,小学生レベルまで戻って説明しているが,彼らにはそれが小学生のレベルとはわかっていない。そこで,教員採用試験に頻出する問題が出題される大阪の某中学校理科入試問題(受験生平均65%,合格者平均70%)をショック療法で解かしている。70%の成績を得た学生は受講生の1割であるが,彼らは確実に教採試験に合格している。残りの学生に対しては,勉強の仕方から教える。講義の内容を勉強しろと言っても勉強しないが,教採のためなら勉強する意欲はあるので,ここで後押しをしてやることで,自ら学び始めるようになった。

2.学生・院生は受動的にしか講義を受けないので,彼らを3分割し,実験テーマを与え,2班が異なる手法で実験教材作成,残りの1班が両者の判定をするというシステムで実験・講義を繰り返す。このゲーム感覚で実験教材を開発することで,能動的に実験や講義に取り組むようになり,実験が好きになり,種々の工夫をこらすようになった。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

1.専門分野において,外部からの高い評価を得る。

2.国際学会や国内学会で,積極的に発表する。

3.学術論文を公表する。

4.学術書籍も出版する。

(2)点検・評価

1.海外の大学の博士課程院生の研究指導教員に就任,国際学術誌のレフリー3件をはじめ,国内学術誌のコエディターやレフリーを務めるなど,外部から高い評価を得た。また,海外の大学で特別講演を行った。耐火物技術協会から協会賞特別賞を授与された。

2.国際学会や国内学会で,成果発表を行った。ただし,アブストラクト送付済みの国際学会1件は,その後の本務発生のために,キャンセルした。

3.インパクトファクターの高い国際学術誌に論文を公表することができた。米国地質学会誌はサーキュレーションが広く,新たな研究者との情報交換があり,今後新たな共同研究が期待される。

4.地質学の専門書を朝倉書店から刊行した。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

1.大学運営に参加する機会があれば,積極的に役割を果たす。

2.本学が社会に開かれた大学であることのアピールできる機会があれば,積極的に役割を果たす。

3.学長・副学長に取り入ることなく,誤れる大学運営があれば直言する。

4.自己点検評価には,中間報告が追加された。しかし,様式は別で,各自が自己点検評価報告書から,目標・計画を中間報告書にペーストするという極めて非生産的な仕事になっている。目標計画の打ち出しと中間報告の打ち出しを合わせて見ればすむのに,事務は形式的に1つの書類にせよという。しかし,年度評価されるときには,中間報告の内容を年度評価に入れろとは言われない。このことは,中間評価というのは,ほとんど何の意味も持ってないし,科研費申請締め切りで忙しいところにじゃまをしているだけと言われても仕方がない。こんな不要な仕事を与えているから,科研費の申請件数が少なくなっているのではないか?そこで,目的・計画,中間報告の進捗度,年度評価の点検・評価を1つの様式にまとめた。これで,教員も事務も省力化ができる。

(2)点検・評価

 コース長,職場労働環境協議会会長,中長期計画策定委員として,大学運営に積極的に協力した。連合大学院の講座代表者と地学分野代表者として,連合大学院の運営に協力した。また,教員免許更新講習2件,大学開放事業,あすたむらんど徳島サイエンスフェア講師等,大学にとどまらず社会に本学を宣伝する機会があれば,積極的に参加した。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

1.附属学校・社会との連携の機会があれば,積極駅に役割を果たし,大学で学んだこと・明らかにしたことを社会に還元したい。

2.国際交流等の機会があれば,積極的に役割を果たす。

3.外国人研究者の招聘や外国人研究者との共同研究・学術交流を行う。

4.産官学の連携や,その国際化にも取り組む。

(2)点検・評価

 社会との連携として,研究成果を還元した。土木学会の求めで,産業遺構の評価方法についても検討した。海外大学との共同研究は,現在論文投稿中であり,国際学会の発表も準備しており,順調と言える。問題は,大学間交流協定と先方大学長の本学訪問の申し出を受けることで,過去の経緯から大規模総合大学とは協定を結ばないと説明しても納得してもらえないことである。先方からそこまでの提言があることは,共同研究が順調に進行している証左でもある。

 耐火物・セラミックスの産官学連携によるJIS規格作成やISO規格作成は,新規作成出版のみならず投票により発行済み規格の改訂版発行が決まる等高い評価を受けている。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

 研究面は,今年度も幸いなことに海外・国内から高い評価を得ることが出来た。直近3年,国際学術誌に論文を複数公表でき,旧帝大理学部教員に遜色ない研究活動を行うことができた。それらの成果を,講義に,教員免許更新講習に,大学開放事業に,一般向け科学普及講演に還元することができた。

 教育面は,本学の学部・修士・博士院生の指導のみならず,過年度卒業・修了生のアフターケア,他大学院生の研究指導,海外大学の博士院生指導を行っている。

 管理運営面は,コース長・職場労働環境協議会会長として,大学運営に協力した。

 学外への研究成果の還元として,耐火物のJIS標準化委員,ISO回答作成委員会委員,JIS下原案作成委員長,分析分科会主査,耐火物・セラミックスの国際規格ISO TC33委員会日本代表,同WG2コンビナー,同WG17エキスパートを勤めている。また,欧州規格CENの規格作成も協力し,産官学連携や国際交流に研究成果を生かしている。

 

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