令和元年度優秀教員表彰(ベストティーチャー賞)及び特別表彰

 

 概要

 

 

 鳴門教育大学は10月1日,令和元年度の優秀教員として田中弘之教授及び阿形恒秀教授を,特別表彰者として速水多佳子准教授を表彰した。

 

 優秀教員表彰は,教育・学生生活支援,研究等において優秀な教員に対し毎年度実施している制度である。田中教授は,保健体育教育科実践分野の教授として,正課及び課外活動の充実に傾注し,殊に,ラグビーフットボール部の監督として,同部が数々の大会で安定した戦績を挙げる指導を行ったほか,徳島県のスポーツ振興の充実に取り組むなど,学内外において専門性を生かした活動に尽力してきた。阿形教授は,本学のいじめ防止支援機構長として教員養成4大学の協働参加型事業「BP(Bullying Preventionいじめ防止支援)プロジェクト」を推進し,いじめ問題研究の発展と学校現場等のいじめ防止に対する支援に努めることで,学校教育における喫緊の課題である「いじめ問題」に積極的に取り組んで来た。これらの実績がそれぞれ評価された。

 

 特別表彰は,職員の功労等に対して実施している制度であり,速水准教授は長年にわたり,長期履修学生支援オフィス・長期履修学生支援センターにおける学生支援及び大学院生を中心とした教員採用試験対策の指導に尽力し,本学の教員採用合格率の全国上位維持に貢献してきた。また,卒業・修了後の学生と交流を続け,教員生活を順調に過ごせるよう支援している実績が評価された。

 

 表彰式では,受賞者から,これまでの謝辞や教育研究への思い,今後の抱負等が述べられた。

 受賞者の業績や教育・研究手法は広く公開し,学内教員の資質向上に繋げていくこととしている。

 

  

R元ベストティーチャー集合写真.jpg

 

 

(前列左から大石理事,阿形教授,山下学長,田中教授,速水准教授,佐古理事:

 後列左から栗尾教務部長,秋田副学長,佐藤副学長,西村副学長,小澤副学長,髙橋企画調整役)

 

 

 

 

 

 

受賞者の紹介

 

優秀教員表彰(ベストティーチャー賞)

 

氏名 田中 弘之 教授
所属教育部

高度学校教育実践専攻  教科実践高度化系

所属コース

芸術・体育系教科実践高度化コース 保健体育科教育実践分野

受賞写真 田中先生R1

受賞理由

及び

優れた教育手法

 田中弘之氏は,芸術・体育系教科実践高度化コース保健体育科教育実践分野に所属し,専門領域は体力医科学,運動生理学である。

 氏は,昭和61年4月,本学に着任以来,教員養成における指導理念のひとつに「文武不岐」を掲げ,正課とともに課外活動の充実にも情熱を傾注してきた。殊に,ラグビーフットボール部の監督として,今日まで,毎週末,熱心な指導を重ねている。部員の大半が大学から競技を始める初心者ばかりであるが,平成30年度も,「第69回四国地区大学総合体育大会ラグビーフットボール競技」優勝,「第55回全国大学選手権中国・四国地区代表決定戦 兼 第69回全国地区対抗大学大会中国・四国地区代表決定戦」第3位など,安定した戦績を挙げる一助となっている。また,昨年度には,鳴門教育大学・兵庫教育大学ラグビーフットボール部定期戦において,第30回の節目となる記念大会を共催し,両大学間のさらなる親睦の深化を企図した助力も行っている。

 ラグビーフットボール部の監督以外においても,長年,課外活動連絡会議の委員並びに四国地区大学体育連盟理事を務め,毎年,5月から7月にかけて開催される四国地区大学総合体育大会に出場する本学の全競技の巡視を欠かさずに継続するなど,選手団団長としての責務も果たしてきた。

 他方,社会的活動としても,徳島県教育委員会子どもの体力・運動能力向上対策委員会座長,公益財団法人徳島県体育協会理事・スポーツ科学委員会委員長を務め,子供の健康課題から国民体育大会に出場するトップアスリートのパフォーマンス向上に至るまで,スポーツ振興の充実に努めている。また,徳島県教育委員会体育学校安全課からの依頼により,県下の3ブロックにおいて,毎年,実施している全学校種の教員を対象とした熱中症予防対策に関する講演を通じて,スポーツ活動における安全対策のより一層の啓発にも尽力を続けている。

 以上のように,氏は,学内外において専門性を活かした貢献を行うとともに,学生支援担当副学長及び就職支援室長としても本学の発展に寄与している。

 これらのことから,田中弘之氏をベストティーチャーとして選定した。

受賞者のコメント

 本学に着任以来の些細な教育と研究活動の積み重ねをこのように高く評価していただいたことに深く感謝いたしております。
 これまでの本学における散策の小径を顧みれば,ラグビーフットボール部の学生たちと永きにわたって共有してきた時空は,私にとって掛け替えのない貴重な財産となって息衝いています。在学中に,各々の世代で,青春を謳歌していた若きラガーマンたちも,朱夏の時代を経て,やがては白秋から,私のように玄冬の時期を迎えることになります。
 現在,活況を呈しているRWC2019において,優勝候補筆頭のアイルランド戦を制するなど輝かしい躍進を続けるBRAVE BLOSSOMSの勇士たちのプレーに,私は,特別な想いを馳せて観戦しています。俄なファンも集う大観衆に混淆しながら,私に限らず,選手としての盛りを過ぎても,なお,スペクテイターとしてラグビーフットボール競技に魅了されているのは,魂のタックル,会心のサインプレー,凜としたジャージ姿,献身的に選手を支えたマネージャーとしてのプライド等々,経験知を有した過去の燦めく記憶に投影できる者だけなのかも知れないと・・・。

 日々,本学のグラウンドでは,入学後からラグビーフットボール競技を始めた勇気ある新進気鋭の部員たちが渾身のプレーを展開しています。この稀少なラガーマンたちが,勝利目的論の呪縛から脱却し,ラグビースピリットを滾らせて,生涯にわたって個々の色褪せしない記憶のパーツが汪溢累積できるよう,私自身に残された在職期間には限りがありますが,微力を尽くしてますます精励すべきと,この受賞を機に決意を新たにする次第です。

 ありがとうございました。

 

 

氏名 阿形 恒秀 教授
所属教育部 高度学校教育実践専攻  教職実践高度化系
所属コース 生徒指導コース 生徒指導・学級経営分野
受賞写真 阿形先生R1

受賞理由

及び

優れた教育手法

 阿形恒秀氏は,生徒指導コース生徒指導・学級経営分野に所属し,専門は生徒指導・教育相談である。

 氏は,平成28年度以降,いじめ防止支援機構長として,教員養成系4大学の協働参加型事業「BP(Bullying Preventionいじめ防止支援)プロジェクト」の推進に努め,いじめ問題の研究の発展と,学校現場・教育委員会等のいじめ防止の取組に対する支援に力を注いできた。具体的には,いじめに係る共訳『学校におけるいじめ』(2016)や単著『わが子のいじめに親としてどうかかわるか』(2018)を出版するとともに,いじめ問題を中心に生徒指導上の課題について年間数十回の講演を行っている。平成29年に作成したリーフレット『学校現場で役立ついじめ防止対策の要点』は,国のいじめ防止対策(法・基本方針等)の考え方をわかりやすく解説した資料として全国各地で広く活用されている。平成28年度からは徳島県いじめ問題対策審議会の会長を務め,いじめの重大事態に係る他県の第三者委員会にも委員として関与した。日本PTA全国協議会の全国大会では,いじめ問題をテーマとした分科会でパネリストや基調講演を担当している。

 また,国際交流においても,「グローバルな視点を持った教員を養成する海外研修プログラム」の一環として,平成27年度以降,韓国光州教育大学との交流事業を推進し,いじめ問題をはじめとする生徒指導上の諸問題の日韓共同研究をテーマに,本学を訪問した韓国の学生との交流プログラムの運営や,本学学生の光州訪問・交流活動を統括している。

 さらに,令和元年度からの新カリキュラムにおいては,学部授業『いじめ防止論』や大学院授業『いじめ・不登校等事例検討』等を新設し,いじめ問題に適切に対応できる教師力の育成に尽力している。

 以上のように,氏は生徒指導,とりわけいじめ問題に関する専門性を生かし,学校教育における喫緊の課題である「いじめ防止」に積極的に取り組んでいる。

 これらのことから,阿形恒秀氏をベストティーチャーとして選定した。

受賞者のコメント

 私の研究の成果は,30年間勤務した大阪の高校での教員仲間との実践経験と,9年前に大学に着任して以降の同僚(先生方や事務の方々)との共同作業に依拠する部分がとても大きいです。ですので,「身に余る」という思いがないわけではありませんが,中島みゆき風に言うならば,私がご縁をいただいた方々と共に「織りなす布」が,結果として「誰かを暖め」「誰かの傷をかばう」ことになったのかもしれないと考え,私が出会った方々との協働に対するご褒美として,代表して優秀教員表彰をお受けしたいと思います。

 次年度末で定年を迎えることになりますが,節目を前にこのような賞をいただき,自分がこれまで取り組んできたことには意味があったのだと心の底から力づけられる思いがしております。これからも,「いじめ防止支援プロジェクト」をはじめ,生徒指導の深化をめざす様々な本学の取組の一層の充実に向けて,労を惜しまず取り組んでいく所存です。

 

 

 

特別表彰 

 

 

氏名 速水 多佳子 教授
所属教育部 高度学校教育実践専攻  教科実践高度化系
所属コース 自然・生活系教科実践高度化コース 家庭教育実践分野
受賞写真 速水先生R1

受賞理由

及び

優れた教育手法

 速水多佳子氏は,本学に赴任した平成22年から現在まで10年にわたって長期履修学生支援オフィス・長期履修学生支援センターの兼務教員を担当し,毎週の支援講座や支援演習を担当するとともに,主免教育実習の事前事後指導など学生支援に尽力してきた。

 また教員採用試験対策として,院生を中心とした勉強会の指導(集団討論,個人面接,場面指導,模擬授業,小論 文等)を継続的に行ってきた。この会は,院生や学部生,様々なコースの学生が参加して学生 中心に運営されており,毎年メンバーが入れ替わりながら引き継がれ今年で9年間続いている。 この会に参加していた多数の学生が教員採用試験に合格しており,本学の教員採用合格率に貢献してきた。前職(高等学校教諭,指導主事)の経験を生かし,生徒指導,学級経営,保護者 対応,危機管理などの学校現場で必要とされる内容を実践的に扱い,単なる教員採用試験対策 としてではなく教員としての資質向上を図るように努めてきた。学生とは本学卒業,修了後も 交流を続け,教員生活が順調に過ごせるように支援している。

 また,家庭科コースの学生に対しては他の教員とも連携して,教員採用試験対策(筆記試 験,面接,模擬授業,実技指導)を行っており,平成31年3月末卒業生7人は全員合格し(小学 校4名,中学校1名,高等学校2名)教員として採用された。

 徳島県はもちろんのこと他府県の教員研修(家庭科教育,消費者教育,食育等)や授業研究 会の指導助言等を積極的に引き受けて学校支援に力を入れ,高校生対象の進路講話を毎年5校 程度実施し,学校現場との交流を大切に取り組んでいる。

 研究面では授業実践を核とした研究を行っており,最近では家庭科で扱いにくいとされている住居領域の授業開発に取り組んでいる。その成果は「家庭科住居領域における指導の実態と 家庭科教員の意識」(速水・瀬渡)(日本家政学会誌Vol.69,No.7,2018),「小学校・中学校・高 等学校の家庭科住居領域における学習内容に関する分析」(速水・瀬渡)(日本家政学会誌 Vol.70,No.6,2019)に発表された。

 氏は,教育・研究・社会貢献において顕著な業績をあげている。特に,本学の教員採用試験 のための学生指導において,非常に高い成果をあげている。そして,単なる教員採用試験対策 としてではなく,教員としての資質向上を図るように努めている点も高く評価される。以上, 本学教員の模範となる活躍であり,特別表彰に値するものである。

受賞者のコメント

 本学に着任してからの10年間,長期履修学生支援センターの兼務教員を継続して担当させてもらっています。学生と過ごす時間をできるだけ確保し,その時間を大切にするよう心がけてきました。また,教員を目指す学生達が自主的に集まったグループで,教員採用試験対策として,集団討論や個人面接,模擬授業などの指導を行ってきました。このグループは,メンバーが代替わりをしながら引き継がれ,9年間続いています。このグループでの出会いから,卒業後も連絡を取り合って,教員として切磋琢磨している様子が見られます。教員を目指している本学の学生は,素直で純粋で,教職に就いて自分の理想の先生になろうと努力しており,教員としての資質向上を目指すよう取り組んできました。このような学生達と日々かかわるのは楽しく,また面白く,私自身の前職を生かすこともできて非常にやりがいを感じております。この学生とのかかわりを評価していただき特別表彰を受けることになり,大変嬉しく思います。
 今後も時間の許す限り,学生達の熱い思いに応えて,未来の教員の手助けをしていきたいと考えています。教員は人とのつながりが何よりも大切です。本学ゆかりの教員を全国へ送り出していくこと,そして卒業生の輪を広げていくことが私の夢です。

 

 

 

最終更新日:令和元年10月10日