2020(令和2)年度秋季学位記授与式告辞

「第1回目の大学院秋期修了生を祝す ~対話、省察、そして遊び~」
 

 セネガルの ジャセ アブドライ(DIASSE Abdoulaye)さん、ネパールの ブジェル クリシュナ(BHUJEL Krishna)さん、ダカル ラム チャンドラ( DHAKAL Ram Chandra)さん、鳴門教育大学大学院を修了されましたこと、誠におめでとうございます。
 本学が秋入学の制度を設け、その第1回目の入学生であり、そして修了生が、まさに3人の皆さんです。

 

 新型コロナウイルス感染症がパンデミック・世界的大流行となり、私たちがこれまで経験したことがない非常事態、まだこの先どうなるか見通しの立たない状況です。さぞや、3人の皆さん達は、心細い思いをされたのではないでしょうか。指導教員を始めとして鳴門教育大学のスタッフは、皆さんを支援したでしょうか。
 本学の教職員は、皆さんのためにできるだけの支援をしたと思います。しかし、良いことだけではなく、もし改善すべきことがあれば是非、遠慮無く話して下さい。秋入学の留学生は増えてきていますので、彼らや彼女たちのためにも、皆さんの感想を聞かせて下さい。


 さて、皆さんの入学式の時に、私は次のような話をしたことを覚えておられるでしょうか。知識を吸収することは大切だが、本学ではそれ以上に「対話・Dialogue」を大切にしている。対話は、勝ち負けを競うのではなく、お互いに平等で協力し合い、さらに高い真理を目指すという気持ちが基本にある。まさに、民主主義の根幹をなすものである。


 この2年間、様々な人と出会い、話し合いましたか。対話をしましたか。
 そして、人と話し合うだけでなく、自分自身と向き合い、心の中で対話をすることも大切です。つまり、自らの経験を見つめ直し、これからの自分に活かそうと前向きによく考えることです。これを、「省察・Reflection」と言います。
 様々な出会いや対話を経験し省察することにより、きっと皆さんは、この研修を受ける前と比べ、より深い叡智とより広い視野を手に入れられたのではないでしょうか。


 しかし、対話と省察だけでは、自分自身が疲れてしまい、また人間としての魅力に欠けてしまいます。適度に「遊ぶ・Play」ことも大事です。
 皆さんの入学式の時に、私は、遊ぶことについて、ほとんど言わなかったことを、気にかけています。この2年間、適度に遊び、エンジョイし、楽しみましたか。
 対話と省察と、そして遊びによって、鳴門教育大学に来て良かった、と皆さんが思われていることを期待しています。また、そのように思われていると信じています。


 お国には皆さんの教育を心待ちにしている子どもたちや同僚が、沢山おられることでしょう。日本のこと、日本で学ばれたことを、子どもたちや同僚に話していただければうれしく思います。
 子どもの教育こそが国造りの基本です。皆さんが、帰国後、教育界の指導者としてより一層活躍されることを、心から期待しています。
 本学は、今後ともセネガルと日本、日本とネパールの友好・親善に、寄与していきたいと考えています。


 結びとなりましたが、本研修にさまざまな形でご支援・ご協力いただきましたJICAの皆さま、指導教員をはじめ本学の教職員の方々には、改めて厚くお礼申し上げます。
 以上で,私の告辞を終えたいと思います。

 

2020(令和2)年9月11日
鳴門教育大学長 山下一夫