自己点検・評価報告書(臨床心理士養成コース,予防教育科学教育研究センター) 井上和臣

報告者 井上和臣

1.学長の定める重点目標

1-1.大学教員としての研究活動

(1)目標・計画
  • 研究主題は認知療法に関する臨床研究である。今後とも保健医療福祉領域のみならず,広く教育や司法矯正領域への認知療法の普及に精力を傾注したいと考えているところである。
  • 今年度はとくにパーソナリティ障害の認知療法に焦点を絞り,文献研究と症例研究を中心に進める予定である。
  • 専門書「パーソナリティ障害の認知療法:理論と症例(仮題)」を,他大学や医療機関の臨床家の協力を得て,平成21年度の出版に向け,計画立案中である。
(2)点検・評価
  • 認知療法の普及に関わる著訳書として下記を執筆した。
    1.井上和臣ほか. 精神科プライマリ・ケアにおける精神療法: うつ病の認知療法を例に. 専門医のための精神科臨床リュミエール7, 中山書店, pp.67-78.
    2.井上和臣ほか(訳).認知行動療法: 心理的障害への治療(キース・S・ドブソン, ドナルド・G・ビール). ワークショップから学ぶ認知行動療法の最前線: うつ病・パーソナリティ障害・不安障害・自閉症への対応, 金子書房, pp.47-90.
  • パーソナリティ障害の認知療法に関する文献・症例研究を行って著書の執筆に当たった。
  • 専門書「パーソナリティ障害の認知療法」について,編集者として,他大学や医療機関の臨床家に対し執筆依頼中である。現時点で原稿がすべて集まっている状態ではないが,平成21年度中の出版を想定して作業を進めているところである。

1-2.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画
  • 授業は,精神科医としての臨床経験に裏打ちされた実践的な「臨床の知」を提供できる内容としたい。
  • 学部学生の基礎学力の充実には,日本語を的確に読むことが重要である。可能な限り,講義や演習の資料を受講生が音読するような授業の方法を採用することにする。
  • 大学院学生の場合,日本語能力に加えて英語能力の向上が求められる。外国語の文献を読む授業「精神医学文献演習」では,担当部分の訳出に先立って,当該部分を音読する課題を課すことにする。
  • 学部と大学院にかかわらず,質問や疑問を作る能力を強化するために,講義や演習の内容に関する質問と批判的な質問を作るよう勧めることにする。「疑問をもつ」ことの意義を知らしめたい。
(2)点検・評価
  • 大学院授業「精神医学研究」および「心理療法研究」では,精神科医としての臨床活動をもとに,これまでの治療経験を踏まえた例示を行い,実践的な内容とすることができた。
  • 学部授業「学校精神保健学」では,児童青年期の精神障害に関する症例集により授業を進めたが,その際,症例の概要を受講生が音読する授業方法を採用した。
  • 大学院授業「精神医学文献演習」では,英国医師会がインターネット上で公開している不安障害の治療を教材としたが,英語の和訳に先立って,当該部分を音読する課題を課した。
  • 学部と大学院にかかわらず,授業内容に関する質問や批判的質問を作るよう勧めた。とくに,大学院授業「精神医学研究」では毎回の授業終了時に質問を提出するよう促し,次回の授業開始時に回答を与えるようにした。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画
  • 臨床心理士として主に保健医療福祉領域での臨床活動を将来実践する大学院学生に向けて当該領域での活動に資する認知療法の具体的な適用法を理解できるように,主宰する「認知行動療法を学ぶ会」などへの参加を促したい。
  • 学部学生の基礎学力の充実に不可欠な日本語を的確に読む能力を高められるよう,授業に取り組みたい。
  • 大学院学生の場合は,英語能力の向上が求められる方策を講じたい。
(2)点検・評価
  • 臨床心理士養成コースの大学院学生を中心に,認知療法(認知行動療法)の臨床適用を理解できるように,主宰する勉強会への参加を促した。 『認知行動療法を学ぶ会』は遠方での開催であったが,熱心な学生の参加が毎回少数だがみられ,所期の目的を達成できた。
  • 先述の通り,学部授業「学校精神保健学」では,受講生が症例の概要を日本語で的確に読むことを反復した。
  • 先述の通り,大学院授業「精神医学文献演習」では,英語の文献をもとに授業を展開した。

2-2.研究

(1)目標・計画

日本認知療法学会の幹事(事務局長)として,認知療法の普及に資するような著書や論文の執筆,関連学会・研修会での講演等に尽力する。

(2)点検・評価

日本認知療法学会の幹事・事務局長として,認知療法の普及に資するよう,下記の著書・論文を執筆した。

  1. 井上和臣ほか. 精神科プライマリ・ケアにおける精神療法: うつ病の認知療法を例に. 専門医のための精神科臨床リュミエール7, 中山書店, pp.67-78.
  2. 井上和臣. 特別寄稿 日本認知療法学会: 経緯と将来展望. 認知療法研究 1: 10- 15, 2008.

また,日本認知療法学会での下記の講演の他,例年のように,独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センターでの医師向け研修会の講師等を務めた。

  • 井上和臣. 臨床レクチャー I 精神科鑑別治療学における認知療法. 第8回日本認 療法学会, 東京.

2-3.大学運営

(1)目標・計画

各種委員会での職務を適切に遂行することで,大学の運営に関わることにする。

(2)点検・評価

臨床心理士養成コースのコース長を務めるとともに,衛生委員会委員としての職務を適切に遂行した。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

徳島県精神病院協会の主催する社会生活技能訓練(SST)研修会を継続し,県内精神科医療機関の看護師などに対するSSTの実践的教育に積極的に関わる。

(2)点検・評価

例年のこととなっているが,徳島県精神科病院協会の主催する社会生活技能訓練(SST)研修会を継続した。今年度も約30名の県内精神科医療機関の看護師等に対する実践的教育に積極的に関わることができた。すでに200名を越す参加者を得ている。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  • 日本認知療法学会の幹事・事務局長として,認知療法の普及に資する活動を継続してきたが,これにより臨床心理士をめざす大学院学生の確保や養成にプラスの効果を及ぼすことができたのではないかと考える。
  • 精神科・心療内科クリニックでの診療業務を通して更新される臨床経験が,とくに大学院学生に医療現場の現状を感じさせ,学生の指導にも実践的な現実味を与えることができたと自負している。

 

最終更新日:2010年02月15日

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