1.総論

  第一期中期目標期間の最終年度である平成21年度においては,全学体制で大学改革に取り組むとともに,中期目標・中期計画の達成を目指し,暫定評価結果を基に,以下のことについて重点的に取り組んだ。

平成21年度の主な取組

1.業務運営の改善及び効率化

(1) 機動的な業務運営
  平成21年度の試行を経て,平成22年度から法人組織と大学組織に明確に区分し,学長がリーダーシップを発揮できる業務運営体制を構築した。具体的には,学長補佐制度を廃止し,法人組織には副理事職を,大学組織には副学長職を設置するなど,指示命令系統を明確にし,役割と責任の所在を明確にした。
(2) センター再編
  センターの領域,分野及び業務内容を踏まえ,機能的,機動的再編を推し進め,平成22年度のセンター部組織再編に反映させた。また,全学態勢でセンターの運営を支援するため,兼務教員以外の教員も原則としてセンター運営に携わることとし,当該センターの業務が計画的かつ円滑に遂行できるよう,業務支援を行う体制とした。
(3) 女性大学教員増加に向けた取組
  「鳴門教育大学における女性大学教員の割合を引き上げるための積極的改善措置(ポジティブ・アクション)」を講じた結果,平成21年度の女性教員の割合は20.1%(平成22年3月31日現在)となり,中期計画に掲げた目標値20%を達成した。
(4) インセンティブ経費
  「重点事業経費」の一部として「外部資金を獲得するためのインセンティブ経費」(配分額8,400千円)を設け,効果的に予算配分した結果,科学研究費補助金の申請件数は前年度85件から92件に,採択件数は35件から40件に増加し,中期目標期間の採択目標である40件を達成した。
(5) 財務内容の改善
<研究費配分方法の見直し>
  平成22年度学内予算編成方針等について,予算・財務管理委員会において検討した結果,今まで以上に教員の業績を研究費に反映させるため,コース等予算のうち,教員数による配分枠(教員数積算分)を縮小し,業績による配分枠(大学分)を拡大した。
<GPの採択>
  「戦略的大学連携支援プログラム」,「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」及び「専門職大学院等教育推進プログラム」に採択された。(52,641千円)
<JICA事業の受託>
  開発途上国への国際教育支援をさらに充実させるため,平成20年度に受託した事業「アフガニスタン国教師教育強化プロジェクトフェーズ2」とは別に,独立行政法人国際協力機構(JICA)の委託事業「アフガニスタン国都市型保健システム強化プロジェクト」を民間のコンサルタント会社と共同で受託(2,373千円)した。
<業務コスト削減>
  「業務コスト節減対策」に基づき,省エネ機器への切換,発送先の見直し及び刊行物購入見直し等を行い,管理経費を対前年比約1%(2,600千円)節減した。
<資金運用>
  定期預金及び譲渡性預金によるきめ細かな資金運用を行った結果,運用利息が前年度より340,687円増の5,176,406円となった。
<教育研究費等の傾斜配分>
  コース等経費(大学部)の配分方法を見直し,傾斜配分をより戦略的・効果的に行うため,業績評価が反映する「大学分」の配分率を55%から60%に引き上げ,平成22年度の予算配分に適用した。
(6) 自己点検・評価及び情報公開
<自己点検・評価制度検証PT>
  自己点検・評価制度のうち,業績評価において本学教員の教育研究活動に即した評価項目となるよう統廃合を行ったほか,評価委員会の下に組織した「自己点検・評価制度検証プロジェクトチーム」において,自己点検・評価及び業績評価の検証を実施し,報告書をまとめ学長へ提出した。
<外部者を含めた研究評価部会による評価>
  平成19年度に引き続き,「自己点検・評価実施要領」に基づき,外部者を含めた教育評価体制とした「教育評価部会」(第2次)を評価委員会の下に設置し,教育の質の向上や改善に結びつけるシステムが機能しているかについて評価を行った。特に,FD推進事業についての提言を平成22年度の実施計画に反映させた。
<優秀教員表彰制度>
  自己点検・評価制度における評価結果等を活用し,優秀な教員に対してインセンティブを付与し,更なる教育研究活動の活性化を図るために設けた「優秀教員表彰制度」を運用して,教育部門において1人(研究部門は該当者なし)を優秀教員として表彰し,受賞業績等をウェブページに公表した。
<ウェブページの充実>
  本学ウェブページのトップページに「学部・大学院受験生応援サイト」を設置し,本学学生の生の声を情報発信し,大学情報をより身近に感じ取れるよう工夫した。
  大学院説明会開始に併せて,「教職大学院」,「学校教員養成プログラム」のランディングページ(ウェブ広告)を作成し,ヤフーサイトから本学ウェブページへの誘導を行った結果,大学院説明会参加者総数が昨年度の1.5倍,大学院合格者のうち「学校教員養成プログラム」の適格者が昨年の1.8倍となった。
  また,英語版ウェブページ上の情報発信内容を,外国人にとって馴染みやすいメニュー構成とし「外国人留学生の手引き」を追加するほか,Locationページに広域的な地図を加えるなど,外国人が本学へのアクセスや位置関係を理解しやすくなるよう改善を行った。
(7) その他施設整備に関すること
<施設マネジメント等に基づく整備等>
  効率的な業務運営を行うため,施設の現状及び利用状況を点検し,予防教育科学教育研究センターの諸室(129㎡)を確保した。
  また,バリアフリー計画に基づき,講義棟1,2階の講義室及び自然棟の理科室の出入口を引戸に改修した。
  施設整備費補助金により,附属特別支援学校校舎の耐震改修を行い,安心安全な教育環境を確保することができた。なお,本学の施設は,全て耐震改修が終了した。
  その他,環境安全対策として,駐車場(P2,P3)の外灯を増設し,夜間の安全に配慮した。
<新たな整備手法の実施>
  目的積立金により,人文棟,大学会館食堂の空調設備と,学生の生活環境の向上を図るため,学生宿舎の世帯棟7戸,単身棟寮室58室及び各棟の捕食室,洗面洗濯室,便所の内装改修を行った。
  また,地元企業の寄附と目的積立金により,附属中学校校舎空調設備改修工事を行った。

2.教育研究等の質の向上

(1) 教員養成コア・カリキュラム
  他の教員養成系大学(学部)に先駆け開発した「教員養成コア・カリキュラム」が完成年度を迎え,学部学生114人を対象とした「鳴門教育大学の教育等に関するアンケート」に基づき,教育効果について検証を行った結果,「具体的な成果(一般的資質)」における10項目の設問のうち,7つの設問において,肯定的回答(「十分身に付いた」,「どちらかといえば身に付いた」)が60%を超えていることから,教養教育の見直しについては適切に措置出来た。
(2) FD・SD委員会
  平成21年度から全学組織としてFD・SD委員会を設置し,全学で協同してFD事業を推進する体制を強化した。FD推進事業として,従来の取組のほか,学生による授業評価項目等の見直しを行った。なお,平成21年度は,新たな試みとして「特別公開授業」をワークショップ当日に開講し,授業の実際とワークショップでの意見交換を,学部学生,大学院生,本学教員以外に学外者(鳴門市教育委員会)を交えて実施した。
  ファカルティ・ディベロップメント推進事業
  • 公開授業週間  平成21年11月30日(月)~12月4日(金)
  • 特別公開授業  平成21年12月2日(水)
      学校危機管理研究(院) 阪根 健二 准教授
      中等社会科教育論    梅津 正美 准教授
      化  学Ⅰ          早藤 幸隆 講師
      音楽通論Ⅰ         松岡 貴史 教授
  • 授業改善のためのFDワークショップ  平成21年12月2日(水)  6グループによりワークショップを実施
      教育委員会関係者(4人),本学教員(17人),学生(43人)
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    (3) 教職実践演習
      平成22年度からの「教職実践演習」の導入に向けて,学内に「教職実践演習実行委員会」を設置し,平成20年度に実施した他大学の実地調査を参考にカリキュラム及び履修カルテ制度の構築を行った。
    (4) 教育実践フィールド研究
      大学院において,コア・カリキュラムの理念を共有し,「教育実践フィールド研究」を実施するなど,「教育の専門職養成」のためのモデルカリキュラムを提示することができ,さらには学習集団の組織化,大学院と教育現場の連携を推進することができた。
    (5) 教職大学院における到達目標の構築及びカリキュラムの体系化
      教職大学院で修得すべき知識やスキル等を3領域(教育的人間力,教育実践指導力,学校改善指導力又は協働的改善力)に整理し,さらにこれら3領域のもとに,11の学習・教育の観点を明示した「到達目標」を設定し,教職大学院における学びと指導の履歴及び成果を大学教員,大学院生,学校・教育委員会関係者が共有する仕組みを構築した。
      また,到達目標と授業科目との関連を明確にしたカリキュラム体系化表に基づき,観点別の教育成果評価を行うとともに,大学院生による授業評価にも組み入れ,授業改善等にも活用した。
    (6) 附属学校
      幼稚園で,大学教員と連携し,保育者の実践力向上についての研究を推進し,「保育者のための遊誘財データベース」のシステムを立ち上げた。指導事例の分析や保育の質を深める視点を創造するキーセンテンスの抽出,映像・記録・指導計画等がリンクするデータベースの公開など,その研究成果を幼児教育研究会で発表した。
      小学校では,徳島県小学校教育研究会及び公立学校等と連携のもと,インターネット等情報通信機器を活用して,教科部会毎に実践研究を行うとともに,指導方法や教材配布など公立学校教員の授業改善への協力を行った。英語学習においては,インターネットを活用した双方向対話システムを利用し,公立学校教員と協同で,兵庫県内の小学校児童,鳴門教育大学学生などを対象に延べ7回交流学習を行った。
      また,幼稚園・小学校教員等を対象にした合同研究会,公開講座(7回)を開催した。さらに,現場教員の要望に応え,公開研究会を休日開催に,保護者等の要望に応えて公開講座を夜間開催にした。

    3.予防教育科学教育研究センターの活動

      子どもの円滑な学校への適応や心身の健康を一次予防的に維持・向上させるため,学校で行う一次予防教育に関するプログラムを開発・発展させる中核的役割を担う組織として,平成21年1月に設置した予防教育科学教育研究センターにおいて,国内外の研究者と連携し,「子どもの健康と適応を守る学校予防教育」に関する専門家会議を2度にわたり実施した。

    4.小学校英語教育センターの活動

      全国の教員養成系大学に先駆けて設置した小学校英語教育センターにおいて,学習指導要領の改訂に伴い,平成23年度から実施される小学校外国語活動について,学校現場の教員やその支援者に対して,32件の出張型研修を行った。

    5.学生支援・就職支援

      就職委員会委員,学年担当教員,教員就職支援チーフアドバイザーが連携して,模擬授業・個人面接を2回,模擬集団面接を2回,二次試験対策ガイダンス(模擬授業,場面指導等)を17回開催するなどの全学的取り組みを行った結果,平成21年度卒業生の教員就職率が78.3%となり(目標値:60%),進学者数を除く教員就職率は,過去最高の83.3%となった。
      平成21年度から導入した「大学院修学休業制度」により,5人に対して,前期・後期それぞれの授業料を全額免除した。また,高度学校教育実践専攻に在籍する現職教員(2人)に,「鳴門教育大学教職大学院生(現職教員)支援基金」より貸与を行った。

    6.社会連携・地域貢献

      教員が,学校現場等に出向き学校教員,児童・生徒,保護者を対象に,無料で講演,授業実践,指導方法や課題解決の指導等を行う「教育支援講師・アドバイザー等派遣事業」を積極的に推進した結果,同アドバイザーの登録者割合は目標とした75%を超え,全教員の78.4%(120/153:人)で,派遣実績は115件であった。
      また,教員免許状更新講習を実施し,「教育の最新事情」等33講座に延べ1,422人が受講した。なお,平成22年度以降の教員免許状更新講習の受講者の利便性を図るため,平成21年度中に出席状況や成績等の一括管理が可能な新システムの導入を図った。

    7.他大学等との連携・協力

      相互に協力し,教育・研究の向上に寄与するため,新たに私立大学1校(高松大学)と包括連携協定を締結した。
      戦略的大学連携支援事業である「『四国の知』の集積を基盤とした四国の地域づくりを担う人材育成」及び「地域に根ざす多様な教育支援人材の育成プログラムと認証システムの実践的共同開発」について,参加大学間で連携・協力して事業を推進した。
      また,「『四国の知』の集積を基盤とした四国の地域づくりを担う人材育成」においては,参加大学間(四国内8国公私立大学)で,e-learning環境を整備し,参加大学間でe-learningによる授業の提供を行うための単位互換協定を締結した。
      文部科学省大学改革推進事業の「専門職大学院等における高度専門職業人養成教育プログラム『教職大学院の実習等のFDシステム共同開発-大学と教育委員会・学校の「互恵モデル」の構築-』」では,参加大学である新教育大学間において,連携・協力して事業を推進した。

     

    最終更新日:2010年12月17日

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