自己点検・評価報告書(松岡 隆)

報告者 松岡 隆

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての教育・研究活動①

(1)目標・計画

 教育計画 これまでの3年間,連合大学院のプロジェクトにおいて,教員養成系における数学の専門授業のあり方について研究してきたが,その成果を授業改善に生かすことを目標とする。以下,具体的に述べる。
1.学部の授業: 研究を通して,数学の教科専門授業において重視すべき要素を明確にすることができた。これらは「学校数学との関連」,「数学の概念同士の関連」,「現実の事象との関連」,「実用性」,「文化的価値」,「探究的活動の重視」である。これまでも,授業においてこれら要素を部分的には考慮してきたが,本年度は包括的に取り入れて授業を改善する。
2.大学院の授業: 教育現場での実践につながることを最優先し,学校数学につながり,また現実の事象と関連する数学内容について,探究的活動の紹介も含めながら授業を進める。
3.学部・大学院でのゼミ指導: ゼミがもつ最大のメリットは,学生が時間をかけてじっくりと考えることが経験できる点である。このメリットを生かし,自らの力で考えていく体験をとおして数学の面白さや奥深さを知るだけでなく,学校において知識探究・創造型の授業が実践できる能力を育てる。

(2)点検・評価

1. 学部の授業数学の教科専門授業において重視すべきと考えた要素および幾何学内容を,より包括的に取り入れて授業を改善した。具体的には,「幾何学Ⅱ」と「幾何学Ⅲ」において弱かった「実用性」と「文化的価値」の側面を強化するため,遠近法の背景にある幾何の定理とひもの結び方の数学をそれぞれの内容に加えた。「幾何学特論」では,「現実の事象との関連」の側面が不十分であったため船などの安定性の幾何的分析を内容に加えるとともに,これまで幾何の主要分野のうち唯一欠落していたフラクタル幾何学を内容に含めた。

2. 大学院の授業学校数学や現実の事象と関連する内容として,紙を折ることや干渉縞模様に現れる数学,図形が動く教具・遊具などを授業の題材とした。 探究的活動としての利用可能性を示すため,これらの多くは演習形式で扱った。また,受講生の教材開発力の向上を図るため,授業内容を発展させたものについて調べることや自ら開発することをレポートとして課した結果,それぞれ充実した内容の成果が報告された。こちらの予想を大きく上回る優れた内容も数件あった。

3. 学部・大学院でのゼミ指導自らの力で考え続ける体験を重視して,各自の興味関心に応じたテーマの中から,先行研究の乏しい課題を敢えて選ばせて指導した。この結果,ゼミ生各自が,多大の時間とエネルギーを費やした試行錯誤の過程を経て,図形パズル,多面体の分類,折りたたみなど学校でも活かせるオリジナルな成果を生み出すことができた。これにより,数学の面白さや奥深さを知るとともに,知識探究・創造型授業の実践力の向上に効果があったと考える。

 

1-2.大学教員としての教育・研究活動②

(1)目標・計画

 数学の分野の中でも諸科学とのつながりが深い力学系理論に関する研究テーマで21年度の科学研究費を申請したが,もし不採択となった場合は,22年度の申請を必ず行う。 

(2)点検・評価

 21年度の科学研究費申請が不採択となったため,研究テーマは同じく力学系理論で,目的・意義の記述を明確化するなど採択可能性がより高まるよう工夫し22年度の申請を行った。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

1.卒業・修士論文の指導に当たっては,学生が自発的に研究することを重視して指導する。

2.数学の教科専門授業に必要な要素を考慮して授業改善に努める。

3.学部・院のゼミ生に,教員採用試験の数学過去問題の解説・指導を行う。(学生支援)

(2)点検・評価

1.卒業・修士論文(学生4名,院生3名)では,各自の興味関心を尊重しつつ,なるべく先行研究の少ない課題を選ぶことによって,自ら工夫して考えを進めていくことが必要となるよう指導した。それぞれのテーマが全く異なるため,個別指導が必要となったが,それに見合う成果が得られたと考える。

2.連合大学院のプロジェクトにおける研究で抽出した数学の専門授業に必要な要素を考慮して授業改善を行った。学部では,「幾何学Ⅱ」と「幾何学Ⅲ」では「実用性」と「文化的価値」,また,「幾何学特論」では,「現実の事象との関連」の側面を強化した。また,さらに,これまで幾何の主要分野のうち欠落していたフラクタル数学を「幾何学特論」に含めた。大学院授業では,「学校数学との関連」,「現実の事象との関連」,「探究的活動の重視」の要素をより充実させた。

3.ゼミ生を中心に,教員採用試験の数学問題に関する質問を受け付け解説した。3件の質問のうち実際の試験で解説した内容とほぼ同じ問題が出題されたケースもあった。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

1.円板上の連続変換の周期2の周期点について,組ひも群の行列表現を用いて研究する。

2.教員養成系大学・学部数学教員懇談会のメンバーとして,教員養成における数学教科専門授業のあり方についての研究を行なう。

3.21年度の科学研究費申請が不採択となった場合,22年度の申請を行う。

(2)点検・評価

1.一般に,円板を含む曲面上の連続変換の周期点について,組ひも群の表現を用いて研究した。成果を,東京工業大学で1月に開催された2009年度冬の力学系研究集会で,「トーラス同相写像の一般レフシェッツ数と力学系への応用」と題して発表した。

2.教員養成系大学・学部数学教員懇談会の有志で組織する京都大学数理解析研究所共同研究「数学教師に必要な数学能力形成に関する研究」のメンバーとして,教員養成における数学教科専門授業のあり方についての研究を行なった。この成果は,2編の論文として京都大学数理解析研究所講究録に収録される。

3.21年度の科学研究費申請が不採択となったため,力学系理論に関するテ-マで22年度の申請を行った。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

 いずれかの委員会委員として,学内の会議に出席し,職務を遂行する。

(2)点検・評価

 大学院教務委員会の委員として職務を遂行した。また,モデル・コアカリキュラム調査研究委員会およびモデル・コアカリキュラム開発チームのメンバーを務めた。さらに,教育実践フィールド研究実施専門部会,自己点検・評価制度検証PT,教員選考委員会(2件),他1件の委員会委員も務めた。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

1.附属中学校から要請があれば授業を担当する。また,附属小・中学校の算数・数学教員から質問・相談があれば,解答やアドバイスを行う。(附属学校)

2.教員支援講師・アドバイザーに登録する。学校現場から講師としての要請があれば,積極的に引き受け,生徒・児童に数学の楽しさ,面白さを伝えるよう努める。(社会貢献)

3.講座として学内で開く小学生対象「算数教室」の企画・実施に携わる。また,鳴門市「子どものまちフェスティバル」が開催されれば,図形パズルのコーナーの実施を担当する。(社会貢献)

4.JICA研修の講師を務める。(国際協力)

(2)点検・評価

社会貢献

1.教員支援講師・アドバイザーへの登録を継続した。

2.徳島県立城南高等学校で,SSH事業の講師として招かれ授業を行った。(3月4日実施)

3.コース主催で学内で開催した小学生対象「算数おもしろ教室」の企画・実施に携わった。

国際協力

大洋州,中東のJICA研修講師を務めた。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

1. 連合大学院の副研究科長を務めた。

2. 米国の和算研究家P. Wong氏(Bates大学)の来日時に本学に招いて,数学コースの院生向けに和算の入門的解説の講演を依頼し,講演会を開催した。(6月30日実施)

 

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