自己点検・評価報告書(井上和臣)

報告者 井上和臣

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての教育・研究活動①

(1)目標・計画

本年度の教育計画は以下の通りである。

○教育は実践的であることに主眼を置くこととする。このとき,精神科医として外来診療に従事する過程で,日々更新されている臨床経験に裏打ちされた,実践的な「臨床の知」を提供できるよう尽力したい。

○学部の授業では,学校精神保健と生命倫理が中心主題となる。学校精神保健の授業では,具体的な診断・治療の経験を織り交ぜながら,症例記載の文献を提示したい。生命倫理の授業は,死にゆくことと自殺の問題について,視聴覚教材を補助的に使用して進めたい。

○大学院の場合,精神医学全般を講義する授業では,生物学的な病態理解の重要性を,生物・心理・社会モデルの枠組みで教えたい。心理療法に関する講義は,臨床心理士養成コースの学生が対象となるため,認知療法という世界標準の心理療法について,医療・教育等の分野で修了後活躍するときの基礎となる知識と実践演習を提示したい。精神医学の外国語文献を読む演習では,臨床心理士養成コースを修了後,臆せず外国からの情報に接近できるよう,学生に勧めたい。

○質問や疑問を作る能力を強化するために,講義や演習の内容に関する質問と批判的な質問を作るよう学生に勧めることにする。「疑問をもつ」ことの意義を知らしめたい。

(2)点検・評価

○精神科医としての臨床活動から材を得て,具体的かつ実践的な「臨床の知」を提供する授業内容とした。とくに大学院の「精神医学研究」,「心理療法研究」,「精神医学文献演習」では,修了後に臨床心理士として役立つ実践的な知識を教授した。

○学部の授業「学校精神保健学」において,アメリカ精神医学会の症例集に基づいて,学術用語だけでなく日常的な漢字の読みについても,そのつど指導を行った。「生体メカニズムと生命倫理」では,死と自殺の問題を取り上げ,ビデオ等を積極的に使用した。

○大学院の授業「精神医学研究」は,さまざまな精神障害等を網羅的に教え,臨床心理士に不可欠な心理社会的側面はもちろん生物学的視点についても重視した。「心理療法研究」は,認知療法を取り上げ,認知再構成法の手順,学校教育や医療での認知療法の実際を提示した。「精神医学文献演習」で,英語文献(「パーソナリティ障害の診療ガイドライン」)を音読した後に訳出する課題を,各受講者に課し,学術英語能力の向上を継続して図った。

○大学院の「精神医学研究」では,毎回の授業に関する質問を作ることを課題とし,そのつど授業の冒頭で質問への回答を,当該の学生だけでなく全員に向け与えた。

 

1-2.大学教員としての教育・研究活動②

(1)目標・計画

○徳島大学と鳴門教育大学が進める平成21年度グローバルCOEプログラム『子どもの発達を支える健康生命研究(仮題)』(拠点リーダー:宮本賢一徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部教授)のために,微力ながら,関与していきたい。 

(2)点検・評価

○平成21年度グローバルCOEプログラム『子どもの発達を支える健康生命研究(仮題)』(拠点リーダー:宮本賢一徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部教授)は,残念ながら採択には至らなかった。ただ,申請準備過程での協力を微力ながら行った。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

○臨床心理士として主に保健医療福祉領域での臨床活動を将来実践する臨床心理士養成コースの大学院学生に向けて,当該領域での活動に資する認知(行動)療法の具体的な適用法を理解できるように,主宰する「認知行動療法を学ぶ会」などへの参加を促し,事例に即した認知(行動)療法の取り組みを提示していきたい。

○学部学生の基礎学力の充実に不可欠な日本語を的確に読む能力を高められるよう,学部での授業に取り組みたい。

○大学院学生に対しては,英語能力の向上が求められる授業展開を,文献購読演習の場で実施したい。

(2)点検・評価

○京都で継続中の「認知行動療法を学ぶ会」定例会(ほぼ毎月1回開催)は平成21年度末には159回を数えた。大学院に在籍するものの参加はわずかであったが,修了生の参加は恒常的であった。

○学部の授業「学校精神保健学」において,学術用語だけでなく日常的な漢字の読みについても,そのつど指導を行った。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

○日本認知療法学会の幹事(事務局長)として,認知療法の普及,とくに医療への適用に尽力するとともに,自らが主宰する「認知行動療法を学ぶ会」の活動を継続する過程で,認知療法に関する著書・論文の執筆,関連学会・研修会での講演等に取り組みたい。

○認知療法と近縁の関係にある社会生活技能訓練(SST)について,関連する学会が主催する研修会の企画・講演等に取り組みたい。

(2)点検・評価

○日本認知療法学会の幹事(事務局長)として学会活動の事務的部門を管理し,あわせて 「認知行動療法を学ぶ会」を継続した。先述の通り,後者はすでに159回を数えている。

○SST普及協会四国支部の運営とともに,支部主催の研修会を開催した。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

○各種委員会での職務を適切に遂行することで,大学の運営に関わることにする。

(2)点検・評価

○衛生委員会委員としての職務を遂行した。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

○徳島県精神科病院協会の主催する社会生活技能訓練(SST)研修会を継続し,県内精神科医療機関の看護師,精神保健福祉士,作業療法士などに対するSSTの実践的教育に積極的に関わりたい。

(2)点検・評価

○徳島県精神科病院協会主催の社会生活技能訓練(SST)研修会を年間5回実施した。県内の精神科医療機関の看護師など約30名に対するSSTの実践的教育に積極的に関わることができた。初年度からの研修会修了者は200名を超えている。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

○日本認知療法学会の幹事(事務局長)として認知療法の普及に資する活動を今年度も継続できていることが,臨床心理士をめざす大学院学生に対する教育内容に好ましい効果を及ぼしていると考えられる。

○クリニックにおける臨床活動が,学部や大学院の学生に「臨床の知」を実感させ,教育指導に現実味と実践性を与えていると自負している。

 

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