高度情報研究教育センター 三宮真智子

報告者 三宮真智子

1.学長の定める重点目標

1-1.大学の活性化を目指す教育活動

(1)目標・計画

  目標)授業を通して,学生が先行きの不透明な現在の社会を生き抜くために必要な情報判断力を身に付けさせる。また,そのための評価法を工夫する。
  計画)理論や研究の紹介にとどまらず,現実的な情報判断に関わる問題を取り上げ,検討する時間を増やす。また,評価に際しては,知識量を測るよりも,考え方や思考態度を重視した評価法を心がける。

(2)点検・評価

  大学院では,思考支援の認知心理学研究・同演習,また学部では,情報科教育論IIの授業において,現実的・実践的な情報判断力を高めることを重視した授業を行い,考え方や思考態度を重視した評価を実施した。断片的な知識を答えさせるテスト形式ではなく,授業で学んだことを生かし,グループで探究活動を行う課題や,各自の問題意識に基づいて教材を開発する課題などを出し,これらに取り組む姿勢や思考の変化といった側面を見て評価できるように工夫した。こうした教育によって,能動的で自律的な学習者が増え,大学の活性化につながっていくと考える。

1-2.学生支援、地域連携活動

(1)目標・計画

  1. 学生支援としては,ITを活用して,思考・コミュニケーションスキルについての学生の知識獲得,理解の支援に努める。
  2. 地域連携活動としては,徳島県が現在最も力を注いでいるものの1つである「e-とくしま推進会議」の委員および教育部会の部会長として,施策の立案,検討を行う。

(2)点検・評価

  1. 悪徳商法などの問題を扱い,コミュニケーションによる思考の誘導がどのように行われるのかを学生が理解しやすいWeb学習コンテンツを開発した。
  2. 昨年度の推進会議で教育部会に対して出された「ITの危険な部分(特に青少年への被害)に対する対策を考えてほしい」という要望への実践的対応として,私たちの判断を狂わせる手口や人間の判断の脆弱さを理解させる教材の開発を手がけ,改良中である。また,教育関係者や保護者の意識向上を目指す活動を計画している。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  1. 学生が主体的に授業に参加できるよう,個人発表やグループ活動の機会を確保する。
  2. 日常の教授学習場面や社会生活場面に役立てることができる形で,知見を紹介する。
  3. 児童・生徒に対する思考支援の方法を積極的に探究する態度を育てる。

(2)点検・評価

  1. 授業において,個人発表の機会やグループ活動の機会を増やした。
  2. ただ認知心理学の知見を紹介するというのはなく,受講生が自らの学習場面や教授場面(特に現職教師の場合),あるいは社会生活場面で直面する問題を取り上げ,これらの解決に役立つ知見を紹介した。
  3. 児童・生徒の思考活動をどのように支援すればよいかを授業の中で考えさせることにより,積極的に探究する姿勢を促した。

2-2.研究

(1)目標・計画

  高度情報研究教育センター・情報コミュニケーション分野として,コミュニケーションをはじめとする人間の情報処理についての研究を推進する。今年度は,創造的思考課題を用いて,発想支援のためのコミュニケーション方略についての実験的検討を進める。得られた結果に基づき,学習者の発想を促進する教師のコミュニケーション方略についても,提言できるようにする。

(2)点検・評価

  創造的思考を支えるものの1つに,発想を引き出す聴き方がある。そこで,あいづちやうなずきといった要因が発想にどのような影響を及ぼすかについての実験的検討を進めてきた。ある種の創造的思考課題に対しては,うなずきながらあいづちを打つことが,発想量(アイデア産出数)を高めることが明らかになっており,この結果を,第67回九州心理学会シンポジウム(2006年11月18日/於琉球大学)に招待されて行った話題提供において発表した。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  高度情報研究教育センターの教授として,センター運営委員会委員を務め,本学の運営に貢献する。

(2)点検・評価

  高度情報研究教育センターにおける唯一の専任教授として,センター運営委員会委員を務めた。また,大学の中期計画の1つとして「インターネットを通して,問題解決能力とコミュニケーションスキルの向上に役立つ情報の発信を行う」を掲げ,年度計画や進捗状況等の資料を作成しセンター運営委員会に提出している。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

  1. 本学修了生である公立学校教員と連携し,コミュニケーションに関する授業開発を行う。
  2. 教育工学会理事,顕彰委員長として,また,日本心理学会常任編集委員として,広く後進の支援・育成に努める。
  3. 松下教育研究財団評議員として,教育研究のあり方,その支援法について検討・提案を行う。

(2)点検・評価

  1. 本学修了生である公立高校教員と連携し,コミュニケーションに関する授業開発を進めている。その成果の一部を,高度情報研究教育センター・テクニカルレポート「メタ認知を促す『意見文作成授業』の開発:他者とのコミュニケーションによる思考の深化をめざして」(全84頁)として公刊した。
  2. 教育工学会理事,顕彰委員長として,また,日本心理学会常任編集委員として,ともに隔月の土曜日,東京での会議に出席するとともに恒常的な業務を行い,広く後進の支援・育成に努めた。
  3. 松下教育研究財団評議員として,教育研究のあり方やその支援法について,平成18年度松下教育助成成果報告書の巻頭言(pp.2-3)において提案を行った。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  1. 拙著「考える心のしくみ:カナリア学園の物語」が,三省堂中学校3年生用教科書「現代の国語3」の読書案内(p.169)において紹介された。
  2. 研究論文が,学会誌(A論文)に1本掲載された。
  3. 研究課題「人間の情報処理への科学的探究心を育てるコミュニケーション学習プログラムの開発」(代表:三宮真智子)に対して科学研究費補助金(基盤研究(C))が付与されることになった。
最終更新日:2010年02月17日

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