学長×鳴教大学院軟式野球チーム対談(2023(令和5)年7月25日(火))

学長×鳴教大学院軟式野球チーム 対談

 

2023(令和5)年7月25日(火),佐古学長と鳴教大学院軟式野球チームのメンバーが対談を行いました。

 

 

(左から田中敦士さん,佐古学長,髙下貴生さん,北尾陸人さん)

 

佐古学長《以下,学長》

鳴門教育大学大学院の長期履修学生のチームが鳴門市の軟式野球大会で優勝したということを伺いました。大学で様々な授業を履修しながら苦労されているにもかかわらず,野球でも頑張っておられるということで,是非お会いしたいと思い,このような場を設けました。
まず,お一人ずつ自己紹介を簡単にお願いできますか。

 

田中さん《以下,田中》

キャプテンを務めております田中敦士と申します。学年はPL3年(長期履修3年)で,校種の方は小学校の免許取得を考えております。所属は,保健体育科教育コースです。

 

髙下さん,《以下,髙下》

髙下(こうげ)貴生(きお)といいます。年齢は29歳で,コースは同じく保健体育科教育コースで,PL3年です。

 

北尾さん《以下,北尾》

北尾陸人と申します。PL2年生で24歳になります。保健体育科教育コースです。

 

《学長》

皆さん,保健体育科教育コースなのですね。それで,皆さんがこの大学で勉強しながら野球の活動をされているということなのですが,そもそも皆さんが,鳴教大の教職大学院を選ばれた理由は何ですか?

 

《田中》

僕は,大阪の大学を卒業したのですが,その時に教職課程,中学と高校の保健体育の教員免許を取得しました。そこで学んでいくうちに,小学校の児童期の大切さもすごく学んだので,今のうちに小学校の校種にもチャレンジしたいなと思いました。近畿地方は,特に教職大学院が多いのですが,やはり鳴門教育大学は2年分の授業料で3年間学べるといった学生向けの支援がとても充実していると思ったので,鳴門教育大学を選びました。

 

《学長》

そうですか,ありがとうございます。今お話があったように関西地方はたくさん教職大学院があるけれども,敢えて鳴門に来られたということですね。小学校の先生のどの様なところに魅力を感じていますか?

 

《田中》

小学生は良くも悪くもとても純真なので,やはり自分の言葉ひとつにもかなり影響力があると思います。そういった環境の方が自分もやりがいがあるというか,自分も一生懸命,子どもたちのためを想って日々取り組めるので,やっぱり自分は小学校の方にやりがいがあるかなという風に今は感じています。

 

 

《学長》

ありがとうございます。髙下さんはいかがですか,鳴門教育大学を選ばれたのは?

 

《髙下》

私は元々教員になりたいという気持ちはありましたが,大学時代に教員免許を取っていなかったので,半ば諦めて社会人として働いていました。しかしコロナ禍となり,仕事の休みが多くなりました。その時にもう一度教員になりたいなと思うようになり,色々調べると,鳴門教育大学の大学院だったら,3年間でゼロから教員免許が取れるということを知って,やるなら今しかないと思い仕事を辞めて,鳴門教育大学の大学院を受験しました。

 

《学長》

そうですか。髙下さんは,プロの野球選手をやっておられたんですよね?

 

《髙下》

そうです,愛媛の独立リーグで。

 

《学長》

それを辞めて鳴門に来られたということですか?

 

《髙下》

その後に,プロ野球の球団でバッティングピッチャーとして2年間仕事をして,そこからこちらに来ました。

 

《学長》

そうですか。ということは,プロの道で野球選手になろうという気持ちがあった?

 

《髙下》

そうですね。

 

《学長》

で,それが難しいということかな?

 

《髙下》

そうですね。実際に自分は裏方として働くことになったのですが,そこで2年間仕事をしました。独立リーグの時,教員になりたいと思いつつ,教員免許を持ってなかったので諦めたのですが,学校教員養成プログラムで教師になろうと一念発起して,鳴教大に入学させてもらいました。

 

《学長》

そうですか。なかなかプロの選手が大学院に入るということがないからね。

 

《髙下》

そうですね。

 

《学長》

どうですか,鳴教大に入ってみて。予想と違っていましたか?

 

《髙下》

いや,そんなことはないです。実習が多くあると聞いていたので,今はしっかり実習もしながら。で,教採の時期なので,しっかり教採のためのガイダンスなども受けたりしながら,やらせてもらっています。

 

《学長》

そうですか。北尾さん,どうですか。あなたはどうして選ばれました?

 

《北尾》

私自身,徳島県出身で。

 

《学長》

そうですね,地元やね。

 

《北尾》

はい。鳴門高校出身です。神戸の大学で4年間野球をしていて,その時に教員免許の取得を目指していたのですが,やはり野球との兼ね合いもあって,自分が大学に何をしに行ったのかと考えた時に,まずこの4年間は野球を頑張ろうという風に考えました。しかし,教員になりたいという夢はこれまでもずっと持っていたので,就職活動をするにあたって自分が本当にやりたいことは何なのかと考えた時に,教員になって自分がやってきた野球に携わろうと考えました。

また,鳴門高校の先輩にも鳴門教育大学の大学院に進学された方がいたので,その方から鳴教の魅力を聞いて,地元の鳴門でもう一度教員という夢に挑戦しよう思い,それこそ「今しかない!」と決めました。

 

 

《学長》

そうですか。ということは,北尾さんは小学校ではなくて中・高の教員を目指している?

 

《北尾》

はい,中・高の教員を目指しています。

 

《学長》

なるほどね,ありがとうございます。皆さん方,非常に意欲的に自分の進路を真剣に考えて,教員になろうということで鳴教大を選んでいただいたというのは,私は非常に嬉しく思っていますし,ぜひその夢を叶えていただきたいと思っています。では,先生になったら,どんな人になりたいですか? 

 

《田中》

僕は,やはり誰からも信頼される教員になりたいなと考えております。

 

《学長》

そういう人になるためには何が必要だと思いますか?

 

《田中》

普段からの発言であったり行動というのは,僕の中でいつも意識していることであって,やはり子どもたちの前で喋るにしても,普段の自分の生活態度であったり発言の仕方といったものが,子どもたちから信頼を得られていないと,自分が発言したことに対して子どもたちも,「この先生の言うこと,聞く気にならない」という風になったりすると思うんです。同僚や先輩教員も,普段から信頼されていないと,助けてあげようとか教えてあげようという風にならないと思うので,自分の中で一番意識していることは普段から信頼される発言であったり,行動をとるようにしています。

 

《学長》

そうですか,なるほどね。髙下さんはどうですか,どんな教員になりたいですか?

 

《髙下》

チャレンジし続けられる教員になりたいと思っています。自分自身,大学を卒業して就職も内定を貰っていたのですが,独立リーグというプロの選手になりたいという夢を諦めきれなくて,挑戦しました。教員になった時にはそういうことを生徒に伝えて,諦めずに挑戦することが大事なんだよ,ということを伝えていきたいと思っています。

 

《学長》

なるほど,体育の先生ですよね?

 

《髙下》

そうです。

 

《学長》

中学校?高等学校?

 

《髙下》

中学校を希望しています。

 

《学長》

中学生って,難しいのと違いますか?

 

《髙下》

難しいですね,一番。子どもから大人へと変わっていく時期だと思いますし,そういうところに携われるというのは責任も,やりがいもあると思うので,中学校の教員になりたいと思います。

 

《学長》

なるほど。北尾さんは,いかがですか?

 

《北尾》

自分自身そうなのですが,「あの先生に,あの指導者の方に教えてもらった」ことが今,活きているという部分がすごく多くて。実際,鳴門高校の野球部を指導させていただく機会があるのですが,コミュニケーションの取りやすい先生って,年齢が近いこともあるのですが,それ以外でも「この先生なら,こういう悩みが言える」とか,良い意味である程度の距離感は保ちながらも,生徒がどんなことでも「あの先生にだったら相談してみようかな」と,まずは向こうから話しかけてもらえるような信頼される先生になりたいと思っています。それを目指す上でも,やはり今の鳴門教育大学の3年間,まだ2年目ですけど,これから始まる教育実習で,そういう子どもとの接し方,どうやったら生徒の信頼を得られるのかというのを,これから学びたいと思っています。

 

《学長》

そうですか,はい,ありがとうございます。皆さん,本当にしっかりしていますよね。先生になるということだけじゃなくて,やはり自分のなりたい先生像がある。そして,先生にとって何が大事かということをしっかりと考えて道を進んでおられるので,非常に感心しました。ありがとうございました。あと,鳴教の良さって何かありますか?

 

《髙下》

僕が通っていた大学は総合大学で,とても学生数が多かったのですが,鳴教はどちらかというと少人数で,すごく友達ができやすいなという風にまず思いました。僕は,社会人を経験しているので他の学生と比べて年齢が高めなのですが,そんな僕でもこうやって若い人達と話をしたり,学部生とも仲良くなれたりするので,そこは鳴教の魅力だなと思います。

 

《学長》

そうですか。少人数というのは,うちの大学の特色の1つですからね。少人数ということもあり,指導は丁寧でしょう?

 

《髙下》

はい。就職支援も,一人ひとり熱心にやってくれて,すごいなと思います。

 

《学長》

ありがとうございます。北尾さん,どうですか?

 

《北尾》

僕は,今まで正直,野球しかしてこなかったので,コミュニティが野球の友達だったんですけど,長期履修の3年間でホームルームとか,数学科の人達だとか,音楽科の人たちだとか,今まで関わったことがないような人達とも,コミュニケーションを取る機会がすごく多くなって。「そういう考え方もあるんだ」というのを感じることがすごく多くて,自分自身とても新鮮で,来てよかったなと思う理由の1つになっています。

 

《学長》

ありがとうございます。

 

《田中》

僕は現職の先生と一緒に授業を受けられるというところが,すごく自分のためになる制度だと思っていて,授業で現職の先生とグループワークで討論する際などにリアルな現場の声が聞けるので,すごく勉強になります。

 

《学長》

現職の先生方って,良いことも,悪いこともいっぱい知っているでしょう?

 

《田中》

良いところも,もちろん悪いところも聞いたことがあるのですが,そこで悪いところを聞いたから「うわぁ嫌だな」じゃなくて,これから教員になる身としてはそこをどうするのかというのを考えていかないといけないので,現職の先生とお話できるというところは,これからの準備になると思っています。

 

《学長》

そうですか。皆さん方があまりにしっかりとしたお考えをお持ちなので,敢えてお聞きしたいんですけどね。今,「先生はブラックだ」と言われているでしょう。先生の仕事はブラック,ブラックと言われて,僕はちょっとそれが広まりすぎているなと思っているんですけどね。そういう一面的な見方が強くなりすぎていると思うのですが,それについて皆さんはどう思いますか?

 

《髙下》

ちょうど自分がある県の教員採用試験を受けた際に,集団面接で同じ質問をされました。自分は社会人を経験していますが,実際社会人の時もブラックと言われたらブラックの勤務形態だったかも知れません。だから,教員だけがブラックというのはちょっと違うかなと思います。たぶん勤務時間のことを言われていると思うので,“ここまで”というのを自分で決めないとキリがないと思います。僕はそういう時間の制限はしっかり決めて,プライベートの時間も大切にできるようにしたいですと,この間の教員採用試験で答えました。ただそれが,実際にできるようになるかはわからないのですが。

 

《学長》

なるほどね。

 

《北尾》

正直,社会を経験してないという部分においては,ブラックということがまだ何なのか,はっきりとわかってないのですが,やっぱりブラック,ブラックと言われながらも中学校でしたら部活動の地域移行も始まっていますし,良い方向には傾いていっているのかなと,そういう時代になっていっているのかなとも思います。逆に,土・日は部活動などにパワーを注げると僕は結構プラスに捉えているので,ブラックとは言われるけど,やりがいがそれ以上に多いんじゃないかと思います。生徒,子どもたちの成長する時を側で見守ることができる,支援できるというのは,やはりこの仕事でしかできないと思うので,そこに魅力を感じます。それこそ野球を今までやってきて,試合や移動のために休みがないことに僕らは逆に慣れてしまって,そこに対応できるというか,そういう強みはスポーツマンとしては持っているのかなと。そこを強みにしてブラックをホワイトに変えていくじゃないですけど,そういう建設的でポジティブな思考は持っていけるのではないかと思っています。

 

《学長》

ありがとうございます。田中さん,どうですか?

 

《田中》たぶんしんどい仕事ではあると思うのですが,やはりその分,教師にしか味わえないやりがいがあるなと思います。まだ現場で働いた訳ではないですけど,教育実習で附属小学校に行かせてもらった時に,子どもたちがお別れ会をしてくれて。そういう子どもたちの表情を見ながら,心の中では泣いていました。やりがいというか,こんな感情を味わえる仕事というのはあまりないなと思っていて,しんどさもありますけどやりがいの方がすごく大きい仕事なのかなという風には思いました。

 

《学長》

実はね,皆さん方との対談の前,皆さん方の大先輩,やはり鳴教の大学院を修了された方で,一人は徳島県教育委員会の教育長をやっている先生,もう一人は高知県教育委員会の教育長になっている先生にも,ここに来てもらって同じように対談したんですね。その時に,お二人に私が「先生の仕事のやりがいって何でしょうかね?」と伺ったら,お一人の方は「人の人生に真剣に関われる仕事はそうありません」とおっしゃいました。それで,「例えば小学校で教えた子どもが結婚する時に呼んでくれるような職業は他にないでしょう,それぐらい自分の関わり方がその人の人生に大きな影響を与えている,そんな仕事はめったにありませんよ」と,おっしゃっていました。もう一人の先生は,これは特別支援教育,特別な配慮が必要な子どもたちの教育に長年携わってこられた方ですけど,彼は「毎日毎日,新しい発見です」と,「子どもは教師の思うとおりに動かないから面白いんです。だから,その時に何をしたらいいかということを考えて,自分は新しいことができる。こんな仕事は他にはありません」と。だから,皆さんおっしゃっているように,仕事の質というかやりがいの方からいくと,なかなか田中さんがおっしゃったように他では味わえないような感動とか喜びとが得られる商売なんでしょうね。ただ,一方でそのために勤務時間が長くなるということは何とかしないといけない。解決すべき課題ではあるけども,だからといって何もかもやりがいのない真っ黒な商売だとは思えない,そんなことを感じましたね。敢えて若い皆さんに聞いてみようと思って,お聞きしました。ありがとうございます。今日は本当に皆さん,しっかりとした考え方を聞かせてもらって,学長として頼もしい限りです。ぜひ教師になって,子どもたちを導くようになっていただきたい。鳴教で育った先生として大いに活躍されることを期待しています。

色々苦労も多いと思いますけれども,乗り越えられると思いますので,よろしくお願いします。本日はありがとうございました。

 

《一同》

ありがとうございました。

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