自己点検・評価報告書(成川公昭)

報告者 成川公昭

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての教育・研究活動①

(1)目標・計画

 現在我が国の子どもたちの理数科に対する学力の低下とそれに対する興味が薄れてきていることが指摘され,非常に懸念されている.今までのレベルを維持し,更に高いレベルへと導いていくために,それぞれの教師が持つ役割は非常に大きい.そのなかで本学の果たすべき役割の大きさをしっかりと受け止め,学生達に自ら責務の大きさとやりがいを十分に感じられるような教育を行いたい.また今まで行ってきた研究を通して得られた,学問を行うことの面白さとその意味を伝えることを目指す.具体的には,学校現場で現れる教材や自然界に現れる現象を通して,今学んでいる内容の位置づけを明確にし,しっかりと基礎を身につけ,その上で自ら考えるという姿勢を育てるよう,授業,その他の大学生活を指導したい.

(2)点検・評価

 まず全ての授業を,教師が持つ役割や責務の大きさを伝え,そのために自ら考え実行のできる力とそれを支える基礎力をつけることの必要性を説いた上で,進めていった.一見関係があるとは思われない専門的な内容が如何に教育現場で必要とされているか,その裏に秘められた関わりと,高い観点から物事を見ることにより本質に迫る深い理解を得ることができることについて,実際の例を挙げながら授業を進めた.最初学校現場で為されている授業内容と大学の専門的な授業の間のギャップに戸惑いを表し,また抽象的なものの考え方ができない学生もいたが,素直な心で,焦らず落ち着いてじっくりと考えることを習慣づけすることにより克服できることを繰り返し説明し,最後には多くの学生がその姿勢を身につけることができた.また,同時に基礎の重要性についても理解できたようである.ただ,言われたことを忠実に実行することはできるが,自らの力で物事を考えるということは,今までの生活の中であまり経験をしたことがなかったようで,まだまだ不十分である.今後これに対する指導の工夫を考えねばならないと実感している.

 

1-2.大学教員としての教育・研究活動②

(1)目標・計画

 数学に於いては,外部資金として考えられる主なものは科学研究費である.ここ十数年来,徳島大学の研究者と共同研究を行い,科学研究費の補助を得て研究活動を行ってきた.この基本姿勢はこれからも継続していく計画であり,科学研究費に対してもその計画の元に応募を行いたい.また,自分の研究分野が関係する研究グループの研究分担者ともなっており,引き続き共同研究を行いたい.

(2)点検・評価

 科学研究費補助金は不本意にも不採択となったが,その研究課題に対する研究は徳島大学の研究者と基本的に週1回のセミナーを通して推し進めてきた.その成果として,準線形楕円型方程式の多重正値解の存在に対する結果を得ることができ,現在論文としてとりまとめ中である.また,これら研究を進める中で,準線形楕円型方程式に対する自由境界値問題という新たな研究課題が浮かび上がってきた.そのため,これを平成22年度以降の科学研究費補助金の研究課題としてあげることとした.

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

 本学の使命である,よりよい教員の育成と,それによる社会への貢献を目的として学生に対する教育と支援を行う.基本的には昨年度と同じ姿勢で教育・学生支援活動に当たるが,特に,幅広いものの考え方や,自分の力で考え,解決する態度が身につくよう指導に心がけたい.これらは授業の時間だけで済むものではなく,すべての学生生活を通して形成されるものである.このことから,できるだけ学生との接点を作り,自分の研究や生き方に対する考え方を学生に提示し,共に考える機会を作りたい.このことにより,常に知的関心や好奇心を持って学生生活が送ることができるよう努力する.同時に,学生が気楽に悩みや相談を打ち明けることができるよう,こちらから関心を持って声をかけ,互いの信頼関係を築き上げる.

 一方で学生時代に身につけた力を発揮する場である教職に一人でも多く就けるよう教員採用試験に対する対策も考える.従来行ってきた「教員採用対策塾」を本年度も開講し,各都道府県の教員採用試験過去問題や予想問題を解説する.昨年度,模擬授業や面接に対する対策も行い,その成果が現れたこともあり,本年も続けて実施したい.

 あらゆる機会を通して教師という職業の責務の大きさ,やりがい,すばらしさを,先輩の活躍の様子などの具体的なかたちで学生に伝え,教職に向けて早い段階からモーチベーションを高く持てるよう指導する.

(2)点検・評価

 授業を通してやクラス担任としてだけではなく,なるべく深く学生と関わりを持ち,彼らが後になって充実した学生生活を送ることができたと実感できるようその対応に心がけた.学生時代は,初めて親から離れて生活している学生がほとんどであり,非常に広い範囲にわたって悩みを抱いている.気軽に思っていることが話せるよう心がけて学生に接した結果,多くの学生が悩みを打ち明けてくるようになったが,聞いてみると非常に狭い考え方にとらわれていることに気付いた.これに対し,自分の経験や先人の例を出して広い観点から見直すことができるようアドバイスを行った.中には精神的に病んでその悩みを訴える学生もいたが,専門家を紹介することにより対処した.また,1年生学生から将棋同好会を立ち上げたいとの申し出があり,フットサル同好会の顧問とあわせて,その顧問教員となった.

 「教員採用対策塾」は本年も開講し,数学専門科目に対する過去問や予想問題を出題し,解答の指導を行った.これは基本的に週1回のペースで行い,受講生全員が希望する府県の1次試験に合格した.続けて個人的に模擬授業,面接指導を行った結果,最終的には1名の不合格者を出してしまったが,概ね全員を正規採用させることができた.

 教職に就いている卒業生との接触を多く持ち,彼らから聞いた現場の生の声を学生に話し,身近に学校現場を感じることができるよう努めた.

 

2-2.研究

(1)目標・計画

 本年度科学研究費補助金に申請中である「主要部が空間変数に依存する非等方準線形楕円型方程式の研究」について,採択,不採択にかかわらず,徳島大学の研究協力者と共に研究を推し進める.また,別の科学研究費のテーマである「特異性を持つ連続体力学の数理研究」についても研究協力者として自分の分担分の研究を行う.それらの研究成果は論文としてまとめ上げる.

(2)点検・評価

 本年度は意に反して科学研究費が不採択となってしまったが,徳島大学の共同研究者とは数年来続けて研究している準線形楕円型方程式の解の性質について更に研究を進めた.その結果,臨界指数を持つ外力項を含む準線形楕円型方程式の多重正値解の存在について新たな結果を得ることができた.これについては現在論文としてまとめているところである.また,新たな問題として自由境界を持つ準線形方程式の解析について研究を進めた.これについては未だ研究の緒についたところであるが,非常に注目される興味ある問題であり,平成22年度科学研究費補助金の研究課題として取り上げ,更に引き続き研究を推し進める予定である.また,科学研究費研究課題「特異性を持つ連続体力学の数理研究」についても研究協力者として研究を進めた.

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

 コースより選ばれた各種委員の委員として大学運営に係わり,自分の能力の範囲でできる限り大学運営に貢献する.

(2)点検・評価

 コースより選出された就職委員,附属学校運営委員会委員としてその職務に当たった.更に,教員免許状更新講習実施委員会,教職実践演習実行委員会委員として職務を遂行した.

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

①附属学中校長の経験者ということで外部評価委員等,附属中学校に係わることが多くなった.事情がある程度わかるものとして,附属中学校との連携に努力したい.特に研究協力体制を推進する.(附属学校)

②コースで開催される地域社会への連携事業の企画,実施を行う.(社会連携)

③登録している「教育支援講師・アドバイザー等派遣事業」等による各学校よりの依頼があったとき,積極的にその企画を実行する.(社会連携)

④JICA等による国際協力事業に貢献する.(国際交流)

(2)点検・評価

①附属中学校学校関係者評価委員を引き続き引き受け,学校の実態を把握するためその行事に参加した.校長,その他の委員とも意見を交換し,委員長として学校評価を行った.附属小学校研究反省会,附属中学校研究発表会に参加し,数学の専門的立場から研究に対する意見を行った.

②コース主催で「算数おもしろ教室」を企画し10月に実施した.また,鳴門市主催の子どものまちフェスティバルの体験コーナーに数学コースとして参加し,多くの子どもたちの参加を得た.いずれも算数・数学の啓蒙活動としての役割を十分に果たすことができたと評価している.

③学校数学研究会では2号の機関誌を発行すると共に,8月に例会を開き,小学校および高等学校の現職教員から問題提起を行い,それに対する意見交換を行った.さらに,本年度後半の顧問としてその運営に携わった. 11月に開催された中国・四国算数・数学教育研究大会では中学校部会指導助言者として事前に研究発表者に対する指導を行うと共に,当日の研究発表に対する助言を行った.教員免許更新講習の選択領域で講習を7月に行い,20名の受講生を得た.

④大洋州のJICA研修,中東地域のJICA研修に対して数学分野の授業を行い,それらの研修に協力した.

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

①大学院の定員確保については危機的意識を持って当たり,学生を送ってくれるよう知り合いの大学教員に直接会い,強く依頼した.本年度は4年生のほとんどが教員採用試験に正規採用,もしくは一般企業に就職し,内部進学者がいなかった.それにもかかわらず,何とか例年通りの合格者を得ることができたのはこの活動によるものであると評価できる.

②教員採用対策に対し,従来の「教員採用試験対策塾」の筆記試験対策だけに終わらず,模擬授業,面接についての指導も行った.その結果,コースで学部生で7名,大学院生で6名(2名のM1生含む)の正規合格者を出すことができた.

 

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