自己点検・評価報告書 (社会系教育講座) 草原和博

報告者 草原和博

1.学長の定める重点目標

1-1.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

  • 学生の意欲を引き出し,基礎学力と応用力を養うように,担当科目間の体系化・構造化をはかる。1年次,2年次・・・と学年進行にともなって,他者の教育実践を分析する概念・視点の習得から,自己の教育実践を創造,反省できる能力育成へと,学生の力量を漸進的に高めてゆく教育内容を構築したい。また,本学の学生に欠ける表現力を養うため,随時プレゼンテーションやマイクロティーチング等の場面を設けたい。
  • 講義初回に配布する授業計画において,評価基準を明確に提示したい。提出されたレポート等は可能な範囲で学生にフィードバック(短評・開示)し,評価の客観化をはかる。さらに学生相互の評価の機会ももうけたい。なお,評価活動は,学生の到達度を評価するのみならず,その結果を参考に,教員の授業改善にも役立てられるべきものである。そのような観点でも,評価を活用したい。

(2)点検・評価

  当初の目標どおり,授業実践できた。学年段階に応じた教育内容を構築するとともに,教育内容に対応した指導法を工夫した。例えば,学部2年「初等社会」では「社会の分かり方」について原理的に論じた。講義では優れたレポートを紹介し,教員がコメント,それを受講者全員で相互評価する試みを行った。学部3年「実地教育事後指導」では,「社会の教え方」の原則を自らの実践体験に基づいて一般化させた。実地教育の授業VTRを受講者全員で分析し,指導原則を引き出すともに,改善策をマイクロティーチングで実演・発表させた。大学院「教育実践研究」では,教科専門(歴史学・地理学・法学等)と現場を架橋する教材を作成するとともに,それを現職教員と協力して指導することで,高度な実践力を養うことができた。

1-2.大学教員としての社会(地域)貢献

(1)目標・計画

  • とくに教科指導分野での地域・社会貢献に重点をおいて,活動を展開したい。
  • 附属学校および地域の教育関係機関との交流(教育実践,講演・研修等)の機会を得て,研究成果の積極的な還元につとめる。
  • 国内外の研究機関および企業等との共同研究(社会科教科書の開発,教材・評価問題の開発等)の機会を得て,研究成果を積極的に外部に発信する。

(2)点検・評価

  目標どおり,社会・地域貢献ができた。夏期休業中には,県総合教育センターの開催する研修会で「社会科授業構成」に関する専門的指導を行った。後期には,岐阜県及び広島県で,高校教員を対象に「地歴科・公民科の授業改善法」に関する講演を行った。
  また,年間を通じて東京書籍の中学校社会科教科書の編集に携わった。某教材会社の支援する「思考力を育成する授業・評価問題づくり」研究会,ならびに(財)教科書研究センターの助成を受けた「学習材としての教科書の条件と機能」研究会に参画し,教材づくりのあり方について意見交換と提言を行った。
  教育大学協会の研究助成を受けて,地域素材を活用した教材ライブラリー(DVD教材と活用事例集)を作成し,教育現場に提供することができた。本取組は,地元紙でも紹介された。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  • 学生の予習・復習に資するように,授業内容のウェブ公開をはかる。講義・演習のアウトラインや配布資料が随時閲覧できるようにしたい。
  • とくに「初等中等教科教育実践(コア科目)」は,教科指導の基礎的な知識・能力を育成する場となるように,授業内容の改善,新たな教材開発につとめる。
  • 他の科目でも,学生の主体的学びを保障するように,レポートの提出や意見交換の場を設ける。
  • ゼミ指導の時間を使って,教員採用試験に向けた集団討論・小論文,模擬授業等の指導を行い,教職への意欲付けや環境づくりにつとめる。
  • (教職を志望しない学生に対しては)各学生の希望や適性を踏まえて,進路についてアドバイスを与え,個人の可能性を引き出すようにしたい。

(2)点検・評価

  当初の目標どおり,教育・学生生活支援ができた。全ての授業についてウェブページ上に講義のアウトラインを公開し,受講生の予習復習に便宜を図ることができた。またウェブページ上で受講生のレポートを相互に参照し,学び合いをサポートする体制が完成した。懸案だった「初等中等教科教育実践」は,授業改善に努めた。附属・教科専門・教科教育,3者の連携体制を構築するとともに,最終的には,学生が3者の学習内容を結びつけた授業プランを構想し,1年間の学び=知のネットワークをまとめてゆく一連の指導過程を確立することができた。
  就職支援活動も順調に成果を上げることができた。ゼミ生は,3県の教員採用試験を受験し,2県に合格できた。他ゼミ所属の院生4名についても模擬授業・集団討論・論作文の指導を行い,内3名が合格した。

2-2.研究

(1)目標・計画

  • 従来から重点的に研究してきた「社会科地理の存立根拠」「地理カリキュラム」に関する成果をまとめ,学会誌・研究誌等に投稿する。
  • 共同研究として従事する予定の「市民性教育」「授業改善」「教科書構成」「教員養成」等について資料を収集,分析し,これまでの研究を深化・発展させる端緒を得たい。今年度は,国内外のヒアリングを重点的に実施したい。
  • 学校現場・メディアの実践的な問いかけ(教育問題)に対して,学問的な見地・視点を踏まえて答えた研究成果を,積極的に発信したい。
  • 学内外の研究助成に応募し,学外資金の調達をはかりたい。

(2)点検・評価

  当初の目標どおり,研究活動ができた。本人を代表者とする科研・若手研究(B)「社会科授業改善ストラテジーの研究」が採択された(他に共同研究者として2件)。教育大学協会の研究助成ならびに連合大学院の共同研究プロジェクトにも応募し,採択された。
  科研の研究成果として,「米国社会科カリキュラムにおける地理教育の位置づけ」に関する論文を全国社会科教育学会に投稿し,掲載された。本論文は高く評価され,2007年度全国社会科教育学会研究奨励賞を受賞できた。「地理教科書の活用・認知」に関する研究も順調に進み,実験授業の成果を,全国大会で発表することができた。教大協の研究助成プロジェクトは,専門職GPの試行プログラムの指定を受けることで,大学院生との共同研究として推進した。最終的には,当初の予定通り,「教材ライブラリー」の整備までこぎつけることができた。
  次年度以降「社会科教育研究法」と「社会科教員養成法」に係わる研究に着手するため,米国(シンシナティ大学,ケンタッキー大学,オハイオ州教育省)の関係機関を訪ね,資料収集とインタビューを実施した。本調査を通じて,研究の基礎データが蓄積された。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  • 今年度指名された学内委員会の委員として,本学の運営に貢献したい。
  • とくに各種GP事業の企画,実践を通じて,本学の教育大学としての活性化に努めたい。
  • 学内委員会と部・講座のパイプ役として,教員相互の情報の交換・共有化をはかるとともに,上位機関へのフィードバックにつとめたい。

(2)点検・評価

  当初の目標どおり,大学運営に貢献できた。昨年度から準備を進めてきた専門職GP「教育の専門職養成のためのコアカリキュラム」が採択された。引き続き,大学院コアカリ運営委員会の主査として,既設大学院の改革とGPの推進に取り組んだ。具体的には,新科目「教育実践フィールド研究」の立ち上げを企画するとともに,その試行プログラムに従事した。3月にはシンポジウムを開催し,GPの成果を対外的に発表することができた。
  今年度より大学評価・学位授与機構による「現況評価(教育)」の準備委員に就き,報告書原稿の準備に協力した。また就職委員として年間3回程度,模擬授業および集団討論等の指導を行うとともに,コース学生の就職状況の把握,就職相談に努めた。また,連合大学院の○合審査を受け,パスした。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

  • 附属学校教員と連携し(学部・院の演習,研究授業に向けた協議等を通じて),社会科授業構成のあり方について共同研究を進めたい。(附属学校)
  • 地域社会の教員および教育関係機関との交流の場をみつけ(研究事業,講演・研修等を通じて),研究成果のフィードバックにつとめたい。(社会)
  • 諸外国の社会科教育研究者と交流し,市民性教育のあり方,カリキュラム編成の基準,教員養成の方策について成果を交換したい。また,学生が諸外国の初等中等教育の現状に触れ,視野を広げる機会を設けたい(国際交流)

(2)点検・評価

  当初の目標どおり,附属学校・社会との連携,国際交流ができた。前述の通り,現職教員を対象にした研修事業に関与するとともに,教科書の編集作業を通じて専門的知見の社会への還元に努めた。
  国際交流に関しては,本学の姉妹校:北京師範大学を訪問し,教員と院生にインタビューを行い,大学院教育の実態を把握した(日中学術交流集会の事前打ち合わせを兼ねる)。あわせて北京市内の小中学校を訪ね,現地の教員と交流を深めることができた。
  また,連合大学院の企画では,ドイツ2大学(リューネブルグ・オルデンブルグ),ならびにイギリス3大学(カンタベリー・ヨーク・ロンドン)を訪ね,インターンシップ協定の締結に向けた準備作業を進めた。教員養成のあり方をめぐって意見交換するとともに,人的なネットワークを広げることができた意義は大きい。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  Ⅱに記述した内容のうち,とくに次の3点が特記に値する。
  1. 「専門職GP」の採択に貢献できた。
  2. 「全国社会科教育学会研究奨励賞」を受賞できた。
  3. 「教育実践研究」の取組が地元メディアで紹介された。
  いずれの活動も,鳴門教育大学の教育・研究活動を対外的にアピールすることに寄与できたと考える。
最終更新日:2010年02月17日

お問い合わせ

経営企画戦略課
企画・評価チーム
電話:088-687-6012