自己点検・評価報告書(井上とも子)

報告者 井上とも子

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての教育・研究活動①

(1)目標・計画

 教育大学の教員として、本学の「実践力のある教員の育成」という目的を第一に考え、「教育」に重点を置き、1年間を計画する。
目標
 特別支援教育コーディネーター養成分野の専任として、現職教員の再教育の立場から、教育現場に戻ったときに、その学校の特別支援教育推進にかかる課題を的確に把握し、速やかにPlan-Do-Check-Actionのサイクルにおいて推進活動を開始することができる実践力のある特別支援教育コーディネーター育成に努める。
 教育現場及び教育委員会事務局勤務経験を生かし、教育現場で望まれる教員像を「自ら積極的に問題解決に向かえる教員」とし、大学における教育活動を展開する。
計画
①授業内容大学院授業:概論、実践論、連携論を基礎に、実地教育に附属特別支援学校の地域支援部の活動への参加と、一昨年度末より開始し、昨年度(20年度)軌道に乗った「高機能発達障害幼児を対象にした就学前療育が教育臨床授業」を実施する。全般にわたり、特別支援教育の推進に関して、昨今、地域・学校・学級ぐるみ(ワイド)の取り組みに焦点が当たっている。この視点を重点的に授業内容に盛り込み、特別支援教育コーディネーターの専門性に「俯瞰する力」を挙げ、学生自身のこれまでの取り組みや資質にまで見直し、再考する、「教わる授業」から「考える授業」に参加態度の変容を求める内容を展開する。教育臨床授業において、今年度は、昨今の特別支援教育のトピックスである学校への引き継ぎ等、連携を書面から学校との面談等にまで内容を拡大し、子どもの実態把握から個別の指導計画を立て、実践し、毎時間毎の録画を元にした反省と授業評価、次の指導計画立案等々、現場に活かせる実践授業を引き続き実施する。
 学部授業:教育現場の事例を盛り込み、臨場感のある授業内容を構成する。特別支援教育の基礎的知識について、教育現場の課題に結びつけながら、わかりやすく実践的な内容を編成する。特別支援教育には不可欠な視覚的な手がかりやプレゼンテーション体験を授業の中に盛り込み、「子どもが分かるプレゼンテーション」を目標に授業内容を構成する。常に教員になった場合に、内容のみならず授業の展開の仕方や教材の示し方など、現場で活用できることを意識した内容に心がける。
②授業方法:講義形式の授業の中に必ず「次週までの課題」を設け、学生自らの問題意識・課題意識を持たせながらその解決に向かう方法を学べるよう、演習形式を組み合わせる。また、グループを編成し、役割を持たせた話し合いをさせるなど、チームで学習を進める経験を演習や予習に盛り込む。授業毎に次週のテーマを出し、それについて予習し、話し合いに積極的に加われるようにする。プレゼンテーションやレジメの内容を、聞きながら書き取る力、ポイントをつかめる力を伸ばせるよう、工夫する。大学院授業においては、毎時間、前週に与えられたテーマを元にレポートを作成させ、授業においてプレゼンテーションの時間を設ける。出された質問や問題について、その場で討議し、スーパーバイズを行う問題解決学習を取り入れる。
③成績評価:大学院授業の評価は日々の努力が評価に反映するよう、発表内容、協議態度も50%の評価対象とする。後の50%は提示テーマに沿った毎授業毎のレポートの内容を論理性と共に自身の考察と教育実践への具体的提案など鑑み評価する。学部生授業では、10%の出席状況、10%の発表内容、80%の授業内容に添った試験によって評価する。

(2)点検・評価

①授業内容:昨年度(20年度)軌道に乗った「高機能発達障害幼児を対象にした就学前指導の教育臨床授業」を順調に進めることができ、現職大学院生の教員としての資質、特に発達障害児に対する指導技術の向上が、著しい。受講生自身からも、「どの授業よりも現場に戻って、役に立つ授業である」との評価を得ている。また、この授業に参加協力した保護者にも授業に関するアンケートを採り、参加してよかったとの評価を得、「就学には不安はあるものの、がんばって子育てをしていきたい」との前向きな感想も得ることができた。今年度も、教育臨床授業の中で、「就学のためのサポートファイル作成」を保護者に勧め、作成されたものを保護者と共に検討するなど、支援を保護者へも拡げることができた。4名の協力幼児のうち3名が就学したが、公立に進学したものはこのサポートファイルを有効活用することができた。

 特別支援教育コーディネーターの養成分野として、授業の一環で、自身のコーディネーターとしての資質について、大学院1年目と終了時点において、アンケートの形で、自己分析をさせ、「考える授業」「自らを変える授業への取り組み」を今年度もとることができた。データーとして活用できる数まで、とり続け、コーディネーター養成のあり方に関する研究につなげていきたい。学部授業:教育現場の事例を盛り込み、ADHD児の学校場面の様子をVTRで紹介するなど臨場感のある授業内容を構成し、受講生の興味関心を持たせることができた。授業は講義のみならず、話し合い、教育相談シミュレーションなど、演習的な内容を多く取り入れた。また、5人程度のグループを作り、各グループにテーマを与え、発表させるなど、プレゼンテーション体験を授業の中に盛り込み、「子どもが分かるプレゼンテーション」を目標に授業内容を構成することができた。成績評価:大学院授業の評価は日々の努力が評価に反映するよう、発表内容、協議態度も50%の評価対象とした。後の50%は提示テーマに沿った毎授業毎のレポートの内容を論理性と共に自身の考察と教育実践への具体的提案など鑑み評価した。学部生授業では、10%の出席状況、10%の発表内容、80%の授業内容に添った試験によって評価した。今年度の学部生授業における試験、レポート発表に関しては、協働学習が進み、試験も概ねB評価以上の得点をとることができており、不合格となった学生は36人中1名であった。このほか、教職大学院の授業にも参画し、実施した授業に関して受講生から「実践に役立つ内容であった」との評価を得た。

 

1-2.大学教員としての教育・研究活動②

(1)目標・計画

・平成19年度より始めた科学研究費による研究が、本年において終了するため、次年度からの取り組みに向け、引き続き採択に向けた申請を行う。テーマは、すでに実施している附属特別支援学校の地域支援部との連携を元に、「大学ができる地域支援の実践と在り方の検証」 を考えている。

・人材育成実行委員会運用モデル検討部会チームの委員として、戦略的GPの「地域に根ざす教育支援人材の育成プログラム開発と視覚認証システムの実践的共同開発」に参画し、役割をはたす。

・4大学連合の連合大学院の教員資格認定を受けるよう、審査基準に則って取りはからう。 

(2)点検・評価

・科学研究費による研究を引き続き行えるよう、研究分担者として申請を行った。テーマは、すでに実施している附属特別支援学校の地域支援部との連携を元に、「大学ができる地域支援の実践と在り方の検証」 を含む、「地域の特性に応じた特別支援教育のネットワークづくりに関する研究」とした。しかし、残念ながら、不採択に終わった。来年度に向け、申請準備を始めることとする。

・人材育成実行委員会運用モデル検討部会チームの委員として、戦略的GPの「地域に根ざす教育支援人材の育成プログラム開発と視覚認証システムの実践的共同開発」に参画し、運用モデル検討チームの一員として会議に参加し、岡山方面2カ所の「子どもサポート事業」の研修会において「発達障害児の理解」の講師を担当し、香川県坂出においても、運用モデル事業の際、「発達障害児への対応」について講義するなど、運用モデルの検討に貢献できた。

・4大学連合の連合大学院の教員資格認定において、D合を取得した。

・個人的な研究として、コーディネーター養成の在り方に関する研究、発達障害児の指導法に関する研究を進めるに当たって、データの収集に努めることができた。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

・学部3年生の担任であり、合宿研修を通じて交流を図り、大学生活や学業が円滑に、安全に送れるよう、個々の相談に応じるなどきめ細かな支援に努める・学生が孤立することのないよう、学年のまとまりや支え合いに配慮した対応を進める

・修士論文作成に向け、院生一人ひとりの学ぶ意欲や関心を引き出し、体調に留意しながら進められるようタイムスケジュールを示すなど、順調に研究が運ぶように取りはからう。

(2)点検・評価

・学部3年生の担任であり、初等教育の教育実習において、担任する学生の学級訪問をし、実習中の様子を見たり、助言をしたりした。時折、心理的に不安定になる学生に関して、他の同じ専修学生とも連絡を取り、過度にならないように配慮しながら、様子を見てきたが、本人自身から、相談を持ちかけてきたり、卒論研究などに関する支援を求めてきたりなど、良い方向への変化が見られた。・学部3年生対象の就職支援活動として、集団模擬面接の面接官を2度にわたって担当し、支援を行った。

・学生のボランティア活動などに協力するなど、意思疎通に努めた。学生の方から、院生生活環境改善等の相談を持ちかけられることも多かった。学生は、専修・専攻側からの様々な依頼にも快く応じ、良好な関係が維持できた。

・修士論文作成に向け、院生一人ひとりの学ぶ意欲や関心を引き出し、体調に留意しながら進められるようタイムスケジュールを示すなど、順調に研究が運ぶように取りはからっており、5名の院生(現職)は、評価の高い修士論文を仕上げることができ、個々に「ここで学べたことへの充実感と修士論文の作成の達成感」持って修了して行くことができたことが、指導・支援の成果と考える。3名の院生は、順調に修士論文作成、教育実習、単位取得を進めている。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

・諸学会大会における自主シンポジウムや発表を行い、特別支援教育コーディネーター養成分野からの特別支援教育推進の在り方等を発信する。

・発達障害児の社会性の伸張にかかる教育・支援法と、指導者の指導技法の変容について、特別支援教育コーディネーター実地教育における教育臨床授業を検証の場として活用し、発達障害児の指導方法の研究を進める・特別支援教育の推進に関わる地域連携体制の構築について引き続き、アンケート分析等、研究を進める。

(2)点検・評価

・2つの学会大会において6つのポスター発表を行った。

・小児神経学会(鳥取大会)において、準備委員会からの要請で、シンポジストとなり高機能広汎性発達障害児の指導について報告を行い、その内容をまとめたものが学会誌として発表される(5月)。

・発達障害児の社会性の伸張にかかる教育・支援法と、指導者の指導技法の変容について、特別支援教育コーディネーター実地教育における教育臨床授業を検証の場として活用し、発達障害児の指導方法の研究を進めることができた。

・科学研究費を受託し、最終年であった。この研究テーマに沿って研究を進めてきた結果として、県主催の特別支援教育コーディネーター研修会や本学でこれまで養成してきた特別支援教育コーディネーターおよび、附属特別支援学校の地域支援部を核として、地域の特別支援教育推進ネットワークが、徳島事例検討会として確立しつつある。最終のまとめをした。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

・委員会に所属し、特別支援教育専攻の一員・代表として会議に参加し、議案内容等滞りなく、責任を持って委員会業務を行う。

・学生確保のため各地の研修会の講師依頼を受け、特別支援教育コーディネーター養成分野の目的や内容について発達障害児の理解とともに啓発を行うとともに、特別支援教育コーディネーター分野の授業単位が特別支援教育士認定単位のポイントになることを県内外に知らせ、院生定員充足に努める。

・戦略的GPの「地域に根ざす教育支援人材の育成プログラム開発と視覚認証システムの実践的共同開発」の運用モデル検討部会チームにおいて役割をはたす。

(2)点検・評価

・学部教務委員会に所属し、特別支援教育専攻の一員・代表として会議に参加し、議案内容等滞りなく、責任を持って委員会業務を行うことができた。特に特別支援学校教員免許取得のための補講授業や嘱託講師選定等、教育支援チームと連携を図り、協働して業務を遂行でき、補講等、学生が不利益を被らないように開講できた。

・学生確保のため各地の研修会の講師依頼を受け、各地で大学院の説明や案内を盛り込んだり、他大学の教員に接する機会を活用して入試案内送付をしたりなど、院生定員充足に努めた。

・院生の研究の成果物を専攻のホームページに掲載し、広くその成果物が活用されるように取りはからうことができた。専攻内の研究内容や院生の活動を学外に発信し、院生定員充足に結びつくよう努めたい。

・戦略的GPの「地域に根ざす教育支援人材の育成プログラム開発と視覚認証システムの実践的共同開発」の運用モデル検討部会チームに所属し、講師、会議出席等々、役割を果たすことができた。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

・県教育委員会研修企画担当者と連携し、県内の特別支援教育コーディネーター養成研修会等の講師を受け、県内、特別支援教育に関係する教職員の資質向上を支援する。

・県教育委員会(徳島県と兵庫県)との連携として特別支援教育推進事業の専門家チームの委嘱を継続して受け、各県の事業における教育相談や学校支援に携わり、大学人としての地域貢献に努める。

・本学アドバイザー派遣事業に引き続き登録し、積極的に県内の学校における特別支援教育充実への支援を進める。

・附属特別支援学校の地域支援部との連携をより密にし、事例検討会を通し、校内の人材育成に助力すると共に、県内の幼稚園から高等学校までの特別支援教育推進を支援することに力を注ぐ。

・徳島市内の通級指導教室担当教諭を中心に勉強会を隔月に実施しているが、今後も継続し、発達障害児の指導に携わる教員の資質向上に寄与する。

・当養成分野を終了した特別支援教育コーディネーターを中心にした各地域での勉強会開催を奨励し、各教育現場での実践を支援する立場で、修了生のフォローアップに努める。

・特別支援教育専攻が中心(ハブ)となり、地域の特別支援教育の活動をとりまとめる主旨の徳島特別支援教育事例検討会の発展と維持を進める。

(2)点検・評価

・徳島県発達障害者支援センターの職員を半年間、研究生として指導し、福祉分野との連携を図ることができた。

・県教育委員会研修企画担当者と連携し、県内の特別支援教育コーディネーター養成研修会等の講師を受け、県内、特別支援教育に関係する教職員の資質向上を支援してきた。

・県教育委員会(徳島県と兵庫県)との連携として特別支援教育推進事業の専門家チームの委嘱を継続して受け、各県の事業における教育相談や学校支援に携わり、大学人としての地域貢献に努めた。ほか、徳島県内の福祉関係機関、人権教育関係機関、生涯学習課等々の依頼を受け、研修会において講演を行った。

・本学アドバイザー派遣事業に引き続き登録し、積極的に県内の学校における特別支援教育推進の充実にむけ支援を進めている。前期3校、後期5校からの支援要請があり、それらに応じた。

・附属特別支援学校の地域支援部との連携をより密にし、事例検討会を通し、校内の人材育成に助力すると共に、県内外の幼稚園から高等学校までの特別支援教育推進を支援することに力を注いだ。特に、今年度は、兵庫県からの特別支援学校管理職研修や、県教委主催の特別支援教育研究発表大会の分科会講演、淡路島内の学校支援など多数要請を受け、それに応じることによって、兵庫県特別支援教育センターより、兵庫県内教員を研修生として本学に依頼したい旨の打診を受けた。

・徳島市内の通級指導教室担当教諭を中心に勉強会を隔月に実施しているが、今年度も継続し、発達障害児の指導に携わる教員の資質向上に努めた。また、今年度は、発達障害者支援センターの職員2名も加わり、教育と福祉の連携も図りつつある。

・専攻を中心として事例検討会を開催したり、学会発表を進め指導したりするなど、修了生のフォローアップに努めている。

・特別支援教育専攻が中心となって進めている徳島特別支援教育事例検討会を開催し、分科会の司会進行を努めるなど、発展と維持に努めている。

・県立ひのみね養護学校の学校評議員として学校運営・評価に関する助言を行い、鳴門市よりの要請を受け、文部科学省指定研究の鳴門市幼児教育の改善・充実調査研究事業運営委員会に参画し、調査研究、ならびに報告書作成に尽力した。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

・科学研究費申請が平成19年度に採択され、3年間が経過した。今年度は、連合大学院の教員資格認定を受けるなど、外部資金獲得と共に、県内外の教育への本学の寄与の一旦を担えることができ、本学への貢献ができた。

・また、「地域の特別支援教育のネットワークの維持推進」をテーマに、22年度からの科学研究費申請を行ったが、結果は不採択であった。今後も外部資金の獲得に向けて努力していきたい。

・年度当初予定されていた研修会講師や各種推進委員会等の委員も務めることとなり、徳島県教育委員会との連携を図り、本学の進めようとしている地域連携、地域貢献に一役を担うことができたことは、本学への総合的貢献としては充分であったと考える。

 

 

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