自己点検・評価報告書(橋川喜美代)

報告者 橋川喜美代

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての教育・研究活動①

(1)目標・計画

 教育ならびに研究の両面において計画していることを具体的にあげておく。
 ①教育面からは,学部・大学院ともに,反省・評価と指導計画の改善にかかわる研究を保育現場において実践し,子どもへの共感に基づいた教育実践力ならびに研究を構想する力の育成を計画している。
 ②研究面においても,科学研究費補助金の計画内容とも関わる共感性に基づいた実践例を19世紀後半のアメリカ、ドイツでの先駆的実践を取り上げながら,保育者の専門性と教育実践力を明らかにすることを計画している。

(2)点検・評価

 ここ数年をかけ,研究面において解明しようとしている主題は,ドイツやアメリカの保育者・教員養成において目指されてきた精神的母性であり,女性たちが身に付けるべき崇高な職務である教職の専門性と教育・保育実践ならびに、その根幹となる人間性である。本能や愛情の次元を超える人間性と子どもを知り尽くそうとする研究姿勢は,専門職として人間の世話に関わる仕事を目指す学生・院生に不可欠なものと考えている。そこで,教育面・研究面の両面から計画を立て,実行してきた。教育面では,相互努力が求められるため,成果を形にすることは難しいが,ゼミ学生の卒業論文「他児との関係をつなぐ―他児とかかわることの意味―」などに,その成果の一端が現れていると考えている。また,研究面では科学研究費補助金成果報告にまとめた通りの成果が得られた。

 

1-2.大学教員としての教育・研究活動②

(1)目標・計画

 目標・計画①で述べたように,本年度は科学研究費補助金を獲得した「ペスタロッチ・フレーベル・ハウスの保育・教育思想とアメリカへの導入過程」の3年目に当たる。2年間、ドイツでの資料調査を行っているが,今のところ余り実績のある成果の報告には至っていない。本年度はアメリカに資料調査に赴き,必要な資料の獲得に努めたいと思っている。 

(2)点検・評価

 科学研究費補助金(基盤(c))の研究は,本年度で3年間を迎え,3年間の成果をホームページにおいて掲載した。ドイツ及びアメリカ双方の資料調査を完了したことで,ベルリンのペスタロッチ・フレーベル・ハウスの教育・保育実践がなぜ世界博覧会において公開・展示され,アメリカの幼稚園教育運動に影響を及ぼしたのか,その全体像がほぼ明らかにできた。図書館の改築や新型インフルエンザの流行でアメリカでの資料調査が危ぶまれたが,館員の方々によるご協力でスムーズに進んだことで,このような成果が残せたものと心から感謝している。

 

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

 精神的な理由で,欠席が続き,留年する学生が,ここ2年間続いている。個々に方法は講じて支援に努めているが,なかなか成果が見えてこない。授業に出て来やすい環境づくりや相談の手立てを考えながら,支援への工夫を心がけていきたい。

(2)点検・評価

 留年している学生1名を含め,7名の学部生が無事卒業した。卒業研究の山場である12月までは計画倒れの状態が続き,卒業も危ぶまれたが,家族や周りに支えられ「卒業したい」という強い思いでラストスパートができたようである。留年が危ぶまれる学生に共通しているのは期限が迫り,頭でやらなければと思っても,精神的に体が付いて来ない,やる気がでないという悩みであった。今回は,家族や周りの協力が得られ,この状態を気に抜けることができた。協力体制の必要性と力を痛感した。

 

2-2.研究

(1)目標・計画

 ①科研に関わって研究してきた1890年代のドイツとアメリカの幼稚園ならびに初等学校での先駆的実践を辿りながら,ドイツ・フレーベル主義のアメリカへの影響を継続して進めることが,本年度の目標である。本年度は最終年度となるため,その成果を発表しまとめられるように努めていきたい。

  ②共同で進めてきていた保育者を目指す学生が,卒業までに身につけるべき実践力尺度に関する研究を続行し,調査結果を年度内にまとめ,公表できるように努めたい。

(2)点検・評価

 科研に関わる研究は,「アメリカ無償幼稚園運動とペスタロッチ・フレーベル・ハウス」と題して,本学の研究紀要に掲載し,3年間の成果報告も行うことができた。新たに見出した課題については,今後研究を深めるつもりであり,その準備も整えている。共同で進めてきた研究では,「『保育実践力』尺度作成に関する研究―保育士・幼稚園教諭養成校教員の考える保育実践力をてがかりに―」と題して,保育士養成協議会編集の「保育士養成研究」に掲載した。また,附属幼稚園との連携によって進めている自然プロジェクトは,「保育者をめざす大学生の『気づき』と実践的指導力―自然プロジェクトへの取り組みを通して―」と題して,本学の「鳴門教育大学学校教育研究紀要」に掲載した。

 

2-3.大学運営

(1)目標・計画

 ①評議員として大学運営に尽力する。 ②学部教務委員として,教務関連の業務に携わる。

(2)点検・評価

 ①評議員として,運営組織と教育部との橋渡しが十分できるとは思えないが,何とか2年間を無事に終えることができた。本学の運営課題などが少し学べたように思う。

 ②学部教務委員として,教務関連の業務に携わる一方,主査として平成20年度の「学生よる授業評価実施報告書」のまとめを行った。平成21年度は,「鳴門教育大学授業実践研究」誌編集専門部会主査として,本誌編集に努めた。

 

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

 ①平成20年度は,徳島県教育委員会の幼稚園教育振興アクション・プランの原案作りにかかわってきた。今年度は,その推進に協力する。

 ②全国保育士養成協議会の理事として,協議会の企画・運営にかかわり,中四国の保育士養成協議会の運営推進に努めたい。

(2)点検・評価

 ①平成21年3月作成された徳島県教育委員会の幼稚園教育振興アクション・プランの原案作りにかかわり,幼保の連携や教員の資質・専門性の向上に必要な研修の重要性を指摘したが,本年はその研修の一環ともいえる「保育所保育指針研修会」の講師を務め,資質・専門性の向上に努めた。

 ②全国保育士養成協議会の理事として,全国ならびに中四国の保育士養成協議会に出席することにより,運営推進に努めた。

  ③鳴門市の1歳6ヶ月健診ならびに3歳児健診の発達検査員として,発達に気になる子どもの早期発見に努めた。

 

3.本学への総合的貢献(特記事項)

 本年度の後半において,コース2人の教員の産前・産後休暇、育児休業が重なったことで,思わぬ学生指導や兼業の引き継ぎなどに追われながらも,科学研究費補助金による研究の最終成果をまとめる作業を無事終えることができた。本コースのホームページ上に,その成果を公表することで,貢献に繋がればと期待している。また,来年度の保育士養成に支障が起こらないよう,1年任期で,児童福祉学担当教員を採用できたことも,本学への貢献と言えよう。

 

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