自己点検・評価報告書 (自然系(理科)教育講座) 清水宏次

報告者 清水宏次

1.学長の定める重点目標

1-1.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

  1. 授業内容については,本学の受講者の能力・基礎学力が千差万別であるから,基準水準を固定化して考えることは難しいし,その年度年度の受講者に合わせて内容を考えなければならない。ただし,能力のある者を抑えることは基本的には教育者にあるまじきことと考えるので,たとえ,水準を平均に落としてもその者が自力で学習できるように指導をする。
  2. 授業は目で見て,手を動かし,耳で聞いて,口を開くという根本的な学習方法が行えるように誘導する。1日1回復習を,1週に1度の復習を,1ヶ月に1度の復習を,3ヶ月に1度の復習を,1年に1度の復習をさせるように,縦糸と横糸を絡ませて布を織るがごとく,単純なことから複雑なことへと段階を踏んで一生忘れることのない様な学習を身につけてやることを心がける。ノートをとること,自分なりの教科書に替わるノートブックを作ることを勧める。ある一つの集団に優れた者が加わればその集団の水準は向上することが常のことなので,優れた受講者を育てる事も重要である。水準の低い者は,教員が指導するよりも水準の高い同僚が指導した方が効果が良い。
  3. 成績評価については,先ずは絶対的にどの程度の水準に達したかを評価し,受講者に伝える。どのような水準に達した者が評価されるのかをお互いの成績から知ってもらい,その評価の妥当性を受講者に納得させる。その上で知識と実践とがどのような関係を持って現場で有効に機能しているのかを評価する。何事も失敗を通じて自身の力で創意工夫を重ねて向上を図るのが望ましく,教えられたことを忠実に守るだけでは失敗こそ防げても成功にはほど遠い。1度の失敗くらいはそれに遭遇した生徒も心得たものであることが普通である。年ごとに向上することを生徒も期待している。向上のない教員に生徒はついてくるはずがない。成績評価はあわててするべきものではない。

(2)点検・評価

  1. 目標と計画はほぼ実施できた。
  2. 目標と計画はほぼ実施できた。ただし、毎回注意を与える必要があった。小学生以下の水準。
  3. 飴と鞭の目標と計画であったが、学生は表面では理解しても実際は理解したくないようで成績評価は数少ない受講者内での相対的評価に止まった。いくら教授側がわめいてみても学生が集団的に学業に励まないから成績評価はいい加減なものと外部から受け止められても止むを得ないのが本学の実情であろう。一応、目標と計画は実施できた。

1-2.大学教員としての社会(地域)貢献

(1)目標・計画

  大学教員が教育を通じて社会貢献をしていなければ業務を果たしていることにならないのは自明である。大学の目標が良い新人の先生をできるだけ多く輩出することであるなら,教養豊かで教科内容を十分に生徒に納得して教えられるような大学生を輩出する必要がある。そのために教員がなすべき創意工夫は,教員が学生から信頼され鍛えられることを望まなければならない。授業だけでは,残念ながら一教員の思いは学生に伝わらないので,課外活動で学生の学習を助ける。その学生が社会に貢献できればもっともまともな姿であり,大学教員が大学生を指導することなく,社会人あるいは高校生以下の生徒を指導することは本末転倒である。大学人はあくまで大学生を鍛え上げて,その学生が先生となって社会に貢献できるように力を貸すべきである。大学生の指導を忘れての社会貢献が評価されるとすればどこかに過ちがある。大学生の指導を十分にできた上で余力があれば,当然社会の要請を受けて大学から出て教育活動ができる。そこから社会の要請を教員は学ぶことができるが,わざわざ社会に迎合する必要はさらさらない。大学生が社会の要請に応えられるように指導していることが社会に分かってもらえればそれでよい。社会が要請してくれるであればいつでも出向いて講演なり,授業をしてもよいが,それ故に本業の大学生の指導が疎かになることだけは避けたい。教員が本務を全うすることが社会講演に繋がらないなら,それこそどこかに間違いがある。これまでどおり,高校などから要請があれば高校生に授業する余裕はある。

(2)点検・評価

  学生として最終的な教育を受ける場が大学であることは今もって変わらない。教育が即座に効果を表すとか、適時、適材、適所にすぐに役立つなんてことは本来的ではない。つまり、受け売りの教育からは長続きするいいものは生まれない。いいものはすべて時間をかけたオリジナルである。教員がそれを各自何物にも代えがたいものとして独自に備えるものである。かような教員を養成するにはやはり大学教育が必要であり、それには普遍的なことを学ぶ必要がある。それには社会・政治・経済といった要素にとらわれることのない学問が必要であり、そこには研究が必要である。即席に社会に役立つということは受け売りであって、長続きしない。よい学生を育てるには良い教員が必要で、大学では教育能力とともに研究能力のある教員が不可欠である。したがって、学生が教員として社会に受け入れられるように教育するとともに、学問という普遍的なものを理解できるようにして初めて教員として優れた者になる学生を育てることができる。大学教員の社会貢献には即席的なもの、地域的なもの、日本的なもの、国際的なものといろいろあるが、いろいろと取り揃えている大学こそ魅力的であろう。一教員がすべてに対応できるわけではなく、当方は教育は授業と課外指導と研究指導とを通じて行い、できるだけ残りの時間は学生とともに国際的な研究に参画できることを目指した。勿論、海外からの教員研修生などの指導、地域の小中学校の教育指導も要請されれば行うが、当講座ではこの方の教員は十分に充たされている。ただし、城南高校のSSH実験授業は今年度2回引き受けて好評であった。数の少ない国際的研究を指向した結果は、教育効果もあってこれまで通りうまく行ったと評価している。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  学生が親元を離れている場合,あるいは親と意見が合わない場合,いつでも,すぐにでも相談相手になってくれる教員であることが望ましいが,それにはただ望んでみても仕方がなく,学生との信頼関係ができていなくてはならない。信頼関係はお互いの問題であるから,教員は双方の意思疎通が十分保たれる環境を作るようにしなければならない。それにはできうる限り学生と接触する時間を増やし,学生が教員の指導を欲しがるように教員は勉強しなければならない。教員が相談相手として学生から見限られているようでは話にならない。教員は授業を通じてのみ学生を指導するべきものではないし,できるものではない。

(2)点検・評価

  学生にとって先生は厳しいと同時に親しみのある者であることが一つのあり方であろう。それには授業以外の学生との付き合いが必要である。課外活動で学生と接するのも一法であろう。しかし、勉強を通じて学生と接することが最も望ましい筈である。大学は何事においても勉強する場としては最後の高レベルのものであれば有難い。先生が勉学において学生を引っ張って指導する場合、基礎学力のない学生が多い大学では、クラブ活動で学生を指導するようにはうまく事は運ばないし、学生との親密度も低くなる傾向がある。それでも、学生は厳しく指導されることに慣れればかなりの学力向上が期待できるものである。お互いの信頼関係を授業と課外活動で結べばうまくいくことが多い。飴と鞭の使い方の問題である。どちらかというと学力の低い学生が多いが、鍛えればかなりのところまで進歩することはこれまで実証してきた。アルバイトも不可欠となっている本学学生の場合、こちらも妥協するところは妥協して、学生がこちらに妥協してついてくることを狙った。うまく行った筈である。

2-2.研究

(1)目標・計画

  研究は学問分野に限ったことではなく,あらゆるところで行われているし,行われなければならない。そうでないと人類が発展しないのは自明である。大学教員の研究は教育研究に限られたことではなく,広く心理とか一般性を求める学問の追究であれば,それこそ大学人故での研究といえる。それには世界を相手にした高い水準の研究をしなければならないし,成果の発表も世界共通言語と化した英語でしなければならない。元より,教員養成系大学で専門分野での研究を世界的水準で行うことは難しいかも知れないが,流行とか知名度を上げることを求めなければまだまだ一人でも,少人数でもやれることはいくらでもある。学生に脚を引っ張られることはない替わりに助けてくれることもないという定年前の1年であるから,今までの学生が協力して捻出をしてくれたデータを整理して1つ名の知れた国際誌に発表する他,もう少し実験をして他大学の仲間との共同研究も1つ名の知れた国際誌に発表したい。学問,あるいは研究は一人になってもやるべし,という信念を貫きたい。

(2)点検・評価

  前述のように、大学教員にあって研究活動は不可欠である。なかでも生物学の最近の進歩は驚異的であり、日本も世界を引っ張っていく立場にあるから、生物学を専門とする者は国際誌以外に研究成果を発表しても無意味となって久しい。本学ではこのような状況を把握していないので実験系の生物学では設備と人員の問題でなかなか思うようには研究は進まないが、世界で一流の研究者が2番手に選ぶ国際誌を目指して研究領域を本来のものから変えて最後まで研究を形なりにではあるが続けることができた。最後の国際誌発表は予定通りに Biochemical Genetics に今夏掲載される。また、修士課程学生が本学でまとめた論文をもとにして、共同研究として日本実験動物学会の国際誌である Experimental Animals に今春に論文が掲載される。また、日本語ではあるが、日本DNA多型学会の機関誌にもヒトβグロビン遺伝子群における単一ヌクレオチド置換多型の研究成果が印刷中となっている。一流どころには到底及ばないがまずまずの成果であると評価している。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  定年前でもあるし,教育と研究で精一杯の状況が続いているから,大学運営にはこれまで通り直接には関わらない。教員は学生とともに大学を維持するべきであるという考えからは今日の大学運営とはほど遠い。時代は変わってしまっている。

(2)点検・評価

  一人ひとりの教員が大学において、教育と研究以外に義務としてどの程度、大学管理者が求める運営協力に力を割くべきか極めて不明瞭である。また、教育と研究に支障をきたすほど大学運営に協力するべきだとは誰も思わないだろうが、一方で、大学運営に協力しないといことはどんなことを指すのかも分からない。今年度もこちらから積極的に大学運営に協力はしていないが、教育と研究以外に多種の委員会に参加するだけでは教員としての評価は低いのであれば、教育と研究と運営にどのようにかかわればいいのか提示すべきである。また、管理者が力不足の場合、一教員の負担増しはどのように評価され、解決されるのかも不明である。10数年にわたる廃棄物処理施設委員長なるものの役目が終わるが、何事も無事に終わったものと評価している。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

  附属学校とか社会との連携については,これまで通りに求められなければ,教育と研究で精一杯なので何もこちらからは働きかけない。協力の要請があればできる範囲のことであればそれほど苦にはならないので気持ちよく協力したい。
  国際交流についても同様で,教員は一に本学の学生指導に邁進するべきであるから余裕がないものが外国学生を指導できる訳がない。それでも要請があれば,出来る範囲でのことはそれほど苦にはならないので協力する。研究に関する国際交流はもう少しであるが続けることにする。

(2)点検・評価

  理科教育講座では附属学校とか地域社会との連携とか国際交流等には多くの教員が参画しており、最近では当方に協力の依頼はこないので、それでいいことにしている。講座として大学教育と研究以外にこのような事業に割く人員は十分にある。当方とて、その初期には講座内で率先して協力を惜しまなかった。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

最終更新日:2010年02月17日

お問い合わせ

経営企画戦略課
企画・評価チーム
電話:088-687-6012