2021(令和3)年度秋季学位記授与式告辞

「鳴門教育大学で出会う皆が、子どもの未来のために共に学び続ける仲間である」

 

 セネガルのフェイ・アブドゥライ(FAYE Abdoulaye)さん、フェイ・シェイク(FAYE Cheikh)さん、マリのサノゴ・ベマ(SANOGO Bema)さん、鳴門教育大学大学院を修了されましたこと、誠におめでとうございます。
 

 新型コロナウイルス感染症がパンデミック・世界的大流行となり、私たちがこれまで経験したことのない非常事態、まだこの先どうなるか見通しの立たない状況です。さぞや、3人の皆さんは、心細い思いをされているのではないでしょうか。指導教員を始めとして鳴門教育大学のスタッフは、皆さんを支援したでしょうか。
 本学の教職員は、皆さんのためにできるだけの支援をしたと思います。しかし、良いことだけではなく、もし改善すべきことがあれば是非、遠慮無く話して下さい。秋入学の留学生はこれからますます増えてくると思いますので、彼たち彼女たちのためにも、皆さんの感想を聞かせて下さい。


 さて、皆さんの入学式の時に、私は次のような話をしたことを覚えておられるでしょうか。
 一つは、ディアイ・エルハジ(NDIAYE El Hadji)さんとサコ・ウスビ(SACKO Oussouby)さんのことです。ディアイさんは、2011年1月に、鳴門教育大学に研修員としてセネガルから来られ、当時は教育省大臣官房でした。サコさんは、マリ出身で、京都精華大学の学長で、京都でお目に掛かったことがあります。
 お二人とも、非常に聡明で、年配者への尊敬の気持ちと、自分自身に対する誇りを持っておられました。そして何より未来に対する熱い希望を持っておられました。
 このお二人に出会う前、恥ずかしいことに私は次のように思っていました。日本人である私は教師であり、留学生の皆さんは学生であり、常に上下の関係にあると。
 しかし、このお二人に出会い、私が学んだことは、次のことです。それは、留学生の皆様も本学の教職員も皆が、子どもの未来のために、共に学び続ける仲間だということです。もちろん、この本学の教職員の中に私も含まれており、子どもの未来のために、共に学び続ける仲間の一人です。

 

 入学式の時にもう一つ話したことは、「対話・Dialogue」についてです。
 知識を吸収することは大切ですが、本学ではそれ以上に「対話」を大切にしています。対話は、勝ち負けを競うのではなく、お互いに平等で協力し合い、さらに高い真理を目指すという気持ちが基本にあります。まさに、民主主義の根幹をなすものです。

 

 この2年間、様々な人と出会い、どのような話し合いをし、対話をしましたか。
 そして、人と話し合うだけでなく、自分自身と向き合い、心の中で対話をすることも大切です。つまり、自らの経験を見つめ直し、これからの自分に活かそうと前向きによく考えることです。これを、「省察・Reflection」と言います。
 様々な出会いや対話を経験し省察することにより、きっと皆さんは、この研修を受ける前と比べ、より深い叡智とより広い視野を手に入れられたのではないでしょうか。


 しかし、対話と省察だけでは、自分自身が疲れてしまい、また人間としての魅力に欠けてしまいます。適度に「遊ぶ・Play」ことも大事です。
 皆さんの入学式の時に、私は、遊ぶことについて、ほとんど言わなかったことを、気にかけています。この2年間、適度に遊び、エンジョイし、楽しみましたか。
 対話と省察と、そして遊びによって、鳴門教育大学に来て良かった、と皆さんが思っていることを期待しています。


 お国には皆さんの教育を心待ちにしている子どもたちや同僚が、沢山おられることでしょう。日本のこと、日本で学ばれたことを、子どもたちや同僚に話していただければうれしく思います。
 子どもの教育こそが国造りの基本です。皆さんが、帰国後、教育界の指導者としてより一層活躍されることを、心から期待しています。
 本学は、今後ともセネガルと日本、マリと日本との友好・親善に、寄与していきたいと考えています。

 結びとなりましたが、本研修にさまざまな形でご支援・ご協力いただきましたJICAの皆さま、指導教員をはじめ本学の教職員の方々には、改めて厚くお礼申し上げます。
 以上で,私の告辞を終えたいと思います。
 

2021(令和3)年9月13日
鳴門教育大学長 山下一夫