1.総論

 国立大学法人鳴門教育大学は,平成25年度の大学改革加速期間において,第2期中期目標・中期計画を踏まえ,大学の本機能別分化・機能強化を推進し,本学の目標である高度専門職業人としての教員養成に取り組んだ。
 平成25年度には,以下の具体的な業務遂行に係る方針を定め,業務を遂行した。
  1. 教育の質保証をより確かなものにするためのカリキュラムの検証と改善
  2. 学校現場の課題に即応した先端的教育実践研究の推進
  3. 学生のニーズにそった体系的かつきめ細かな就職指導の推進
  4. グローバル社会にふさわしい国際教育貢献の充実
  5. 社会のニーズを踏まえた戦略的・効果的な教育資源の配分
  6. 社会のニーズを踏まえた学生の学修支援と教育環境の整備
  平成25年度の主な取組については,以下に記載する。

 1.教育研究等の質の向上の状況

学士課程における教員養成モデルカリキュラムの開発

 特別経費(プロジェクト分)を受領して,学士課程における教員養成モデルコア・カリキュラムの開発(2年目)に取り組み,平成25年度の成果として,カリキュラムの体系と授業の関連性及び学習の順序性を学生の視点から可視化するために「カリキュラム・ガイドブック」を作成した。また,本学が先導する教科内容学研究の成果をもとに小学校教科専門科目の教科書を10教科について作成した。

専修免許状の実質化を図った修士課程教員養成カリキュラムの開発

  専修免許状の実質化を図った修士課程の教員養成カリキュラムを開発するため,修士課程教員養成カリキュラム研究開発委員会の下に,「コア領域検討部会」「教科内容学検討部会」「専修免許状実質化検討部会」を設置した。これらの部会において,専門分野ごとに求められる教員の資質能力の明確化を図るとともに,それらの資質能力を育成する修士課程教員養成コア・カリキュラムの編成及び教科専門の内容と教職の内容との関連を図った授業科目「教科内容構成(仮称)」のモデルの策定に取り組んだ。

予防教育科学等の先端的実践研究の推進

  予防教育の授業の実施では,多くの技能が必要になる。そこで,予防教育科学センターにおいて,その技能をともなった授業実践力を育成する研修方法を開発した。その後,徳島県内では,鳴門市3校,阿南市1校,藍住町4校,北島町1校の教員(予防教育コーディネーターなど)にこの研修を行い,その上で実際に予防教育の授業を実践した。
 授業実施後は,その効果について授業評価を実施し,予防教育の授業目標のほぼ全てで授業効果を確認することができた。その授業評価の総合的なまとめを統計分析とともに作成し,実施校と教育委員会はもとより徳島県下の全公立小中学校に配布した。
 また,平成25年度からは,これまでの取組が評価され,徳島県内の各学校で,予防教育の授業を実践する際には,徳島県から助成金(各校約20万円)が支給された。

就職支援・就職指導の充実

  教員就職のための指導・助言に資するため,学生の受験希望が多い都府県・市を中心に,昨年度より13箇所多い32教育委員会から情報を収集した。それらの情報を基に,指導・助言,論作指導を行うとともに,前期は4年次生及び大学院生を対象に,後期は3年次生及び大学院生対象として,教採対策(40コマ)や二次対策(83コマ),実技(面接,実技)(17コマ)等のガイダンスを計画的に実施した。また,学生の教職キャリア形成の一環として1~3年次で合宿研修を実施している。その中で特に,教採対策のスタートと位置づけている3年次生合宿研修では,教員採用試験を体験した4年次生との懇談や初めての模擬集団討論を行った。こうした取組の結果,91.2%の教員就職率(保育士・進学者を除く。)を達成し,「国立の教員養成大学・学部(教員養成課程)」44大学中第1位となった。
 また,就職支援体制の拡充にも努め,個別指導(相談,面接,論作文等)を充実させるため,就職支援室のアドバイザーを平成26年度から3人体制を4人体制に増員することとした。

国際教育貢献

  途上国の教育向上に資する人材を育成する目的で,JICAが日本に受け入れた途上国の教育関係者の研修(JICA国別研修・地域別研修)を本学はこれまで受託事業として実施してきた。平成25年度には,モザンビーク・ケニア・アフガニスタン等の教師教育研修について,5種類(参加者合計70人)の研修を担当した。こうした研修を本学が長年に渡り行ってきたことに対し,JICAより途上国支援・国際貢献が評価され,理事長表彰を受けた。

遠隔教育プログラムの推進

 平成25年4月に「鳴門教育大学遠隔教育プログラム推進室」を設置し,授業の録画・配信の試行及び教材開発等を行い,カリキュラム及び授業内容の充実を図った。また,平成26年1月には,学生の指導体制の充実を図るため,年俸制による教員を1人増員した。
 また,教務委員会においては,推進室により整備されたカリキュラムの妥当性について検討し,平成25年9月に遠隔教育プログラム授業実施ガイドラインを策定した。また,遠隔教育プログラムに関する受講資格等を定めた取扱要項を平成26年2月に制定した。さらに,長期履修学生制度を活用し,遠隔教育プログラムを受講する者のために長期履修学生規則を改正した。

自主学習環境の整備等

  学生の利便性を高めるために,これまで大学構内に点在していた学生サービスのための窓口を集約した総合学生支援棟(コアステーション)新営工事を完成させた。本支援棟には学生セミナー室(2室),就職支援セミナー室(1室)などを配置し,学生が自主学習できる環境を整えた。
  また,学生が講義と講義の空き時間に授業・演習等の予習復習に利用しやすい大空間の多目的スペースを設けた。こうしたスペースは,事務室の隣に配置することで,職員から学生への学習支援等が行いやすい環境になった。
 さらに,従来から学生の要望が高かった教育環境改善のためのトイレ改修(Ⅰ期)の工事を行った。

経済的支援の充実

   本学独自の経済的支援策の拡大策として大学院修学休業制度による現職教員に対する授業料免除を実施し,前後期を通じ延べ8人が全額免除となった。通常の授業料免除については,前後期を通じて,全額免除者が延べ199人,半額免除者が延べ58人となった。
  また,平成25年度から学業成績が特に優秀かつ生活態度が優れ,他の学生の模範となる学校教育学部4年次生を対象とした,鳴門教育大学における卓越した学生に対する授業料免除(後期のみ)を新設し,12人が全額免除となった。
  なお,東日本大震災の影響により授業料の納付が困難となった学生に係る平成25年度授業料免除については,当該年度の申請者はなかった。
  教職大学院生(現職教員)支援基金についても当該年度の申請者はなかった。

2.業務運営・財務内容等の状況

機能強化に重点を置いた事務組織の再編

  第3期中期目標・中期計画期間を見据え,企画・連絡調整機能強化に重点を置いた事務組織の再編について検討を行い,平成26年4月に再編することとした。具体的には,企画総務課の企画機能を独立させて企画課に再編することで,企画機能の強化を図った。また,教務課を教務企画課に再編し,教務・学生関係4課の連絡調整を円滑にするとともに,教学部門の企画機能の強化を図った。

 衛生対策

 中期計画項目にある「日常の安全(衛生)対策,予防対策」として,教職員の健康管理を促進することを目的に,インフルエンザ予防接種費用補助事業(予防接種を受けた者に対する費用の補助(上限2千円))を実施し,110人が補助を受けた。

 防災基本計画の見直し

  防災基本計画の見直しによる津波に関する避難場所,関連資機材の設置場所等を防災地図に更新し,防災関連物資及び資機材等を備蓄・整備計画に基づき整備した。また,平成25年11月に地域住民と連携した高島地区防災訓練を実施した。さらに安全・衛生パトロールにより指摘のあった舗装の不具合を解消する工事を行った。

 環境活動の推進

 「鳴門教育大学環境方針」・「環境目標及び環境活動計画」に基づき,大学の構成員である学生・教員・事務職員等(徳島サイト(附属学校園)を含む)が二酸化炭素排出量の削減,水の使用量の削減等環境負荷の低減に取り組み,その結果を環境活動レポートとして取りまとめた。この当該レポートは環境省による「第17回環境コミュニケーション大賞」奨励賞を受賞した。

3.業務運営・財務内容等の状況

教職大学院への重点化

 学長の下,大学機能の再構築と強化に向けた取組を推進し,第3期中期目標期間へ繋げる改革方針等を検討することを目的とした「国立大学法人鳴門教育大学改革構想検討委員会」を12月に設置した。平成25年度は,教職大学院の重点化に向けた検討を中心に5回開催した。また,本学と高知大学による教職大学院共同設置に向け協議会を設置するとともに,詳細設計の推進に向け専門部会を設置し,検討に入った。

機能強化実現に向けた取組事項の策定

 学長のリーダーシップの下,「ミッションの再定義」で定めた内容や,教員養成大学の目的を踏まえ,教員養成モデルカリキュラムの開発や,予防教育科学の推進,あるいは,教育委員会や教員研修センターとの連携強化等を主な内容とする,本学の機能強化実現に向けた取組事項を具体的に策定し,平成26年度計画に盛り込んだ。

戦略的・重点的予算配分

 「国立大学改革プラン」を踏まえた第2期中期目標期間後半の「改革加速期間」における重点施策を踏まえ,学長のガバナンス(内部統制機能)強化を図る観点から,「基本方針」で本学の取り組むべき方向性を明確にし,可視化することで,効果的でメッセージ性のある予算編成方針を策定した。
 
最終更新日:2014年12月26日