学生並びに保護者の皆様へ(III) 「県外ナンバーの車」 

車のイメージ

 新型コロナウイルス感染症を恐れ、県外ナンバーの自動車に、「暴言やあおり運転、投石、傷つける」などの行為が発生しています。
 徳島県においても、4月21日に知事が「感染リスクの高い地域との往来は危険」と、県外ナンバーの車の数の調査を指示しました。しかし、上記のような行為が見られたので、24日に知事はそのような行為をしないようにと呼びかけました。
 それ以降、沈静化するだろう、と私は思っていました。

 

 しかし、先日、本学の学生がバイト先の駐車場に自動車を止めていたところ、県外ナンバーだったからでしょうか、いつの間にか窓ガラスを割られるという事件が起こりました。
 その学生はショックだったでしょう。その学生のことを想うと、私もショックを受けました。学生に何ら落ち度はありません。怖かったでしょう。今も、怖い思いをしているかもしれません。また、やり場のない怒りを感じていることでしょう。
 どうか、心の傷が癒やされていくことを願っています。

 

県外ナンバーの車

 本学は素晴らしい環境に恵まれており、勉学に励むのに打って付けです。私は、鳴門・徳島が大好きです。それゆえ、そのような行為に及ぶ人がほんの一握りにしても、鳴門・徳島にいると思うと、とても悲しくなります。

 

 今、日本だけでなく世界的に先行き不透明で不安定な時代であり、時代の大きな分岐点です。地球温暖化と自然災害、プラスチックごみ、AI(人工知能)の進展による新しい社会の到来など新たな時代の課題と、自国第一主義と国家間の競争、格差社会、権力者によるフェイクニュース、敵と味方とに分けて敵を攻撃する思考様式など戦争を引き起こしかねない課題、これらの難問が複雑に入り組んでいるところに、新型コロナウイルス感染症が加わりました。

 

 新型コロナウイルスのため、不安な気持ちになるのはよくわかります。しかし、他人へのリスペクト(尊重)や共感力がなく、ナイーヴな(単純でだまされやすい)正義感に立って、相手を激しく攻撃することは許されません。
 このようなときこそ、教育の真価が問われてきます。自らが自らを尊重し自らの責任を引き受け、他者をも尊重し、ともにより良い社会を築いていこうとする心を育てて行きたいものです。

 

 教師やカウンセラーや国際教育協力専門家など人と関わる高度な専門職業人、ならびにそれらを目指す学生の皆さんは、自宅待機や遠隔教育の今こそ、自らを見つめ直し、前向きに考えるというリフレクション(reflection、省察(せいさつ)、熟考)を行ってください。まさに、自らが内なるもう一人の自分と対話するのです。

 

 そして、対面授業が再開され大学のキャンパスに戻ってきたとき、3密には注意しながらも、皆さんは仲間と大いに語り合うことでしょう。そのとき、対話を行ってください。それは、雑談ではなく、また勝ち負けを競うのでもなく、お互いに平等で尊重し合い、人生観や世界観などについてさらに高い真理を目指して行うものです。
 皆さんが、本学に戻って来られる日を、楽しみに待っています。

2020年(令和2年)5月11日

鳴門教育大学長 山下一夫

 

県外ナンバーの車末尾.jpg

 

お問い合わせ

教務部入試課広報係
電話:088-687-6460