2020(令和2)年度秋季入学式告辞

「新型コロナ禍で大学院秋期入学生を迎えて」
 

 4名の皆さん、鳴門教育大学大学院へのご入学おめでとうございます。心より歓迎いたします。
 また、本日は、来賓として、鳴門教育大学同窓会の五宝友哉会長、土井栄次事務局長にご臨席賜っております。お二人に感謝申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症がパンデミック・世界的大流行となり、私たちがこれまで経験したことがない非常事態です。近々、ワクチンの開発が成功しそうですが、まだまだこの先の見通しが立たない状況です。
 皆さんの入学式も、本来なら10月であったのが、12月になってしまいました。皆さんと一緒に入学することになっていた、マリのドゥンビア セコウバさんと、ニカラグアのマリン クルス ペドロ アブラハンさんは、いまだ日本に入国することができていません。
 徳島県や鳴門市は、新型コロナウイルス感染者が非常に少ない所です。もちろん、絶対安全だと言うことではありません。本学の教職員も学生も新型コロナウイルス対策のため、自らの行動に気をつけています。皆さんも気をつけて下さい。
 このように世界的な新型コロナ禍の中で、4人の皆さん達は、これからの留学生活に対する夢と希望とともに、心細い思いと不安な気持ちがきっとあることでしょう。
 指導教員を始めとして鳴門教育大学のスタッフは、できるだけ皆さんを支援します。本学は留学生に対し実績があるので、どうか安心して下さい。
 昨年度までの留学生の内、ネパールから皆さんのように修士課程への長期研修生は2名、そして短期研修生は8名です。ブルキナファソからの長期研修生はいませんでしたが、短期研修生は37名と数多くいます。


 さて、鳴門教育大学のことを少し紹介します。
 本学の屋上から景色をご覧になりましたか。
 なかなか、美しい景色でしょう。実は、本学は、瀬戸内海国立公園に隣接しています。大学周辺には、豪快な鳴門の渦潮、西洋絵画の陶板複製画が一堂に提示されている大塚国際美術館などの観光地があります。
 本学のキャンパスも、小さいながら非常に美しく、落ち着いて勉学に励むことができます。

 本学は、教員養成の充実、現職教員の研修、教育に関する高度な研究を目的とする新構想大学として、1981年10月1日に創設され、1984年4月に大学院(修士課程)の1期生を迎えました。
 創設以来、教師教育のリーダー大学としての使命・ミッションを果たすべく、教育・研究・社会貢献に努めてきました。

 本学は、グローバル教育にも力を入れています。
 例えば、JICAと連携し、1999年に本学において南アフリカの教員研修を行いました。
 以来、海外の教育関係者の研修を受け入れてきており、2019年度まで、63カ国、1162名の研修員を数えるまでになりました。そして、海外の教育関係者の研修件数は、日本の大学で一番多いものです。長年にわたるこの研修事業の功績に対し、2013年にJICAより「国際協力感謝賞」を受賞しました。

 次に、本学の基本的な教育方法について述べたいと思います。
 日本語の「学ぶ」は「まねる」から派生した言葉です。教師の考えをまね、教師から知識を吸収することは大切です。
 しかし、それ以上に、鳴門教育大学では、授業において様々な意見を出し合う「ディスカッション」を基本にしています。
 さらに、本学で何より大切にしたいのが「ダイアローグ」です。
 対話の精神とは、真理を前にして、互いに対等の立場で無知を自覚し学ぼうということです。
 そして、対話は、正反合の弁証法的(dialectic)プロセスによって進められます。つまり、テーゼ・意見に対して、アンチテーゼ・反対意見を出し、それらをアウフヘーベン・総合する意見を見出す論理的過程です。

 要は、勝ち負けを競うのではなく、お互いに平等で協力し合い、さらに高い真理を目指すという気持ちが基本です。そして、恥ずかしいと思わずに意見が言えたり、対決を恐れず違う視点から意見が言えることが重要です。
 まさに、対話は民主主義の根幹です。
 皆さんも、間違いを恐れず、また教官に遠慮することなく、話し合って下さい。

 皆さんは、縁あって日本に留学したのですから、上手でなくていいので、積極的に日本語を使うようにしてください。様々な日本人と出会い話し合うことが、日本のことを理解し、皆さん方自身の国と世界のことをより深く理解することにつながることでしょう。
 また、日本人だけではなく海外からも、より良い教育を目指し、様々な人たちが、本学に集まってきます。皆さんは、この留学期間中に、多くの人たちと出会い、話し合うことでしょう。
 様々な出会いや対話を経験することにより、鳴門教育大学に来て良かった、と皆さんが思われることを期待しています。また、そのように思われると信じています。

 本学の研修や留学を終え帰国された人達が、学校や教育界で、リーダーとしてより一層活躍されていると聞いています。
 このことは、本学として、とてもうれしく思うとともに誇りに思っています。皆さんも、この留学を終え帰国されると、リーダーとしてより一層活躍されることでしょう。大いに楽しみにしています。

 最後になりましたが、何より健康に留意してください。健康管理の意味でも、そして日本を知る意味でも、勉強だけでなく、適度に遊ぶことも大事です。

 以上で、私の挨拶を終えたいと思います。


 

2020(令和2)年12月23日

鳴門教育大学長  山下 一夫