実技教育研究指導センター 武市勝

報告者 武市勝

1.学長の定める重点目標

1-1.大学の活性化を目指す教育活動

(1)目標・計画

  1. 「美術教育分野グレードテキスト」を大幅に改訂し、これを軸にしたグレード達成の向上を図る。学部学生だけでなく、現職大学院生、現場初等教育担当教員にも使えるように文言修整を施し、必要に応じて配布する。
  2. 研究活動とも重複するが、担当している授業科目を中心にして、その導入時に流すための「10分アニメーション」の制作を行う。これによって学生の意欲を引き起こし、授業内容に対するスムーズな理解が得られると考える。今年度は「アニメーション/紙版画」「アニメーション/版画とはなにか」を予定している。
  3. 18年度担当予定している、現職を含めた大学院ゼミ生4名に対し、全国大学版画展や県内版画展への出品奨励を推進し、教育及び制作業績の蓄積を図る。
  4. すでに学内での活性化を図るための提案を別紙「イントラネット掲示板の構築」として提出しているが、これが採用されればそのための準備ワーキンググループとしてとりまとめ、実現を果たせるように努めることになると思われる。

(2)点検・評価

  1. 一部改訂程度の達成と言える。この理由のひとつに「センター組織人員の配置換え」がある。教育組織変更に伴ってセンター兼務となれば、業務の拡張は難しい。ただ、現在進めている3教育大学の実技センター研究協議会の美術分科会を中心に、鳴門で開発された「グレードテキスト」を3教育大学で共有し活用しようという動きがある。これを契機として改訂を進めたいと考える。
  2. この内容で昨年度公募の科学研究費に応募したが、残念ながら今回は不採択の結果になった。科研という支援なしで少しでも今年度踏み切るかどうか、現時点ではまだ計画が立てていない状況である。
  3. ともに達成された。大学院ゼミ生は3名であったが、県立近代美術館で催された徳島版画展、東京都町田市国際版画美術館で催された全国大学版画展への出品を果たした。年末には学部ゼミ生とともに後者の美術館見学を含めたゼミ旅行を行った。
  4. 「学長からのアンケート提言」として提出した。教授会で紹介していただいたこともあり、その後の進展については指示及び全体の盛りあがりを待つ態勢である。

1-2.学生支援、地域連携活動

(1)目標・計画

  1. 17年度は就職委員であったこともあり、学生からの求めに応じて美術教育講座で「教員試験のための模擬面接」を行ったが、結果して講座の教職就職率向上に寄与することになった。これは18年度も機会に応じて続けたい。
  2. 筆者が代表としてつとめている「徳島版画」の研究会、発表展示などを通じて、本学における版画教育・研究内容を紹介するとともに、卒業・修了生や在学生の専門技法・知識の向上・交流の場としての活用をはかる。

(2)点検・評価

  1. 就職委員は離れたが、地域貢献としては下記の実践を行った。
    • 美馬市内幼少中版画コンクールの審査員をつとめた
    • 徳島県内外の版画制作者を集めた『徳島版画』の会長として、技法研究会、展覧会開催をおこなった
    • 阿南市長の要請を受け、今後の文化施設、行事に関しての提言をまとめる『阿南文化会議』の座長として、私的懇談会を開催している
    • 徳島県立近代美術館での企画「吹田文明展」に関し、氏の作品などの紹介「イメージと素材のこだわり」(1200字)が徳島新聞に掲載された
    • 会期中に各種版画技法の実技講座を美術館内で行い、多数の参加者に対し、銅版画の技法講座三種を紹介した
    • 本年度は公開講座を新たに開き、「初歩の銅版画教室」を実施する
  2. 昨年度は、「徳島県立近代美術館ギャラリー」「本学芸術棟ギャラリー」「町田市立国際版画美術館」などで現在のゼミ学生の版画が展示され、各大学の学生、版画家、鑑賞者との交流を持つことができた。受賞がなかったのは残念だが一定程度の実力向上になったと考えている。
    また、同じくゼミ院生2名を徳島大学学生とともに阿南市での「LEDを使ったシンボルデザイン研究合宿」に参加させ、阿南市役所前に展示されるデザインに応募し、一名が首席採用された(柳原久乃)。市町村レベルのため学生表彰には至らないが、永続展示であり、ここに記しておく。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  1. 実技センターとしてのグレードの公表は、個人情報保護の観点から、「ライブキャンパス」による個別通達に移管することにしたい。
  2. 学部・大学院を通じて授業の受講学生が年々増加している。教室の許容から見て限界の場合は受講制限をすることを考えているが、18年度については、学生支援を鑑み、美術教育講座とも相談し、より広い教室への移動を策定したい。
  3. 本年度はとくに大学院授業及びゼミを中心にして、「凹版」の応用的技法について理解を深めることにする。

(2)点検・評価

  1. 「ライブキャンパス」の、グレード公表への改訂は困難ということのまま現在に至った。現状では個別対応を除いて結果を通達する手段がないままである。とりあえず関連授業内でできるだけ通達するという方法に頼っている。(本項目は組織の職務上の問題であって、教育上の改善努力とは違うため、ここに記したのは誤りであった)
  2. 収容不可能な受講学生数の場合は、急遽別教室での授業に振り替えている。今年度もゼミ生が増加したため、制作スペースの臨時的措置として、一年間にかぎり空いた研究室の使用を申し出ている。本項目も教育上の努力にそぐわないが一応記しておく。
  3. 凹版技法として、従来の銅版画のみならず、コラグラフや木版凹版を紹介した。この選択は、教育現場にいるものにとっても、それを目指すものにとっても、また教育と関係なく専門的な制作を続けているものにとっても、修得の満足を得ることができるので、適切なものと感じている。ゼミ生の中にもこの技法を深めようとする傾向があるのは好ましいと思われる。
    今年度は版画領域で、大学院4名(内現職教員1名)、学部2名のゼミ生を引き受けることとなり、専門指導だけでなく生活や就職の支援まで、日々追われることとなっている。実技センターのためもあって本来専門活動にこたえるための部屋(スペース)はあまり手当てされていないのが現状であり、このため急激に増えたゼミ生の制作場所が乏しいのが問題となっている。今年度の院入試により、辞退がなければ来年度も増加する予定である。凹版技法に取り組むものが多いので卒業・修了期が近くなることで許容の限界が来ることを恐れている。

2-2.研究

(1)目標・計画

  1. 写真感光製版によるカラーリトグラフを研究しているが、色面構成について新たな視点を考えるとともに引き続いて研究・制作を進めていく。国内展に出品する。
  2. 科学研究費は「過疎地域の廃校を活用した実技教育指導に関する調査研究」として現在申請中であるが、採否にかかわらず次回も応募する予定である。
  3. 主として担当授業およびグレードに関するわかりやすい解説として「10分アニメーション」を研究し、年度内に二本以上制作したいと予定している。

(2)点検・評価

  1. 「春陽展」(東京都美術館)、徳島版画(徳島県立近代美術館ギャラリー)などで発表を行った。12-1月にはこれを木版に置き換えての発表を行う考えもあったが、多忙のため次年度に延期せざるを得なかった。現在はコンクールまたは個展発表を考えている。
  2. 3.科学研究費応募として、「実技教材導入アニメーションの開発 ―図画工作・美術の実技を中心に―」(教科教育)を提出した。採用になれば学生の手を借りながら作成し、附属中学などで紹介してみたいと考えている。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  1. 委員変動時期なので確定ではないが、センター運営委員会委員として引き続き大学運営に貢献する。
  2. 委員変動時期なので確定ではないが、美術教育講座より依頼されている就職委員または別の委員を受け、就職支援活動等を通じて大学運営に貢献する。

(2)点検・評価

  1. センター運営委員は継続である。
  2. 就職委員に代えて地域連携委員になった。阿南市との関係が濃くなっている立場上、今後阿南市教育委員会との連携をはかり、フォーラムの開催などを模索したいと考えている。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

  1. 徳島大学の教員、名誉教授、さらに一般の方と進めている「阿南アートトリエンナーレ」(阿南市を中心とした美術教育プロジェクト。現在調査比申請中)の予算認可を土台として、美術・美術教育による地域活性化のプランを策定する。(徳島大学は現代GPとしてとりまとめ中)
  2. 国際版画展、国内版画展の資料を収集・整理し、大学院ゼミ生を中心に積極的な応募を呼びかける。
  3. ベルギーのアーティスト・イン・レジデンスの情報を紹介し、短期研修としての交流による教育・研究活動を推進する。

(2)点検・評価

  1. 計画は、「学生を使っての学外演習として地域のボランティアの方々と交流を図る」という徳島大学の方向と、「阿南市長を中心に、行政、財界との交渉による伸展を図る」という鳴門教育大学(筆者)の方向の二つに分かれて進めることとなった。後者については「阿南アートトリエンナーレ」を含めた種々の文化施設・行事の中からよりふさわしいものを策定しようと、阿南市役所内で月に一度の会議の中で討議している。
  2. 「飛騨高山」「鹿沼」「熊本」「プリンツ21」等、多くのコンペを紹介、応募している。
  3. 一名の院生が関心を示しているが、教育実習時期との関係もあって時期が確定せず、今日に至っている。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  • 上記点検評価を振り返って明らかなのは、昨年度は地域連携・貢献が強かった年であった。対象としては、徳島県、阿南市、美馬市、徳島県立近代美術館があげられる。とくに阿南市については今年度も続いている。この他、地域連携委員としての活動や次年度予定している公開講座「初歩の銅版画教室」などを含めると今後も地域連携への比重は増加していると言うことができる。
  • 第二にあげられるのはゼミ学生の増加に伴う教育活動の多忙さである。本来実技センター教員なので、専門領域のために使用できる関連の演習室はそれほどの広さではない。ところが、長期履修制度が開始されて以来、「大学院を持たない美術系大学卒業生」が「教員免許も取れる」ことの魅力で本学を希望、なかでも「版画制作を担当できる教員がいる」ことで集まる傾向にある。しかし、実技系専門はスペースの面からも時間の上からも限界がある。本学全体の欠員分を補うためといっても、入学する院生への補償として、せめて空き予定の研究室利用を補填する措置を願い出るつもりである。
  • 以上2点の特質のため、今年度の研究時間は大幅に少なくなった気がしている。おおむね実技系教科では、教員は学生にとって常時待機しているコーチのようなものであるので、オフィスアワーなど設けていても質問などはそのつど飛んでくる。最近は深夜にも携帯電話のメールで問われることもしばしばある。設備施設の面では美術大学に及ばない分のサービスであり、かつ担当が一人なのも仕方がないと思って応対しているが、次年度からはもう少し配慮を働かせるように指導するつもりである。とはいえ、教員が研究に使っている機器も学生のと重なることもあり、部屋の問題ともからんで割り切ることができないことも多々あるのだが。
最終更新日:2010年02月17日

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