自己点検・評価報告書(人間形成講座) 木内陽一

報告者 木内陽一

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての研究活動

(1)目標・計画

「ドイツ・テューリンゲン教育文化史の研究」

かねてから,ドイツ19世紀の教育者フレーベルがカイルハウに設立した教育舎(現,自由フレーベル学校)の歴史に関して,同校の研究主任・ライムント・メフェルト博士と緊密に連携をとりながら,この研究課題を追求してきた。とくに現在進めている共同研究は,カイルハウ教育舎の同窓会の歴史やその発展過程である。平成20年度は,この共同研究の成果の一部を共著論文として,「鳴門教育大学研究紀要」に発表する予定である。

(2)点検・評価

(上記のメフェルト博士との共同研究の現在での重点は,カイルハウ教育舎の同窓会に関する共同研究である。学校の同窓会に関する研究はドイツでもあまりなく,学校史の立場からも,意義のあるものと考えている。本年度は,すでに相当程度蓄積られている研究成果の一端を書きしるす作業を始めたが,論文の形態にまでまとめ上げることができなかった。2009年2月には,メフェルト氏とドイツにて面談し,研究について再度打ち合わせたので,近い将来,研究成果を公表できる見通しはできている。

1-2.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画
  1. 学部1年必修科目「人間形成原論」は従来,必要資料のコピーを配布してきたが,平成20年度は教科書『教育学概論』(福村出版)を使用し,教職教養をきちんと習得できるように努める。
  2. 学部3年選択科目「学校と人間形成」は,分担者の梶井准教授が近世(江戸時代),木内が近代(明治期)の教育を取り上げ,両者の連続,非連続について受講者に考えてもらう予定である。おそらく興味をもってもらえると思う。
  3. 大学院「教育哲学」は,新たに西田幾多郎の哲学を取り上げる。私見ではあるが,教職志望の学生,あるいは現職教員には,哲学の基礎教養が自己の教育実践を豊かにすると思う。本学では,哲学を専門とする教員がいないので,この点を補う努力をしたい。講義では西田幾多郎著『善の研究』を基本文献として用いる。演習では,それ以後の西田の論文や,西田哲学批判を吟味したい。

こうした構想の中で,1.授業内容は,教育学部の学生・院生が身につけてほしい領域に精選する。2.授業方法は,読む文献(とくにページを指定する。)をきちんと提示し,学生の発言する機会を増やすとともに,参加者と対話できるようにする。3.成績評価は,一部は,厳密な筆記試験を実施し,一部は,発表内容を評価するが,出来るだけ,内容にコメントし,プレゼンテーションの技術の上達を図るようにする。

(2)点検・評価
  1. 「人間形成原論」では,教科書を使って,基礎的な教職教養を習得することを目指したが,ほぼ目標を達成できた。試験の結果も満足のいくものであった。今後も教科書沿った形で,受講者のわかりやすい講義を心掛けたい。
  2. 「学校と人間形成」では,昨年に引き続いて,ラフカディオ・ハーンを中心に論じた。受講者は興味を持って課題に取り組んでくれたと思う。明治初期の日本の教育の在り方について,知見を深めることができた。今後も,文学と教育の結節点に留意して講義して,受講者に積極的に発言を促していきたい。
  3. 本年度の開講科目で,最も有意義と感じたのは,西田幾多郎との取り組みだった。前期の講義では,西田の著作『善の研究』を「舐めるように丁寧に読む」ということを目標にしたが,受講者もよくついてきてくれたと思う。受講者には,こうした文献を丁寧に購読し,議論をする経験があまりないように感じた。後期の演習では,西田の中期・後期の論文を抜粋して読みすすめた。受講者に発表レジュメを要求したが,レジュメの作成方法に,大きな進歩がみられた。今後も,受講者の発言,レジュメの作成を柱として大学院での担当授業を進めていきたい。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

フィルハーモニー管弦楽団顧問として,学生のサークル活動を支援する。

(2)点検・評価

フィルハーモニー管弦楽団顧問として,学生の課外活動を支援した。第19回定期演奏会(2009年3月8日(日),於,鳴門市文化会館)に第二バイオリン奏者として出演した。定演には高橋学長にもお越しいただき,感謝にたえないところであります。今年も,定演直前に出張のため鳴門を離れる事態となり,十分な練習ができなかったが,なんとか健康でステージにのることができた。演奏したベートーベン交響曲第三番「英雄」は,学生時代にはじめて弾いた「交響曲」であり,感慨深かった。爾来,34年を閲している。また,学位記授与式,祝賀会での演奏にも参加した。以後も,フィルハーモニーを積極的に支援していきたい。

2-2.研究

(1)目標・計画
  1. 橋川喜美代教授とのプロジェクト「ペスタロッチ・フレーベル・ハウスの保育・教育思想とアメリカへの導入過程」(科研・基盤研究C)の枠内で,ドイツでの資料調査を行う。
  2. 「篠原助市とその時代」 篠原の重要著作『教育の本質と教育学』(1930年)を精読し,以後の研究につなげる
(2)点検・評価
  1. 2009年2月に渡独し,ベルリンにて「ペスタロッチ・フレーベル・ハウス」を訪れ,資料調査を行った。ハウスの所長,資料室の担当職員とも意見交換ができ,有意義であった。また重要資料の複写も行った。このハウスは,幼稚園教員養成をしているのだが,今年度,この施設とのつながりができたので,さらに持続的な研究交流につなげていきたいと念願している。
  2. 篠原助市教育学研究との関連で,本年度は篠原の著作精読と並んで,篠原が学んだ京都大学文科大学の雑誌「芸文」の整理,検討に着手した。十年来,この雑誌の収集に努めているが,古い雑誌ゆえに,困難な作業である。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

任命された学内の委員会委員として,忠実に職責を果たす。

(2)点検・評価

大学院教務委員会委員,施設・設備委員会委員として,忠実に職責を果たした。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

兵庫教育大学連合大学院の大学院教育改革支援プログラム「学校教育実践学研究者・指導者の育成(教職大学院指導教員養成を視野に入れた体系的教育過程の構築)プロジェクトの枠内で,「国際化対応プログラム企画運営」を担当し,鳴門教育大学を始めとする構成大学の国際交流を促進する。

(2)点検・評価

上記のプロジェクトのメンバーとして,職責を果たした。ドイツ・ドゥイスブル大学よりハンナ・キーパー氏,ヴォルフガング・ミシュケ氏を迎え,12月4日より12日までの間,鳴門教育大学,広島大学,連合大学院研究発表会(金沢),兵庫教育大学での講演旅行に通訳として付き添った。とくに鳴門での講演会では,人間形成コース院生をはじめとして,多数の参加者があり,院生の刺激になったと思う。今後も国際交流という面から,本学に寄与したいと思う。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

2008年9月,高橋学長,谷口学生課長とともに,ドイツ・リューネブルク・ロイファナ大学を訪問した。先方のシュポーン学長,ミュラー・ロンメル副学長,コラ教育学部長,ぶっせ・インターナショナル・オフィス長,窓口教員となっていただいている,フォン・ザルデルン教授と面談でき,私としても得難い経験であった。リューネブルク独日協会の方々との交流も有意義であった。交流協定大学との交流促進を中心として,本学の国際交流にさらに寄与していきたいと考えている。

 

最終更新日:2010年02月15日

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