自己点検・評価報告書 (自然系(数学)教育講座) 松岡隆

報告者 松岡隆

1.学長の定める重点目標

1-1.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

  1. 幾何学と現実の事象との関わりに重点を置き,学校で学ぶ幾何学が,如何に日常生活や自然界の理解に繋がっているかを理解させる。 また,数学の美しさや面白さが実感できるような内容を多く盛りこむ。これらのことにより,幾何学教育の意義を認識させる。
  2. 数学の定理や証明を講義形式で教え込めば,広い範囲の数学を効率よく学ぶことができるがその理解は表面的なものに留まり,将来教員として授業を行っていく際に本当に役に立つ力が育つとは思われない。そこで,授業の方針として,内容を単に伝授するのではなく,できる限り自分自身の力で発見することができるよう指導を図る。これにより,学習する数学知識の絶対量は減るものの,自分で深く考える経験を通して,教員としての真の力量形成が行えるものと考える。
    また,毎回の授業の開始時に小テストを行い,受講生の内容理解の様子を把握するとともに,授業時間外での学習を促す。
  3. 成績評価は,小テストの成績を約30点(期末試験は約70点)と大きく設定し,授業外での学習を促す。また,演習で発表を行えば,点数を加算することにし,授業中のより活発な学習を促す。この評価法は,授業目的・到達目標とともに,初回の授業で説明し,周知を図る。

(2)点検・評価

  1. 学部の授業「初等中等教科教育実践Ⅱ」,「幾何学Ⅰ」,「幾何学Ⅱ」,「幾何学特論」において,繰返し模様,折り紙,光の反射,太陽の動きなど,幾何学と現実の事象との関わりをテーマとして取り上げることにより,学校で学ぶ幾何学が如何に日常生活や自然界の理解に繋がっているかを理解させることができたと考える。また,「初等中等教科教育実践Ⅱ」,「幾何学Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」において,切り紙,タイル模様,正多面体,和算,ゴムの幾何学など,数学の美しさや面白さが実感できる多様な内容を取り上げた。これらの工夫により,幾何学教育の意義を認識させることに努めた。
  2. 授業の方針として,できる限り自分自身の力で発見することを重視した。学部生は,高校までの間に,考え方の道筋を丁寧に指示されて練習問題に取り組むというスタイルの授業に慣れてしまっている。そのため,この方針の下で多大の時間が費やされることにはなったが,自分で試行錯誤しながら解決の道筋を見つけていく経験をとおして,教員に必要な力量形成が行えたと考える。
    また,学部授業「幾何学Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」において,毎回の授業の開始時に,宿題として提示した課題や前回の内容に関する小テストを行った。採点に多くの時間を取られたが,受講生の理解の様子が把握でき,授業の進行に適切な修正を加えることができた。また,受講生にとっても勉強の大きな励みとなったようである。
  3. 「幾何学Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」の成績評価において,小テストと期末試験の成績をそれぞれ約30点,約70点と設定した。また,すべての授業で,演習で発表を行えば2点程度の点数を期末試験の成績に加算した。この評価方法を初回の授業時に示したことによって,受講生多数が理解を確実とするため復習を行うようになった。また,積極的な発表が行われ活発な授業となった。

1-2.大学教員としての社会(地域)貢献

(1)目標・計画

  1. 地域の子供たちに対し,算数・数学の面白さを伝え,興味関心を引き起こすような活動を行う。具体的には,講座が開催する小学生対象の「算数教室」の企画・実施を担当する。また,19年度も例年通り「鳴門市子どものまちフェスティバル」が開催されれば,算数紹介コーナーを企画し実施する。
  2. 教員支援講師・アドバイザーに登録する。学校現場から講師としての要請があれば,積極的に引き受け,生徒・児童に数学の楽しさ,面白さを伝えるよう努める。
  3. 大阪高等学校数学教育会の顧問として,例年通り,8月に開催される研修会に参加し,指導助言を行う。
  4. 南アフリカJICA研修の講師を務める。(国際貢献)

(2)点検・評価

  1. 講座が大学内で開催した小学生対象の「算数おもしろ教室」の企画・実施責任者を務めた。また,鳴門市「子どものまちフェスティバル」において,図形パズルコーナーを企画し実施した。
  2. 教員支援講師・アドバイザーへの登録を継続した。 兵庫県津名高校において,総合科学コース1・2年生に対し縞模様の数学に関する授業を行ない,数学の楽しさ,面白さを伝えた。
  3. 大阪高等学校数学教育会の顧問として,大阪で開催された教科内容研究会に参加し,教材例を紹介するとともに,発表者に対する指導助言を行った。
  4. 大洋州,中東,および南アフリカの各JICA研修の講師を務めた。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  1. 卒業・修士論文の指導に当たっては,学生が自発的に研究することを重視して指導する。
  2. 授業内容に更なる工夫を重ねることにより授業改善に努める。
  3. 学部3・4年次生,ストレートマスター,長期履修学生対象に,教員採用試験対策として,教員採用試験の幾何学関係過去問題を演習として解かせ,その解説・指導を行う。(学生支援)

(2)点検・評価

  1. 卒業・修士論文の指導に当たっては,学生各人の興味関心を尊重して,自らテーマを選び自発的に研究することを重視して指導した。そのため,毎週6コマをゼミに割くことになり,指導の時間労力面で大変であったが,十分な効果を挙げたと考える。
  2. 授業の題材で効果が小さいと判断したものを別な内容に変更した。特に,学部授業「幾何学Ⅰ」については,これまで抽象的な内容を主としていたが,本年度は,教育系の学生として理解が必須と考える基本的内容(円錐曲線,多面体,立体の体積など)に絞り込む大幅な改訂を行った。また,大学院の「幾何学演習」については,幾何学教材について収集・調査する演習・発表の時間を大幅に増やし,教材研究の能力を高めることに努めた。
  3. 学部・大学院のゼミ生に,教員採用試験の過去問題に関する指導を行った。

2-2.研究

(1)目標・計画

  1. 2次元写像の不動点に関して最近得た研究成果を論文にまとめる。
  2. 著書「Braids and periodic points on surfaces(仮題)」の主要部分の執筆を半分程度終える
  3. 科学研究費基盤(C)(代表:成川公昭)の分担者として,周期解の位相的性質についての研究を行う。
  4. 連合研究科プロジェクト「教育実践学の観点から捉える教科内容学の研究」の分担者として,中学数学科の教科内容の分析・研究を行う。
  5. 19年度の科学研究費申請が不採択となった場合,20年度の申請を行う。

(2)点検・評価

  1. 2次元写像の不動点に関する研究成果を論文にまとめ,日本数学会の学会誌に投稿した。
  2. 不動点理論に関する執筆中の著書「Braids and periodic points on surfaces(仮題)」の主要部分の執筆を半分程度終えた。
  3. 科学研究費基盤(C)(代表:成川公昭)の分担者として,不動点理論を用いて周期解の位相的性質に関する研究を行った。
  4. 連合研究科プロジェクト「教育実践学の観点から捉える教科内容学の研究」の分担者として,中学・高等学校数学科の教科内容の分析・研究を行った。また,小学校から大学まで一貫した数学教科内容構成のモデルを提案した。これらの成果を連合大学院大阪サテライトでのプロジェクト研究会で発表した。
  5. 19年度の科学研究費申請が不採択となったため,20年度の申請を行った。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  いずれかの委員会委員として,学内の会議に出席し,職務を遂行する。

(2)点検・評価

  学部教務委員会,学生支援委員会,大学院コアカリ運営委員会等5つの委員会の委員,および主査であったものを含め4つの専門部会の委員を務めた。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

  1. 附属中学校から要請があれば,選択教科などの授業を担当する。また,附属小・中学校の算数・数学教員から質問,相談があれば,綿密な解答,アドバイスを行う。(附属学校)
  2. 教員支援講師・アドバイザーに登録する。学校現場から講師としての要請があれば,積極的に引き受け,生徒・児童に数学の楽しさ,面白さを伝えるよう努める。(社会貢献)
  3. 講座として学内で開く小学生対象「算数教室」の企画・実施を担当する。また,鳴門市「子どものまちフェスティバル」が開催されれば,図形パズルのコーナーを企画し実施を担当する。(社会貢献)
  4. 南アフリカJICA研修の講師を務める。(国際協力)

(2)点検・評価

  1. 附属学校からの授業担当の要請や質問,相談は残念ながら今年度は特になかった。
  2. 教員支援講師・アドバイザーへの登録を継続した。兵庫県津名高校において,総合科学コース1・2年生に対し縞模様の数学に関する授業を行ない,生徒に数学の楽しさ,面白さを伝えるよう努めた。また,大阪高等学校数学教育会の顧問として,教科内容研究会に参加し,教材例を紹介するとともに指導助言を行った。
  3. 講座が大学内で開催した小学生対象の「算数おもしろ教室」の企画・実施責任者を担当した。また,鳴門市「子どものまちフェスティバル」において,図形パズルコーナーを企画し実施した。双方ともに,これまで責任者を継続して務めてきたことによって得た経験を生かし,実施方法・内容を改善することができた。
  4. 大洋州,中東および南アフリカの各JICA研修の講師を務めた。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  1. 東アジアを中心とする数学分野の国際コンファランス,計3件で招待講演を行った。
  2. 連合大学院の自然系議長を務めた。
最終更新日:2010年02月17日

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