1.総論
国立大学法人として3年目を迎えた本学は,法人化の利点を活かした新しい制度で,中期目標・中期計画の達成に向けて,法人として取り組むべき内容を明確にし,以下のことに取り組んだ。
平成18年度の主な取組
新たな教育ニーズへの対応
大学院の定員充足に向け,教員免許を持たない修士学生に教員免許状の取得させるための長期履修学生制度で平成17年度に入学した学生に対し,附属校で4週間の教育実習を実施した。平成18年度は長期履修入学生の増加に伴い,平成19年度からの実習先を新たに探すこととなり,板野郡内の3町(松茂町・北島町・藍住町) の小・中学校に依頼し承諾を得た。
特色GPの採択
教育研究活動で,文部科学省が行う国公私立大学を通じた大学教育改革の支援プログラム(特色GP,現代GP,教員養成GP)に関する取組として,「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」に採択された。教員養成教育において重要な要素となる授業実践力の向上を中心とした様々な試みが認められたものである。取組の具体的な柱は,(1)教育実践力の中核を授業実践力ととらえ,その能力を評価する客観的な尺度となる授業実践力評価スタンダードを開発すること,(2)授業実践力評価スタンダードを枠組みにして「教育実践学を中核とする教員養成コア・カリキュラム(鳴門プラン)」を実践し評価すること,(3)授業実践力評価スタンダードと「知の総合化ノート」及び授業実践映像データベースと組み合わせて,学生が自己の教育実践力を診断し,職能開発の到達点と課題を明確にできるシステムを構築しようとするものである。
コア・カリキュラムの実施
「国立の教員養成・学部の在り方に関する懇談会」における「今後の教員養成大学・学部の在り方について」(平成13年11月)の提言を受けて開発されたのがコア・カリキュラムである。
平成17年度に引き続き,教育実践コア科目として,平成18年度は「初等中等教科教育実践II」の授業を開始した。
ファカルティ・ディベロップメント推進事業の実施
平成12年度から続けてきた本事業により,学内において,FDに対する理解や授業改善に対する関心が年々高まってきたところである。そうした中で,平成18年度においても教員養成大学である本学の重点施策の一つとして年間行事予定の中に位置づけ,ワークショップ及び学部授業の公開を実施した。
また,学生による授業評価についても実施し,授業担当教員へのフィードバックにより,次年度の授業計画に役立てた。
◇ファカルティ・ディベロップメント推進事業◇
- 学部授業改善のためのFDワークショップ 平成18年11月29日(水)
○「よい教師を育てる学部教育とは」 5グループによりワークショップを実施
ワークショップ参加構成
教育委員会関係者・本学教員・学生(学部3・4年次生) - 学部の授業公開週間と特別公開授業 平成18年10月16日(月)~10月27日(金)
研究実施体制の整備
また,教育研究活動等の業績評価を昇給及び勤勉手当に反映させるための「業績評価を反映する給与システムについて」を定め,平成18年度から実施することとした。
同時に,知的財産ポリシー,知的財産室設置要項,研究成果有体物取扱要項等の規程を整備した。
また,知的財産室のより潤滑な活動と運営のため,徳島大学知的財産本部及び四国TLOとの連携と協力協定について検討した。
本学ウェブページに研究紀要,教育支援プロジェクト,学会日程等各種の研究に関する事項(公募対象等)を掲載し,また,国立情報学研究所の電子図書館サービスやJST科学技術文献データベースへの収録等データベースを活用した情報発信に,積極的に取り組んだ。
研究や労働意欲を高め,慢性的なストレスを軽減させると同時に,省エネ対策,プリメンテナンス,安全対策として有効であることから一斉休業によるリフレッシュ期間を設けることを提案し,人事委員会等で検討し,平成19年度から,実施となった。
附属学校との連携
大学と附属学校との教育研究体制を確立するための方策として,関係規定を整備し,附属学校教員と大学教員との共同による教育研究を推進した。
また,大学教員の専門性を生かした授業として,附属小学校では9教科を,附属中学校では,5教科の授業を大学教員が担当し,実施した。
地域連携
本学の教員が,無料で学校教員,児童・生徒,保護者を対象に,講演,授業実践,指導方法や課題解決の指導等を行う「教育支援講師・アドバイザー等派遣事業」を積極的に推進している。また,本制度未登録者に対し,積極的な登録を推進しPRを行った結果,登録者割合は全教員の75%(目標値65%)となった。
鳴門市の子ども達のための“美術の広場”を築き,次代を担う子ども達の教育を地域ぐるみで活性化させるために,大塚国際美術館及び鳴門市との連携による地域文化教育プロジェクト(N*CAP)を立ち上げワークショップを開催するなど,小学生を対象に多様な鑑賞・表現活動を行った。
管理運営
業務運営体制の充実を図るため,平成17年度の常勤理事(2名),非常勤理事(1名)体制を,平成18年度から常勤理事3名体制とすることとし,新たに外部者1名を常勤理事として任命した。 平成17年度に導入した学長補佐制度(教育連携担当の学長補佐のみ平成18年度)により,学長補佐(3名)が学長の指示する特定分野(教育連携,研究開発及び入試広報)に関してサポートを行い,円滑な業務運営を図ることができた。 また,平成18年度から広報業務をサポートする学長特別補佐制度を導入し,学外者(1名)に学長特別補佐を委嘱した。
教育研究組織の見直し
中央教育審議会の答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」に基づき検討した結果,平成20年度に教職大学院を設置する方針を決定し,「教職大学院設置準備室」を設け,検討を行った。
また,教職大学院構想と関連して,柔軟な教育を可能とするため,教員の専門研究分野及び弾力的な教員の運用を考慮した新たな教員組織を,今後の教育と社会的ニーズを考慮した大学院教育組織改組計画を検討し,具体案を策定した。
人事諸制度の整備・充実
なお,教授職においては,学長が直近の教育研究活動等の業績評価を参考として総合的に5段階評価を行った。
また,平成20年1月昇給からは,全ての職員について業績評価を反映する給与システムを導入することから,平成19年2月に人事委員会において見直しを行い,「国立大学法人鳴門教育大学昇給区分に関する基準」等を改正した。
遠隔教育の導入に向けて
改革推進委員会の下に設置した遠隔教育検討部会の報告を受け,大学院学校教育研究科において,大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)第25条第2項に規定する授業を多様なメディアを高度に利用して,当該授業を行う教室等以外の場所で履修させる教授の方法の導入のために必要なカリキュラム・教材の開発,遠隔教育システムの運用等の準備業務を行うため,「遠隔教育準備室」を設置した。
業務運営の効率化
事務局制度の廃止を見据え,段階的措置として平成18年度から常勤理事3名体制とし,そのうち1名の理事が事務局長を兼ねる体制とした。
また,事務組織のフラット化,組織編成の柔軟化及び組織変更への迅速化を図るため,チーム制(係の統廃合を含む。)を導入することについて検討し,平成19年度から導入することとした。
財務内容の改善
また,独立行政法人国際協力機構(JICA)からの「アフガニスタン国教師教育強化プロジェクト」(2年次)を民間のコンサルティング会社と共同で受託し,外部資金の増加に努めた。
また,業務外部委託計画に基づき,旅費計算業務,附属図書館目録データ入力業務の2件を外部委託したことにより,約7,199千円の節減が図られた。
その他施設整備に関すること
自己点検・評価
自己点検・評価結果は講座及び教員に通知することにより教育の質の向上に,業績評価結果は教育研究費配分にそれぞれ活用し,大学運営に反映させた。 また,自己点検・評価のさらなる充実を図るため,外部者による教育・研究評価及び優秀教員表彰制度について検討を行い,関係規定を制定した。